習慣

やめようと我慢するほど、やりたくなるのはなぜ?「考えないようにする」と跳ね返る仕組みを研究で調べた

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皿にのったチョコレートケーキ
Photo: Daria YakovlevaMinor edits made by Subsidiary account / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

お菓子、たばこ、スマホ。「もう考えない」と決めた日に限って、頭から離れなくなる。それはあなたの意志が特別に弱いからではありません。研究では、考えを押さえ込もうとすると、あとでかえって戻ってきやすいことがわかっています。ただし、その強さは思われているほど大きくありません。

3行でわかる

  1. 「白いクマのことを考えないで」と言われた人は、そのあと、最初から考えていた人よりクマのことを多く考えていました(Wegnerら, 1987)。
  2. 134人の実験では、チョコレートのことを考えないようにした人が、そのあと多く食べていました。たばこを1週間我慢しようとした喫煙者も、翌週の本数が増えていました。
  3. 一方で、跳ね返りが起きなかった研究も少なくありません。31件のメタ分析は小さな研究に偏りがあることを示し、補正すると効果ははっきりしなくなりました。

01 悩みの正体我慢するほどやりたくなるのは、意志が弱いから?

意志の弱さだけでは説明できません。「考えないようにする」こと自体が、その考えを見張り続ける作業になり、押さえるのをやめたときに考えが戻ってきやすくなるためです。

「考えないようにしよう」とするとき、頭は「いま考えていないか」を確かめ続けます。確かめるたびに、その対象を思い浮かべることになります。

心理学では、これを思考抑制(考えを押さえ込むこと)と呼びます。押さえ込んだあとに考えがかえって増えることは、リバウンド効果と呼ばれます。

やめたい習慣では、この仕組みが特に問題になります。考えが増えれば、行動のきっかけも増えるからです。眠ろうとがんばるほど目がさえる話は眠ろうとするほど眠れない理由の研究にまとめています。根っこは同じ仕組みです。

02 科学的にわかっていること考えないようにすると、本当に行動まで増える?

考えが戻る現象は、複数のメタ分析で「小〜中程度」の大きさで確認されています。食べる量やたばこの本数が増えた実験もあります。ただし、起きなかった研究も多く、効果の大きさは控えめに見るのが妥当です。

Wegnerら(1987)[1]

参加者に5分間、頭に浮かんだことを声に出してもらいました。「白いクマのことを考えないで、考えたらベルを鳴らして」と頼むと、参加者は考えを押さえきれませんでした。そのあと「今度はクマのことを考えて」と頼むと、最初からクマを考えていた人より、クマの考えが多く出てきました。2つ目の実験では、押さえている間に「代わりに考えること」を1つ決めておいた人は、あとで考えがぶり返しにくくなりました。

対象: 実験室での参加者(2つの実験) / 限界: 対象は「白いクマ」という中立の考えで、欲しいものへの衝動ではない。

Erskine(2008)[4]

ダイエット中ではない134人が、5分間「チョコレートを食べること」を考えないようにするか、あえて考えるか、自由に話しました。そのあと、2つのブランドのチョコレートの味比べと称して、実際に食べた量をこっそり測りました。考えないようにした人は、男女とも、自由に話した人より多く食べていました。

対象: ダイエット中でない134人 / 限界: 1回きりの実験室での結果。あえて考えた男性も多く食べており、結果は単純ではない。

Erskine・Georgiou(2010)[6]

女性116人で同じような実験を行いました。チョコレートの考えを押さえ込んだあとに多く食べたのは、ふだんから食事を我慢している人(制限的な食べ方をする人)だけでした。我慢の傾向が低い人は、3つのグループで食べた量に差がありませんでした。

対象: 女性116人 / 限界: 女性のみ。チョコレートという1つの食べ物での結果。

Erskineら(2010)[5]

喫煙者が3週間、毎日たばこの本数とストレスを記録しました。2週目だけ、たばこの考えを押さえ込むグループ、あえて考えるグループ、記録だけのグループに分けました。押さえ込んだグループは、3週目に他の2グループより多くたばこを吸っていました。考えを押さえ込むくせが強い人ほど、禁煙を試みた回数も多いという関係もありました。

対象: 日常生活の喫煙者 / 限界: 本数は自己申告。禁煙をめざした人だけの研究ではない。

Litvinら(2012)[7]

喫煙者162人に、衝動を押さえ込む方法、受け流す方法(アクセプタンス)、指示なしのいずれかを教え、たばこを見せて欲求を高めました。押さえ込んだグループは、実際にたばこの考えが少なくなりました。押さえるのをやめたあとの跳ね返りは起きませんでした。その後3日間の本数にも、グループの差はありませんでした。

対象: 大人の喫煙者162人 / 限界: 追跡は3日間と短い。本数は自己申告。

Abramowitzら(2001)、Wangら(2020)、Niczyporuk(2025)[2][3][8]

複数の研究をまとめたメタ分析では、押さえ込んだあとに考えが戻る効果は「小〜中程度」でした。31件の研究をまとめた2020年のメタ分析でも、跳ね返りは確認されました。ただ、2025年のレビューによると、まとめられた研究のうち18〜46%では、結果がむしろ逆向きでした。さらに2020年のメタ分析では、小さな研究ほど効果が大きく出る偏りが見つかり、補正すると効果は統計的にはっきりしなくなりました。

対象: 「白いクマ」型の実験を集めたメタ分析とレビュー / 限界: 多くは実験室で、考えの回数を数えた研究。行動まで測った研究は少ない。

研究押さえ込んだものあとで増えた?
Wegnerら(1987)白いクマの考え考えが増えた
Erskine(2008)チョコレートの考え(134人)食べる量が増えた
Erskine・Georgiou(2010)チョコレートの考え(女性116人)食事を我慢しがちな人だけ増えた
Erskineら(2010)たばこの考え(1週間)翌週の本数が増えた
Litvinら(2012)たばこの考え(162人)増えなかった

この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。跳ね返りは「よく起きるが、いつも起きるわけではない」現象だと言えます。

03 今日からできる小さな一歩考えないようにする代わりに、何をすればいい?

「考えるな」と自分に命じるより、代わりに向ける考えや行動を1つ決めておくほうが、研究の結果に合っています。衝動を消そうとせず、来たら気づいて受け流す方法もあります。

1

「代わりに考えること」を1つ決めておく

Wegnerらの実験では、押さえ込む間に使う別の考えを1つ決めた人は、ぶり返しが少なくなりました[1]。「食べたい」と浮かんだら、明日の予定を思い出す、などです。

所要 1分

2

「やめる」を「別の行動をする」に言い換える

「スマホを見ない」より「手が伸びたら水を一杯飲む」のように、やることで決めます。置き換えの研究は悪い習慣を別の行動に置き換える研究にまとめています。

所要 3分

3

衝動が来たら、気づいて名前をつける

「いま、食べたい気持ちが来ている」と心の中で言い、消そうとせず様子を見ます。Litvinらの研究では、受け流す方法も押さえ込む方法も、欲求を和らげる点では役立っていました[7]。

所要 1分

4

きっかけそのものを遠ざける

考えないようにがんばるより、目に入らない場所に移すほうが楽です。方法は誘惑を遠ざける研究にまとめています。

所要 5分

04 続けるためのコツ我慢がつらいとき、どう付き合えばいい?

衝動が浮かぶこと自体は失敗ではありません。浮かんだ考えを責めず、行動を選び直せれば十分です。強い我慢を続けるより、仕組みで負担を減らすほうが現実的です。

05よくある質問

「考えないように」するのは逆効果なの?

押さえ込んだあとに考えが戻る効果は、複数のメタ分析で小〜中程度の大きさで確認されています。ただし、起きなかった研究も多く、2020年のメタ分析では偏りを補正すると効果がはっきりしなくなりました。「必ず逆効果」ではなく「戻りやすいことがある」と考えるのが妥当です。

白いクマの実験って何?

Wegnerらが1987年に行った実験です。5分間「白いクマのことを考えないで」と頼まれた人は、そのあと最初からクマを考えていた人より、クマのことを多く考えていました。考えを押さえ込む難しさを示した代表的な研究です。

我慢するより、どうすればやめやすい?

代わりに考えることや、代わりにする行動を1つ決めておく方法があります。Wegnerらの実験では、別の考えを1つ決めて使った人は、ぶり返しが少なくなりました。きっかけを目に入らない場所に移す工夫も役立ちます。

出典

  1. Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5-13. https://doi.org/10.1037/0022-3514.53.1.5
  2. Abramowitz, J. S., Tolin, D. F., & Street, G. P. (2001). Paradoxical effects of thought suppression: a meta-analysis of controlled studies. Clinical Psychology Review, 21(5), 683-703. https://doi.org/10.1016/S0272-7358(00)00057-X
  3. Wang, D. A., Hagger, M. S., & Chatzisarantis, N. L. D. (2020). Ironic effects of thought suppression: a meta-analysis. Perspectives on Psychological Science, 15(3), 778-793. https://doi.org/10.1177/1745691619898795
  4. Erskine, J. A. (2008). Resistance can be futile: investigating behavioural rebound. Appetite, 50(2-3), 415-421. https://doi.org/10.1016/j.appet.2007.09.006
  5. Erskine, J. A., Georgiou, G. J., & Kvavilashvili, L. (2010). I suppress, therefore I smoke: effects of thought suppression on smoking behavior. Psychological Science, 21(9), 1225-1230. https://doi.org/10.1177/0956797610378687
  6. Erskine, J. A., & Georgiou, G. J. (2010). Effects of thought suppression on eating behaviour in restrained and non-restrained eaters. Appetite, 54(3), 499-503. https://doi.org/10.1016/j.appet.2010.02.001
  7. Litvin, E. B., Kovacs, M. A., Hayes, P. L., & Brandon, T. H. (2012). Responding to tobacco craving: experimental test of acceptance versus suppression. Psychology of Addictive Behaviors, 26(4), 830-837. https://doi.org/10.1037/a0030351
  8. Niczyporuk, A. (2025). The effectiveness and adaptiveness of suppressing unwanted thoughts. Psychonomic Bulletin & Review, 33, 5. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02763-w