記憶・学習

一夜漬けで覚えたことがすぐ抜けるのはなぜ? 詰め込み学習と忘れ方を研究で調べた

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机の上に開かれた本
Photo: ZemplinTemplar / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

テスト前日にまとめて詰め込み、なんとか乗り切った。なのに1週間後には、ほとんど思い出せない。そんな経験は多くの人にあります。これは記憶力が悪いからではありません。研究を見ると、一夜漬けは「その場で答えられる状態」を作るのは得意でも、「長く残る記憶」を作るのは苦手なやり方でした。詰め込んだ直後の手ごたえが、かえって勘違いのもとになっています。

3行でわかる

  1. 同じ回数でも、間を空けて学ぶほうが、まとめて学ぶより長く覚えていられることが、839件の比較をまとめたメタ分析で示されています。
  2. まとめて学ぶと、直前に見た内容が頭に残っているため、くり返しが「楽」になり、記憶を引き出す努力が減ると考えられています。
  3. まとめて学んだ直後の出来の良さは長く残る記憶の目安にならず、少し時間をおくと差が開くことが実験で確かめられています。

01 悩みの正体一夜漬けで覚えたことがすぐ抜けるのはなぜ?

一夜漬けで覚えたことがすぐ抜けるのは、短い時間にくり返すと、記憶を引き出す努力がほとんど要らず、長く残る記憶が作られにくいからです。直後に答えられるのは、一時的に頭に残っているだけのことが多いのです。

一夜漬けでは、同じ内容を短い間に何度もくり返します。2回目を見るとき、1回目の内容はまだ頭に残っています。

そのため、くり返しは「もう知っている」と感じるほど楽になります。でも、この楽さが落とし穴です。記憶を思い出そうとする手間がかからない分、長く残す働きも弱くなると考えられています。

一夜漬け(まとめて学ぶ)間を空けて学ぶ
その場の手ごたえ大きい(すらすら答えられる)小さい(思い出すのに苦労する)
くり返すときの頭の働き直前の記憶をなぞるだけになりやすい一度忘れかけた記憶を引き出す
時間がたった後落ちやすい残りやすい

02 科学的にわかっていること詰め込み学習と忘れ方について何がわかっている?

間を空けた学習が長く残ることは、数百の実験をまとめた研究で確かめられています。脳波の実験や学習の実験からは、まとめて学ぶと「その場の出来」と「あとに残る記憶」がずれる仕組みが見えてきました。

Cepedaら(2006)[1]

184本の論文、317の実験から、839件の比較を集めたメタ分析です。まとめて学ぶか、間を空けて学ぶかで、あとのテストの成績がどう変わるかを調べました。最も成績が良くなる間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなりました。

対象: 単語や事実などを覚えて思い出す課題の研究 / 限界: 主に実験室での言葉の記憶の研究で、教科の理解や技能までそのまま当てはまるとは限らない。

Fengら(2019)[2]

大学生33人が、初めて見る顔写真288枚を2回ずつ見ました。2回目をすぐに見る「まとめて」と、間に別の写真をはさむ「間を空けて」を比べると、30分後の思い出しテストでは、間を空けた写真のほうがよく覚えられていました。脳波を見ると、まとめて見た写真は2回目の反応が弱く、思い出す働きが小さくなっていました。間を空けた写真ほど、1回目と2回目の脳の反応パターンがよく似ており、これが記憶の良さを一部説明していました。著者らは、間を空けると1回目の記憶を引き出す努力が増えるためと考えています。

対象: 中国の大学生33人 / 限界: 顔写真を使った30分後のテストで、勉強の内容や数日後の記憶は調べていない。

WimmerとPoldrack(2022)[3]

参加者54人(27人ずつ2グループ)が、図形と「当たり・はずれ」の組み合わせを学びました。まとめてくり返した図形は、学んでいる最中の成績が上がるのが早く、短い間だけ覚えておく力(ワーキングメモリ)が高い人ほど成績が良くなりました。ところが、学習後に約13分休んでからテストすると、まとめて学んだ図形の成績は下がり、間を空けて学んだ図形は上がりました。

対象: 米国スタンフォード大学の参加者54人 / 限界: 当たり・はずれを学ぶ課題で、教科の暗記とは違う。休みは約13分と短い。

SoderstromとBjork(2015)[4]

学習中の「出来」と、長く残る「学び」は別物であることを示した研究をまとめたレビューです。学習中の出来を上げるやり方が、長く残る学びにはつながらないこともあり、両者が逆の結果になる場合もあると整理しています。人は学習中の出来を、学べたかどうかの目安として信じてしまいやすいことも指摘しています。

対象: 運動の技能と言葉の学習の研究のレビュー / 限界: 一夜漬けだけを調べた研究ではない。

Smolenら(2016)[5]

間を空けた学習が強い理由を、心理学と脳の細胞の研究から整理したレビューです。心理学では、(1) 毎回ちがう状況で覚えるので手がかりが増える、(2) 前の記憶を引き出すことで強まる、(3) 続けて見ると注意や処理が手薄になる、という3つの説が紹介されています。細胞の研究では、記憶を固める変化には時間がかかり、すぐ次の刺激が来ても効果が上乗せされにくいことが報告されています。

対象: 人と動物の研究のレビュー / 限界: 細胞の研究の多くは動物実験で、人の勉強にどこまで当てはまるかはまだ研究中。

ただし、いつでも間を空けたほうが勝つとは限りません。オランダの医学生525人を調べた研究では、がんの授業を1学期に集中させたカリキュラムの学生が、3年に分けた学生より最後のテストで上回りました [6]。授業全体の組み方は、1人の勉強の仕方とは別の話で、ほかの条件も影響していると考えられます。

03 今日からできる小さな一歩一夜漬けで終わらせないにはどうする?

同じ勉強時間を、何日かに分けるのが基本です。2回目以降は見直すより、何も見ずに思い出すことから始めると、間を空けた効果を生かせます。

1

勉強時間を2〜3日に分ける

前日に3時間やるつもりなら、3日前・2日前・前日に1時間ずつに分けます。合計の時間は同じです。テストまでの日数に合わせた復習の間隔は復習のベストタイミングの研究で詳しく書いています。

所要 合計は同じ

2

2回目は「思い出す」から始める

ノートを開く前に、覚えたことを白い紙に書き出します。思い出しにくいと感じるのは、記憶を引き出す努力をしている証拠です。やり方は思い出す練習の研究も参考になります。

所要 5分

3

「すらすら」を信じすぎない

詰め込んだ直後に答えられても、それは長く残る記憶の目安になりません。1日おいてから自分でテストし、出来なかったところだけ学び直します。

所要 10分

04 続けるためのコツそれでも一夜漬けになってしまうときは?

一夜漬けになっても、テスト後にもう一度だけ思い出す時間を作れば、残る量は変えられます。徹夜で睡眠を削るのは、覚える力そのものを下げるので避けます。

05よくある質問

一夜漬けは意味がないの?

次の日のテストを乗り切る点では、役に立つこともあります。研究で問題になるのは、時間がたったあとに残りにくいことです。学んだことを後の授業や仕事で使うなら、同じ時間を数日に分けるほうが長く残ります。

間を空けて勉強すると、なぜ思い出しにくく感じるの?

間を空けると、前に覚えた内容が少し薄れているため、思い出すのに努力が必要になります。脳波の実験の著者らは、間を空けた学習で記憶が良くなるのは、この思い出す努力が増えるためと考えています。思い出しにくさは、学べていないサインではありません。

どれくらい間を空ければいい?

839件の比較をまとめたメタ分析では、最も良い間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなりました。すぐのテストなら短めに、ずっと先まで覚えておきたいなら間隔を広げる、と考えるとわかりやすいでしょう。具体的な日数の目安は、復習のベストタイミングの記事で紹介しています。

出典

  1. Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
  2. Feng, K., Zhao, X., Liu, J., Cai, Y., Ye, Z., Chen, C., & Xue, G. (2019). Spaced learning enhances episodic memory by increasing neural pattern similarity across repetitions. Journal of Neuroscience, 39(27), 5351-5360. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.2741-18.2019
  3. Wimmer, G. E., & Poldrack, R. A. (2022). Reward learning and working memory: Effects of massed versus spaced training and post-learning delay period. Memory & Cognition, 50(2), 312-324. https://doi.org/10.3758/s13421-021-01233-7
  4. Soderstrom, N. C., & Bjork, R. A. (2015). Learning versus performance: An integrative review. Perspectives on Psychological Science, 10(2), 176-199. https://doi.org/10.1177/1745691615569000
  5. Smolen, P., Zhang, Y., & Byrne, J. H. (2016). The right time to learn: Mechanisms and optimization of spaced learning. Nature Reviews Neuroscience, 17(2), 77-88. https://doi.org/10.1038/nrn.2015.18
  6. Cecilio-Fernandes, D., Aalders, W. S., de Vries, J., & Tio, R. A. (2018). The impact of massed and spaced-out curriculum in oncology knowledge acquisition. Journal of Cancer Education, 33(4), 922-925. https://doi.org/10.1007/s13187-017-1190-y