無視された・仲間外れにされて落ち込んだら?「のけ者にされる」つらさからの立て直し方を研究で調べた

グループの会話に自分だけ入れてもらえない。送ったメッセージに、誰からも返事がない。小さなことだと思っても、頭から離れずに落ち込んでしまう。それは心が弱いからではありません。研究では、短い無視でも心は大きく傷つく一方で、受け止め方や過ごし方しだいで立ち直りは早まることがわかっています。
3行でわかる
- 120件の実験(1万1,869人)では、ネット上のボール回しで無視されるだけで、気分や居場所の感覚が大きく下がった。性別・年齢・国を問わない反応だった。
- 656人の実験では、無視された理由を「今日はたまたま」と伝えられた人は、つらさが小さくなった。「性格のせい」と伝えられた人は、つらさが最も大きかった。
- 今この瞬間に注意を向ける練習をしていた人は、無視の後の回復が早かった。別の人との短く温かいやりとりも、その後の攻撃的な反応をおさえた。
01 悩みの正体無視されると、なぜこんなにつらいのか?
人には「どこかに属していたい」「自分には価値がある」という強い欲求があり、無視はそれを一度に揺さぶるからです。相手が知らない人で、ほんの数分の無視でも、心は大きく反応します。
心理学では、無視されたり仲間に入れてもらえなかったりすることを「オストラシズム(のけ者にされること)」と呼びます。研究者のWilliamsは、のけ者にされると、居場所、自尊心、自分で状況を動かせる感覚、自分が存在する意味の4つが同時に脅かされると考えました[2]。
この考え方では、つらさは3つの段階で進みます。まず、すぐに痛みを感じる段階。次に、なぜそうなったかを考えて立て直す段階。そして、のけ者の状態が長く続くと、人から離れていく段階です[2]。この記事で扱うのは、2つ目の「立て直す段階」です。
02 科学的にわかっていること仲間外れのつらさから、早く立ち直る方法は?
実験では、理由を「たまたま」と受け止める、今この瞬間に注意を向ける、別の人と短く温かくつながる、の3つで立ち直りが早まるか、反応がやわらぎました。いずれも短い実験での結果です。
Hartgerinkら(2015)[1]
画面の中で3人がボールを投げ合うゲーム(サイバーボール)の実験120件、1万1,869人をまとめました。最初の数回だけボールが来て、その後は来なくなる。それだけで、気分や心の欲求の満たされ方が大きく下がりました(効果の大きさ d>1.4)。人数や時間、性別、年齢、国が違っても同じでした。
対象: 120件の実験、1万1,869人 / 限界: 「すぐのつらさはほかの要因に左右されにくい」という説は、この分析では十分に支持されませんでした。時間がたつほど弱まるとも言い切れませんでした。
1万1,869人
ボール回しで無視されると心が大きく傷つくことを確かめた、120件の実験の参加者数[1]
Yaakobi(2022)[3]
3つの実験で656人がボール回しのゲームをしました。無視された直後に、係の人が理由を一言添えます。「今日は運がなかったね」のような、一時的で本人の外にある理由を聞いた人は、つらさが小さくなりました。一時的な理由を聞いた人の中には、完全に回復した人もいました。「選手の性格しだいでよくある」と聞いた人のつらさは最も大きく、理由を聞かなかった人と同じくらいでした。
対象: イスラエルの大学生など656人 / 限界: 気分は本人の回答で、ゲームの直後に短く測った結果です。
Moletら(2013)[4]
事前に「今ここ」に注意を向ける練習をした組と、そうでない組が、ボール回しで無視されました。無視されている最中のつらさは、2つの組で同じでした。ところが少し時間をおいて測ると、練習をした組のほうが回復していました。著者らは、無視された場面を頭の中でくり返さずにすんだためと考えています。
対象: ボール回しの実験の参加者(人数は抄録に記載なし) / 限界: 練習の効果は「回復の速さ」に限られ、無視の最中の痛みは減りませんでした。
Twengeら(2007)[5]
4つの実験で、仲間外れにされた人の、その後の攻撃的な反応を調べました。係の人と短く親しいやりとりをした人は、攻撃的な反応が減りました。家族や友人、好きな有名人について書いた人も同じでした。一方、人と関係のない方法で気分を上げても効果はなく、人とのつながりであることが大切でした。
対象: 4つの実験の参加者 / 限界: 測ったのは攻撃的な行動で、落ち込みの回復そのものではありません。
画面の中の無視でも同じことが起きます。SNSを模した実験で、自分の自己紹介のページ(プロフィール)に「いいね」がほとんど付かない状態にすると、ボール回しの仲間外れと同じような気分と心の欲求の落ち込みが見られました[6]。
| 立て直し方 | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| 理由を「たまたま」と受け止める | 一時的・外の理由でつらさが小さくなった[3] | 効く |
| 理由を「性格のせい」と考える | つらさが最も大きく、理由を聞かない場合と同じだった[3] | 楽にならない |
| 今この瞬間に注意を向ける | 最中の痛みは同じ。その後の回復は早かった[4] | 回復を早める |
| 別の人と短く温かくつながる | その後の攻撃的な反応がおさえられた[5] | 効く |
| 人と関係のない方法で気分を上げる | 攻撃的な反応は減らなかった[5] | 効果なし |
03 今日からできる小さな一歩無視されて落ち込んだ日は、何をすればいい?
まず、無視された理由の候補を「自分の性格」以外からも書き出します。次に、呼吸や周りの音に数分だけ注意を向けます。最後に、信頼できる人と短いやりとりをします。
理由の候補を3つ書き出す
「忙しかった」「通知に気づかなかった」など、その場の事情も候補に入れます。自分を責める理由だけで決めつけないためです。本当の理由はわからなくて構いません。
所要 3分
別の大切な人と、短くやりとりする
家族や友人に一言メッセージを送る、店員さんにお礼を言う。すぐに会えなければ、大切な人のことを数行書くだけでも構いません。
所要 5分
04 続けるためのコツ仲間外れの後、やらないほうがいいことは?
無視した相手への仕返しや、自分を責め続けることは避けたほうが安心です。のけ者にされた人は、関係のない相手にまで攻撃的になりやすいことがわかっています。
- 怒りにまかせた返信や投稿は、少し時間をおいてから考える。怒りの静め方は自分を外から眺める方法の研究が参考になります。
- 「自分はだめだ」と思ったら、友人にかける言葉で自分に話しかける。考え方は自分への思いやりと立ち直りの研究にあります。
- 研究の多くは数分の無視を扱っています。学校や職場で何か月も仲間外れが続くときは、ひとりで抱えず、信頼できる人や相談窓口に話してください。
05よくある質問
無視されただけで、こんなに落ち込むのはおかしいですか?
おかしくありません。120件の実験(1万1,869人)をまとめた分析では、知らない相手とのネット上のボール回しでボールが来なくなるだけでも、気分や「自分には居場所がある」という感覚が大きく下がりました。性別、年齢、国を問わず見られた反応です。
仲間外れのつらさは、どうすれば早く消えますか?
実験では、理由を「たまたま」「その場の事情」と受け止められた人、今この瞬間に注意を向ける練習をしていた人、別の人と短く温かいやりとりをした人で、立ち直りが早い、または反応がやわらぐ結果が出ています。
SNSで反応がもらえないのも、仲間外れと同じですか?
SNSを模した実験で、自己紹介のページに「いいね」がほとんど付かない状態にすると、ボール回しの仲間外れと同じような、気分と心の欲求の落ち込みが見られました。画面の中の小さな無視でも、つらく感じるのは自然な反応です。
出典
- Hartgerink, C. H. J., van Beest, I., Wicherts, J. M., & Williams, K. D. (2015). The ordinal effects of ostracism: A meta-analysis of 120 Cyberball studies. PLoS ONE, 10(5), e0127002. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0127002
- Wesselmann, E. D., Ren, D., & Williams, K. D. (2015). Motivations for responses to ostracism. Frontiers in Psychology, 6, 40. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00040
- Yaakobi, E. (2022). Recovery from ostracism distress: The role of attribution. Frontiers in Psychology, 13, 899564. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.899564
- Molet, M., Macquet, B., Lefebvre, O., & Williams, K. D. (2013). A focused attention intervention for coping with ostracism. Consciousness and Cognition, 22(4), 1262–1270. https://doi.org/10.1016/j.concog.2013.08.010
- Twenge, J. M., Zhang, L., Catanese, K. R., Dolan-Pascoe, B., Lyche, L. F., & Baumeister, R. F. (2007). Replenishing connectedness: Reminders of social activity reduce aggression after social exclusion. British Journal of Social Psychology, 46(1), 205–224. https://doi.org/10.1348/014466605x90793
- Wolf, W., Levordashka, A., Ruff, J. R., Kraaijeveld, S., Lueckmann, J. M., & Williams, K. D. (2015). Ostracism Online: A social media ostracism paradigm. Behavior Research Methods, 47(2), 361–373. https://doi.org/10.3758/s13428-014-0475-x


