用もないのに、ついスマホを開いてしまうのはなぜ?「チェック習慣」の仕組みを研究で調べた

通知も来ていないのに、気づくとスマホを開いて、何も見ずに閉じている。それは、あなたの意志が特別に弱いからではありません。研究では、新しい情報がすぐ手に入る体験がくり返されると、きっかけだけで手が動く「チェック習慣」になると考えられています。しかも、その回数は本人が思っているより、ずっと多いことがわかっています。
3行でわかる
- 短くくり返しスマホを確かめる「チェック習慣」は、すぐ手に入る新しい情報がごほうびになって強まると考えられています(Oulasvirtaら, 2012)。
- 23人の記録では、スマホを使ったのは1日平均約85回。本人の見積もり(約37回)の倍以上で、使った回の55%は30秒未満でした(Andrewsら, 2015)。
- 37人を撮影した研究では、スマホを手に取った場面の89%が、通知ではなく本人から始まっていました(Heitmayer・Lahlou, 2021)。
01 悩みの正体用もないのにスマホを開くのは、意志が弱いから?
意志の弱さだけでは説明できません。スマホを開くと新しい情報がすぐ手に入る体験がくり返され、手が空いたときなどのきっかけで、考える前に手が動く習慣になっていると考えられています。
習慣とは、決まったきっかけに反応して、ほぼ自動で出てくる行動のことです。きっかけと行動のつながりは、くり返すたびに強くなります。仕組みのくわしい話は習慣が「自動」で動く仕組みの研究にまとめています。
スマホは、この習慣が育ちやすい道具です。開けば、新しいメッセージ、ニュース、だれかの投稿など、何かしら新しい情報があります。しかも、数秒で手に入ります。SNSなどのアプリは、使うたびのごほうびと、習慣を呼び起こすきっかけを組み込むことで、毎日使う習慣を生んでいると整理したレビューもあります[5]。
研究者は、スマホのきっかけを2種類に分けて考えています[4]。1つは、通知音や振動、アイコンの数字、スマホが目に入ることなどの外のきっかけです。もう1つは、手持ちぶさた、退屈、少しの不安といった内側のきっかけです。どちらも、本人が「見よう」と決める前に、手を動かすことがあります。
02 科学的にわかっていることスマホのチェックは、どのくらい「無意識」なの?
記録や撮影の研究では、スマホを見る回数は本人の見積もりの倍以上で、手に取る場面の多くは通知なしで本人から始まっていました。チェックの多くが、気づかないうちに起きていると考えられます。
Oulasvirtaら(2012)[1]
スマホの使い方を複数のデータで調べ、「チェック習慣」と名づけました。端末ですぐ見られる、変わり続ける情報を、短くくり返し確かめる行動です。現場での実験では、すぐ手に入る情報がごほうびになって、チェックが生まれて強まることが示されました。チェックはほかの使い方のきっかけにもなり、全体の使用時間を増やしうるとされています。利用者自身は、この癖を「依存というより、うっとうしいもの」と感じていました。
対象: 複数のデータと3つの研究(2009年ごろのデータ) / 限界: 当時のスマホでの研究。今のアプリの通知の仕組みとは違う点もある。
Andrewsら(2015)[2]
イギリスの大学の18〜33歳に、スマホの使い方を14日間自動で記録するアプリを入れてもらいました。分析した23人は、1日平均84.68回スマホを使い、合計は約5.05時間でした。使った回の55%は30秒未満でした。ところが本人の見積もりは1日37.20回で、実際の回数とはほとんど関係がありませんでした。一方、使った時間の見積もり(約4.12時間)は、実際と大きくはずれていませんでした。
対象: 23人(Androidの利用者、大学の学生と職員) / 限界: 人数が少なく、通話や音楽の再生も「使用」に含まれている。
Heitmayer・Lahlou(2021)[3]
37人に目線の高さの小型カメラをつけてもらい、ふだんの生活を約200時間撮影しました。記録された1,130回のスマホの操作のうち、89%は通知がきっかけではなく、本人が自分から始めたものでした。著者らは、スマホが集中をじゃまする原因は端末そのものより、身についた使い方の習慣にあると結論づけています。
対象: 37人、1,130回の操作 / 限界: 少人数の撮影研究。結果は操作の回数での割合で、使った時間の割合ではない。
Ellisら(2019)[6]
「スマホ依存」などをたずねる質問紙の点数と、iPhoneの記録された実際の使用時間を比べました。両者の関係は全体として弱く、質問紙では実際の使い方をほとんど言い当てられませんでした。「依存」として測るより、習慣として測る質問のほうが、まだ実際に近い結果でした。
対象: iPhoneの利用者 / 限界: 使用時間の記録との比較で、チェックの回数そのものは主な分析の対象ではない。
| 研究 | 調べ方 | わかったこと |
|---|---|---|
| Andrewsら(2015) | 23人の14日間の記録 | 1日約85回、見積もりの倍以上 |
| Andrewsら(2015) | 同上 | 使った回の55%は30秒未満 |
| Heitmayer・Lahlou(2021) | 37人を小型カメラで撮影 | 手に取る場面の89%は本人から |
| Ellisら(2019) | 質問紙と実際の記録を比較 | 自己評価は実際とずれやすい |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。どれも人数の少ない研究ですが、「思っているより多く、思っているより無意識に見ている」という点では向きがそろっています。
03 今日からできる小さな一歩ついスマホを開く癖を弱めるには?
意志で我慢するより、きっかけを減らし、開くまでの手間を1つ足すのが現実的です。複数の工夫を組み合わせた実験では、1日の使用時間が平均1.27時間減りました。
1日の「回数」を一度だけ確かめる
スマホの設定にある利用時間の画面で、1日に持ち上げた回数を見ます。Andrewsらの研究のように、回数は思ったより多いことがあります。責めずに数字だけ知っておきます。
所要 1分
よく開くアプリをフォルダの奥に移す
ホーム画面の1枚目から外し、開くまでの手間を1つ足します。手が勝手に動いても、途中で「今、見る必要がある?」と気づく間が生まれます。
所要 3分
Olsonら(2022)は、カナダの大学生に、通知を減らす・スマホを裏返して手の届かない所に置く・指紋認証をやめてパスワードにする・画面を白黒にするなどの工夫を選んで続けてもらいました[7]。51人の研究では、1日の使用時間が4.67時間から3.40時間に減りました。対照のグループと比べた70人の研究でも、使用時間は工夫をしたグループで57分、対照では11分減りました。ただし、工夫を組み合わせているため、どれが効いたかは分けられていません。
04 続けるためのコツスマホを見る回数は、ゼロにしないとだめ?
ゼロにする必要はありません。チェックの多くは自動で起きるので、回数を減らす仕組みを作り、見たくなった自分に気づければ十分です。
- 「見てしまった」を責めない: 手に取る場面の多くは無意識に起きています。気づいた時点で置けば、それで一歩です。
- 手持ちぶさたの時間に別の行動を決める: 待ち時間は、深呼吸を1回するなど代わりの行動を決めておきます。やり方は代わりの行動に置きかえる研究にまとめています。
- 白黒の画面は、合う人だけ試す: Olsonらの研究では、画面を白黒にする工夫を続けた人は38%と、最も続きませんでした。
- 生活に支障が出ているときは相談を: 眠れない、仕事や学校に行けないなど困りごとが続く場合は、医療機関に相談するのも一つの方法です。
05よくある質問
スマホを1日に何回くらい見ているの?
イギリスの大学で23人の使い方を14日間記録した研究では、1日平均約85回、合計約5時間でした。本人の見積もりは1日37回ほどで、実際の半分にも届いていませんでした。人数の少ない研究なので、目安として受け取るのが妥当です。
ついスマホを見てしまうのは、スマホ依存なの?
くり返しのチェックは、多くの場合「依存」より「習慣」として説明されています。Oulasvirtaらの研究では、利用者はチェックの癖を「依存というより、うっとうしいもの」と感じていました。ただし、生活に支障が出ている場合は医療機関に相談するのも一つの方法です。
通知を切れば、スマホを見る回数は減る?
減らす助けにはなりますが、それだけでは足りない可能性があります。37人を小型カメラで撮影した研究では、スマホを手に取った場面の89%は通知ではなく、本人が自分から始めたものでした。
出典
- Oulasvirta, A., Rattenbury, T., Ma, L., & Raita, E. (2012). Habits make smartphone use more pervasive. Personal and Ubiquitous Computing, 16(1), 105-114. https://doi.org/10.1007/s00779-011-0412-2
- Andrews, S., Ellis, D. A., Shaw, H., & Piwek, L. (2015). Beyond self-report: Tools to compare estimated and real-world smartphone use. PLOS ONE, 10(10), e0139004. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0139004
- Heitmayer, M., & Lahlou, S. (2021). Why are smartphones disruptive? An empirical study of smartphone use in real-life contexts. Computers in Human Behavior, 116, 106637. https://doi.org/10.1016/j.chb.2020.106637
- Bayer, J. B., Campbell, S. W., & Ling, R. (2016). Connection cues: Activating the norms and habits of social connectedness. Communication Theory, 26(2), 128-149. https://doi.org/10.1111/comt.12090
- Anderson, I. A., & Wood, W. (2021). Habits and the electronic herd: The psychology behind social media's successes and failures. Consumer Psychology Review, 4(1), 83-99. https://doi.org/10.1002/arcp.1063
- Ellis, D. A., Davidson, B. I., Shaw, H., & Geyer, K. (2019). Do smartphone usage scales predict behavior? International Journal of Human-Computer Studies, 130, 86-92. https://doi.org/10.1016/j.ijhcs.2019.05.004
- Olson, J. A., Sandra, D. A., Chmoulevitch, D., Raz, A., & Veissière, S. P. L. (2022). A nudge-based intervention to reduce problematic smartphone use: Randomised controlled trial. International Journal of Mental Health and Addiction. https://doi.org/10.1007/s11469-022-00826-w

