夜勤明けに眠れない、休みの日に戻せないときは? 仮眠と光の使い方を研究で調べた

夜勤を終えて朝に帰ってきたのに、布団に入っても眠れない。休みの日に昼型へ戻そうとして、かえってぐったりする。それは気合いが足りないからではありません。体内時計は朝の光で「昼」に引き戻されるので、夜勤明けは体が眠る準備をしにくいのです。研究では、帰り道の光を避けて暗い部屋ですぐ眠ること、休みの初日に徹夜して戻さないことが、立て直しのかぎだとわかっています。
3行でわかる
- 夜勤明けに眠れないのは、朝の光で体内時計が「起きる時間」に引き戻されるためです。夜勤を続けても、体内時計が完全に夜型へ合う人は多くありません。
- 帰り道にサングラスをかけ、真っ暗な部屋で決まった時刻に眠る方法を組み合わせた19人の実験では、方法を使った人の体内時計がほぼ目標どおりに遅れ、目標に近づいた人ほど夜勤中の成績が良くなりました。
- 看護師の調査では、休みの初日に「24時間以上起きて」昼型へ戻す人の約25%が「うまく適応できていない」と答え、ほかの戻し方の約3〜10%より多くいました。
01 悩みの正体夜勤明けは、疲れているのになぜ眠れない?
体内時計が昼に起きるリズムのままで、朝の光がそのリズムをさらに強めるからです。疲れ(眠気のたまり)はあっても、体内時計が「今は起きる時間」と合図を出すので、昼の眠りは浅く短くなりやすくなります。
眠気は、2つのしくみで決まります。1つは起きている時間が長いほどたまる「眠気の圧力」。もう1つは、1日のリズムで眠気を上げ下げする「体内時計(概日リズム)」です。
夜勤明けは、1つめの圧力は十分にたまっています。ところが体内時計は、朝になると目を覚ます方向に働きます。さらに帰り道に浴びる朝日は、体内時計を「朝型」へ引き戻す強い合図です。
| 時間帯 | 体内時計の状態 | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 夜勤の明け方 | 1日でいちばん眠い時間帯 | 反応が遅れ、ミスが増えやすい |
| 帰り道の朝 | 朝日で「昼型」に引き戻される | 帰宅後に目がさえる |
| 昼の睡眠 | 体は起きる時間と受け取る | 途中で目が覚め、短くなりやすい |
| 休みの日 | 昼型と夜型の間で揺れる | 夜に眠れず、昼にだるい |
夜勤を続けていても、体内時計は簡単には夜型になりません。Smith と Eastman のレビュー[3]は、多くの夜勤者の体内時計は、休みの日に昼型の生活へ戻ることなどで、ずれたままになりやすいと説明しています。
02 科学的にわかっていること夜勤明けの睡眠は、光と仮眠で立て直せる?
光の浴び方と眠る時刻を整える方法は、小さな実験で効果が出ています。夜勤中の仮眠も、多くの研究で眠気を減らしました。ただし、まとめて見ると証拠の質はまだ低く、「これで必ず治る」とは言えません。
| 研究 | 調べ方 | 結果 |
|---|---|---|
| Smith ら(2009)[4] | 夜勤を模した実験 | 光と暗さを整えた人は体内時計が目標どおり遅れ、成績も良かった |
| Ruggiero・Redeker(2014)[1] | 13本の研究の見直し | 夜勤中の仮眠で、多くの研究で眠気が減った |
| Slanger ら(2016)[2] | 17本の比較試験のまとめ | 光や仮眠の効果は、証拠の質が低く判断できない |
| Gamble ら(2011)[5]・Petrov ら(2014)[6] | 看護師へのアンケート | 休みに徹夜で戻す人ほど、適応できていないと答えた |
Smith・Fogg・Eastman(2009)[4]
夜勤(23時〜7時)を模した実験で、方法を使った人には4つのことをしてもらいました。夜勤中に15分の明るい光を4回浴びる、外では濃いサングラスをかける、真っ暗な寝室で決まった時刻に眠る、午後に外の光を浴びて体内時計が遅れすぎないようにする、の4つです。体内時計の目安(夜にメラトニンが出始める時刻)は、方法を使った人が平均3時22分、使わなかった人が23時24分でした。目標の位置に近づいた人ほど、夜勤中の成績が良好でした。
対象: 健康な19人。研究室で夜勤を模し、睡眠は自宅 / 限界: 人数が少なく、実際の職場での結果ではありません。方法を使わなかった人の中にも、休日に遅くまで寝て同じ位置に近づいた人がいました。
Ruggiero・Redeker(2014)[1]
夜勤中の仮眠を調べた13本の研究を見直しました。仮眠の長さは20分〜2時間、始める時刻は0時〜4時で、多くは2時〜3時ごろに20〜40分の仮眠を試していました。多くの研究で、仮眠は眠気を減らし、反応の速さなどの成績を良くしていました。一方、仮眠をとっても夜勤明けの昼の睡眠はあまり変わらず、短いままでした。
対象: 6〜49人の小さな研究13本(看護師・医師・航空管制官など) / 限界: 研究ごとに条件がばらばらで、数値をまとめる分析はできていません。多くは1晩だけの試験です。
Slanger ら(2016)[2]
交代勤務の眠気や睡眠の問題に、薬を使わない方法が効くかを調べたコクラン・レビュー(質の高い研究のまとめ)です。17本の比較試験、556人を集めました。夜勤中に明るい光を浴びると、2本の研究184人で眠気の点数が平均0.83点下がりましたが、証拠の質は「非常に低い」でした。仮眠1回で反応の速さは平均11.87ミリ秒速くなったものの、効果がない可能性も否定できませんでした。
対象: 光の試験10本、仮眠の試験4本、運動や睡眠教育など3本 / 限界: 著者は「眠気を減らせるかどうかは判断できない」と結論し、より大きく質の高い試験が必要だとしています。
Gamble ら(2011)[5]・Petrov ら(2014)[6]
看護師に、休みの日の眠り方とその後の適応を尋ねた2つの調査です。Gamble らの調査では、休みのたびに24時間以上起き続けて昼型へ戻す「眠らない型」が夜勤看護師の約4人に1人いました。その約25%が「うまく適応できていない」と答え、ほかの戻し方の約3〜10%より多くいました。Petrov らの213人の調査でも、「眠らない型」と「休みの日も長い昼寝を続ける型」は適応が悪く、休みの初日に朝遅くまで寝てから昼型に戻す型は、睡眠の乱れが少なめでした。
対象: アメリカの病院の夜勤看護師(12時間夜勤が中心) / 限界: どちらも一度きりのアンケートで、眠り方が適応の悪さの原因かどうかはわかりません。2つの調査は同じ研究グループによるものです。
まとめると、「光を避けて暗い部屋ですぐ眠る」「明け方の短い仮眠」「休みに徹夜で戻さない」は、研究から考えられる立て直しの柱です。ただ、職場での大きな試験はまだ少なく、効き方には個人差があります。
03 今日からできる小さな一歩夜勤明けに眠れなかったとき、何から立て直す?
まず帰り道の光を減らし、帰宅したら寄り道せず真っ暗な部屋で眠ります。起きたら午後の光を15分浴び、休みの初日は徹夜せず、朝少し眠ってから夜の睡眠につなげます。
帰り道はサングラスで朝日を減らす
朝の光は体内時計を昼型へ引き戻します。研究では、光を約15%しか通さないサングラスを帰り道に使っていました[3]。ただし運転する人は安全を優先し、見えにくいほど濃いものは避けてください。
所要 帰り道の間
帰ったら寄り道せず、真っ暗な部屋で眠る
レビューの計画例では、夜勤が終わって1.5時間後に眠り始めていて、早いほどよいとされています[3]。買い物や家事は起きてからに回し、遮光カーテンやアイマスクで部屋を暗くします(寝室の明るさと睡眠の研究)。
所要 帰宅後すぐ
起きたら、午後に外の光を15分浴びる
研究では、起きてから2時間以内に15分ほど外の光を浴び、体内時計が遅れすぎないようにしていました[3][4]。散歩やベランダで十分です。光で体内時計を動かす考え方は、時差ぼけの立て直しの記事とも共通しています。
所要 15分
休みの初日は徹夜で戻さない
夜勤明けの朝は数時間だけ眠り、その夜はいつもより少し遅めに寝ます。24時間以上起き続けて戻す方法は、適応の悪さと結びついていました[5][6]。眠れなかった夜を取り返そうとしない考え方は、眠れなかった夜の立て直しの記事にまとめています。
所要 夜勤明けの朝
04 続けるためのコツ次の夜勤を少しでも楽にするには?
夜勤中の短い仮眠と、明け方のカフェインを控えることが助けになります。仮眠のあとは頭がぼんやりする時間があるので、すぐ大事な判断をしない段取りにしておきます。
- 仮眠は2時〜3時ごろに20〜40分を目安に: 研究で多く試されていた長さと時刻です[1]。昼寝の長さの研究は昼寝は何分がいい?の記事にあります。
- 仮眠のあと15〜30分は様子を見る: 起きた直後のぼんやり(睡眠慣性)は夜に強く出ます。レビューは、この回復時間を休憩に含めるよう勧めています[3]。
- カフェインは夜勤の前半までに: カフェインは夜勤中の眠気を減らしますが、遅い時間にとると昼の睡眠を妨げます[3]。目安は寝る何時間前までの記事を参考にしてください。
- 家族に「朝は寝る時間」と伝えておく: レビューは、休みの日も朝を睡眠のために守ることが大切で、周りの協力が欠かせないと書いています[3]。
05よくある質問
夜勤明けは、寝ないで夜まで起きていたほうがいい?
研究からは、勧めにくい方法です。看護師の調査では、24時間以上起き続けて昼型へ戻す人ほど「うまく適応できていない」と答える割合が高くなっていました。夜勤明けの朝は数時間だけ眠り、その夜を少し遅めの就寝にするほうが、調査で適応が良かった戻し方に近いやり方です。
夜勤中の仮眠は何分がいい?
研究で多く試されていたのは、2時〜3時ごろに20〜40分の仮眠です。多くの研究で眠気が減りましたが、起きた直後は頭がぼんやりしやすいので、15〜30分は様子を見る時間をとるのが安全です。
夜勤を続けていれば、体はそのうち慣れる?
完全に慣れる人は多くありません。休みの日に昼型へ戻すなどで、体内時計はずれたままになりやすいとされています。ただ、研究では体内時計が一部だけ夜型に寄るだけでも、夜勤中の成績が良くなっていました。
どうしても眠れない日が続くときは?
夜勤明けに眠れない、休みの日も強い眠気が続くといった状態が長く続くときは、交代勤務による睡眠の問題の可能性もあります。睡眠外来や産業医などに相談することも考えてください。
出典
- Ruggiero, J. S., & Redeker, N. S. (2014). Effects of napping on sleepiness and sleep-related performance deficits in night-shift workers: A systematic review. Biological Research for Nursing, 16(2), 134-142. https://doi.org/10.1177/1099800413476571
- Slanger, T. E., Gross, J. V., Pinger, A., Morfeld, P., Bellinger, M., Duhme, A. L., Reichardt Ortega, R. A., Costa, G., Driscoll, T. R., Foster, R. G., Fritschi, L., Sallinen, M., Liira, J., & Erren, T. C. (2016). Person-directed, non-pharmacological interventions for sleepiness at work and sleep disturbances caused by shift work. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2016(8), CD010641. https://doi.org/10.1002/14651858.CD010641.pub2
- Smith, M. R., & Eastman, C. I. (2012). Shift work: Health, performance and safety problems, traditional countermeasures, and innovative management strategies to reduce circadian misalignment. Nature and Science of Sleep, 4, 111-132. https://doi.org/10.2147/NSS.S10372
- Smith, M. R., Fogg, L. F., & Eastman, C. I. (2009). Practical interventions to promote circadian adaptation to permanent night shift work: Study 4. Journal of Biological Rhythms, 24(2), 161-172. https://doi.org/10.1177/0748730409332068
- Gamble, K. L., Motsinger-Reif, A. A., Hida, A., et al. (2011). Shift work in nurses: Contribution of phenotypes and genotypes to adaptation. PLoS ONE, 6(4), e18395. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0018395
- Petrov, M. E., Clark, C. B., Molzof, H. E., Johnson, R. L., Cropsey, K. L., & Gamble, K. L. (2014). Sleep strategies of night-shift nurses on days off: Which ones are most adaptive? Frontiers in Neurology, 5, 277. https://doi.org/10.3389/fneur.2014.00277


