気分・ストレス

つらい気持ちを紙に書き出すと、気分は軽くなるのか。「筆記開示」の研究

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Notebook with pen, August, 2019
Photo: Phil Slattery / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

誰にも言えないつらいことを、ノートに書き出したら少し楽になった。そんな経験がある人もいるかもしれません。心理学では、つらい出来事についての気持ちを書く方法が、40年近く研究されてきました。ただ、研究を見ると、効果は期待されるほど大きくはなく、書き方によって結果が変わることもわかってきました。

3行でわかる

  1. 146件のランダム化比較試験をまとめた分析では、気持ちを書き出す効果は確認されたが、その大きさは小さかった。
  2. うつ症状に絞った39件の研究をまとめた分析では、気持ちを書き出す効果ははっきりしなかった。
  3. 1回15分を3日間書く方法を比べた研究では、感情を受け入れるよう促す書き方で、しっかり書いた人にだけ効果が見られた。

01書くと楽になる、の正体

つらい出来事について、心の奥の考えや気持ちを短時間書く方法は「筆記開示」と呼ばれます。心身の健康に良い影響があると期待されてきました。

この方法は、1980年代に心理学者のペネベーカーらが始めたものです。つらい経験について、心の奥にある考えや気持ちを、1回15分ほど、数日続けて書きます。

書くことで、頭の中でぐるぐるしていた出来事を言葉にして整理できるため、気持ちが落ち着くのではないかと考えられています。

ただし、その後たくさんの研究が行われるにつれ、効果は研究によってばらつきがあり、思ったほど大きくないこともわかってきました。

02科学的にわかっていること

気持ちを書き出す効果は、全体としては小さいながら確認されています。ただし、うつ症状への効果ははっきりせず、書き方や書く量で結果が変わっていました。

Frattaroli(2006)[1]

気持ちや考えを書いたり話したりする方法を調べた、146件のランダム化比較試験をまとめた。効果は統計的にはっきりしていたが、その大きさは小さかった(効果量 r=0.075)。効果の大きさは、対象者や方法によって変わっていた。

対象: 146件のランダム化比較試験 / 限界: 研究ごとに対象や書き方、測った結果がばらばら。

Reinholdら(2018)[2]

うつ症状を自己評価で測った39件の研究をまとめた分析で、気持ちを書き出すことによる改善ははっきり見られなかった。

対象: 39件の研究 / 限界: 一部の対象者を含む研究は除かれている(Rudeら, 2023 による紹介)。

Rudeら(2023)[3]

1回15分を3日間書く従来の方法と、そこに「感情をそのまま受け入れてよい」という説明を加えた方法、時間の使い方を書く比較群を比べた。2週間後、たくさん書いた人に限って、感情を受け入れる書き方の方がうつ症状が軽かった。従来の方法は比較群と差がなかった。

対象: 3つの書き方に分けられた参加者 / 限界: 書く量が多い人に限った効果で、誰にでも当てはまるとは限らない。

Pennebaker(1997)[4]

つらい経験について書いた後に、心身の健康の改善が見られた研究を整理した。書くことで、出来事についての考え方や言葉の使い方が変わることが、健康の改善と関係していたとまとめている。

対象: それまでの研究のレビュー / 限界: 方法を提案した研究者自身によるまとめで、その後の研究では効果がばらついている。

03今日からできる小さな一歩

書くなら、短い時間で、感情を否定せずに書きます。気分が悪くなりすぎるときは、無理に続けないでください。

1

1回15分、タイマーをかけて書く

つらかった出来事について、心の奥の考えや気持ちを15分だけ書きます。文法や字のきれいさは気にしません。

所要 15分

2

感情を「悪いもの」として扱わない

「こんなことで落ち込むなんて」と自分を責めず、「そう感じた」とそのまま書きます。研究では、感情を受け入れる書き方の方が効果が見られました。

所要 書きながら

3

3日ほど続けて、合わなければやめる

3日続けてみて、気持ちが整理されるなら続けます。かえって思い出してつらくなるなら、やめて大丈夫です。

所要 3日

04続けるためのコツ

効果は人によって違います。合う人には続けやすい方法ですが、書くことで苦しくなるなら、別の方法を選んでください。

05よくある質問

気持ちを書き出すことについて、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。

つらい気持ちを書くと、本当に楽になるの?

効果はありますが、大きくはありません。146件の研究をまとめた分析では、統計的にははっきりした効果がある一方、その大きさは小さいという結果でした。

うつっぽいときにも効果はある?

はっきりしていません。うつ症状を測った39件の研究をまとめた分析では、改善ははっきり見られませんでした。つらさが続くときは、医師や専門家に相談してください。

どんなふうに書けばいい?

1回15分ほど、つらい出来事についての考えや気持ちを書きます。感情をそのまま受け入れるように書き、たくさん書いた人ほど効果が見られた研究があります。

書いたら逆につらくなったらどうする?

無理に続けないでください。書くことが合わない人もいます。気分を切り替える時間をとるか、別の方法を試しましょう。

出典

  1. Frattaroli, J. (2006). Experimental disclosure and its moderators: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 132(6), 823-865. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.6.823
  2. Reinhold, M., Bürkner, P.-C., & Holling, H. (2018). Effects of expressive writing on depressive symptoms—A meta-analysis. Clinical Psychology: Science and Practice, 25(1), e12224.(結果はRudeら, 2023 の紹介による) https://doi.org/10.1111/cpsp.12224
  3. Rude, S. S., Lantrip, C., Aguirre, V. A., & Schraegle, W. A. (2023). Chasing elusive expressive writing effects: emotion-acceptance instructions and writer engagement improve outcomes. Frontiers in Psychology, 14, 1192595. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1192595
  4. Pennebaker, J. W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8(3), 162-166. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.1997.tb00403.x