ミスした直後に、またミスが続くときは? ミスの後に注意が乱れる研究でわかった立て直し方

入力ミスに気づいて直したら、すぐ次の欄でもまた間違えた。そんな「ミスの連鎖」は、気がゆるんでいるからとは限りません。実験では、ミスに気づいた直後のごく短い間、脳の注意がミスの処理に取られ、次の判断の正確さが落ちることがわかっています。間をあけるとこの乱れは見られなくなりました。
3行でわかる
- 人はミスの後に反応が遅くなります(ミス後の減速)。この減速は、ミスから次の判断までの間が短いほど大きくなります。
- 19人の実験では、間が0.2秒だと平均59ミリ秒の減速が見られ、0.75秒以上あくと減速は見られませんでした。別の実験では、間が短いとミスの後の正確さも下がりました。
- 研究に沿った立て直し方は、ミスの直後に一呼吸おく、振り返りは後でまとめて行う、自分を責めすぎない、の3つです。
01 悩みの正体ミスの直後に、またミスしやすいのはなぜ?
ミスに気づいた直後は、脳の注意がミスの処理に使われ、次のものをよく見られなくなるからです。実験では、この乱れは約0.5秒以内に次の判断をするときに表れました。
研究では、ミスの後に反応が遅くなることを「ミス後の減速」と呼びます。昔は「慎重になったから遅くなる」と考えられてきました。慎重になるなら、次は正確になるはずです。
ところが、条件によっては、ミスの後のほうが正確さが下がることがわかってきました[1]。慎重になっているのではなく、ミスに気を取られて、次の作業に注意が回っていない時間があるということです。
なお、恥ずかしいミスの後に「みんなに見られている」と感じる気持ちの研究は、失敗の後の「注目されている感じ」の研究で紹介しています。
02 科学的にわかっていることミスの後の乱れは、時間をおけば消える?
実験室の課題では消えました。ミスから次の判断までの間が短いほど乱れは大きく、0.75〜1秒ほどあくと、正確さの低下は見られなくなりました。
JentzschとDudschig(2009)[2]
画面に出た刺激を見分けて、できるだけ速くボタンを押す課題で、反応から次の刺激までの間を短く(0.05秒か0.1秒)または長く(1秒)しました。間が短いときは、ミスの後の減速が大きく、ミスの後の正確さも下がりました。間が長いと、乱れは小さくなりました。
対象: 実験室で行った2つの反応課題の実験 / 限界: 1秒以下の速い判断をくり返す課題の結果です。日常の作業にそのまま当てはまるかは確かめられていません。
DanielmeierとUllsperger(2011)[1]
ミスの後に起きる変化の研究をまとめたレビューです。あわせて行った実験では、間を0.2・0.75・1.5・3秒にランダムに変えました。間が0.2秒のときだけ平均59ミリ秒の減速があり、0.75秒以上では減速は見られませんでした。レビューでは、正確さを重視するよう指示したときにだけ減速が見られた研究も紹介されています。
対象: 実験は健康な成人19人(平均24歳) / 限界: 人数が少なく、矢印の向きを答える単純な課題です。レビューは、もっと長い間でも減速が残った研究があるとしています。
Buzzellら(2017)[3]
難しい見分け課題をしながら脳波を測りました。間が短いと、ミスの次の回で、目から入った情報への脳の反応が弱まり、正確さも下がりました。間が長いと、この乱れは見られませんでした。ミスを処理する脳の反応が大きいほど、次の回の見る働きが弱まっていました。
対象: 実験室での脳波の研究 / 限界: 著者らは、判断が約0.5秒以内に続くときの話だとしています。上の空やぼんやりでは説明できないことも確かめています。
Notebaertら(2009)[4]
ミスがまれな課題では、ミスの後に遅くなりました。ところが正解のほうがまれになる課題では、正解の後に遅くなりました。めったに起きない出来事が注意を作業からそらす、という説明です。
対象: 2つの実験 / 限界: 後の研究では、自分のミスの後にだけ遅くなり、「ミスです」と偽の知らせを受けたときは遅くならない、という結果もあります。原因の説明はまだ一つに決まっていません[1]。
| ミスから次の判断までの間 | ミスの後の様子 | 研究 |
|---|---|---|
| 0.05〜0.1秒 | 大きく遅くなり、正確さも下がる | JentzschとDudschig(2009) |
| 0.2秒 | 平均59ミリ秒遅くなる | DanielmeierとUllsperger(2011) |
| 約0.5秒以内 | 見る働きが弱まり、正確さが下がる | Buzzellら(2017) |
| 0.75秒以上 | 減速は見られない | DanielmeierとUllsperger(2011) |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。どれも1秒前後の速い判断をくり返す実験です。日常のミスにも同じことが起きているかは確かめられていません。それでも、複数の研究で「ミスの直後は乱れやすく、間をあけると落ち着く」という向きはそろっています。
03 今日からできる小さな一歩ミスに気づいた直後は、何をすればいい?
次の作業にすぐ飛びつかず、一呼吸おきます。直したら、次の1〜2件だけ速さを落とします。原因を考えるのは後に回し、メモだけ残します。
直したら、一呼吸おいてから次へ
ミスを直したら、息を1回吐いてから次の欄や次の作業に移ります。実験ではミスの直後の短い間に乱れが集中していたので[2][3]、その間に次の判断をしないための工夫です。
所要 数秒
次の1〜2件だけ、ゆっくり確かめる
ミスの後の数件は、いつもより少し時間をかけて見直します。速さを求められる場面ほど、ミスの後の乱れは大きくなりました[2]。
所要 1〜2件ぶん
原因はメモして、後でまとめて考える
「なぜ間違えたか」を作業中に考え続けると、注意がそちらに取られます。未完了の用事は、具体的な計画を書くと頭から離れやすくなるという実験があります[6]。「〇〇の確認方法を、昼休みに見直す」と1行書いて作業に戻ります。
所要 30秒
04 続けるためのコツミスが続いて落ち込んだときは、どう立て直す?
自分を責めるより、受け止めて次に活かすほうが、改善への意欲が高まりました。ミスが続くときは、疲れや作業のペースの速さも見直します。
- 自分にやさしい言葉をかける: 失敗の後に自分を思いやる考え方を促された人は、自分の価値を高める励ましを受けた人などと比べて、苦手を直したい意欲が高く、難しいテストに失敗した後の勉強にも長く時間を使いました[5]。
- ペースを自分で決められるなら、少し落とす: 判断と判断の間が短いほど、ミスの後の乱れは大きくなりました[1][2]。
- ミスが続く日は、状態を疑う: 寝不足や疲れで注意が落ちている日は、寝不足の翌日の集中の研究や短い瞑想で集中を戻す研究も役に立ちます。
- 心配ごとが頭を占めているとき: 不安が集中を奪う仕組みは心配と集中の研究で紹介しています。
05よくある質問
ミスの後にまたミスしてしまうのはなぜ?
ミスに気づいた直後は、脳の注意がミスの処理に取られ、次のものをよく見られなくなるからです。実験では、ミスから約0.5秒以内に次の判断をするとき、目から入った情報への脳の反応が弱まり、正確さが下がりました。間が長いと、この乱れは見られませんでした。
ミスの後に慎重になるのは、いいこと?
慎重になって正確さが上がる場合と、気を取られて遅くなるだけの場合があります。19人の実験では、ミスから0.2秒後の判断で平均59ミリ秒遅くなりましたが、正確さは上がりませんでした。少し間をおいてから次に進むほうが、研究の結果に沿っています。
ミスをして落ち込んだら、自分を責めたほうが次はがんばれる?
研究では、自分を責めるより受け止めるほうが、改善への意欲が高まりました。4つの実験のうちの1つでは、失敗の後に自分を思いやる考え方を促された人は、難しいテストに失敗した後の勉強に長く時間を使いました。
出典
- Danielmeier, C., & Ullsperger, M. (2011). Post-error adjustments. Frontiers in Psychology, 2, 233. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2011.00233
- Jentzsch, I., & Dudschig, C. (2009). Why do we slow down after an error? Mechanisms underlying the effects of posterror slowing. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 62(2), 209–218. https://doi.org/10.1080/17470210802240655
- Buzzell, G. A., Beatty, P. J., Paquette, N. A., Roberts, D. M., & McDonald, C. G. (2017). Error-induced blindness: Error detection leads to impaired sensory processing and lower accuracy at short response–stimulus intervals. Journal of Neuroscience, 37(11), 2895–2903. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.1202-16.2017
- Notebaert, W., Houtman, F., Van Opstal, F., Gevers, W., Fias, W., & Verguts, T. (2009). Post-error slowing: An orienting account. Cognition, 111(2), 275–279. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2009.02.002
- Breines, J. G., & Chen, S. (2012). Self-compassion increases self-improvement motivation. Personality and Social Psychology Bulletin, 38(9), 1133–1143. https://doi.org/10.1177/0146167212445599
- Masicampo, E. J., & Baumeister, R. F. (2011). Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667–683. https://doi.org/10.1037/a0024192


