睡眠

眠ろうと頑張るほど眠れないのはなぜ?「眠る努力」が目を覚ます仕組みを研究で調べた

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ベッドと枕のある寝室
Photo: Afifa Afrin / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

明日は早いから、今夜こそ早く眠らないと。そう思って布団に入ったのに、目がどんどん冴えていく。そんな夜はありませんか。それは気合いが足りないからではありません。眠りは本来、意識しなくても自然に起きる働きです。「眠ろう」と頑張ることそのものが、眠りを遠ざけることがあると研究で考えられています。

3行でわかる

  1. 眠りは「自動で起きる働き」で、注意を向けたり、直接コントロールしようとしたりすると妨げられる。睡眠研究者のEspieらはこれを「注意・意図・努力の経路」と呼んだ。
  2. 実験では、音楽で頭が忙しい状態だと、「できるだけ早く眠ろう」とした人のほうが寝つきに時間がかかった。ただし頭が静かな状態では、逆に早く眠れた。
  3. 不眠の人41人の実験では、具体的な情景を思い浮かべる方法で寝つきが早くなった。眠る努力をやめる方法(逆説志向)も、10件の研究のまとめで効果が示されている。

01 悩みの正体眠ろうとするほど目が冴えるのはなぜ?

眠りは、意識しなくても自然に起きる働きだからです。眠りに注意を向け、早く眠ろうと努力すると、かえってその自動の働きが妨げられると考えられています。

歩くとき、足の運びを1歩ずつ意識すると、かえってぎこちなくなります。眠りもこれに似ています。

Espieら(2006)は、長く続く不眠がどうやって生まれるかを、これまでの研究から整理しました[1]。著者らの考えでは、ふつうの眠りは「比較的自動的なプロセス」です。そのため、次の3つが重なると眠りが妨げられやすくなります。

著者らはこれを「注意・意図・努力の経路」と名づけました。眠ろうと必死になる夜ほど眠れないのは、この経路で説明できます。

02 科学的にわかっていること「早く眠ろう」とすると、寝つきは本当に遅れる?

頭が忙しい状態では遅れました。実験で、にぎやかな音楽を聴きながら「早く眠ろう」とした人は、そう指示されなかった人より寝つきに時間がかかりました。ただし頭が静かなときは、逆に早く眠れました。

Ansfield・Wegner・Bowser(1996)[2]

ふだんよく眠れている人に、「できるだけ早く眠る」か「好きなときに眠る」かを指示しました。同時に、頭を忙しくさせるマーチ(スーザの行進曲)か、眠りを誘う静かな音楽を聴いてもらいました。静かな音楽では、早く眠ろうとした人のほうが早く寝つきました。マーチを聴く条件では逆に、早く眠ろうとした人のほうが寝つきに時間がかかりました。

対象: ふだんよく眠れている人 / 限界: 不眠に悩む人を調べた実験ではありません。同じ実験をくり返した研究は見つかっていません。

Wangら(2020)[3]

「考えないようにすると、かえって考えてしまう」という現象(皮肉過程理論)の31件の研究をまとめました。考えまいとしている最中に逆効果が出るのは、頭に別の負担がかかっているときだけでした。上の睡眠の実験で、マーチの条件だけ逆効果が出た結果と一致します。

対象: 31件の実験 / 限界: 睡眠ではなく、考えを抑える実験全般をまとめた研究です。

Riemannら(2010)[4]

不眠についての研究をまとめた総説です。不眠に悩む人では、夜だけでなく昼間も、脳や体の「覚醒(興奮)の度合い」が高いことが、ホルモンや脳波、脳画像など多くの研究で示されていました。不眠を長引かせる要因として、布団と「眠れない」が結びついてしまう学習や、心配・考え込みのくせが挙げられています。

対象: 不眠症に関する多数の研究 / 限界: 研究をまとめた総説で、新しい実験の結果ではありません。

Hertensteinら(2015)[5]

不眠症の人47人と、よく眠れている人52人が、睡眠検査室で2晩眠りました。「眠る努力」の強さを質問票で測ると、努力が強い人ほど、自分の不眠を重く感じていました。一方、検査で測った睡眠時間と関係していたのは、眠る努力ではなく、体の緊張や睡眠への思い込みのほうでした。

対象: 99人 / 限界: 1回の調査で、努力が不眠の原因なのか結果なのかは区別できません。

研究を並べると、「頑張ると逆効果」になる条件が見えてきます。

状態「早く眠ろう」とすると根拠
頭が静か(静かな音楽)早く眠れた実験[2]
頭が忙しい(にぎやかな音楽)寝つきが遅れた実験[2]
心配ごとが頭をめぐる夜頭が忙しい状態に近く、逆効果が出やすいと考えられるまとめ研究からの推測[3][4]

03 今日からできる小さな一歩眠ろうと頑張るのをやめるには?

「眠る」を目標にせず、横になって休むことを目標にします。頭がにぎやかなときは、具体的な情景を思い浮かべて頭を使います。どちらも研究で試された方法です。

1

「眠らなきゃ」を「休めればいい」に置き換える

眠ろうとせず、目を閉じて横になっていることを目標にします。眠る努力をあえてやめる方法は「逆説志向」と呼ばれます。10件の研究をまとめた分析では、何もしない比較と比べて不眠の症状が大きく改善し、ほかの治療法と比べてもいくつかの主な指標で中くらいの改善が見られました[6]。

所要 0分(考え方を変えるだけ)

2

楽しい情景を細かく思い浮かべる

好きな場所を歩く場面などを、色や音まで細かく想像します。不眠の人41人の実験では、この方法を教わった人は、何も指示されなかった人より寝つきが早く、嫌な考えも少なくなりました[7]。ただし「漠然と気をそらすよう指示すると、かえって寝つきが悪くなる」という予想は確かめられませんでした。

所要 布団の中で5〜10分

3

心配ごとは寝る前に紙に出しておく

布団で考えごとが止まらないと、頭が忙しい状態になります。明日やることを寝る前に書き出すと寝つきが早くなったという研究は寝る前のToDoリストの記事で紹介しています。

所要 5分

04 続けるためのコツそれでも眠れない夜はどう考える?

1晩眠れないことに焦らないことが大切です。眠りを気にしすぎること自体が、不眠を長引かせる要因の1つと考えられているからです。

05よくある質問

眠ろうと頑張るほど眠れなくなるのはなぜですか?

眠りは意識しなくても自然に起きる働きで、注意を向けたり、直接コントロールしようとしたりすると妨げられると考えられています。実験でも、頭が忙しい状態で「早く眠ろう」とした人のほうが寝つきに時間がかかりました。

「眠らなくていい」と思うと本当に眠れるのですか?

眠る努力をあえてやめる「逆説志向」という方法は、10件の研究をまとめた分析で不眠の症状を改善していました。ただし著者らは、より質の高い研究が必要だとしています。誰にでも必ず効くとは言えません。

羊を数えると眠れますか?

羊を数える方法そのものを調べた研究は、この記事の出典にはありません。不眠の人41人の実験では、好きな情景を細かく思い浮かべる方法で寝つきが早くなりました。漠然と「気をそらして」と指示された人の結果は、予想と違い、悪化は確認されませんでした。

出典

  1. Espie, C. A., Broomfield, N. M., MacMahon, K. M., Macphee, L. M., & Taylor, L. M. (2006). The attention-intention-effort pathway in the development of psychophysiologic insomnia: A theoretical review. Sleep Medicine Reviews, 10(4), 215-245. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2006.03.002
  2. Ansfield, M. E., Wegner, D. M., & Bowser, R. (1996). Ironic effects of sleep urgency. Behaviour Research and Therapy, 34(7), 523-531. https://doi.org/10.1016/0005-7967(96)00031-9
  3. Wang, D. A., Hagger, M. S., & Chatzisarantis, N. L. D. (2020). Ironic effects of thought suppression: A meta-analysis. Perspectives on Psychological Science, 15(3), 778-793. https://doi.org/10.1177/1745691619898795
  4. Riemann, D., Spiegelhalder, K., Feige, B., Voderholzer, U., Berger, M., Perlis, M., & Nissen, C. (2010). The hyperarousal model of insomnia: A review of the concept and its evidence. Sleep Medicine Reviews, 14(1), 19-31. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2009.04.002
  5. Hertenstein, E., Nissen, C., Riemann, D., Feige, B., Baglioni, C., & Spiegelhalder, K. (2015). The exploratory power of sleep effort, dysfunctional beliefs and arousal for insomnia severity and polysomnography-determined sleep. Journal of Sleep Research, 24(4), 399-406. https://doi.org/10.1111/jsr.12293
  6. Jansson-Fröjmark, M., Alfonsson, S., Bohman, B., Rozental, A., & Norell-Clarke, A. (2022). Paradoxical intention for insomnia: A systematic review and meta-analysis. Journal of Sleep Research, 31(2), e13464. https://doi.org/10.1111/jsr.13464
  7. Harvey, A. G., & Payne, S. (2002). The management of unwanted pre-sleep thoughts in insomnia: Distraction with imagery versus general distraction. Behaviour Research and Therapy, 40(3), 267-277. https://doi.org/10.1016/s0005-7967(01)00012-2