ひとりの時間は心を回復させるのか。研究でわかった条件

友人や家族と離れて、一人で過ごす時間に「これでいいのかな」と後ろめたさを感じたことはありませんか。研究では、一人で過ごす時間には高ぶった気持ちを落ち着かせる効果があり、自分で選んで一人になった場合はリラックスにもつながることが確認されています。ただし効果の出方は、一人の時間をどれだけ過ごすか、そしてなぜ一人になりたいのかによって変わることもわかっています。
3行でわかる
- 4つの実験をまとめた研究では、一人で過ごすとポジティブ・ネガティブを問わず高ぶった感情が落ち着き、自分で選んで一人になった場合はリラックスやストレスの軽減にもつながった(Nguyenら, 2018)。
- 米国の小学5年〜中学3年にあたる生徒483人の研究では、中学生の年代で、一人の時間がほどほどだった生徒のほうが、少なすぎる・多すぎる生徒より適応が良かった(Larson, 1997)。
- 大学生453人の日記調査では、内向的な性格は一人の時間を楽しむ気持ちと関連せず、関連していたのは「自分らしく納得して行動する傾向(自律性)」だった(Nguyenら, 2022)。
01悩みの正体を、やさしい言葉で
一人の時間への後ろめたさは珍しいことではなく、心への影響は「過ごす長さ」と「自分で選んだかどうか」で変わるというのが研究から見えてきた実情である。
友人付き合いが大事にされる中で、一人の時間を求めると「協調性がない」「寂しい人」と見られるのではと感じる人は少なくありません。しかし心理学の研究では、一人の時間そのものが良い・悪いという単純な話ではなく、その時間を自分から選んだかどうか、どれくらいの長さかによって、心への影響が変わることがわかってきました。
02科学的にわかっていること
一人の時間には高ぶった感情を落ち着かせる効果がある。ただし10代前半の研究では、量が少なすぎても多すぎても適応が良くない傾向があった。
Nguyenら(2018)[1]
4つの実験を通じて、一人になることが、ポジティブ・ネガティブを問わず「高ぶった」感情状態(興奮・緊張など)を落ち着かせる効果を持つことを確認した。この効果は誰かと一緒にいるときには見られず、さらに自分の意思で一人になることを選んだときには、リラックスやストレスの軽減にもつながった。
対象: 大学生を対象にした4つの実験 / 限界: 実験室での短時間の一人時間を扱っており、日常生活での長期的な効果は別途の検証が必要。
Larson(1997)[2]
米国の小学5年〜中学3年にあたる生徒483人を対象に、1週間にわたりランダムなタイミングで「今誰といるか・どんな気分か」を報告してもらう調査を行った。中学生の年代では一人の時間のあとに気分が上向く傾向が見られ、同じく中学生の年代では、一人の時間が少なすぎる・多すぎる生徒より、「ほどほど」だった生徒のほうが適応が良かった(小学生の年代ではこの差は見られなかった)。
対象: 米国の小学5年〜中学3年にあたる生徒483人、1週間の経験サンプリング調査 / 限界: 1990年代の米国の生徒が対象で、どの程度が「ある程度」かは個人差が大きい。
Nguyenら(2022)[3]
大学生453人を対象に、7日間にわたり一人で過ごした時間について日記形式で報告してもらった。内向的な性格は、一人の時間を楽しみや価値を感じて過ごすかどうかとも、一人でいたい気持ちの強さとも関連していなかった。一方、「自分らしく納得して行動する傾向(自律性)」が強い人ほど、一人の時間を楽しみや価値を感じて過ごしていることが、2つの調査で一貫して見られた。
対象: 大学生453人、7日間の日記調査を2回実施 / 限界: 自己報告に基づく調査で、大学生という限られた集団が対象。
03今日からできる小さな一歩
一人の時間を「なんとなく」過ごすのではなく、自分で選んで短時間確保することが、研究で確認された鎮静効果に近づく一歩になる。
15分、予定に入れて一人になる
スケジュールに「一人の時間」と書き込み、自分の意思で選んだことをはっきりさせてから過ごします。
所要 15分
「なぜ一人になりたいか」を一言メモする
疲れたから、落ち着きたいからなど理由を一言書き出します。人間関係を避けたいからという理由が多い場合は、別の対処も考える目安になります。
所要 1分
一人の時間の後の気分を振り返る
一人の時間の前後で、気分が落ち着いたか、それともさみしくなったかを振り返ります。自分にとっての「ちょうど良い長さ」を探る材料になります。
所要 1分
04続けるためのコツ
一人の時間を後ろめたく感じる必要はないが、極端に多い・少ないのどちらかに偏っていないか、時々振り返るとよい。
- 一人の時間に後ろめたさを感じる人は少なくないが、研究では「一人=悪いこと」という単純な結論は出ていない。
- 人間関係を避けるためだけに一人になる時間が増えている場合は、一人の時間の使い方より、人間関係の困りごとそのものを見直すほうが近道のことがある。
- 「自分で選んだ」という感覚を持てるよう、予定やタイミングを自分で決められる一人の時間を優先する。
- どのくらいが心地よいかは人によって違う。他人と比べず、自分の気分の変化を基準にする。
05よくある質問
一人の時間が多いのは良くないことですか?
中学生の年代を対象にした研究では、一人の時間が少なすぎる生徒・多すぎる生徒のどちらも、ほどほどの生徒より適応が良くない傾向が示されています。また別の研究では、自分で選んで一人になった場合にリラックスやストレスの軽減が見られており、長さだけでなく自分で選んだかどうかも大切だと考えられています。
内向的な性格だから一人の時間が好きなのですか?
大学生を対象にした研究では、内向的な性格は、一人の時間を楽しむ気持ちとも、一人でいたい気持ちの強さとも関連していませんでした。一人の時間を楽しんで過ごすことと関連していたのは、「自分らしく納得して行動する傾向(自律性)」でした。
出典
- Nguyen, T. T., Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2018). Solitude as an approach to affective self-regulation. Personality and Social Psychology Bulletin, 44(1), 92-106. https://doi.org/10.1177/0146167217733073
- Larson, R. W. (1997). The emergence of solitude as a constructive domain of experience in early adolescence. Child Development, 68(1), 80-93. https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.1997.tb01927.x
- Nguyen, T. T., Weinstein, N., & Ryan, R. M. (2022). Who enjoys solitude? Autonomous functioning (but not introversion) predicts self-determined motivation (but not preference) for solitude. PLoS ONE, 17(5), e0267185. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0267185
- Nguyen, T. T., & Rodriguez, M. (2024). Deconstructing solitude and its links to well-being. Social and Personality Psychology Compass, 18(11), e70020. https://doi.org/10.1111/spc3.70020


