習慣

わかっているのに、なぜ同じ行動をくり返すのか。習慣が「自動」で動く仕組みの研究

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器に盛られたポップコーン
Photo: Alex Munsell alexmunsell / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「やめようと決めたのに、気づいたらまたやっていた」。そんな自分に、がっかりした経験はありませんか。研究では、習慣になった行動は「目的」より「きっかけ」で動きやすくなることがわかっています。意志が弱いせいだけではありません。ただし、人で確かめるのは意外に難しく、再現に失敗した研究もあります。

3行でわかる

  1. 同じ場所・同じ流れで何度もくり返した行動は、その場のきっかけで自動的に出やすくなる。
  2. 映画館でいつもポップコーンを食べる人は、湿気たポップコーンでも新しいものと同じ量を食べた。ただし映画館の中で、利き手で食べたときだけだった。
  3. 「くり返すほど目的と関係なく動く」ことを実験で作る試みは、2018年に5回続けて失敗している。仕組みはまだ研究の途中。

01 悩みの正体わかっているのにやめられないのは意志が弱いから?

意志だけの問題ではありません。くり返した行動は、場所や時間などの「きっかけ」と結びつき、考えなくても始まるようになります。だから「やめたい」と思っていても、きっかけに出会うと体が先に動きます。

習慣の研究では、習慣を「くり返しによって、場面のきっかけと結びついた行動」と考えます。ソファに座るとスマホを開く。帰宅すると冷蔵庫を開ける。こうした流れは、最初は目的があって始めたものです。

ところが同じ場面で何度もくり返すうちに、きっかけだけで行動が出るようになります。目的はもう、行動を引き起こす主役ではありません[1][6]。

習慣は本来、頭の負担を減らす便利な仕組みです。毎回考えなくても歯みがきができるのは、習慣のおかげです。困るのは、やめたい行動も同じ仕組みで続いてしまうことです。

02 科学的にわかっていること習慣になった行動は、なぜ勝手に出てしまうのか

場面のきっかけが行動を直接呼び出すためだと考えられています。そのため、好みや空腹といった「今の気持ち」の影響を受けにくくなります。一方で、人でこれを実験的に作るのは難しく、結果が再現されなかった研究もあります。

Wood、Quinn、Kashy(2002)[2]

大学生に1時間ごとに「今なにをして、なにを考えているか」を記録してもらう日記調査を2つ行いました。ほぼ毎日、同じ場面で行う習慣的な行動の最中は、その行動と関係のないことを考えていることが多くありました。習慣でない行動の最中は、考えと行動が一致しやすく、ストレスも習慣的な行動のほうが少なめでした。

対象: 大学生(2つの日記調査) / 限界: 自己報告の記録で、考えていた内容は本人の申告にもとづきます。

Nealら(2011)[3]

映画館でポップコーンを食べる習慣が強い人は、空腹かどうかや味の好みにほとんど左右されず、湿気たポップコーンも新しいものと同じくらい食べました。ただしそれは、映画館という「いつもの場面」にいて、利き手で食べたときだけでした。習慣が弱い人は、おいしいと感じるかどうかで食べる量が変わりました。

対象: 2つの現場実験 / 限界: 「目的と無関係に動いた」と言い切れるかには異論があります。「映画館らしい体験をする」という別の目的で食べていた可能性も指摘されています[7]。

Tricomiら(2009)[4]

画面の図形を見てキーを押すとお菓子がもらえる課題を、1日だけ練習した人と、3日間(6回)練習した人で比べました。片方のお菓子をおなかいっぱい食べて「欲しくない」状態にしたあと、3日間練習した人は、そのお菓子のキーを押し続けやすくなりました。脳では、練習が進むにつれて線条体の後ろ側(被殻)の反応が強まりました。

対象: 31人(1日群16人、3日群15人)。MRIで脳を測定 / 限界: 人数が少なく、次の研究では再現されませんでした。

de Witら(2018)[5]

「くり返すほど、目的と関係なく動く習慣になる」ことを、4種類の方法で合計5回の実験で確かめようとしました。Tricomiらの実験を、アメリカ(64人)とオランダで別々に同じ手順でやり直しましたが、練習の長さによる違いは見られませんでした。著者らは、健康な人で実験的に習慣を作るのは難しいと結論づけています。

対象: 5つの実験(各群24人以上を目標) / 限界: 実験室の短い練習の話で、何年も続いた日常の習慣を否定するものではありません。

まとめると、日常では「きっかけで勝手に動く」ように見える行動がたしかにあります。ただ、脳の中でどう切り替わるのかは、まだ研究者の間でも決着していません[5][7]。

03 今日からできる小さな一歩仕組みを知ったら、まず何をすればいい?

やめたい行動の「きっかけ」を書き出し、その場面を少し変えることです。習慣は場面とセットで動くので、場面が変わると自動で出にくくなります。

1

やめたい行動の直前を3日メモする

「どこで」「何の後に」「何時ごろ」を一言で書きます。習慣は決まったきっかけで出やすいので、まずそれを見える形にします。

所要 1回30秒

2

いつもの場面を1つだけずらす

座る場所を変える、スマホを別の部屋に置くなど、きっかけとの結びつきを弱めます。Nealらの実験では、利き手でない手で食べると、習慣どおりの食べ方は起きにくくなりました[3](誘惑を遠ざける研究)。

所要 5分

3

新しい習慣は、同じきっかけにつなげる

「歯をみがいた後に」のように、毎日必ずある場面の直後に置きます。同じ場面でくり返すほど、自動で出やすくなります(同じ場所で行う効果の研究)。

所要 1日1回

04 続けるためのコツ新しい習慣が自動になるまで、どれくらいかかる?

研究では平均66日ほどで「自動で出る感じ」が頭打ちになりましたが、人や行動による差が大きいとされています。数日で変わらなくても失敗ではありません。

05よくある質問

悪い習慣がやめられないのは、意志が弱いからですか?

それだけではありません。習慣になった行動は、場所や時間などのきっかけで自動的に出やすくなります。映画館のポップコーンの研究では、習慣が強い人は味が悪くても同じ量を食べました。意志よりも、きっかけを変える工夫が役に立ちます。

習慣は脳のどこで作られるの?

練習をくり返すと、脳の奥にある線条体の後ろ側の反応が強まったという研究があります(Tricomiら, 2009)。ただし同じ実験は2018年の再現で確かめられず、人の脳での仕組みはまだはっきりしていません。

習慣はくり返せば必ず身につきますか?

必ずとは言えません。日常の調査では平均66日ほどで自動化が頭打ちになりましたが、人や行動による差が大きいとされています。実験室で短期間に習慣を作る試みは、5回続けて失敗した報告もあります。

出典

  1. Wood, W., & Rünger, D. (2016). Psychology of habit. Annual Review of Psychology, 67, 289-314. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-122414-033417
  2. Wood, W., Quinn, J. M., & Kashy, D. A. (2002). Habits in everyday life: Thought, emotion, and action. Journal of Personality and Social Psychology, 83(6), 1281-1297. https://doi.org/10.1037/0022-3514.83.6.1281
  3. Neal, D. T., Wood, W., Wu, M., & Kurlander, D. (2011). The pull of the past: When do habits persist despite conflict with motives? Personality and Social Psychology Bulletin, 37(11), 1428-1437. https://doi.org/10.1177/0146167211419863
  4. Tricomi, E., Balleine, B. W., & O'Doherty, J. P. (2009). A specific role for posterior dorsolateral striatum in human habit learning. European Journal of Neuroscience, 29(11), 2225-2232. https://doi.org/10.1111/j.1460-9568.2009.06796.x
  5. de Wit, S., Kindt, M., Knot, S. L., Verhoeven, A. A. C., Robbins, T. W., Gasull-Camos, J., Evans, M., Mirza, H., & Gillan, C. M. (2018). Shifting the balance between goals and habits: Five failures in experimental habit induction. Journal of Experimental Psychology: General, 147(7), 1043-1065. https://doi.org/10.1037/xge0000402
  6. Gardner, B., Lally, P., & Wardle, J. (2012). Making health habitual: The psychology of 'habit-formation' and general practice. British Journal of General Practice, 62(605), 664-666. https://doi.org/10.3399/bjgp12X659466
  7. De Houwer, J. (2019). Moving beyond System 1 and System 2: Conditioning, implicit evaluation, and habitual responding might be mediated by relational knowledge. Experimental Psychology, 66(4), 257-265. https://doi.org/10.1027/1618-3169/a000450