深呼吸でストレスは本当に下がるのか。「長く吐く呼吸」の研究
緊張したときや、イライラしたとき、「深呼吸して」と言われることがあります。本当に効果はあるのでしょうか。研究を見ると、呼吸法にはストレスや気分を改善する効果が確認されていて、とくに「息を長く吐く」やり方が効果的だという結果が出ています。
3行でわかる
- 12件のランダム化比較試験(785人)をまとめた分析では、呼吸法を行った人は、行わなかった人よりストレスが小〜中程度低かった(効果量 g=-0.35)。不安やうつ症状も同じくらい改善していた。
- 1日5分の呼吸法を1か月続けた実験では、息を長く吐く「サイクリック・サイ」が、同じ時間の瞑想より気分を改善し、呼吸数も減らしていた。
- 154件の研究をまとめた分析では、深呼吸など体の興奮を下げる方法が、怒りと攻撃性をはっきり減らしていた。
01呼吸は、自分で動かせる数少ない「体のスイッチ」
ゆっくりした呼吸、とくに長く息を吐く呼吸は、体を休める神経を働かせ、気持ちを落ち着かせると考えられています。
心臓の拍動や消化などは自分の意思では動かせませんが、呼吸は自分で速さや深さを変えられます。そのため、呼吸は体の状態に働きかける入り口になると考えられています。
ゆっくりした呼吸を調べた15件の研究をまとめたレビューでは、心拍の変動(心拍変動)が大きくなり、体を休める神経が働きやすくなる変化や、脳波の変化が見られました。気分の面では、心地よさ、リラックス、活力が高まっていました。
中でも、息を吐く時間を長くする呼吸が、気分の改善に効果的だという研究が出てきています。
02科学的にわかっていること
呼吸法は、ストレスや不安、うつ症状を小〜中程度改善していました。息を長く吐く呼吸は、瞑想よりも気分を改善していました。
Finchamら(2023)[1]
呼吸法の効果を調べた12件のランダム化比較試験(785人)をまとめた。呼吸法を行った人は、行わなかった人よりストレスが小〜中程度低かった(g=-0.35)。不安(20件、g=-0.32)とうつ症状(18件、g=-0.40)も同じくらい改善していた。
対象: 大人785人(ストレスの分析) / 限界: 多くの研究に中程度の偏りのリスクがあり、研究者も過大評価に注意を促している。
Balbanら(2023)[2]
参加者に、3種類の呼吸法か、マインドフルネス瞑想のどれかを、毎日5分、1か月続けてもらった。息を2回吸って長く吐く「サイクリック・サイ」は、瞑想より気分を改善し、安静時の呼吸数も減らした。
対象: オンラインで参加した成人 / 限界: 1か月の研究で、長期の効果はわからない。
Zaccaroら(2018)[3]
ゆっくりした呼吸の心身への影響を調べた15件の研究をまとめたレビュー。心拍変動が大きくなるなど体を休める方向の変化と、脳波の変化が見られた。心理面では、心地よさ、リラックス、活力、覚醒感が高まり、不安や怒りなどの症状が減っていた。
対象: 条件を満たした15件の研究 / 限界: 研究の数が少なく、方法もさまざま。
Kjærvik & Bushman(2024)[4]
怒りを減らす方法を調べた154件の研究(1万189人分)をまとめた分析。深呼吸、マインドフルネス、瞑想など体の興奮を下げる方法は、怒りと攻撃性をはっきり減らしていた(g=-0.63)。
対象: 154件の研究、1万189人 / 限界: 呼吸法だけの効果を切り分けたものではない。
03今日からできる小さな一歩
ストレスを感じたら、吸うより吐く時間を長くする呼吸を、5分ほど試してみます。
鼻から2回、続けて息を吸う
鼻から一度息を吸い、肺がふくらんだところで、もう一度短く吸い足します。
所要 数秒
口からゆっくり、長く吐く
吸った時間より長くかけて、口からゆっくり息を吐ききります。研究ではこの「長く吐く」呼吸が気分を改善していました。
所要 1回10秒前後
これを5分くり返す
タイマーを5分にセットして、くり返します。毎日続けると、1か月で気分が改善した研究があります。
所要 5分
04続けるためのコツ
呼吸法は、いつでもどこでも、道具なしでできるのが強みです。毎日決まったタイミングに組み込むと続けやすくなります。
- 朝起きたとき、寝る前、通勤中など、毎日のタイミングを1つ決めます。
- 息苦しさやめまいを感じたら、無理をせず普通の呼吸に戻します。
- イライラしたときは、相手に言い返す前に、まず長く息を吐いてみます。
- 強い不安や落ち込みが続くときは、呼吸法だけで抱え込まず、医師や専門の医療機関に相談してください。
05よくある質問
深呼吸とストレスについて、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
深呼吸でストレスは本当に下がるの?
下がる効果が確認されています。12件の研究をまとめた分析では、呼吸法を行った人は、行わなかった人よりストレスが小〜中程度低くなっていました。
どんな呼吸法がいいの?
1日5分の実験では、鼻から2回吸って口から長く吐く「サイクリック・サイ」が、瞑想より気分を改善していました。
瞑想と呼吸法、どちらがいい?
1か月の実験では、長く吐く呼吸法の方が、同じ時間のマインドフルネス瞑想より気分の改善が大きく出ていました。ただし、瞑想にも効果はあり、続けやすい方を選ぶのが現実的です。
怒りにも効く?
154件の研究をまとめた分析では、深呼吸など体の興奮を下げる方法が、怒りと攻撃性をはっきり減らしていました。
出典
- Fincham, G. W., Strauss, C., Montero-Marin, J., & Cavanagh, K. (2023). Effect of breathwork on stress and mental health: A meta-analysis of randomised-controlled trials. Scientific Reports, 13, 432. https://doi.org/10.1038/s41598-022-27247-y
- Balban, M. Y., Neri, E., Kogon, M. M., et al. (2023). Brief structured respiration practices enhance mood and reduce physiological arousal. Cell Reports Medicine, 4(1), 100895. https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2022.100895
- Zaccaro, A., Piarulli, A., Laurino, M., et al. (2018). How Breath-Control Can Change Your Life: A Systematic Review on Psycho-Physiological Correlates of Slow Breathing. Frontiers in Human Neuroscience, 12, 353. https://doi.org/10.3389/fnhum.2018.00353
- Kjærvik, S. L., & Bushman, B. J. (2024). A meta-analytic review of anger management activities that increase or decrease arousal: What fuels or douses rage? Clinical Psychology Review, 109, 102414. https://doi.org/10.1016/j.cpr.2024.102414