気分・ストレス

お腹がすくとイライラするのはなぜ?「hangry(空腹で不機嫌)」の研究でわかった仕組み

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空の皿とフォーク
Photo: Stock Catalog / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

お腹がすいているときに限って、小さなことに腹が立つ。英語では空腹(hungry)と怒り(angry)を合わせて「hangry」と呼びます。研究では、日常の空腹とイライラの結びつきが確かめられています。ただし原因は「血糖値が下がるから」だけではなく、空腹の不快さを、目の前の人や出来事への怒りと取り違えることが関わっていると考えられています。

3行でわかる

  1. 64人に21日間、1日5回、空腹と気分を答えてもらった研究では、空腹が強いときほど怒りとイライラが強く、楽しい気分が低くなっていました。
  2. 実験では、空腹の人は相手を否定的に評価しやすくなりましたが、自分の気持ちに目を向けていた人ではこの変化が見られませんでした。
  3. 「血糖値が下がると我慢する力が尽きる」という説明は、研究をまとめ直すと根拠が弱いとされています。

01 悩みの正体お腹がすくとイライラするのは、性格のせい?

性格のせいではありません。空腹のときは体が「不快だ」という信号を出しています。その不快さが、たまたま起きた嫌な出来事への怒りとして感じられやすくなるのです。

空腹になると、体の中ではさまざまな変化が起き、なんとなく落ち着かない、不快な感じが生まれます。ただ、私たちはこの不快さを「お腹がすいたせいだ」とは、なかなか気づきません。

そこに、相手の一言や作業のトラブルなど、嫌な出来事が重なると、脳は不快さの原因を「この人のせい」「この状況のせい」と結びつけがちです。こうして空腹の不快さが怒りやイライラとして感じられる、というのが有力な説明です。

寝不足のときにイライラしやすいのと同じく、体の状態は気分の土台になります(寝不足でイライラする理由の研究)。

02 科学的にわかっていること空腹とイライラは、本当に関係がある?

関係があります。日常生活を追った研究で、空腹が強いときほど怒りとイライラが強いことがわかりました。実験では、空腹の不快さを「怒り」と解釈するかどうかが分かれ目でした。

Swamiら(2022)[1]

中央ヨーロッパの64人に、スマートフォンで21日間、1日5回、空腹の強さと怒り・イライラ・楽しさを答えてもらいました(合計9,142回の回答)。空腹が強いときほど怒りとイライラが強く、楽しい気分は低くなっていました。性別・年齢・体格・食習慣・もともとの怒りっぽさを考えに入れても、この関係は残りました。

対象: 18〜60歳(平均29.9歳)、81.3%が女性 / 限界: 自分で答えた空腹と気分の関係で、空腹が怒りを引き起こしたとまでは言えない。怒りやイライラは1問ずつで測り、血糖値などの体の指標は測っていない。

MacCormackとLindquist(2019)[2]

3つの研究を行いました。最初の2つの研究では、空腹の人は、嫌な写真を見た直後に限って、意味のわからない記号を「不快なもの」と判断しやすくなりました。ふつうの写真や楽しい写真のあとでは、この差は出ませんでした。実験室での3つ目の研究では、空腹にすると嫌な気分が強まり、実験者を否定的に評価しやすくなりました。ただしそれは、自分の気持ちに目を向けていない人に限られ、気持ちを意識していた人では見られませんでした。

対象: 3つの研究の参加者(実験室の研究は大学生) / 限界: 実験室で作った場面での結果。論文本文は有料のため、この記事では論文の要旨をもとに整理した。

Bushmanら(2014)[3]

夫婦107組に21日間、朝と夜に血糖値を測ってもらい、毎晩、配偶者に見立てた人形に刺すピンの本数(0〜51本)で怒りの強さを表してもらいました。夜の血糖値が低い日ほど、刺すピンの本数が多い傾向がありました。

対象: アメリカの夫婦214人 / 限界: 人形のピンや実験のゲームは攻撃性の代わりの指標で、実際のけんかを測ったものではない。血糖値と気持ちの関係を示したもので、仕組みまでは示していない。

Vadilloら(2016)[4]

「我慢する力はブドウ糖を燃料にしていて、血糖値が下がると尽きる」という説を確かめた実験をまとめ直しました。結果には発表の偏りの影響がうかがえ、根拠は弱いと結論しています。著者は、さらなる証拠が出るまで、ブドウ糖と自制心の関係について結論を出さないよう呼びかけています。

対象: ブドウ糖と自制心を調べた実験の論文 / 限界: 空腹と怒りを直接調べた研究ではなく、「血糖値で説明する説」の根拠の強さを評価したもの。

よく言われる説明研究での位置づけ
お腹がすくとイライラしやすい日常を追った研究と実験で支持
空腹の不快さを、周りへの怒りと取り違える実験で支持(研究はまだ少ない)
血糖値が下がって我慢する力が尽きるまとめ直すと根拠が弱い

この表は、上の研究をこのサイトで整理したものです。甘いもので集中が戻るかを調べた「シュガーラッシュ」の研究も、同じ論点を扱っています。

03 今日からできる小さな一歩お腹がすいてイライラしたら、どうすればいい?

まず「お腹がすいているせいかも」と自分の状態に気づくことです。実験では、自分の気持ちを意識していた人は、空腹でも相手への評価が否定的になりませんでした。

1

イライラしたら「最後に食べたのはいつ?」と考える

怒りの原因を相手に向ける前に、自分の体の状態を確かめます。気持ちに名前をつけると落ち着きやすいことも、感情に名前をつける研究で報告されています。

所要 10秒

2

大事な話し合いは、空腹の時間を避ける

相手への受け取り方が厳しくなりやすいので、言い返す前に食べられるなら先に食べます(場面の選び方はこのサイトによる整理)。

所要 予定を決めるときに1分

3

空腹が長引く時間帯を把握する

昼食が遅れがちな日や、夕方にイライラしやすい日がないか、1週間ほどメモします。

所要 1日30秒

04 続けるためのコツ空腹のイライラを、人間関係に持ち込まないためには?

「空腹のときの判断は厳しくなりやすい」と知っておき、そのときに浮かんだ相手への評価は、食べたあとにもう一度見直すことです。

05よくある質問

お腹がすくとイライラするのは血糖値のせい?

血糖値の低さと怒りの強さが関係したという研究はありますが、「血糖値が下がると我慢する力が尽きる」という説は、研究をまとめ直すと根拠が弱いとされています。空腹の不快さを周りへの怒りと取り違えることも関わっていると考えられています。

hangry(ハングリー)とはどういう意味?

空腹(hungry)と怒り(angry)を合わせた英語の造語で、お腹がすいて不機嫌になる状態を指します。日常の空腹とイライラの結びつきは、64人を21日間追った研究でも確かめられています。

空腹でイライラしないためには、何を食べればいい?

特定の食べ物の効果を確かめた研究は、この記事で調べた範囲にはありませんでした。まずは食事の間隔を空けすぎないこと、イライラしたら空腹のせいではないか考えることが、研究から言える範囲の工夫です。

出典

  1. Swami, V., Hochstöger, S., Kargl, E., & Stieger, S. (2022). Hangry in the field: An experience sampling study on the impact of hunger on anger, irritability, and affect. PLOS ONE, 17(7), e0269629. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0269629
  2. MacCormack, J. K., & Lindquist, K. A. (2019). Feeling hangry? When hunger is conceptualized as emotion. Emotion, 19(2), 301-319. https://doi.org/10.1037/emo0000422
  3. Bushman, B. J., DeWall, C. N., Pond, R. S., & Hanus, M. D. (2014). Low glucose relates to greater aggression in married couples. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(17), 6254-6257. https://doi.org/10.1073/pnas.1400619111
  4. Vadillo, M. A., Gold, N., & Osman, M. (2016). The bitter truth about sugar and willpower: The limited evidential value of the glucose model of ego depletion. Psychological Science, 27(9), 1207-1214. https://doi.org/10.1177/0956797616654911