記憶・学習

覚えたことは、なぜすぐ忘れるのか。忘却曲線の再現実験と脳の研究でわかったこと

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図書館の本棚に並ぶ古い本
Photo: Clem Onojeghuo clemono2 / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

昨日しっかり覚えたはずの単語が、今日はもう出てこない。そんなとき「自分は記憶力が悪い」と感じるかもしれません。でも、覚えた直後ほど速く忘れるのは、誰の脳にも起きるふつうの性質です。研究では、忘れる理由として「まだ固まっていない記憶が後の活動で上書きされる」ことや、脳がわざと忘れる仕組みまで見つかっています。

3行でわかる

  1. 忘却曲線は2015年に再現され、忘れる速さは覚えた直後がいちばん大きく、その後ゆるやかになると確かめられた。
  2. 覚えたばかりの記憶はまだ固まっておらず、直後の頭の活動で上書きされやすい。脳には不要な記憶を消す仕組みもある。
  3. 忘れても「ゼロに戻る」わけではない。エビングハウスでは31日後でも、覚え直しの時間が約2割短く済んだ。

01 悩みの正体覚えたことをすぐ忘れるのは記憶力が悪いから?

記憶力のせいとは限りません。覚えた直後に急に忘れ、その後ゆるやかになるのは、140年前から何度も確かめられてきた、誰にでも起きる記憶の性質です。

1880年ごろ、ドイツの心理学者エビングハウスは、意味のない短いつづり(無意味つづり)を自分で覚え、時間をおいて覚え直す実験を続けました。これが有名な「忘却曲線」です。

ここでよくある誤解があります。忘却曲線は「何%覚えているか」ではありません。「覚え直すのに、最初より何%時間が少なくて済んだか(節約率)」を示した数字です。

たとえば1日後の節約率が約34%なら、「66%忘れた」ではなく「覚え直しの時間が3分の1ほど短く済んだ」という意味です。忘れたように見えても、記憶の跡は残っています。

02 科学的にわかっていること人はなぜ、覚えた直後ほど速く忘れるのか

覚えたばかりの記憶はまだ固まっておらず、直後の頭の活動に上書きされやすいからだと考えられています。さらに脳には、記憶を少しずつ消す仕組みもあります。

MurreとDros(2015)[1]

エビングハウスの実験を、できるだけ同じ方法で再現しました。22歳の男性1人が約70時間かけて69個のリストを覚え、20分後から31日後まで7つの間隔で覚え直しました。忘れ方はエビングハウスとよく似ており、著者らは「忘却曲線は再現された」と結論づけました。ただし曲線は完全になめらかではなく、24時間の時点で上向きに跳ねている可能性が高い、とも述べています。

対象: 1人(エビングハウス本人も1人) / 限界: 意味のない文字の暗記なので、意味のある内容の忘れ方とは違う可能性があります。

覚えてからの時間エビングハウス(1880)再現実験(2015)
20分後58.2%47.2%
1時間後44.2%37.3%
1日後33.7%31.7%
6日後25.4%16.8%
31日後21.1%4.1%

数字は節約率(覚え直しで短くなった時間の割合)。再現実験の31日後の値が低いのは、そのリストを実験の初めにまとめて覚えたためかもしれない、と著者らは述べています[1]。

Wixted(2004)[2]

心理学と脳科学の研究を整理したレビューです。日常の忘れの多くは、まだ固まっていない新しい記憶が、その後の頭の活動や別の記憶づくりに邪魔されて起きる、と論じました。似た内容でなくても邪魔になるという考え方です。覚えた後に眠ると記憶が残りやすいことも、これで説明できるとしています。

対象: 100年分の研究のレビュー / 限界: ひとつの理論的な見方で、忘れの原因がこれだけと決まったわけではありません。

DavisとZhong(2017)[3]

ショウジョウバエなどの研究から、脳には記憶を積極的に消す仕組みがあることがわかってきました。記憶の跡を少しずつ壊す信号が常に出ていて、「忘れることが脳の基本の状態かもしれない」と著者らは述べています。

対象: 主に動物の研究のレビュー / 限界: 人の日常の物忘れにどこまで当てはまるかは、まだ研究の途中です。

Radvanskyら(2022)[4]

これまでの研究を見直し、忘れ方は1本のなめらかな曲線では説明しきれないと指摘しました。覚えた直後の約1分、その後の12時間、続く1週間ほど、それ以降という段階ごとに、忘れ方が変わると提案しています。

対象: 既存研究の見直し / 限界: 新しく提案された枠組みで、まだ検証が続いています。

03 今日からできる小さな一歩覚えたことを忘れにくくするには?

覚えた直後に頭を休ませ、翌日にもう一度思い出し、その夜は眠ることです。どれも「固まる前の記憶を守る」「消えかけた記憶を呼び戻す」ための工夫です。

1

覚えた直後の10分は、スマホを見ずにぼんやりする

Dewarら(2012)の実験では、物語を覚えた後に10分間なにもせず休んだほうが、間違い探しをした場合より7日後もよく覚えていました[5]。ただし効果は若い健康な人では小さめです。

所要 10分

2

翌日、ノートを見ずに思い出してみる

忘れかけた頃に自分でテストすると、読み返すより記憶に残りやすいとわかっています(テスト効果の研究、復習のタイミングの研究)。

所要 5分

3

覚えた日の夜は、しっかり眠る

眠っている間は新しい情報が入らず、記憶が上書きされにくくなります(覚えた直後の睡眠の研究)。

所要 いつもの睡眠

04 続けるためのコツ直後に休むと覚えやすい、は誰にでも効く?

効く傾向はありますが、若い健康な大人では効果は小さく、効かなかった研究も多くあります。休むことは「おまけ」と考え、思い出す練習を中心にするのが確実です。

05よくある質問

忘却曲線の「1日で7割忘れる」は本当?

そのままの意味では正しくありません。エビングハウスの数字は「覚え直しにかかる時間が何%減ったか(節約率)」で、1日後は約34%でした。何%覚えているかを測った数字ではないので、「7割忘れる」と読むのは誤解です。

覚えたことを忘れるのは、脳の老化ですか?

覚えた直後ほど速く忘れるのは、年齢に関係なく起きる性質です。22歳の人を対象にした2015年の再現実験でも、エビングハウスとよく似た忘れ方が確かめられました。

どうして寝ると記憶が残りやすいの?

眠っている間は新しい情報が入らないため、固まる前の記憶が上書きされにくいという説明があります(Wixted, 2004)。睡眠中の脳で記憶が整理されるという研究もあり、理由はひとつに決まっていません。

出典

  1. Murre, J. M. J., & Dros, J. (2015). Replication and analysis of Ebbinghaus' forgetting curve. PLoS ONE, 10(7), e0120644. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0120644
  2. Wixted, J. T. (2004). The psychology and neuroscience of forgetting. Annual Review of Psychology, 55, 235-269. https://doi.org/10.1146/annurev.psych.55.090902.141555
  3. Davis, R. L., & Zhong, Y. (2017). The biology of forgetting: A perspective. Neuron, 95(3), 490-503. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2017.05.039
  4. Radvansky, G. A., Doolen, A. C., Pettijohn, K. A., & Ritchey, M. (2022). A new look at memory retention and forgetting. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 48(11), 1698-1723. https://doi.org/10.1037/xlm0001110
  5. Dewar, M., Alber, J., Butler, C., Cowan, N., & Della Sala, S. (2012). Brief wakeful resting boosts new memories over the long term. Psychological Science, 23(9), 955-960. https://doi.org/10.1177/0956797612441220
  6. Parra, D., Zhang, Z., & Radvansky, G. (2026). Should we all just take 10? A meta-analysis of wakeful rest. Psychonomic Bulletin & Review, 33(1), 49. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02778-3