睡眠

寝不足の日に、甘いものや脂っこいものが食べたくなるのはなぜ? 睡眠不足と食欲の研究で調べた

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店に並んだドーナツ
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

夜ふかしした翌日、なぜかポテトチップスや菓子パンに手が伸びる。そんな経験はありませんか。寝不足の日に高カロリーな物が欲しくなるのは、意志が弱いからではありません。睡眠が足りないと、脳の「食べ物を見極める部分」の働きが鈍り、「目を引くものに反応する部分」が強く働くためと考えられています。

3行でわかる

  1. 一晩眠らなかった23人の脳を調べた実験では、食べ物の価値を見極める部分の働きが弱まり、扁桃体(へんとうたい)の反応が強まった。高カロリーの物を「欲しい」と答える割合も増えた。
  2. 11の研究をまとめたメタ分析では、睡眠を短くした日は1日あたり平均385kcal多く食べていた。消費するエネルギーは増えていなかった。
  3. ただし「空腹ホルモンが増えるから」という説明は、研究の結果がそろっていない。食欲の感じ方と実際に食べる量が一致しない研究も多い。

01 悩みの正体寝不足だと高カロリーの物が欲しくなるのはなぜ?

寝不足の脳では、食べ物を冷静に見極める前頭部の働きが弱まり、目を引くものに反応する扁桃体が強く働きます。その結果、高カロリーな物ほど「欲しい」と感じやすくなると考えられています。

脳には、食べ物を前にしたときに「これは本当に必要か」を判断する部分があります。おでこの奥にある前頭部や、体の感覚をまとめる島皮質(とうひしつ)と呼ばれる部分です。

一方で、扁桃体は、目立つものや強い刺激にすばやく反応する部分です。寝不足になると、この2つのバランスが崩れると考えられています。たとえるなら、ブレーキ役が弱くなり、アクセル役が強くなった状態です。

脳の部分ふだんの役割一晩眠らなかった後
前帯状皮質・眼窩前頭皮質(外側)・島皮質の前部食べ物の価値を見極める働きが弱まった[1]
扁桃体目を引くものに反応する反応が強まった[1]
腹側線条体報酬(ごほうび)に反応する差は見られなかった[1]

寝不足でイライラしやすくなるのも、扁桃体の反応が強まることと関係すると考えられています。詳しくは寝不足と怒りの研究で紹介しています。

02 科学的にわかっていること寝不足の日は、どのくらい多く食べてしまう?

睡眠を短くした実験をまとめると、1日あたり平均385kcal多く食べていました。ただし、空腹感やホルモンの変化だけでは説明しきれず、研究どうしで結果がそろわない部分もあります。

Greerら(2013)[1]

健康な若い大人23人が、ふつうに眠った夜(平均8.2時間)と、一晩眠らなかった夜(平均24.6時間起きていた)の両方を体験しました。翌朝、80種類の食べ物の写真を見て、どれくらい食べたいかを答えながら脳の活動を測りました。眠らなかった後は、高カロリーの食べ物を「欲しい」と答える割合が増えました。欲しいと答えた食べ物のカロリーを合計すると、平均で約600kcal多くなりました。お腹のすき具合は、2つの条件で差がありませんでした。

対象: 健康な若い大人23人(平均20.5歳、うち女性13人) / 限界: 実際に食べた量は測っていません。調べたのは朝だけで、年齢や体格の幅も狭い研究です。また、調べた5か所をまとめて統計の補正をすると、前頭部の3か所のうち差が残ったのは前帯状皮質だけでした。

+385kcal

睡眠を短くした日に増えた、1日あたりの食べる量の平均(11研究・172人のメタ分析)[2]

Al Khatibら(2017)[2]

睡眠を短くする実験を集めたメタ分析です。17の研究(496人)を調べ、そのうち11の研究(172人)のデータをまとめました。睡眠を短くした日は、1日あたり平均385kcal多く食べていました。一方で、1日に使うエネルギーの合計や、安静時に使うエネルギーは変わりませんでした。食事の中身は、脂質が多く、たんぱく質が少なくなる方向に変わっていました。炭水化物には差がありませんでした。

対象: 睡眠を短くした介入研究の参加者 / 限界: 著者らは、こうした食べすぎが長く続けば体重増加につながる可能性があるとしています。ただし、長期の体重の変化を直接調べた結果ではありません。

Hanlonら(2016)[3]

健康な若い大人が、8.5時間眠る4夜と、4.5時間しか眠らない4夜の両方を体験しました。睡眠が短いと、血液中の「内因性カンナビノイド(2-AG)」という物質の1日のリズムが大きくなり、ピークが午後にずれて長く続きました。2-AGは、食べる楽しみや食欲の調整に関わる仕組みの一部です。その午後の時間帯に空腹感や食欲が強まり、おいしいお菓子を食べるのを我慢しにくくなりました。

対象: 健康な若い大人 / 限界: 管理された実験室での結果です。2-AGが食べすぎの原因だと確かめたわけではなく、関わっている可能性を示した研究です。

Tanら(2026)[4]

睡眠を短くしたランダム化比較試験11件を、空腹感・食べたい気持ち・実際に食べた量に分けて整理したレビューです。空腹感が高まった研究は7件で、残りの4件では差がありませんでした。食べる量が増えた研究でも、空腹感や食べたい気持ちの変化では説明できない例が多くありました。著者らは「寝不足で食欲が強まるから食べすぎる」というよくある説明は、まだはっきりした結論を出せる段階ではないとしています。

対象: 睡眠を短くした11の研究 / 限界: どの研究も人数が少なく、睡眠の短くし方や測り方がばらばらです。

Alfikanyら(2025)[5]

睡眠を短くしたときの、食欲に関わるホルモン(空腹ホルモンのグレリン、満腹ホルモンのレプチンなど)の変化を、男女別に調べた8研究(302人)をまとめました。男女で反応が違うように見える結果もありましたが、研究ごとに結果がばらばらで、はっきりした傾向は見られませんでした。

対象: 健康な大人を対象にした8研究 / 限界: 研究の数が少なく、体格や食事の管理のしかたもそろっていません。

まとめると、「寝不足だと多く食べる」ことは複数の研究で示されています。ただ、その理由を「空腹ホルモンが増えるから」だけで説明するのは難しいようです。脳の反応の変化や、起きている時間が長くて食べる機会が増えることなど、いくつかの理由が重なっていると考えられます。

03 今日からできる小さな一歩寝不足の日の食べすぎを防ぐには?

寝不足の日は「欲しくなるのは脳の反応」と知ったうえで、手の届く所に高カロリーなお菓子を置かないことが役立ちます。いちばんの対策は、睡眠時間を取り戻すことです。

1

「寝不足だから欲しくなっている」と言葉にする

欲しくなったら、まず「今は寝不足で脳が反応しやすい日」と心の中で確認します。自分を責める必要はありません(研究の結果をもとにした目安です)。

所要 10秒

2

寝不足の日は、お菓子を目に入る所に置かない

寝不足の脳は、目を引く高カロリーの物に強く反応します[1]。机やリビングから見えない場所にしまうだけでも、手に取る回数を減らせる可能性があります。決まった場所で食べたくなる仕組みは間食の「きっかけ」の研究で紹介しています。

所要 1分

3

午後のおやつは、量を先に決めて小皿に出す

睡眠が短いと、午後に食欲が強まりやすいことが示されています[3]。袋から直接食べず、食べる分だけ小皿に出します。

所要 1分

4

その夜は、いつもより早めに眠る準備をする

寝不足の日が続くと、食べすぎの日も続きやすくなります。夜ふかしをやめて、翌朝はいつもの時刻に起きます。眠い昼間は、短い昼寝でしのぐのも1つの方法です。

所要 0分(寝る時刻を30分早める)

04 続けるためのコツ寝不足の日の食べすぎをくり返さないコツは?

1日の食べすぎを気にしすぎるより、寝不足の日を減らすことを優先します。平日の睡眠不足を週末の寝だめで取り戻そうとしないことも大切です。

05よくある質問

寝不足だと、なぜ甘いものや高カロリーの物が欲しくなるのですか?

脳の働き方が変わるためと考えられています。Greerら(2013)の実験では、一晩眠らなかった翌朝、食べ物の価値を見極める脳の部分の働きが弱まり、目を引くものに反応する扁桃体(へんとうたい)の反応が強まりました。同時に、高カロリーの食べ物を「欲しい」と答える割合が増えました。

寝不足の日は、実際にどのくらい多く食べてしまうのですか?

11の研究(172人)をまとめたメタ分析では、睡眠を短くした日は、ふだんより1日あたり平均385kcal多く食べていました。一方で、消費するエネルギーは増えていませんでした。

寝不足のときにお腹がすくのは、ホルモンのせいですか?

空腹ホルモンの変化が原因だとよく説明されますが、研究の結果はそろっていません。8研究をまとめたレビューでは、食欲に関わるホルモンの変化に一貫した傾向が見られませんでした。脳の反応や、起きている時間が長いことなど、ほかの理由も重なっていると考えられます。

出典

  1. Greer, S. M., Goldstein, A. N., & Walker, M. P. (2013). The impact of sleep deprivation on food desire in the human brain. Nature Communications, 4, 2259. https://doi.org/10.1038/ncomms3259
  2. Al Khatib, H. K., Harding, S. V., Darzi, J., & Pot, G. K. (2017). The effects of partial sleep deprivation on energy balance: a systematic review and meta-analysis. European Journal of Clinical Nutrition, 71(5), 614-624. https://doi.org/10.1038/ejcn.2016.201
  3. Hanlon, E. C., Tasali, E., Leproult, R., Stuhr, K. L., Doncheck, E., de Wit, H., Hillard, C. J., & Van Cauter, E. (2016). Sleep restriction enhances the daily rhythm of circulating levels of endocannabinoid 2-arachidonoylglycerol. Sleep, 39(3), 653-664. https://doi.org/10.5665/sleep.5546
  4. Tan, S.-Y., Tjahjono, I. E., Feyesa, I., Hettiarachchi, J., Kim, N., Pennycuff, R., Qawasmeh, A., & Tucker, R. M. (2026). Does sleep curtailment stimulate appetite, motivation to eat and dietary intake in humans? A narrative synthesis of evidence and considerations for future studies. Journal of Sleep Research, 35(5), e70358. https://doi.org/10.1111/jsr.70358
  5. Alfikany, M., Sakhr, K., Kremers, S., El Khatib, S., Adam, T., & Meertens, R. (2025). The role of sex in the impact of sleep restriction on appetite- and weight-regulating hormones in healthy adults: a systematic review of human studies. Clocks & Sleep, 7(3), 39. https://doi.org/10.3390/clockssleep7030039