やめたい間食ほど、決まった時間や場所で欲しくなるのはなぜ?「きっかけ」と食欲の学習を研究で調べた

午後3時になると、おなかは空いていないのにお菓子が欲しくなる。テレビの前に座ると、手がスナック菓子に伸びる。それは、あなたが食いしん坊だからではありません。研究では、食べた時間・場所・見たものが「きっかけ」になり、きっかけだけで食べたい気持ちが起きるように学習されると考えられています。毎日同じ時刻にチョコレートを食べる実験では、15日で「その時刻に食べたくなる」気持ちが生まれていました。
3行でわかる
- 食べ物の写真やにおいなどのきっかけで起きる「食べたい」反応は、その後の食べる量や体重の増加を予測していました(45報・3,292人のメタ分析, r = 0.33)。
- 毎日同じ時刻にチョコレートを食べた実験では、15日間でその時刻に「食べたい」気持ちが生まれました。5日間では、食べたい気持ちまでは育ちませんでした。
- 1,103人の調査では、不健康な間食の量を最もよく予測したのは、本人の「食べないつもり」より「習慣の強さ」でした。
01 悩みの正体おなかが空いていないのに間食したくなるのは、意志が弱いから?
意志の弱さではなく、学習の結果と考えられています。食べた時間や場所、見たものが何度も食べ物と結びつくと、そのきっかけだけで「食べたい」気持ちが起きるようになります。
この仕組みは、犬がベルの音でよだれを出すようになった「パブロフの条件づけ」と同じ考え方です。何でもない合図でも、食べ物と一緒に何度も起きると、合図だけで体と心が「これから食べる」と準備を始めます。
合図になるものは、身の回りにたくさんあります。
- 時間: 午後3時、仕事終わり、寝る前
- 場所: ソファ、デスク、コンビニの前
- 見たもの・におい: お菓子の袋、広告の写真、パン屋のにおい
- 気分や人: 落ち込んだとき、だれかが食べているのを見たとき
習慣がきっかけで自動に動く仕組みそのものは、習慣が「自動」で動く仕組みの研究にまとめています。この記事では、その中でも「食べたい気持ち」が学習される話を扱います。
02 科学的にわかっていること間食したい気持ちは、本当に「きっかけ」で学習されるの?
動物と人の実験、日常生活での記録の両方で、そう示されています。ただし、学習には日数がかかり、全員に同じように起きるわけではありません。
Weingarten(1983)[7]
ラットに、ある合図と食べ物を何度も一緒に体験させました。すると、満腹のラットでも、合図が出ると食べ始めました。このときの食事は、1日に食べる量の約20%にあたりました。
動物の実験です。ラットはその後に食べる量を減らして、全体の量を調整していました。
Birchら(1989)[5]
保育園の子どもたちに、決まった音や光、場所のもとでくり返しおやつを食べてもらいました。その後、おやつで満腹にしてから試すと、おやつと結びついた合図のもとでは、食べ始めるのが早く、食べる量も多い傾向がありました。
この効果がはっきり見られたのは、どの合図が食べ物と結びついていたかを正しく答えられた子どもでした。全員に同じように起きたわけではありません。
van den Akkerら(2017)[2]
大人に、毎日決まった時刻にチョコレートを食べてもらい、スマホで1日に何度も気持ちを記録してもらいました。2つの研究のどちらでも、その時刻になると「食べられそう」という期待が生まれました。15日間続けた研究では、チョコと結びついていない時刻と比べて、「食べたい」気持ちも強まりました。
5日間の研究では、期待は生まれたものの、食べたい気持ちまでは学習されませんでした。日常生活の中で確かめた研究ですが、数日で欲しくなるとは限らないことも示しています。
BoswellとKober(2016)[1]
45報・3,292人分のデータをまとめたメタ分析です。食べ物のきっかけへの反応や「食べたい」気持ちは、その後に食べる量や体重の増加を中くらいの強さで予測していました(r = 0.33、ばらつきの約11%)。写真や動画のきっかけは、本物の食べ物と同じくらいの強さで、においよりも強い関係を示しました。
それまでの研究結果はまちまちだったと著者自身が書いています。関係の強さは、体重(BMI)・年齢・食事制限をしているかどうかで違いが見られませんでした。
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| Schüzら(2015)[3] | 一般の人53人の日常記録 | 間食は「食べ物が手元にある」「人が食べているのを見た」「気分が落ち込んでいる」ときに起きやすかった |
| Verhoevenら(2012)[4] | 1,103人の調査と7日間の間食日記 | 不健康な間食の量を最もよく予測したのは「習慣の強さ」で、本人の意図などより強かった |
| Fedoroffら(2003)[6] | 食事を我慢しがちな人とそうでない人 | ピザやクッキーのにおいを10分かいだ後、我慢しがちな人は、においと同じ食べ物を多く食べた |
最後の研究は、「やめたい」と思っている人ほどきっかけに反応しやすい可能性を示しています。我慢しがちな人がよけいに食べたのは、においと同じ食べ物が出されたときだけでした。違う食べ物では、においがない場合と変わりませんでした[6]。我慢するほど頭から離れなくなる仕組みは、考えないようにすると跳ね返る仕組みの研究にもまとめています。
03 今日からできる小さな一歩決まった時間の間食を減らすには、まず何をすればいい?
我慢の前に、自分のきっかけを見つけて、その場面から食べ物を遠ざけるのが近道です。日常の記録では「食べ物が手元にある」ことが間食と強く結びついていました。
3日間、間食した「時間・場所・気分」だけメモする
何を食べたかより、いつ・どこで・どんな気分だったかを書きます。自分の合図が見えてきます。
所要 1回10秒
その場所から、お菓子を見えない所へ移す
写真や袋が目に入るだけでも合図になります。デスクの引き出しや、ソファの横の買い置きを別の部屋の棚に移します。考え方は誘惑を遠ざける研究にまとめています。
所要 5分
04 続けるためのコツ学習された「食べたい気持ち」は、消えるの?
合図のあとに食べない経験をくり返すと、結びつきは弱まると考えられています。ただし、学習と同じで日数がかかり、一度で消えるものではありません。
- 合図と食べ物を「ペアにしない日」を重ねる: Jansen(1998)は、合図に触れても食べない経験を重ねることで反応を弱める方法を提案しています[8]。ただし、これは主にむちゃ食いの治療についての理論と予備的な研究です。
- 気分の合図にも気づく: 落ち込んだときの間食は、日常の記録でも見られました[3]。疲れた日に習慣が戻る仕組みはストレスと習慣の研究にまとめています。
- 食べてしまった日を責めない: 結びつきが強いほど、手が伸びるのは自然な反応です。次の合図の場面を1つ変えれば十分です。
- つらい食べ方が続くときは相談を: 食べるのを止められない状態が続き、苦しいときは、医療機関に相談するのも一つの方法です。
05よくある質問
毎日同じ時間におやつを食べると、その時間に欲しくなるの?
その可能性があります。毎日決まった時刻にチョコレートを食べた実験では、15日間続けた研究で、その時刻に「食べたい」気持ちが強まりました。一方、5日間の研究では、食べたい気持ちまでは学習されませんでした。
お菓子の写真や動画を見ると、本当に食べたくなるの?
関係があると考えられます。45報・3,292人分のメタ分析では、写真や動画のきっかけは、本物の食べ物と同じくらいの強さで、その後に食べる量と関係していました。においより強い関係でした。
間食は、我慢すればやめられる?
我慢だけでは難しいことがあります。1,103人の調査では、間食の量を最もよく予測したのは本人の意図より習慣の強さでした。きっかけの場面から食べ物を遠ざけるなど、環境を変える方法を組み合わせるのが現実的です。
出典
- Boswell, R. G., & Kober, H. (2016). Food cue reactivity and craving predict eating and weight gain: a meta-analytic review. Obesity Reviews, 17(2), 159-177. https://doi.org/10.1111/obr.12354
- van den Akker, K., Havermans, R. C., & Jansen, A. (2017). Appetitive conditioning to specific times of day. Appetite, 116, 232-238. https://doi.org/10.1016/j.appet.2017.05.014
- Schüz, B., Bower, J., & Ferguson, S. G. (2015). Stimulus control and affect in dietary behaviours. An intensive longitudinal study. Appetite, 87, 310-317. https://doi.org/10.1016/j.appet.2015.01.002
- Verhoeven, A. A., Adriaanse, M. A., Evers, C., & de Ridder, D. T. (2012). The power of habits: unhealthy snacking behaviour is primarily predicted by habit strength. British Journal of Health Psychology, 17(4), 758-770. https://doi.org/10.1111/j.2044-8287.2012.02070.x
- Birch, L. L., McPhee, L., Sullivan, S., & Johnson, S. (1989). Conditioned meal initiation in young children. Appetite, 13(2), 105-113. https://doi.org/10.1016/0195-6663(89)90108-6
- Fedoroff, I., Polivy, J., & Herman, C. P. (2003). The specificity of restrained versus unrestrained eaters' responses to food cues: general desire to eat, or craving for the cued food? Appetite, 41(1), 7-13. https://doi.org/10.1016/s0195-6663(03)00026-6
- Weingarten, H. P. (1983). Conditioned cues elicit feeding in sated rats: a role for learning in meal initiation. Science, 220(4595), 431-433. https://doi.org/10.1126/science.6836286
- Jansen, A. (1998). A learning model of binge eating: cue reactivity and cue exposure. Behaviour Research and Therapy, 36(3), 257-272. https://doi.org/10.1016/s0005-7967(98)00055-2


