記憶・学習

似たものをまとめて覚えると、混ざってしまうのはなぜ? 記憶の「干渉」を研究で調べた

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袋に入った白い情報カード
Photo: ArnoldReinhold / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「赤・青・黄」「腕・脚・肩」。教科書どおりにまとめて覚えたのに、テストでどれがどれだか混ざってしまう。それは覚え方が足りないからとは限りません。研究では、似たものどうしは記憶の中でぶつかり合い、取り違えやすくなることがわかっています。これを干渉と呼びます。

3行でわかる

  1. 似たものを一緒に覚えると、同じ手がかりに複数の記憶がつながり、取り違えが起きやすくなります。
  2. 大学生102人の実験では、意味の近い単語のまとまりで出てきた言葉は、ばらばらの言葉より覚えにくく、差は8回出てきた言葉ではっきりしました。
  3. 覚えた直後に頭を使う作業をすると、似ていない内容でも記憶が弱まりやすいと考えられています。51研究のメタ分析では、学習後に10分ほど静かに休む効果は、若い大人では小さめでした(g=0.20)。

01 悩みの正体似たものを一緒に覚えると、なぜ混ざる?

似たものは、思い出すときの手がかりが共通しているからです。「色の名前」という1つの手がかりに複数の単語がつながると、どれを取り出すかで迷い、取り違えが起きやすくなります。

記憶は、何かの手がかりをきっかけに取り出されます。「体の部分の英単語」という手がかりに、arm、leg、shoulderがまとめてつながっていると、1つを取り出そうとしたとき、ほかの単語も一緒に浮かびます。

心理学では、ほかの記憶が邪魔をして思い出しにくくなることを干渉と呼びます。前に覚えたものが新しい記憶を邪魔する場合と、あとから覚えたものが前の記憶を邪魔する場合があります。

干渉は、時間がたつと忘れる理由の1つとして、100年近く研究されてきました。時間とともに忘れる全体の話は忘却曲線の研究にまとめています。

02 科学的にわかっていること似た単語をまとめて覚えると、本当に覚えにくい?

複数の研究で、意味の近い単語のまとまりは覚えにくく、取り違えが増えると報告されています。ただし、テストの正答率に差が出なかった研究もあり、影響の大きさは条件によって変わります。

Pérez-Serranoら(2022)[3]

スペインの大学生が、字幕つきの動画を見ながら、架空の外国語の単語を自然に覚えました。単語は、意味の近いまとまり(同じ分野の言葉)か、ばらばらの言葉として出てきました。出てくる回数は1回・4回・8回のいずれかでした。ばらばらの言葉は、回数が増えるほどよく思い出せるようになりました。一方、まとまりの言葉は、4回から8回に増やしても伸びが見られませんでした。差がはっきりしたのは、8回出てきた言葉でした。

対象: 大学生102人(18〜22歳) / 限界: 動画を見た直後のテストのみで、時間をおいたテストはしていない。架空の単語を使った実験。

これまでの研究のまとめ(Pérez-Serranoら, 2022より)[3]

Tinkham(1993)は、意味の近い単語のまとまりで覚えると、覚えきるまでに必要な練習回数が多くなったと報告しています。Nakata・Suzukiの研究では、意味の近いまとまりでも、訳の正答率に差はありませんでした。ただし、まとまりの中で取り違える間違いは多くなりました。間隔をあけずに続けて覚えたグループでは、この取り違えが直後のテストでも、時間をおいたテストでも多く見られました。

対象: 外国語の単語を覚える学習者 / 限界: 研究によって結果がそろっておらず、「まとめて覚えると必ず不利」とまでは言えない。

Wixted(2004)[1]

忘却の研究を振り返ったレビューです。似たものどうしの干渉は、実験室で起きる忘却をよく説明すると考えられてきました。一方、日常の忘却は別の種類の干渉で起きている面が大きいと論じています。覚えたばかりでまだ安定していない記憶は、そのあとの頭の働きや新しい記憶づくりに弱いという考え方です。この邪魔は、あとの作業が前の内容と似ていなくても起きるとしています。

対象: 心理学・薬理学・神経科学の研究のレビュー / 限界: 研究の流れをまとめた解説で、新しい実験ではない。

Dewarら(2012)、Humistonら(2019)、Parraら(2026)[2][4][5]

Dewarらは、物語を聞いた直後に10分静かに休むと、間違い探しのゲームをした場合より、7日後もよく覚えていたと報告しました。参加者は記憶検査で問題のなかった高齢の大人でした。一方、Humistonらが18〜22歳の31人で行った事前登録の再現実験では、休む効果は見られませんでした(d=0.09)。51研究・142の効果量をまとめた2026年のメタ分析では、全体の効果はg=0.34でした。健康な若い〜中年の大人ではg=0.20と小さく、高齢者ではg=0.57でした。

対象: 51研究のメタ分析ほか / 限界: 研究によるばらつきが大きく、若い大人では効果が出なかった研究も多い。

邪魔の種類起きること研究での支え
似たものどうしの干渉取り違え・覚えるのに時間がかかる102人の実験、これまでの単語学習の研究(結果はそろっていない)
覚えた直後の頭の働きまだ安定していない記憶が弱まる忘却研究のレビュー、学習後の休憩の研究
学習後の静かな休憩若い大人では効果は小さめ51研究のメタ分析(若い〜中年の大人でg=0.20)

この表は、上の研究をこのサイトで整理したものです。似たものの取り違えは比較的よく見られますが、「覚えた直後に休めば覚えられる」という効果は、若い人では小さいと考えておくのが妥当です。

03 今日からできる小さな一歩似た単語が混ざるのを防ぐには、どう覚える?

似たもの同士を同じ日に一気に覚えず、ばらして覚えるのが研究の結果に合っています。混ざりやすい組み合わせは、違いに注目して見比べる時間をとります。

1

似た単語を同じ日にまとめて覚えない

「色の名前10個」を一度に覚えるより、色・動物・道具を混ぜて覚えます。取り違えが増えたのは、続けてまとめて覚えた場合でした[3]。

所要 リストを作り直すのに5分

2

取り違えたペアだけを並べて見比べる

間違えた組み合わせは、違いを一言で書き出します(例: 「左右」は頭文字で区別する)。間違いの直し方はテストで間違えた後の復習の研究にまとめています。

所要 3分

3

日をあけて、もう一度思い出す

まとめて詰め込むより、間をあけて復習します。復習のタイミングは復習の間隔の研究が参考になります。

所要 1回5分

4

覚えた直後は、別の勉強をすぐ詰め込まない

数分ぼんやりする、片付けをするなど、頭を休める時間をはさみます。若い大人での効果は小さめなので、できる日だけで十分です[5]。

所要 5〜10分

04 続けるためのコツ何度覚えても混ざるときは、どう考えればいい?

似たものが混ざるのは、記憶の仕組みとして自然なことです。混ざった組み合わせは「どこが似ているか」がわかった証拠なので、そこだけを重点的に練習すれば十分です。

05よくある質問

英単語はジャンルごとにまとめて覚えない方がいい?

新しく覚えるときは、意味の近い単語ばかりを一度にまとめない方が、取り違えは減りやすいと考えられます。大学生102人の実験では、意味の近いまとまりの単語は覚えにくく、8回出てきた単語で差がはっきりしました。ただし正答率に差が出なかった研究もあり、絶対にだめというわけではありません。

記憶の干渉とは?

ほかの記憶が邪魔をして、覚えたことを思い出しにくくなることです。前に覚えたものが新しい記憶を邪魔する場合と、あとから覚えたものが前の記憶を邪魔する場合があります。似たもの同士ほど起きやすいとされています。

覚えた直後に休むと記憶に残りやすい?

学習後に10分ほど静かに休むと記憶が残りやすいという研究があります。ただし51研究をまとめたメタ分析では、効果は高齢者で大きく(g=0.57)、健康な若い〜中年の大人では小さめ(g=0.20)でした。18〜22歳の31人で行った再現実験では、効果が見られなかった例もあります。

出典

  1. Wixted, J. T. (2004). The psychology and neuroscience of forgetting. Annual Review of Psychology, 55, 235-269. https://doi.org/10.1146/annurev.psych.55.090902.141555
  2. Dewar, M., Alber, J., Butler, C., Cowan, N., & Della Sala, S. (2012). Brief wakeful resting boosts new memories over the long term. Psychological Science, 23(9), 955-960. https://doi.org/10.1177/0956797612441220
  3. Pérez-Serrano, M., Nogueroles-López, M., & Duñabeitia, J. A. (2022). Effects of semantic clustering and repetition on incidental vocabulary learning. Frontiers in Psychology, 13, 997951. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.997951
  4. Humiston, G. B., Tucker, M. A., Summer, T., & Wamsley, E. J. (2019). Resting states and memory consolidation: a preregistered replication and meta-analysis. Scientific Reports, 9, 19345. https://doi.org/10.1038/s41598-019-56033-6
  5. Parra, D., Zhang, Z., & Radvansky, G. A. (2026). Should we all just take 10? A meta-analysis of wakeful rest. Psychonomic Bulletin & Review, 33, 49. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02778-3