集中力

「スマホが視界にあるだけで集中力が落ちる」は本当か。22件の研究のメタ分析で調べた

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AIによる調査公開されている研究論文や公的機関の資料をAI(Claude)が調べ、内容を確認して整理しました。SEADICEが独自に実験したものではありません。出典は末尾にあります。

机の上に置いたスマホがなんとなく気になって、作業に集中できない。そんな経験がある人は少なくないはずです。実はこの現象には名前があり、多くの研究者がその真偽を検証してきました。今日は、22件の研究をまとめた最新のメタ分析と、元の実験を厳密に再現した追試の結果から、どこまで本当なのかを見ていきます。

3行でわかる

  1. スマホの存在が集中力を下げる現象は「ブレインドレイン(脳の消耗)効果」と呼ばれ、2017年の研究で報告された。
  2. 2023年に22件の研究をまとめたメタ分析では、全体として小さいが統計的に有意な悪影響が確認された。ただし影響は「記憶」の課題で明確で、「注意」の課題でははっきりしなかった。
  3. 元の実験を事前登録した手順で厳密に再現した2022年の追試では、効果は再現されなかった。「スマホがあるだけで必ず集中力が落ちる」とは言い切れない。

01悩みの正体を、やさしい言葉で

スマホを意識から追い出すのにも脳の力を使うため、注意を要する作業では使える余力が減ると考えられている。ただし、その影響の大きさは研究によって差がある。

2017年、心理学者のワードらは、スマホが鳴ったり触ったりしていなくても、視界や手の届く範囲に「存在するだけ」で認知能力が下がる現象を報告し、これを「ブレインドレイン(脳の消耗)効果」と名付けました。考え方はこうです。スマホは通知が来る可能性がある特別な物なので、脳は無意識のうちに「気にしないようにする」処理を続けます。この「気にしないようにする」こと自体に、限られた脳の処理能力(ワーキングメモリ)の一部が使われてしまい、目の前の作業に使える余力が減ってしまう、というものです。この報告以降、同じ現象を確かめようとする研究が数多く行われました。

02科学的にわかっていること

22件の研究を統合したメタ分析では、スマホの存在が認知パフォーマンス全体をわずかに下げる効果が確認された。ただし影響の強さは課題の種類で異なり、追試では再現しなかった例もある。

Böttger, Poschik & Zierer(2023)[1]

22件の研究・43個の効果量を統合したメタ分析。スマホの使用・存在が認知パフォーマンスに与える影響全体では、統計的に有意だが小さい悪影響(効果量g=-0.14)が見られた。影響は「記憶」課題で最も明確だった(g=-0.23)が、「注意」課題(g=-0.07)や「一般的な認知課題」(g=0.10)では統計的に有意ではなかった。

対象: 22件の研究・43の効果量を統合 / 限界: 研究間で結果のばらつき(異質性)が大きく、アジア圏の研究でのみ悪影響が明確という地域差も見られた。

Tanil & Yong(2020)[2]

大学生119人を対象に、スマホを机の上に置いた条件(61人)と視界の外に置いた条件(58人)で記憶課題の成績を比較。視界の外に置いた群の再生正答数(平均14.21点)は、机の上に置いた群(平均13.08点)より高かった。

対象: 大学生119人 / 限界: 使用した課題は特定のワーキングメモリ課題のみで、集中力全般への一般化には注意が必要。

Ruiz Pardo & Minda(2022)[3]

ワードらの2017年の実験を、事前に手順を登録したうえで厳密に再現した追試。スマホを机の上・ポケットやバッグの中・別室に置く条件を比較したが、ワーキングメモリ課題とGo/No-Go課題(衝動的な反応を抑える課題)のいずれも、条件間で成績に差は見られなかった。

対象: ワードらの実験2と同じ課題・条件構成による追試 / 限界: 1件の追試であり、これだけで元の効果が「まったくない」と断定することはできない。

まとめると、「スマホが視界にあるだけで集中力が落ちる」という説は、記憶に関わる課題ではデータの裏付けが比較的あるものの、注意力そのものへの影響は研究によって食い違っており、まだ議論が続いている途中だと言えます。

03今日からできる小さな一歩

記憶や暗記が絡む作業ほど、スマホを視界の外に置く効果を期待しやすい。まずは負担の小さいところから試してみるのが現実的。

1

暗記・勉強のときは別室か引き出しへ

記憶課題への影響がもっとも報告されているため、覚える作業のときだけでもスマホを視界と手の届く範囲の外に置く。

所要 30秒

2

画面を下向きにして通知を隠す

別室に置けない場合は、画面を伏せて通知が見えない状態にするだけでも意識に入る回数を減らせる。

所要 数秒

3

効果を体感で確かめてみる

同じような作業を「スマホを近くに置いた日」「別室に置いた日」で数日比べてみると、自分にとって影響があるかどうかの手がかりになる。

所要 数日

04続けるためのコツ

「絶対に効く」と思い込むより、「記憶が絡む作業では試す価値がある」くらいの気持ちで続けるほうが長続きしやすい。

05よくある質問

スマホの電源を切っておけば大丈夫?

紹介した研究の多くは、電源のオン・オフよりも「視界や手の届く範囲にあるかどうか」を条件にしています。電源を切っていても目に入る位置にあれば、意識せず気を取られる可能性は残ります。気になる場合は視界の外に置くほうが確実です。

この効果は誰にでも同じくらい起きるの?

メタ分析では、影響の大きさは研究によってかなり差があり、地域や課題の種類によっても違いが見られました。誰にでも同じ強さで起きるとは限らず、「起こりうるが個人差が大きい」というのが実情です。

出典

  1. Böttger, T., Poschik, M., & Zierer, K. (2023). Does the Brain Drain Effect Really Exist? A Meta-Analysis. Behavioral Sciences, 13(9), 751. https://doi.org/10.3390/bs13090751
  2. Tanil, C. T., & Yong, M. H. (2020). Mobile phones: The effect of its presence on learning and memory. PLOS ONE, 15(8), e0219233. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0219233
  3. Ruiz Pardo, A. C., & Minda, J. P. (2022). Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychologica, 229, 103717. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103717
  4. Ward, A. F., Duke, K., Gneezy, A., & Bos, M. W. (2017). Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity. Journal of the Association for Consumer Research, 2(2), 140-154.(元の報告。上記メタ分析・追試で内容を確認) https://doi.org/10.1086/691462