徹夜で覚えたのに思い出せないときは? 睡眠と「学び直し」の研究でわかった立て直し方

テスト前に徹夜で詰め込んだのに、いざとなると頭に残っていない。そんな経験があると「自分は覚えるのが苦手だ」と思ってしまいがちです。でも、思い出せなかった原因の多くは、能力ではなく睡眠不足にあると考えられています。研究では、一度眠ってから学び直すと、少ない練習で取り戻せて、長く残ることもわかっています。徹夜のあとの立て直し方を、研究から整理します。
3行でわかる
- 一晩眠らずにいると、翌日に新しいことを覚える力が落ちることが実験で示されている。徹夜明けに覚えにくいのは、能力の問題ではない。
- 覚えたあとに一晩眠ってから学び直した人は、同じ日のうちに学び直した人の半分の練習量で覚え直せた。1週間後と6か月後にもよく覚えていた。
- 大学生88人を調べた研究では、テスト前の一晩の睡眠より、その前の1週間や1か月の睡眠の方が成績と関係していた。立て直しは「まず眠る、次から前倒し」が基本。
01 悩みの正体徹夜で覚えたことを思い出せないのはなぜ?
眠らずにいると、新しいことを覚える脳の働きが落ちます。さらに、覚えた内容を眠っている間に整理する時間もなくなるため、思い出しにくくなります。
記憶には、覚える段階と、覚えたものを定着させる段階があります。睡眠はその両方に関わっています。
一晩眠らないと、翌日の「覚える」働きが弱まることが実験で示されています。また、覚えた直後に眠ると記憶が定着しやすいこともわかっています(覚えた直後の睡眠と記憶の記事)。徹夜の詰め込みは、この2つを同時に削ってしまう勉強法です。思い出せないのは、覚えるのが苦手だからではありません。
02 科学的にわかっていること徹夜のあと、記憶は取り戻せる?
取り戻せます。一度眠ってから学び直すと、少ない練習で覚え直せて、長く残ることが実験で示されています。
Yooら(2007)[1]
一晩眠らなかった人と普通に眠った人に、翌日新しいことを覚えてもらった実験。眠らなかった人は、覚えるときに働く海馬(記憶の入り口になる脳の部分)の活動が落ち、あとで思い出せる量も少なかった。
対象: 脳画像を使った実験 / 限界: 徹夜の翌日に新しく覚えることへの影響を調べたもので、徹夜中に覚えた内容への影響を直接測ったものではない。
Mazzaら(2016)[2]
40人が外国語の単語を全問正解できるまで練習し、12時間後にもう一度学び直した。夜に覚えて眠り、翌朝学び直した人は、朝覚えて同じ日の夜に学び直した人に比べて、学び直しに必要な練習の量が半分ですんだ。1週間後と6か月後のテストでも、よく覚えていた。
対象: 40人の実験 / 限界: 人数が少なく、単語の暗記に限った結果。他の研究室で同じ結果が確かめられたかは確認できなかった。
Cousinsら(2019)[3]
シンガポールの大学生84人が、5時間かけて生き物についての知識を学んだ。途中の1時間に、昼寝をする・映画を見て休む・詰め込みで復習する、の3つに分けた。30分後のテストでは昼寝と詰め込みがどちらも休憩より良かった。1週間後には、昼寝の有利さだけが残った。
対象: 19〜27歳の84人 / 限界: 参加者は前もって毎晩十分に眠っていた。徹夜明けの人で同じ結果になるかはわからない。
Okanoら(2019)[4]
化学の授業を受ける大学生88人に活動量計をつけてもらい、睡眠と成績を比べた。テスト前の一晩の睡眠と点数には関係が見られなかった。一方、テスト前の1週間と1か月の睡眠の長さや質は成績と関係しており、睡眠で成績の差の25%近くを説明できた。
対象: 大学生88人 / 限界: 相関の研究で、よく眠ったから成績が上がったとは言い切れない。
Gillen-O'Neelら(2013)[5]
高校生535人が9年生・10年生・12年生のときに14日間ずつ日記をつけた。ふだんどれだけ勉強しているかに関係なく、睡眠を削っていつもより多く勉強した翌日は、授業がわかりにくく、課題やテストでつまずきやすかった。
対象: 高校生535人 / 限界: 本人の日記による報告で、成績そのものを測ったわけではない。
| 比べたこと | 研究の結果 |
|---|---|
| 眠ってから学び直す / 起きたまま学び直す | 眠った方が練習量は半分、6か月後も有利 |
| 1時間の昼寝 / 1時間の詰め込み | 直後は同じ、1週間後は昼寝が有利 |
| 前日一晩の睡眠 / 1週間・1か月の睡眠 | 成績と関係したのは1週間・1か月の方 |
03 今日からできる小さな一歩徹夜明けに思い出せないとき、何から始める?
まず眠って、起きてから「思い出す練習」で学び直します。一度覚えた内容は、ゼロから覚えるより早く取り戻せます。
起きたら、教科書を閉じて思い出せることを書き出す
読み返す前に、何も見ずに覚えていることを書きます。そのあと答え合わせをして、抜けていた所だけ学び直します。読み返すより思い出す方が記憶に残ることもわかっています(テスト効果の記事)。
所要 15〜20分
次の試験までは、毎晩眠る前提で予定を分ける
同じ範囲を2回以上に分け、その間に夜の睡眠をはさむように予定を組みます。眠りをはさんだ学び直しは、少ない練習で長く残りました。
所要 5分(予定づくり)
04 続けるためのコツまた徹夜しそうになったら、どうする?
「今夜覚えて、明日の朝もう一度確かめる」の2回セットにすると、徹夜しなくても安心しやすくなります。
- 夜は新しい範囲を覚え、翌朝は何も見ずに思い出す確認だけにする。
- 前日に全部を仕上げようとしない。研究では前日一晩より、1週間や1か月の睡眠の方が成績と関係していました。
- どうしても時間が足りない日は、覚える量を減らしてでも眠る時間を残す。睡眠を削って勉強を増やした翌日は、授業や課題でつまずきやすくなっていました。
- 徹夜してしまった自分を責めすぎない。一度覚えた内容は、学び直すときに早く戻ってきます。
05よくある質問
徹夜で覚えたことは、全部忘れてしまうの?
全部が消えるわけではありません。思い出せなくても、一度覚えた内容は学び直すときに早く覚え直せることがわかっています。実験では、眠りをはさんでから学び直した人は、学び直しにかかる練習の量が半分ですみました。
テストの前日は、徹夜と睡眠のどちらがいい?
研究に沿って考えると、睡眠をとる方が有利です。徹夜明けは新しいことを覚える力が落ちると示されています。一方で、大学生の研究では前日一晩の睡眠より、その前の1週間や1か月の睡眠の方が成績と関係していました。前日だけでなく、ふだんの睡眠も大切です。
時間がないときは、昼寝と詰め込みのどちらがいい?
1時間の昼寝と1時間の詰め込みを比べた実験では、直後のテストはどちらも同じくらい良く、1週間後は昼寝をした人だけが有利を保っていました。ただしこの実験の参加者は、ふだん十分に眠っていた人たちです。
出典
- Yoo, S.-S., Hu, P. T., Gujar, N., Jolesz, F. A., & Walker, M. P. (2007). A deficit in the ability to form new human memories without sleep. Nature Neuroscience, 10(3), 385-392. https://doi.org/10.1038/nn1851
- Mazza, S., Gerbier, E., Gustin, M.-P., Kasikci, Z., Koenig, O., Toppino, T. C., & Magnin, M. (2016). Relearn faster and retain longer: Along with practice, sleep makes perfect. Psychological Science, 27(10), 1321-1330. https://doi.org/10.1177/0956797616659930
- Cousins, J. N., Wong, K. F., Raghunath, B. L., Look, C., & Chee, M. W. L. (2019). The long-term memory benefits of a daytime nap compared with cramming. Sleep, 42(1), zsy207. https://doi.org/10.1093/sleep/zsy207
- Okano, K., Kaczmarzyk, J. R., Dave, N., Gabrieli, J. D. E., & Grossman, J. C. (2019). Sleep quality, duration, and consistency are associated with better academic performance in college students. npj Science of Learning, 4, 16. https://doi.org/10.1038/s41539-019-0055-z
- Gillen-O'Neel, C., Huynh, V. W., & Fuligni, A. J. (2013). To study or to sleep? The academic costs of extra studying at the expense of sleep. Child Development, 84(1), 133-142. https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2012.01834.x


