集中力

気づくと別のことを考えてしまうのはなぜ? 心がさまよう仕組みを研究で調べた

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窓辺の机で勉強する人の後ろ姿
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

資料を読んでいたはずなのに、気づくと週末の予定を考えていた。そんな経験は誰にでもあります。意志が弱いせいではありません。心がさまようのは、脳が作業から手を離すと自然に起きる働きです。研究では、慣れた単純な作業ほど起きやすく、本人が気づかないうちに起きることも多いとわかっています。

3行でわかる

  1. 作業と関係ないことを考える「マインドワンダリング(心のさまよい)」は、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク」という回路と関係している。慣れた作業ほど、この回路の活動も関係ない考えも増えた。
  2. 脳の画像を撮りながらの実験では、作業中の43%で心がさまよっていた。そのうち約半分は、本人が気づいていないときだった。
  3. 心のさまよいには「わざと」と「うっかり」がある。簡単な作業では「わざと」、難しい作業では「うっかり」が増えたため、対策も分けて考えるとよい。

01 悩みの正体集中しているつもりなのに、別のことを考えるのはなぜ?

脳には、外の作業から手が離れると自然に動き出す「内側に向かう回路」があるからです。作業が慣れて頭を使わなくなるほど、この回路が働き、関係ない考えが浮かびやすくなります。

作業と関係ないことを考えてしまう状態を、心理学では「マインドワンダリング(心のさまよい)」と呼びます。

このとき活発になるのが、「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる脳の回路です。ぼんやりしているときや、過去や未来のことを考えているときに働く回路です[1][2]。

心のさまよいは、悪いことばかりではありません。研究をまとめた総説では、ミスが増えるなどの損がある一方で、ひらめきや先の計画に役立つ面もあると整理されています[3]。困るのは、集中したい場面で勝手に起きることです。

02 科学的にわかっていること心はどのくらい、どんなときにさまよう?

調べ方によりますが、作業中や日常の4分の1から半分近くで心はさまよっていました。慣れた作業ほど起きやすく、本人が気づかないうちに起きていることも多いとわかっています。

Masonら(2007)[1]

記憶を使う作業を数日かけて練習してもらい、すっかり慣れた作業と、新しい作業を比べました。慣れた作業のほうが、作業と関係ない考えが多く報告されました。脳の画像では、慣れた作業のときにデフォルト・モード・ネットワークの活動が高くなっていました。ふだん空想しがちな人ほど、この差が大きくなりました。

対象: 若い成人十数人 / 限界: 少人数で、実験室の単純な作業での結果です。

Christoffら(2009)[2]

脳の画像を撮りながら、数字を見てボタンを押す単調な作業をしてもらい、ときどき「今何を考えていた?」と尋ねました。心がさまよっていたのは、尋ねた回の43%でした。そのうち約45%は、本人が気づいていないうちに起きていました。気づいていないときほど、脳の活動は強く表れていました。

対象: 大学生15人 / 限界: 少人数で、単調な作業を使った実験です。

Kaneら(2007)[5]

大学生124人が7日間、1日8回届く合図のたびに、今考えていることを記録しました。集中や努力が必要な難しい活動の最中には、頭の中で情報を保つ力(ワーキングメモリ)が高い人ほど、作業に関係ない考えが少なくなりました。

対象: 大学生124人 / 限界: 学生だけを調べた研究で、記録は本人の自己申告です。

Seliら(2016)[4]

心のさまよいには、自分で考えごとに移る「わざと」と、気づくとそれている「うっかり」があります。簡単な作業では「わざと」が多く、難しい作業では「うっかり」が多くなりました。2つを区別しないと、作業の難しさによる差は見えませんでした。実験室の作業で報告された心のさまよいの34〜41%は「わざと」でした。

対象: 大学生など(複数の研究をまとめた総説) / 限界: 2018年の別の実験でも同じ傾向が出ましたが、同じ研究グループによるものです。

研究によって、心がさまよう割合はかなり違います。数字は「調べ方しだい」と考えたほうが安全です。

研究調べた場面心がさまよっていた割合
Christoffら(2009)[2]実験室の単調な作業43%
Franklinら(2013)[7]105人の1週間の日常26.2%
Killingsworthら(2010)[6]スマホで尋ねた日常「今していること」を考えるのとほぼ同じくらいの頻度

03 今日からできる小さな一歩心がさまよいにくくするには?

「わざと」と「うっかり」で対策を分けます。簡単すぎる作業には小さな目標を足し、やる気や興味を持てる形にします。難しい作業は区切って、それたら気づいて戻る練習をします。

1

簡単な作業には「小さな目標」を足す

慣れた単純作業ほど心はさまよいます[1]。「10分で2ページ」など、少し頭を使う目標をつけます。やる気が高いほど「わざと」のさまよいが少ないことも報告されています[4]。

所要 1分(始める前に決める)

2

読む前に「知りたいこと」を1つ書く

文章を読むときの心のさまよいは、ワーキングメモリに加えて、その話題への興味とやる気に左右されていました[9]。読む前に「この資料で何がわかれば十分か」を1行書くと、興味の向け先ができます。

所要 1分

3

それたら「気づいて戻る」を練習する

マインドフルネス瞑想の24件の研究をまとめた総説では、2週間以上の練習で心のさまよいが減った研究が多くありました。ただし研究ごとのばらつきは大きいとされています[10]。数分でできる方法は短い瞑想の記事で紹介しています。

所要 1日5〜10分

04 続けるためのコツ考えごとが止まらない自分を責めなくていい?

責める必要はありません。心がさまようこと自体が気分を悪くするとは言い切れず、嫌な内容のときに気分が下がるという研究があります。止めるより、気づいて戻ることを目標にします。

05よくある質問

気づくと別のことを考えてしまうのはなぜですか?

脳には、作業から手が離れると自然に働く「デフォルト・モード・ネットワーク」という回路があります。慣れた単純な作業ほどこの回路が働き、作業と関係ない考えが増えることが実験で示されています。

考えごとをしてしまうのは集中力がない証拠ですか?

そうとは限りません。単調な作業の実験では、尋ねた回の43%で心がさまよっていました。誰にでも起きることで、ひらめきや計画に役立つ面もあると整理されています。困るのは、集中したい場面で起きるときです。

ぼんやり考えごとをすると不幸になるのですか?

心がさまようと気分が下がるという研究がある一方で、悲しい気分が先にあったという研究や、興味のある内容なら気分がよかったという研究もあります。考えごとをすること自体が必ず気分を悪くする、とは言えません。

出典

  1. Mason, M. F., Norton, M. I., Van Horn, J. D., Wegner, D. M., Grafton, S. T., & Macrae, C. N. (2007). Wandering minds: The default network and stimulus-independent thought. Science, 315(5810), 393-395. https://doi.org/10.1126/science.1131295
  2. Christoff, K., Gordon, A. M., Smallwood, J., Smith, R., & Schooler, J. W. (2009). Experience sampling during fMRI reveals default network and executive system contributions to mind wandering. PNAS, 106(21), 8719-8724. https://doi.org/10.1073/pnas.0900234106
  3. Smallwood, J., & Schooler, J. W. (2015). The science of mind wandering: Empirically navigating the stream of consciousness. Annual Review of Psychology, 66, 487-518. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010814-015331
  4. Seli, P., Risko, E. F., Smilek, D., & Schacter, D. L. (2016). Mind-wandering with and without intention. Trends in Cognitive Sciences, 20(8), 605-617. https://doi.org/10.1016/j.tics.2016.05.010
  5. Kane, M. J., Brown, L. H., McVay, J. C., Silvia, P. J., Myin-Germeys, I., & Kwapil, T. R. (2007). For whom the mind wanders, and when: An experience-sampling study of working memory and executive control in daily life. Psychological Science, 18(7), 614-621. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01948.x
  6. Killingsworth, M. A., & Gilbert, D. T. (2010). A wandering mind is an unhappy mind. Science, 330(6006), 932. https://doi.org/10.1126/science.1192439
  7. Franklin, M. S., Mrazek, M. D., Anderson, C. L., Smallwood, J., Kingstone, A., & Schooler, J. W. (2013). The silver lining of a mind in the clouds: Interesting musings are associated with positive mood while mind-wandering. Frontiers in Psychology, 4, 583. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2013.00583
  8. Poerio, G. L., Totterdell, P., & Miles, E. (2013). Mind-wandering and negative mood: Does one thing really lead to another? Consciousness and Cognition, 22(4), 1412-1421. https://doi.org/10.1016/j.concog.2013.09.012
  9. Unsworth, N., & McMillan, B. D. (2013). Mind wandering and reading comprehension: Examining the roles of working memory capacity, interest, motivation, and topic experience. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 39(3), 832-842. https://doi.org/10.1037/a0029669
  10. Feruglio, S., Matiz, A., Pagnoni, G., Fabbro, F., & Crescentini, C. (2021). The impact of mindfulness meditation on the wandering mind: A systematic review. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 131, 313-330. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2021.09.032