時差ぼけがつらいときは、どう立て直す? 東向きと西向きで違う「光を浴びる時間」を研究で調べた

旅行や出張から帰ってきたのに、夜は目がさえて、昼間はぼんやりする。時差ぼけは、体内時計がまだ出発した場所の時刻で動いているために起こります。体内時計を動かすいちばんの手がかりは光で、浴びる時刻によって時計は早まったり遅れたりします。東向きの移動ほど戻りに時間がかかるので、向きに合わせて光を浴びる時間を選ぶのが立て直しの近道です。
3行でわかる
- 旅行者の推定では、体内時計は西向きの移動で1日約92分、東向きでは1日約57分ずつしか新しい時刻に合わない。東向きのほうが戻りにくい。
- 体温がいちばん下がる時刻(ふだん起きる時刻の3〜4.5時間前)より後に光を浴びると時計は早まり、前に浴びると遅れる。
- 出発前の3日間、毎日1時間ずつ早寝早起きして朝に強い光を浴びると、体内時計を約2時間早められた実験がある。
01 悩みの正体時差ぼけが、東向きの移動でつらくなるのはなぜ?
人の体内時計は1周が24時間より少し長く、遅らせるのは得意でも早めるのは苦手です。時計を早める必要がある東向きの移動は、戻るまでに時間がかかります。
体内時計(1日のリズムを刻む脳の仕組み)は、眠気や体温、ホルモンの出る時刻を決めています。飛行機で時差のある場所へ行くと、時計の針と現地の時刻がずれます。これが時差ぼけです。
Eastmanら(2009)のまとめによると、人の体内時計の1周は平均で24時間より少し長く、時計を早めるのは遅らせるよりずっと難しいとされます[1]。日本からアメリカへ行くときや、ヨーロッパから日本へ帰るときは東向きです。体内時計を早めなければならないので、つらさが長引きやすくなります。
夜ふかしが続いて朝起きられないのも、同じ「時計が遅れた」状態です。その立て直し方は朝どうしても起きられない人へで紹介しています。
02 科学的にわかっていること体内時計は、光でどれくらい動かせる?
光を浴びる時刻しだいで、体内時計は前にも後ろにも動きます。境目は体温がいちばん下がる時刻で、それより後の光は時計を早め、前の光は遅らせます。
Khalsaら(2003)[2]
強い光(約5,000〜1万ルクス)を6.7時間浴びる時刻を人によって変え、体内時計がどちらに動くかを調べました。体温がいちばん下がる時刻より前に光を浴びると時計は遅れ、後に浴びると早まりました。ちょうどその時刻の光では、時計は動きませんでした。
対象: 健康な21人、研究室で起きたまま過ごす条件 / 限界: 実験室の強い光で、旅行中の自然な光とは条件が違います。
Eastmanら(2009)[1]
時差ぼけの研究をまとめたレビューです。旅行者の推定では、体内時計は西向きで1日約92分遅れ、東向きで1日約57分早まります。体温がいちばん下がる時刻は、8時間眠る人ならふだん起きる時刻の3〜4.5時間前にあります。東向きの移動で、この時刻より前に強い光ばかり浴びると、時計が逆向きに遅れてしまうことがあります。
種類: レビュー / 限界: 1日に動く量は人や光の浴び方で変わり、目安の数字です。
57分 対 92分
旅行者の推定で、体内時計が1日に新しい時刻へ合う量。東向き(早める)と西向き(遅らせる)[1]
Burgessら(2003)[3]
東向きの旅を想定し、3日間、毎日1時間ずつ早寝早起きしました。起きてから3.5時間、強い光を浴び続けた組は体内時計が2.1時間、光を30分おきにつけたり消したりした組は1.5時間早まりました。室内の薄暗い光の組は0.6時間でした。睡眠が減ったのは平均1時間未満でした。
対象: 22〜43歳の健康な28人 / 限界: 実際に飛行機に乗って、到着後の時差ぼけが軽くなるかは調べていません。人数も少なめです。
東向きのつらさは、プロ野球のデータにも表れています。Songら(2017)はアメリカの大リーグ20年分、46,535試合を調べました。2時間以上の時差ぼけが残っていると考えられる試合では、東向きの移動のあと、本拠地のチームの勝率が3.5%下がっていました[4]。西向きの移動では、影響ははっきりしませんでした。
| 移動の向き | 体内時計を | 光を浴びたい時間 | 戻りやすさ |
|---|---|---|---|
| 東向き(例: ヨーロッパから日本) | 早める | 体温がいちばん下がる時刻より後(体にとっての朝) | 1日約57分、戻りにくい[1] |
| 西向き(例: 日本からヨーロッパ) | 遅らせる | 体温がいちばん下がる時刻より前(体にとっての夜まで) | 1日約92分、戻りやすい[1] |
03 今日からできる小さな一歩時差ぼけを早く戻すには、どう光を浴びる?
東向きのあとは、体にとって朝になる時間の光を浴び、早すぎる時間の強い光は控えます。西向きのあとは、夕方の光を浴びて現地の夜まで起きていると、時計を遅らせやすくなります。
「体の朝」がいつかを計算する
出発した場所でふだん起きていた時刻から3〜4.5時間引くと、体温がいちばん下がる時刻の目安になります[1]。たとえば日本で7時に起きる人なら、日本時間の2時半〜4時ごろです。それを現地の時刻に直します。
所要 3分
東向きなら、その時刻より後の光を浴びる
計算した時刻より後に外へ出て、明るい光を浴びます。それより前に外へ出るなら、濃いサングラスで光を減らします。レビューでも、光を避けたい時間に外へ出るときは濃いサングラスをかけるよう勧めています[1]。体内時計は1日に少しずつ早まるので、光を浴びる時刻も毎日少し早めます。
所要 30分〜
西向きなら、夕方の光を浴びて現地の夜まで起きる
時計を遅らせたいので、体温がいちばん下がる時刻より前の光が助けになります[2]。夕方は外を歩くなどして明るい場所で過ごします。西向きは戻りやすく、レビューの例では3日目ごろから楽になると見込まれていました[1]。
所要 30分〜
04 続けるためのコツ次の旅で時差ぼけを軽くするには?
東向きの旅なら、出発前の3日間で毎日1時間ずつ早寝早起きし、起きてすぐ明るい光を浴びておくと、体内時計を先に動かせます。
- 出発の3日前から、寝る時刻と起きる時刻を1日1時間ずつ早める。実験では、朝に強い光を浴びた組で時計が約2時間早まりました[3]。
- 朝の光は、晴れた日の屋外がいちばん手軽な強い光になる。昼間の光の研究は昼間に日光を浴びると夜よく眠れるのかで紹介しています。
- カフェインは日中に使ってよいが、寝る時刻に近いと、少なめの量でも眠りを妨げる[1]。時刻の目安はカフェインは寝る何時間前まで?で調べています。
- 到着してすぐの夜に眠れなくても焦らない。眠れなかった夜の過ごし方は眠れなかった夜のあと、どう立て直す?にまとめています。
8つ以上の時間帯をまたぐ東向きの移動では、体内時計が逆向きに遅れて合わせにいくことも多いとされます[1]。大きな時差のときは、1週間ほどかかることもあると考えておくと気が楽です。睡眠の不調が帰国後も長く続くときは、医療機関に相談してください。
05よくある質問
時差ぼけは何日くらいで治りますか?
移動の向きと時差の大きさで変わります。旅行者の推定では、体内時計は西向きで1日約92分、東向きで1日約57分ずつ新しい時刻に合います。レビューでは、新しい時刻に合うまでに1週間以上かかることもあるとしています。
到着した朝は、すぐに日光を浴びたほうがいい?
東向きの移動では、必ずしもそうではありません。体温がいちばん下がる時刻より前に強い光を浴びると、体内時計は逆に遅れます。ふだん起きる時刻の3〜4.5時間前を出発地の時刻で計算し、それより後の光を浴びるのが目安です。
なぜ西向きより東向きのほうがつらいのですか?
人の体内時計は1周が24時間より少し長く、早めるより遅らせるほうが簡単だからです。東向きの移動では時計を早める必要があります。大リーグ46,535試合の分析でも、東向きの移動のあとに勝率が下がり、西向きでははっきりした影響が見られませんでした。
出発前にできることはありますか?
東向きの旅なら、出発前の3日間、毎日1時間ずつ早寝早起きし、起きてから明るい光を浴びる方法が研究されています。28人の実験では、体内時計が約2時間早まりました。ただし、実際に飛行機に乗った後の効果は調べられていません。
出典
- Eastman, C. I., & Burgess, H. J. (2009). How To Travel the World Without Jet lag. Sleep Medicine Clinics, 4(2), 241-255. https://doi.org/10.1016/j.jsmc.2009.02.006
- Khalsa, S. B. S., Jewett, M. E., Cajochen, C., & Czeisler, C. A. (2003). A phase response curve to single bright light pulses in human subjects. The Journal of Physiology, 549(3), 945-952. https://doi.org/10.1113/jphysiol.2003.040477
- Burgess, H. J., Crowley, S. J., Gazda, C. J., Fogg, L. F., & Eastman, C. I. (2003). Preflight adjustment to eastward travel: 3 days of advancing sleep with and without morning bright light. Journal of Biological Rhythms, 18(4), 318-328. https://doi.org/10.1177/0748730403253585
- Song, A., Severini, T., & Allada, R. (2017). How jet lag impairs Major League Baseball performance. Proceedings of the National Academy of Sciences, 114(6), 1407-1412. https://doi.org/10.1073/pnas.1608847114


