寝る前のストレッチは睡眠の質を上げるのか。4つの研究でわかったこと

寝る前に軽くストレッチをすると眠りやすくなる、という話を聞いたことがある人は多いと思います。実際の研究では、不眠症やこむら返りがある人の一部で改善が見られた一方、睡眠に悩む人全体に効くという強い証拠はまだありません。4つの研究から、今わかっている範囲を整理します。
3行でわかる
- 慢性的な不眠症の人を対象にした研究では、4か月間のストレッチで不眠の重症度スコアが大きく下がった。
- 夜間に足がつる高齢者では、ふくらはぎなどを伸ばす毎日のストレッチで、こむら返りの回数と痛みが減った。
- 一方、睡眠に悩む人全体を対象にした16件の研究のまとめでは、「効果がある」と言えるほどの証拠はまだ乏しいとされている。
01「ストレッチで眠れる」と言われる理由
ストレッチには体をリラックスさせる効果が期待されており、不眠症や足のつりなど特定の悩みを対象にした研究で改善が報告されてきた。
寝る前のストレッチが睡眠にいいとされる理由の一つは、筋肉の緊張をゆるめることで心身がリラックスした状態に近づくと考えられているからです。実際に、不眠症の人を対象にした研究や、高齢者のこむら返りを対象にした研究では、ストレッチを続けたグループで睡眠に関する指標が改善したという結果が出ています。ただし、これらは特定の悩みを抱えた人を対象にした研究で、健康な人や睡眠に悩みのない人にも同じように当てはまるとは限りません。
02科学的にわかっていること
不眠症の人を対象にした研究では改善が見られたが、睡眠障害がある人全体を見たレビューでは「効果の証拠は乏しい」という結論になっている。
D'Aurea ら(2019)[1]
慢性的な不眠症がある28人を、ストレッチ・レジスタンス運動(筋力トレーニング)・何もしない対照群の3グループに分けて4か月間(週3回)続けたところ、ストレッチ群は不眠重症度指数(ISI)が平均8.1点下がり、対照群(2.3点悪化)より大きく改善した。ピッツバーグ睡眠質指数(PSQI)も対照群はほぼ変化しなかったのに対し、ストレッチ群は3.9点改善した。
対象: 慢性不眠症の成人28人(ストレッチ10人・レジスタンス運動10人・対照8人) / 限界: 1グループあたり8〜10人と少人数。脳波などで測る客観的な睡眠検査(ポリソムノグラフィー)では、グループ間に明確な差は出なかった。ストレッチは夕方(17〜18時)に1回60分、指導つきで行われたもので、寝る直前のストレッチを調べたものではない。
Hallegraeff・de Greef(2020)[2]
夜間に足がつる症状がある75歳以上の高齢者のうち、ふくらはぎとハムストリングスのストレッチを毎日行った15人は、6週間後にこむら返りの回数と痛みの強さがどちらも対照群と比べて統計的に有意に減った。こむら返りは眠りを妨げる原因の一つとされている。
対象: 75歳以上で夜間のこむら返りがある人(介入群15人) / 限界: 小規模な予備的研究(パイロット試験)で、睡眠の質そのものを直接測ったものではない。
Tworoger ら(2003)[3]
運動不足で過体重の閉経後の女性173人を、1年間の中強度の運動プログラム(87人)と、軽いストレッチプログラム(86人)に分けた研究では、ストレッチを続けた人は開始前より睡眠薬を使う割合が下がった。寝つきの悪さが減る傾向も見られたが、こちらは統計的に「傾向がある」という程度にとどまった。
対象: 50〜75歳の運動不足・過体重の閉経後女性173人 / 限界: 睡眠は本人の報告によるもので、脳波などの検査は行っていない。
Alimoradi・Hosseini・Konrad(2024)[4]
睡眠障害がある人を対象にした16件の研究をまとめたレビューでは、不眠の重症度・睡眠効率・総睡眠時間のいずれも平均では改善の方向を示したが、個別の研究で統計的に意味のある改善を報告していたのは13件中3件だけだった。著者らは「ストレッチが睡眠障害のある人の睡眠の質を改善するという証拠は乏しい」と結論づけている。
対象: 睡眠の質または睡眠障害を扱った既存の研究16件 / 限界: 研究ごとにストレッチの方法・期間・対象がばらばらで、単純に平均をとることの限界がある。
03今日からできる小さな一歩
害になる可能性は低いので、こむら返りや体の緊張が気になる人は試す価値があるが、睡眠薬や治療の代わりにはしない。
ふくらはぎとハムストリングスを伸ばす
座った姿勢か立った姿勢で、ふくらはぎと太もも裏を痛みのない範囲でゆっくり伸ばす。
所要 5分
呼吸を止めずに行う
伸ばしている間は深く呼吸を続け、反動をつけずに静かに伸ばす。
所要 1ポーズにつき20〜30秒
毎晩同じ時間に続けてみる
就寝直前の数分間、習慣として続けることで変化を観察しやすくなる。
所要 合計5〜10分
04続けるためのコツ
「絶対に眠れるようになる」と期待しすぎず、足のつりや体の緊張がやわらぐかどうかを基準にすると続けやすい。
- 布団に入る直前よりも、歯磨きなど別の習慣とセットにすると忘れにくい。
- 痛みを感じるほど強く伸ばさない。心地よい範囲で十分とされている。
- 2〜4週間試しても変化を感じなければ、ストレッチ以外の対策も検討する。寝る前の運動と睡眠の関係や、就寝前の入浴のタイミングについても研究が整理されている。
05よくある質問
寝る前のストレッチは誰にでも効くのか
いいえ。16件の研究をまとめたレビューでは、睡眠障害がある人全体への効果を示す証拠は乏しいとされています。一方で、不眠症や夜間のこむら返りを対象にした個別の研究では改善が見られました。対象や抱えている症状によって結果が分かれています。
ストレッチは睡眠薬の代わりになるのか
それを示す強い証拠はありません。閉経後の女性を対象にした研究では、1年間ストレッチを続けた人は睡眠薬を使う割合が下がりましたが、これは1件の研究の結果であり、薬の使用を自己判断でやめる根拠にはなりません。不眠が長く続く場合は医療機関に相談してください。
どのくらいの期間続ければ変化がわかるのか
こむら返りの研究では6週間、不眠症の研究では4か月続けています。数日で判断できるものではなく、数週間は様子を見る必要があります。
出典
- D'Aurea CVR, et al. (2019). Effects of resistance exercise training and stretching on chronic insomnia. Brazilian Journal of Psychiatry, 41(1), 51-57. https://doi.org/10.1590/1516-4446-2018-0030
- Hallegraeff J, de Greef M. (2020). Pilot testing a stretching regimen for prevention of night time nocturnal leg cramps. Geriatric Nursing, 41(2), 105-109. https://doi.org/10.1016/j.gerinurse.2019.07.010
- Tworoger SS, et al. (2003). Effects of a yearlong moderate-intensity exercise and a stretching intervention on sleep quality in postmenopausal women. Sleep, 26(7), 830-836. https://doi.org/10.1093/sleep/26.7.830
- Alimoradi M, Hosseini E, Konrad A. (2024). A scoping review of the effect of chronic stretch training on sleep quality in people with sleep disorders. European Journal of Applied Physiology, 124(9), 2533-2545. https://doi.org/10.1007/s00421-024-05541-z


