気分・ストレス

緊張する本番の前は「落ち着こう」より「わくわくしてきた」? 不安の言い換えの研究でわかったやり方

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18世紀の劇場の幕に描かれた絵
Photo: Christian Friedrich Wiegand (1748-1824) / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

発表や面接の前、心臓がドキドキして手が冷たくなる。「落ち着け、落ち着け」と言い聞かせても、なかなか静まりません。研究では、ドキドキを無理に静めようとするより、「わくわくしてきた」と声に出して言い換えるほうが、気持ちが前向きになり、出来も良くなることが示されています。ただし効果は小さめで、再現の確かさにも注意が必要です。

3行でわかる

  1. 不安とわくわくは、どちらも心臓が速く打つ「高ぶった状態」。高ぶりを静めるより、意味づけを変えるほうが移りやすいと考えられている。
  2. カラオケ、スピーチ、計算問題の実験で、「わくわくしている」と声に出した人は、「落ち着いている」と言った人よりわくわく感が高く、出来も良かった。
  3. 5,638人の研究をまとめると効果は小さく(d=0.23)、発表の偏りを補正すると0.14まで下がった。人前で何かをする場面では効果がやや大きかった。

01 悩みの正体緊張は、なぜ「落ち着こう」としても消えない?

緊張のドキドキは体が高ぶった状態で、意志の力ですぐに静めるのは難しいからです。研究者は、高ぶりはそのままにして、その意味を「準備ができている合図」に変えるほうが現実的だと考えています。

緊張すると、心臓が速く打ち、呼吸が浅くなり、手に汗をかきます。ストレスの研究では、こうした体の高ぶりは、大事な場面を乗り切るために備わった反応だと説明されています[2]。

心理学者のBrooksは、調査で、緊張への対処として「落ち着こうとする」のが一番だと考える人が圧倒的に多いことを確かめました[1]。しかし、高ぶった体を短時間で静かな状態に戻すのは簡単ではありません。

一方、わくわくしているときも、体は同じように高ぶっています。違うのは「脅威」と受け取るか、「チャンス」と受け取るかです。Brooksは、高ぶりの強さはそのままに、意味だけを変えるほうが移りやすいと考えました[1]。

02 科学的にわかっていること「わくわくしてきた」と言い換えると、本番の出来は変わる?

複数の実験で、言い換えた人は気持ちが前向きになり、出来も良くなりました。ただし数多くの研究をまとめると効果は小さく、発表されやすい結果に偏っている可能性も指摘されています。

Brooks(2014)[1]

カラオケで歌う、人前でスピーチする、難しい計算問題を解く、という緊張する課題で実験しました。課題の前に、ドキドキを「わくわく」と言い換えた人は、落ち着こうとした人よりわくわく感が高く、出来も良くなりました。言い換えは、「わくわくしている」と声に出して言う、「わくわくしよう」というメッセージを読む、という簡単な方法で起きました。言い換えた人は、場面を脅威ではなくチャンスと捉えるようになっていました。

対象: カラオケ・スピーチ・計算問題の複数の実験 / 限界: 短い実験室の課題で、その場の効果を見たものです。のちに多くの研究をまとめた分析では、効果は小さめでした[4]。

Jamiesonら(2012)[2]

50人に、審査員の前での5分間のスピーチと、5分間の暗算(996から7ずつ引く)をしてもらいました。審査員は否定的な反応を返します。事前に「ストレスによる体の高ぶりは害ではなく、うまくやるのを助ける」という説明を読んだ組は、説明なしの組や、審査員から目をそらす組より、心臓が送り出す血液の量が多く、血管の収縮が小さい、「挑戦」に近い体の反応を示しました。審査員から目をそらす組と比べて、脅威を表す言葉に注意を奪われにくくもなりました。

対象: 平均22歳前後の大人50人(分析は49人) / 限界: 小さな実験です。体の反応と注意のどちらが原因なのかは区別できていません。

Gintyら(2022)[3]

155人の参加者を、高ぶりの言い換えを教わる組と教わらない組にランダムに分け、ストレス課題を行いました。言い換えを教わった組は、体の高ぶりや不安を「役に立つもの」と前向きに受け取るようになりました。ドキドキが強いほど悪く受け取る、というつながりも断ち切られていました。

対象: 155人(別に455人の調査も実施) / 限界: 実験室での1回のストレス課題での結果です。

BosshardとGomez(2024・メタ分析)[4]

ストレスの高ぶりの言い換えや、「ストレスは力になる」という考え方を教える方法を調べた、ランダム化比較試験の44の結果(33本の論文、5,638人)をまとめました。課題の出来は小さく改善しました(d=0.23)。人前で何かをする課題では0.34、筆記の課題では0.20でした。ほかの内容と組み合わせた方法では0.45と大きめでした。

対象: 平均22.6歳、不安の病気がある人の研究は含まれない / 限界: 小さな研究ほど効果が大きい偏りがあり、補正すると0.14まで下がりました。多くは短期の効果です。

d=0.23

高ぶりの言い換えなどで課題の出来が良くなった効果の大きさ(44の結果、5,638人のまとめ。補正後は0.14)[4]

場面ごとの効果を並べると、次のとおりです。

場面・方法効果の大きさ(d)読み方
全体(44の結果)0.23(補正後0.14)小さいが、ゼロではない[4]
人前で何かをする課題(スピーチなど)0.34やや効きやすい[4]
筆記の課題(テストなど)0.20小さい[4]
言い換えだけの方法0.22小さい[4]
ほかの内容と組み合わせた方法0.45中くらい。ただし5件だけ[4]

03 今日からできる小さな一歩本番直前に、緊張をどう言い換えればいい?

本番の直前に、ドキドキを「体が準備できた合図」と捉え直し、「わくわくしてきた」と声に出して言います。「落ち着け」と言い聞かせるのはやめます。全部で1分ほどです。

1

ドキドキに気づいたら「準備ができた合図」と考える

体の高ぶりは害ではなく、うまくやるのを助ける反応です。実験では、この説明を読んだ人の体の反応が「挑戦」に近づきました[2]。

所要 30秒

2

「わくわくしてきた」と声に出して言う

本番の直前、声に出せる場所で一度言います。実験では、声に出して言う方法で効果が出ました[1]。小声でもかまいません。

所要 10秒

3

「落ち着け」と言い聞かせるのをやめる

実験では、「落ち着こう」とした人より、「わくわく」と言い換えた人のほうが、気持ちも出来も上でした[1]。ドキドキを消そうとせず、そのまま本番に連れていきます。

所要 0分

4

前の日に、高ぶりの仕組みを一度読んでおく

「高ぶりは力になる」という説明を読むことも、研究で使われた方法の1つです[2]。言い換えにほかの内容を組み合わせた方法では、効果が大きめでした[4]。

所要 5分

04 続けるためのコツ言い換えてもうまくいかなかったときは?

効果は小さめなので、1回で緊張が消えなくても失敗ではありません。呼吸法や気持ちを言葉にする方法と組み合わせ、何度か試しながら使うのが現実的です。

05よくある質問

「わくわくしてきた」は、心の中で言うだけでも効きますか?

Brooks(2014)の実験で使われたのは、声に出して「わくわくしている」と言う方法と、「わくわくしよう」というメッセージを読む方法でした。心の中だけで言う場合の効果は、この研究からはわかりません。周りに人がいるときは、小声やトイレの中など、声に出せる場所を探すとよいでしょう。

深呼吸して落ち着くのは、やめたほうがいい?

やめる必要はありません。Brooks(2014)が比べたのは「落ち着いている」と自分に言い聞かせる方法で、呼吸法とは別のものです。ゆっくりした呼吸がストレスを和らげる研究もあります。言い換えと呼吸は、両方使ってかまいません。

不安がとても強いときにも使えますか?

5,638人をまとめた分析には、不安の病気がある人を対象にした研究は含まれていませんでした。発表会や面接など、ふだんの緊張向けの方法と考えてください。動悸や息苦しさで生活に困るほどの不安が続くときは、医師や専門家に相談してください。

出典

  1. Brooks, A. W. (2014). Get excited: Reappraising pre-performance anxiety as excitement. Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1144-1158. https://doi.org/10.1037/a0035325
  2. Jamieson, J. P., Nock, M. K., & Mendes, W. B. (2012). Mind over matter: Reappraising arousal improves cardiovascular and cognitive responses to stress. Journal of Experimental Psychology: General, 141(3), 417-422. https://doi.org/10.1037/a0025719
  3. Ginty, A. T., Oosterhoff, B. J., Young, D. A., & Williams, S. E. (2022). Effects of arousal reappraisal on the anxiety responses to stress: Breaking the cycle of negative arousal intensity and arousal interpretation. British Journal of Psychology, 113(1), 131-152. https://doi.org/10.1111/bjop.12528
  4. Bosshard, M., & Gomez, P. (2024). Effectiveness of stress arousal reappraisal and stress-is-enhancing mindset interventions on task performance outcomes: A meta-analysis of randomized controlled trials. Scientific Reports, 14, 7923. https://doi.org/10.1038/s41598-024-58408-w