悪い習慣は「別の行動」に置き換えればやめられるのか。4つの研究でわかったこと

爪を噛む、髪を触る、間食がやめられない。そんな癖に対して「やめようとするより、別の行動に置き換えるといい」というアドバイスを聞いたことがあるかもしれません。頭ではわかっていても、実際にどこまで効くのかは気になるところです。体の癖を対象にした研究と、欲求が絡む習慣を対象にした研究を並べて見ると、置き換えが効きやすい場面とそうでない場面が分かれてきました。
3行でわかる
- 爪噛みや抜毛、皮膚むきなど体の癖には、別の動きに置き換える方法を含む自習マニュアルで中程度の改善が確認されている(効果量d=0.52〜0.54)。
- 置き換える動きは、元の癖と似ていなくてもよい。子ども26人の研究では、似た動きと似ていない動きで効果に差はなかった。
- 禁煙や間食のように「欲求」が絡む習慣では、置き換えだけで標準的なカウンセリングを上回る効果は確認されていない。
01 悩みの正体「置き換えればやめられる」は本当?
「置き換えで効く」という考え方は、爪噛みや抜毛など体の癖を対象にした研究で確認されている。ただ、すべての悪い習慣に同じように効くとは確認されていない。
体の癖は、むずむず感や緊張など「きっかけ」が先にあり、その動きをすること自体がほっとする感覚につながっていることが多いとされます。この種の癖には、むずむず感が来た瞬間に、癖とは同時にできない別の動きをする「競合反応」を練習する方法(習慣逆転法)が、臨床研究で長く使われてきました。
一方、間食や喫煙のように「欲しい」という欲求そのものが強い習慣は、少し事情が異なります。欲求を他の楽しみに置き換えようとする試みが、必ずしも同じように効くとは限りません。
02 科学的にわかっていること体の癖には、どのくらい効果があるのか?
体の癖は、代わりの動きに置き換える方法で中程度の改善が確認されている。一方、欲求が絡む習慣への置き換えは、標準的な対処を上回る効果を示していない。
Moritzら(2022)[1]
爪噛み・抜毛・皮膚むきなど体の癖がある成人334人を、6週間の自習マニュアルを使う3つの群と待機群に分けたところ、習慣逆転法の手引きから始めた群は待機群より症状が中程度に改善した(効果量d=0.54、p=0.003)。3群とも、似た別の技法(デカップリング)の手引きも順番を変えて受け取っている。
対象: 体の癖がある成人334人(無作為割付・自習マニュアル) / 限界: 自己申告の症状尺度が指標で、長期的な維持は確認されていない。
Woodsら(1999)[2]
口や指の慢性的な癖がある子ども26人を「似た代わりの動き」群・「似ていない代わりの動き」群・待機群に分けたところ、両方の置き換え群が待機群より癖が有意に減ったが、似た動きと似ていない動きの間に差はなかった。
対象: 口腔・指の慢性的な癖がある子ども26人 / 限界: 小規模で、対照群は「待機」のみ。
Twohig・Woods(2001)[3]
爪を噛む人を対象に、代わりの動きを続ける時間を1分・3分・5秒で比べたところ、1分または3分続けた群は爪の長さが長期的にも伸びたが、5秒だけの群は一時的にしか伸びなかった。
対象: 爪を噛む習慣がある人(小規模) / 限界: 対象人数が少なく、「続ける長さ」の目安を示した段階の研究。
Audrain-McGovernら(2023)[4]
禁煙を目指す喫煙者288人を、喫煙や高カロリーの間食の代わりになる別の楽しみを増やす行動活性化プログラムの群と、標準的な禁煙カウンセリングの群に分けたところ、26週後の禁煙率は18%対23%で、差はなかった。
対象: 禁煙を目指す成人喫煙者288人(ニコチン補充療法と併用) / 限界: 欲求の対象が嗜好品で、体の癖とは性質が異なる。
03 今日からできる小さな一歩今日、何から置き換えを試せる?
決まった体の動きの癖なら、別の動きへの置き換えを試す価値がある。間食や喫煙のような欲求が絡む習慣は、置き換えだけに頼らない。
癖が始まる前の感覚に気づく
爪を噛む・髪を触るなど、癖が出る直前のむずむず感や緊張をメモに書き出す。1日に何回気づけたか数えるだけでよい。
所要 1日5分
代わりの動きを1つ決めて1分続ける
癖と同時にはできない動きを1つ選ぶ(手を握る、ポケットに手を入れる等)。似ていなくてよい。癖が出そうな場面で、短くても1分前後は続ける。
所要 1回1〜3分
欲求が絡む習慣は環境も一緒に変える
間食や喫煙など「欲しい」気持ちが強い習慣は、代わりの行動だけでなく、買い置きをしない・置く場所を変えるなど環境側の工夫も同時に行う。
所要 その都度
04 続けるためのコツ置き換えを続けるコツは?
代わりの動きは癖が出そうな場面で使い、1分前後は意識して続けると効果が続きやすい。
- 代わりの動きは、まず癖が出そうな場面で使う。習慣逆転法では、むずむず感が来たときに行うのが基本とされる。
- 研究では5秒ほどで切り上げた群は効果が続かなかった。1分前後は意識して続ける。
- 欲求が絡む習慣では、置き換え単独で足りないことがある。環境を変える工夫を重ねる。
05よくある質問
置き換える代わりの行動は、元の癖と似ていないといけないの?
研究では、似た動きと似ていない動きで効果に差はありませんでした。癖と同時にできない動きなら、好きな動きを選んで構いません。
禁煙や間食も「置き換え」だけでやめられるの?
喫煙者288人の研究では、欲求が絡む習慣を別の楽しみに置き換えるプログラムが、標準的なカウンセリングを上回る効果を示しませんでした。環境を変える工夫などと組み合わせるのが現実的です。関連記事の「やめたい衝動は、待てば消えるのか」も参考になります。
この方法は1人でもできる?
Moritzらの研究は、治療者が付かない自習マニュアルでも中程度の改善が確認されています。ただし癖が強く日常生活に影響している場合は、専門家に相談することも選択肢です。関連記事の「習慣を記録するだけで続けやすくなるのか」も、取り組みを続ける工夫として役立ちます。
出典
- Moritz S, Penney D, Bruhns A, Weidinger S, Schmotz S (2022). Habit Reversal Training and Variants of Decoupling for Use in Body-Focused Repetitive Behaviors: A Randomized Controlled Trial. Cognitive Therapy and Research, 47(1), 109-122. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9672630/
- Woods DW, Murray LK, Fuqua RW, Seif TA, Boyer LJ, Siah A (1999). Comparing the effectiveness of similar and dissimilar competing responses in evaluating the habit reversal treatment for oral-digital habits in children. Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 30(4), 289-300. https://doi.org/10.1016/s0005-7916(99)00031-2
- Twohig MP, Woods DW (2001). Evaluating the duration of the competing response in habit reversal: a parametric analysis. Journal of Applied Behavior Analysis, 34(4), 517-520. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1284348
- Audrain-McGovern J, Wileyto EP, Ashare R, Albelda B, Manikandan D, Perkins KA (2023). Behavioral activation for smoking cessation and the prevention of smoking cessation-related weight gain: A randomized trial. Drug and Alcohol Dependence, 244, 109792. https://doi.org/10.1016/j.drugalcdep.2023.109792

