手書きとタイピング、どちらが記憶に残るのか。研究でわかった本当の差

授業や会議のメモは、ノートに手書きした方が覚えられる。そんな話を聞いて、パソコンからノートに切り替えた人もいるかもしれません。研究を見ると、手書きの方が脳が活発に働くことは確かめられている一方、テストの成績に差が出るかどうかは、まだ決着していません。
3行でわかる
- 2014年の研究では、パソコンでメモを取った学生は、手書きの学生より理解を問う問題の成績が低かった。パソコンだと話をそのまま書き写しがちだったためと考えられた。
- この研究を142人で再現した2021年の研究では、パソコンの方が多く書き写していたものの、テストの成績には差がなかった。
- 一方、日本の研究では、紙の手帳に予定を書いた人は、タブレットやスマホに入力した人より、書く時間が短く、思い出すときの脳の活動も高かった。
01「手書きの方が覚えられる」は、まだ決着していない
手書きとタイピングでは、脳の働き方が違います。ただし、それがそのまま「覚えやすさ」の差になるかは、研究によって結果が分かれています。
手書きでは、文字の形をペンでなぞる細かな手の動きが必要です。タイピングでは、どの文字も同じようにキーを押すだけです。この違いが、脳の働き方の違いにつながると考えられています。
また、パソコンは速く打てるため、話をそのまま書き写しやすくなります。手書きは追いつかないぶん、要点を選んで自分の言葉でまとめることになりやすいと考えられています。
つまり、差を生んでいるのは「道具」そのものより、「どう書くか」かもしれません。
02科学的にわかっていること
手書きで脳がより広く活発に働くことは示されています。一方、テストの成績に差が出るかは、研究によって結果が分かれています。
Mueller & Oppenheimer(2014)[1]
3つの研究で、講義のメモをパソコンで取った学生は、手書きの学生より、理解を問う問題の成績が低かった。パソコンの学生は講義をそのまま書き写す傾向があり、自分の言葉でまとめないことが学習に不利だったと考えられた。
対象: 大学生(3つの研究) / 限界: 下の再現研究では同じ結果が得られなかった。
Urryら(2021)[2]
上の研究の1つ目を、パソコン74人、手書き68人で同じ方法で再現した。パソコンの学生は講義をそのまま書き写す量も、書いた量も多かったが、テストの成績に差はなかった。似た8件の研究をまとめた分析でも、同じ傾向だった。
対象: 大学生142人 / 限界: 講義直後のテストのみで、時間がたってからの記憶は調べていない。
Umejimaら(2021)[3]
予定を紙の手帳、タブレット、スマホのどれかに書き込んでもらい、1時間後に思い出すテストをした。紙の手帳の人は書く時間が短く、簡単な問題の正答率が高く、思い出すときの記憶や言語に関わる脳の部位の活動も高かった。
対象: 紙の手帳・タブレット・スマホの3グループの参加者 / 限界: 予定の記憶を調べたもので、講義の理解とは異なる。
Van der Weel & Van der Meer(2023)[4]
大学生36人の脳波を、手書きとタイピングで比べた。手書きのときは、記憶や新しい情報の取り込みに関わる脳の部位どうしのつながりが、タイピングのときよりはるかに広く見られた。
対象: 大学生36人 / 限界: 脳の活動を調べたもので、成績の差を直接測ってはいない。
03今日からできる小さな一歩
道具を選ぶより、「書き写さず、自分の言葉でまとめる」ことを意識します。覚えたい予定や大事なことは、紙に書くのも一つの方法です。
そのまま書き写さず、要点を自分の言葉で書く
パソコンでも手書きでも、聞いた言葉をそのまま書くのをやめ、「つまり何か」を短くまとめます。
所要 メモのたびに
覚えたいことは紙に書いてみる
予定や大事なアイデアなど、あとで思い出したいものは紙のノートや手帳に書いてみます。
所要 数分
メモを見ずに思い出す時間をつくる
メモを取った後、何も見ずに要点を書き出してみます。思い出す練習は、記憶を強めることがわかっています。
所要 5分
04続けるためのコツ
手書きかパソコンかを気にしすぎる必要はありません。自分が続けやすく、要点をまとめやすい方法を選んでください。
- パソコンでメモを取るときは、通知を切っておくと気が散りにくくなります。
- 手書きのノートは、図や矢印を使って書くと、自分の言葉でまとめやすくなります。
- タブレットとペンを使う方法もあります。研究によって結果が異なるので、自分に合うか試してみましょう。
- 大事なのは、メモを取った後に見返したり思い出したりすることです。
05よくある質問
手書きとタイピングについて、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
手書きの方が記憶に残るって本当?
はっきりしていません。手書きが有利という2014年の研究がある一方、同じ方法で142人を調べた2021年の研究では、テストの成績に差はありませんでした。
手書きだと脳はどう違うの?
大学生36人の脳波を調べた研究では、手書きのときに、記憶に関わる脳の部位どうしのつながりが、タイピングよりはるかに広く見られました。
パソコンでメモを取るときのコツは?
講義や会議の言葉をそのまま書き写さず、要点を自分の言葉でまとめることです。書き写す量が多いほど、理解が浅くなる傾向が指摘されています。
スケジュールは紙の手帳とスマホ、どちらがいい?
日本の研究では、紙の手帳に予定を書いた人の方が、書く時間が短く、思い出すときの正答率や脳の活動も高い傾向がありました。
出典
- Mueller, P. A., & Oppenheimer, D. M. (2014). The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking. Psychological Science, 25(6), 1159-1168. https://doi.org/10.1177/0956797614524581
- Urry, H. L., Crittle, C. S., Floerke, V. A., et al. (2021). Don't Ditch the Laptop Just Yet: A Direct Replication of Mueller and Oppenheimer's (2014) Study 1 Plus Mini Meta-Analyses Across Similar Studies. Psychological Science, 32(3), 326-339. https://doi.org/10.1177/0956797620965541
- Umejima, K., Ibaraki, T., Yamazaki, T., & Sakai, K. L. (2021). Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 15, 634158. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2021.634158
- Van der Weel, F. R., & Van der Meer, A. L. H. (2023). Handwriting but not typewriting leads to widespread brain connectivity: a high-density EEG study with implications for the classroom. Frontiers in Psychology, 14, 1219945. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1219945