睡眠

旅行先や初めての場所でよく眠れないのはなぜ?「初夜効果」と脳の見張り役を研究で調べた

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寝室のベッドと枕
Photo: Afifa Afrin / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

旅行先のホテルや実家、出張先で、なぜか寝つけず夜中に何度も目が覚める。これは「初夜効果」と呼ばれ、多くの研究で確かめられている現象です。慣れない場所では、脳の一部が物音に備えて浅く眠り、見張りをしていると考えられています。多くは1晩目だけで、2晩目にはおさまります。

3行でわかる

  1. 53件の研究(1,422人)をまとめたメタ分析で、初めての場所の1晩目は寝つきが遅く、夜中に起きている時間が長く、眠る時間が短いことがわかりました。2晩目と3晩目の差はほとんどありませんでした。
  2. 35人の実験では、1晩目だけ、脳の左側の一部が右側より浅く眠り、聞き慣れない音に強く反応して、目覚めも速くなりました。
  3. ただし、その後の研究では「脳の片側が見張る」という説明が確認されなかった結果もあり、仕組みはまだ確定していません。

01 悩みの正体慣れない場所だと眠れないのは、神経質だから?

神経質だからではありません。初めての場所の1晩目に眠りが浅くなるのは、年齢を問わず多くの人に見られる現象で、睡眠の研究では昔から知られています。

睡眠の研究では、参加者に検査室で眠ってもらい、脳波を測ります。ところが1晩目は、ふだんより寝つきが悪く、眠りも浅くなりがちです。そのため研究者は、1晩目を「慣らしの夜」として分析から外すことがよくあります。

この1晩目の眠りの乱れが初夜効果(ファースト・ナイト・エフェクト)です。旅行先やホテルで眠れないのも、同じ仕組みだと考えられています。

眠れないと焦ると、かえって目がさえることもわかっています(眠ろうと頑張るほど眠れない理由の研究)。まずは「1晩目は浅くなるもの」と知っておくことが、焦りを減らす助けになります。

02 科学的にわかっていること初めての場所の1晩目、脳では何が起きている?

1晩目は寝つきが遅く、夜中に目が覚めやすくなります。ある実験では、脳の片側の一部が浅く眠って物音を見張っていましたが、別の研究では再現されず、仕組みはまだ議論が続いています。

Dingら(2022)[1]

2晩以上続けて脳波を測った53件の研究をまとめたメタ分析です。1晩目は2晩目と比べて、寝つくまでの時間と夜中に起きている時間が長く、眠った時間と眠りの効率が下がり、浅い眠り(N1)が増えていました。一方、2晩目と3晩目の差はほとんどありませんでした。20〜29歳の若い大人では、初夜効果が最も小さく出ました。

対象: 健康な人1,422人(平均年齢9.2〜85.5歳の研究)、すべて検査室などでの脳波測定 / 限界: 研究によって測り方や環境が違う。自宅で寝た場合を中心に調べたものではない。

Tamakiら(2016)[2]

若い健康な35人に、約1週間あけて2回、検査室で眠ってもらいました。1回目の深い眠りの間だけ、脳の左側の「デフォルト・モード・ネットワーク」(ぼんやりしているときに働く脳の領域)が右側より浅く眠っていました。眠っている間に聞き慣れない音を流すと、1回目は左側が強く反応し、眠りが浅くなる反応(覚醒反応)の8割以上が、左側の脳に届く右耳に音を流したときに起きていました。音で目覚めて指で合図を返すまでの時間も、1回目のほうが短くなりました。

対象: 若い健康な35人、3つの実験(各実験は十数人) / 限界: 測ったのは最初の眠りの周期だけで、調べた脳の領域も限られる。2回目には左右の差は見られなかった。

Wickら(2024)[3]

45人に1週間あけて2回検査室で眠ってもらうと、1回目は寝つくまでの時間が平均20.37分で、2回目の14.01分より長くなりました。別の30人には自宅と検査室で2晩ずつ眠ってもらったところ、自宅でも1晩目は夜中に起きている時間が増えていました。一方、Tamakiらが報告した脳の左右差の指標は、初夜効果と関係していませんでした。

対象: 18〜31歳の健康な若い大人 / 限界: 人数が少なく、多重比較の補正をしていないため「一部は偶然の可能性がある」と著者自身が述べている。

Mayeliら(2022)[4]

27人に2晩、多数の電極で脳波を測ると、1晩目は夜中に起きている時間が長く、深い眠りが減り、眠りが細切れで浅くなっていました。深い眠りの脳波が弱かったのは、前頭部の右側でした。

対象: 健康な27人 / 限界: 浅く眠っていた側が、Tamakiらの研究(左側)と一致していない。効果の大きさは小〜中程度。

わかっていること確かさ
初めての場所の1晩目は眠りが浅く、寝つきが遅い多くの研究で一致(メタ分析あり)
2晩目以降はほぼ元に戻る多くの研究で一致
自宅でも測定初日は眠りが乱れることがある1件の研究で確認
脳の片側だけが見張り役になる支持する研究と、再現されない研究がある

この表は、上の研究をこのサイトで整理したものです。鳥やイルカは、脳の半分ずつ眠る「半球睡眠」で、眠りながら危険を見張ることが知られています[5]。人の初夜効果も、これに似た身を守るしくみではないかと考えられていますが、まだ仮説の段階です。同じグループの12人の研究では、夢を見るレム睡眠の間も、1回目は聞き慣れない音への脳の反応が大きくなっていました(こちらは左右差なし)[6]。

03 今日からできる小さな一歩旅行先で眠れない夜、どうすればいい?

初夜効果そのものを消す方法は、研究ではまだ確かめられていません。1晩目は浅くなる前提で予定を組み、眠れないときに焦らない工夫が現実的です。

1

大事な予定は「2晩目の翌日」に置く

試験や大切な会議があるなら、可能なら前々日に現地に入ります。研究では乱れはおもに1晩目に集中していました(予定の組み方はこのサイトによる整理)。

所要 予定を決めるときに1分

2

「浅いのは普通」と自分に言う

夜中に目が覚めても、時計を何度も見て残り時間を数えないようにします。夜中に目が覚める仕組みは中途覚醒の研究にまとめています。

所要 10秒

3

聞き慣れない音を減らしてみる

研究で見張り役が反応したのは「いつもと違う音」でした。耳栓などで音を減らすのは試しやすい工夫ですが、それで初夜効果が減るかは確かめられていません。

所要 1分

4

眠れなければ、いったん布団を出る

長く眠れないときは、布団で粘らず明かりを落とした場所で静かに過ごします(布団から出る「刺激制御法」の研究)。

所要 15〜20分

04 続けるためのコツ出張や旅行が多い人は、どう付き合えばいい?

1晩目は浅くなると見込んで予定に余裕をもたせ、翌日に眠気が出ても自分を責めないことです。乱れが何晩も続く、慣れた自宅でも眠れない場合は、別の原因を考えます。

05よくある質問

旅行先で眠れないのは何日目まで続く?

多くの研究では、眠りの乱れはおもに1晩目に出て、2晩目にはほぼ元に戻っていました。53件の研究をまとめたメタ分析でも、2晩目と3晩目の差はほとんどありませんでした。

自分の枕を持っていけば眠れる?

持ち慣れた物で落ち着く人はいるかもしれませんが、枕を持っていくと初夜効果が減るかを確かめた研究は、この記事で調べた範囲では見つかりませんでした。

初夜効果は年齢で違う?

メタ分析では、20〜29歳の若い大人で最も小さく、ほかの年齢層ではより大きく出ていました。

出典

  1. Ding, L., Chen, B., Dai, Y., & Li, Y. (2022). A meta-analysis of the first-night effect in healthy individuals for the full age spectrum. Sleep Medicine, 89, 159-165. https://doi.org/10.1016/j.sleep.2021.12.007
  2. Tamaki, M., Bang, J. W., Watanabe, T., & Sasaki, Y. (2016). Night watch in one brain hemisphere during sleep associated with the first-night effect in humans. Current Biology, 26(9), 1190-1194. https://doi.org/10.1016/j.cub.2016.02.063
  3. Wick, A. Z., Combertaldi, S. L., & Rasch, B. (2024). The first-night effect of sleep occurs over nonconsecutive nights in unfamiliar and familiar environments. Sleep, 47(10), zsae179. https://doi.org/10.1093/sleep/zsae179
  4. Mayeli, A., Janssen, S. A., Sharma, K., & Ferrarelli, F. (2022). Examining first night effect on sleep parameters with hd-EEG in healthy individuals. Brain Sciences, 12(2), 233. https://doi.org/10.3390/brainsci12020233
  5. Rattenborg, N. C., Amlaner, C. J., & Lima, S. L. (2000). Behavioral, neurophysiological and evolutionary perspectives on unihemispheric sleep. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 24(8), 817-842. https://doi.org/10.1016/S0149-7634(00)00039-7
  6. Tamaki, M., & Sasaki, Y. (2019). Surveillance during REM sleep for the first-night effect. Frontiers in Neuroscience, 13, 1161. https://doi.org/10.3389/fnins.2019.01161