集中力

心配ごとがあると集中できないのはなぜ? 不安が「頭の作業スペース」を使ってしまう仕組みを研究で調べた

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机の上のノートと書類とペン
Photo: SCP Foundation - Scientific Department / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

気がかりなことがあると、目の前の資料を読んでも頭に入らない。それは集中力が足りないからではなく、心配そのものが「頭の作業スペース」を使ってしまうからだと考えられています。心配ごとが多い人ほど、心配している間は作業に回せる余裕が減ることが、実験でも確かめられています。

3行でわかる

  1. 177のサンプル(22,061人)をまとめたメタ分析で、不安が強い人ほど、頭の作業スペース(ワーキングメモリ)を使う課題の成績が低い傾向がありました。差は小さめ〜中くらいです。
  2. 心配が多い人が心配ごとを考えながら作業すると、楽しい話題を考えるときより作業の余裕が減りました。心配が少ない人では差が出ませんでした。
  3. 心配を「決めた時間と場所」に回す練習は、心配や不安を減らした予備的な研究があります。一方、テスト前に不安を書き出す方法は、追試で効果が確認されませんでした。

01 悩みの正体心配ごとがあると集中できないのは、気持ちが弱いから?

気持ちの弱さとは限りません。心配は頭の中で言葉をくり返す作業なので、仕事や勉強と同じ「頭の作業スペース」を取り合うと考えられています。

文章を読む、計算する、話の流れを追う。こうした作業では、情報を少しの間だけ頭に置いておくワーキングメモリ(頭の作業スペース)を使います。作業スペースは広くないので、同時にたくさんのことは置けません。

心配ごとは「もし〜だったらどうしよう」と、頭の中で言葉をくり返す形をとりがちです。そのぶん作業スペースが埋まり、目の前の作業に回せる余裕が減る、というのが研究者たちの考え方です。

気づくと別のことを考えている状態は、心がさまよう仕組みの研究でも扱っています。心配による集中の乱れは、その中でも「同じ気がかりに何度も戻ってしまう」タイプだといえます。

02 科学的にわかっていること心配は、頭の働きにどう影響する?

不安が強いほどワーキングメモリの成績が低い傾向は、多くの研究で一致しています。実験では、心配が多い人が心配しているときだけ、作業に回せる余裕が減っていました。

Moran(2016)[1]

177のサンプル、合計22,061人のデータをまとめたメタ分析です。自分で答えた不安の強さが高いほど、ワーキングメモリの課題の成績が低い傾向が、はっきり確認されました(効果の大きさ g = -0.334)。数字を覚える課題でも、作業しながら覚える課題でも、少し前の情報と比べ続ける課題でも、同じ傾向でした。

対象: 177のサンプル(22,061人) / 限界: 多くは不安と成績の関係を見た研究で、不安が原因かどうかまでは言えない。効果は小さめ〜中くらいで、結果が分かれる研究もあると著者は述べている。

Hayesら(2008)[3]

心配が多い人と少ない人に、いま気がかりなことか、楽しい個人的な話題を考えながら、キーをでたらめな順に押してもらいました。でたらめに押し続けるには頭の余裕が要ります。心配が多い人だけ、心配ごとを考えているときに余裕が減った様子が見られました。

限界: 実験室での短い課題で、日常の集中を直接測ったものではない。

Leigh & Hirsch(2011)[4]

大学で集めた、心配が多い24人と少ない24人に、でたらめな間隔でキーを押してもらいながら、心配ごとを「言葉」か「イメージ」で考えてもらいました。心配が多い人は、言葉で心配しているときのほうが余裕が減っていました。心配が少ない人では差がありませんでした。心配していないときは、2つのグループの成績に差はありませんでした。

対象: 学生など48人 / 限界: 臨床の患者ではなく、指示どおりの考え方ができなかった30人を分析から外している。

Stefanopoulouら(2014)[5]

全般性不安症(心配が止まらない状態が続く不安症)の17人と、健康な17人を比べました。不安症の人は、心配ごとを考えている間、楽しいことを考えているときより作業の余裕が減りました(効果の大きさ d = -0.90)。健康な人では差がありませんでした。

対象: 34人 / 限界: 人数が少なく、一部の参加者は薬を飲んでいた。

わかっていること確かさ
不安が強い人ほど、ワーキングメモリの成績が低い傾向多くの研究で一致(メタ分析あり)。効果は小さめ〜中くらい
心配が多い人は、心配している最中に作業の余裕が減る同じ研究グループの複数の小規模実験
言葉で心配するほうが、イメージより余裕を使う1件の実験(48人)
心配そのものが注意力を直接弱める否定的な結果もあり、確定していない

この表は、上の研究をこのサイトで整理したものです。不安と注意の関係を説明する「注意制御理論」では、不安があると目標に向けて注意を向け続ける働きが弱まり、気になる刺激に注意が引っぱられやすくなると考えます[2]。ただしこの理論は、努力を増やせば成績そのものは保てる場合があるとも述べています。

反対の結果もあります。若い大人18人の脳を調べた小規模な研究では、性格としての不安の強さは、注意を保つときの前頭部の働きの弱さと結びついていました。しかし「心配しやすさ」はそうした結びつきを示さず、著者たちは心配が注意を直接弱めるという説明には合わないと述べています[6]。

03 今日からできる小さな一歩心配ごとで集中できないとき、何をすればいい?

心配を無理に消そうとするより、「後で考える時間」を決めて預けるほうが研究と合っています。集中が要る作業は短く区切り、頭の余裕を取り戻しやすくします。

1

「心配する時間」を1日1回決める

心配が多い53人の研究では、毎日30分、決まった時間と場所でだけ心配するように練習したグループで、2週間後に心配・不安・不眠がより減りました[7]。集中力そのものは測っていませんが、作業中に浮かんだ心配を「あとで」と預ける助けになります。

所要 1日30分以内

2

浮かんだ心配は、一言だけメモして作業に戻る

心配を頭の中でくり返すと作業スペースが埋まります。考え込まずに一言だけ書き、心配の時間に回します(これは上の研究を組み合わせたこのサイトの提案で、単独で効果を確かめた研究ではありません)。

所要 10秒

3

頭を使う作業を短く区切る

余裕が減っているときに長時間ねばるより、短い作業と休憩をくり返すほうが立て直しやすくなります。休憩の取り方は休憩の研究にまとめています。

所要 10〜25分ごと

4

夜の心配は、寝る前に翌日の予定へ移す

夜に心配がふくらむなら、寝る前に明日やることを書く研究が参考になります。

所要 5分

04 続けるためのコツ不安を書き出せば集中できるという話は本当?

テスト前に不安を書き出すと成績が上がったという研究は有名ですが、大規模な追試では効果が出ませんでした。書き出しだけに頼らず、心配を預ける時間を決めるほうが無難です。

05よくある質問

心配ごとがあると集中できないのは、性格のせい?

性格の弱さとは限りません。177のサンプル(22,061人)をまとめたメタ分析で、不安が強いほど頭の作業スペースを使う課題の成績が低い傾向が、多くの研究で見られました。ただし差は小さめ〜中くらいです。

心配ごとを紙に書けば集中できる?

テスト前に不安を書き出すと成績が上がったという有名な研究がありますが、その後の大規模な追試では効果が確認されませんでした。書き出すこと自体に頼りすぎないほうがよさそうです。

心配する時間を決めるのは効果がある?

心配が多い53人を対象にした研究では、毎日30分の「心配する時間と場所」を決めて2週間続けたグループで、心配・不安・不眠がより減りました。ただし集中力そのものは測っていない、小さな予備的研究です。

出典

  1. Moran, T. P. (2016). Anxiety and working memory capacity: A meta-analysis and narrative review. Psychological Bulletin, 142(8), 831-864. https://doi.org/10.1037/bul0000051
  2. Eysenck, M. W., Derakshan, N., Santos, R., & Calvo, M. G. (2007). Anxiety and cognitive performance: Attentional control theory. Emotion, 7(2), 336-353. https://doi.org/10.1037/1528-3542.7.2.336
  3. Hayes, S., Hirsch, C., & Mathews, A. (2008). Restriction of working memory capacity during worry. Journal of Abnormal Psychology, 117(3), 712-717. https://doi.org/10.1037/a0012908
  4. Leigh, E., & Hirsch, C. R. (2011). Worry in imagery and verbal form: Effect on residual working memory capacity. Behaviour Research and Therapy, 49(2), 99-105. https://doi.org/10.1016/j.brat.2010.11.005
  5. Stefanopoulou, E., Hirsch, C. R., Hayes, S., Adlam, A., & Coker, S. (2014). Are attentional control resources reduced by worry in generalized anxiety disorder? Journal of Abnormal Psychology, 123(2), 330-335. https://doi.org/10.1037/a0036343
  6. Forster, S., Nunez Elizalde, A. O., Castle, E., & Bishop, S. J. (2015). Unraveling the anxious mind: Anxiety, worry, and frontal engagement in sustained attention versus off-task processing. Cerebral Cortex, 25(3), 609-618. https://doi.org/10.1093/cercor/bht248
  7. McGowan, S. K., & Behar, E. (2013). A preliminary investigation of stimulus control training for worry: Effects on anxiety and insomnia. Behavior Modification, 37(1), 90-112. https://doi.org/10.1177/0145445512455661
  8. Myers, S. J., Davis, S. D., & Chan, J. C. K. (2021). Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom? Cognitive Research: Principles and Implications, 6, 44. https://doi.org/10.1186/s41235-021-00309-x
  9. Ramirez, G., & Beilock, S. L. (2011). Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science, 331(6014), 211-213. https://doi.org/10.1126/science.1199427