ポイントやバッジで習慣は続く? ゲーム化(ゲーミフィケーション)の研究でわかった効き方と、終わった後

歩数アプリのポイント、連続記録のバッジ、レベルアップの演出。こうした「ゲームのしかけ」で習慣が続くのか、気になる人は多いはずです。研究では、運動については続けている間の効果がおおむね確かめられています。ただし、ゲームが終わると効果は弱まりやすく、残りやすかったのは人との競争を組み込んだ形でした。
3行でわかる
- 判定は「ゲームの期間中は効く。終わった後は弱まる」。16の実験(2,407人)のメタ分析で、運動量は小〜中程度増えました。
- 終了から平均14週後の効果は、主な分析では統計的にはっきりしませんでした。602人の試験では、終了後も差が残ったのは競争の形だけでした。
- 効果が確かめられた多くは、仲間との協力・応援・競争を組み込んだ設計です。ポイントだけで長く続くとは言えません。
01 悩みの正体習慣の「ゲーム化」とは何をすること?
ゲーム化(ゲーミフィケーション)とは、ポイント・レベル・バッジ・ランキングなど、ゲームのしかけを日常の行動に持ち込むことです。習慣化アプリや歩数計アプリで広く使われています。
ねらいは、目標を達成するたびに小さな手ごたえを得て、行動をくり返しやすくすることです。すぐ楽しいご褒美の研究や記録するだけの効果と近い考え方です。
気になるのは2点です。1つは、本当に行動が増えるのか。もう1つは、ゲームをやめた後も行動が残るのか、つまり習慣になったのかです。
02 科学的にわかっていることポイントやレベルで、運動は本当に増える?
増えます。ゲーム化した取り組みは、運動量を小〜中程度増やしました。ただしゲームが終わった後の効果は弱く、残るかどうかは設計しだいでした。
Mazeasら(2022)[1]
2010〜2020年の16のランダム化比較試験(2,407人)をまとめたメタ分析です。ゲーム化した取り組みで、体を動かす量は小〜中程度増えました(効果の大きさ g = 0.42)。ゲームのしかけが無い運動プログラムと比べても、小さな上乗せがありました(g = 0.23)。歩数で比べると1日あたり約1,400歩多く、2つの研究を除いた分析では約1,600歩多くなりました。
対象: 16の試験、大人と10代、持病のある人を含む / 限界: 終了後まで追ったのは6試験だけ。終了から平均14週後の効果は、主な分析では統計的にはっきりせず(g = 0.09)、一部を除いた分析で小さな効果(g = 0.15)でした。
Patelら(2019)STEP UP試験[2]
米国40州の、体重が多めの大人602人を4つに分けました。歩数計だけの群と、ポイントとレベルのあるゲームに「応援」「協力」「競争」のどれかを組み合わせた群です。24週間のゲーム中は、3つのゲーム群すべてで歩数が増え、最も増えたのは競争の群でした(1日あたり920歩多い)。ゲーム終了後の12週間は、どの群も歩数が下がりました。対照群より多いままだったのは、競争の群だけでした(569歩)。
対象: 米国の大人602人(平均39歳、男性71%) / 限界: 体重が多めの人が対象。参加者の7割が男性。
Patelら(2017)BE FIT試験[3]
94家族・200人の大人で、家族で協力してポイントを集めレベルを上げるゲームを12週間行いました。歩数の目標を達成した日の割合は、ゲーム群53%、対照群32%でした。ゲーム終了後の12週間は下がったものの、目標を達成した日は44%と33%で、差が残りました。
対象: 米国の長期研究に参加している家族、平均55歳 / 限界: 健康研究に長く参加している人たちで、意欲が高めの可能性があります。
Johnsonら(2016)[4]
健康と心の分野でゲーム化を調べた研究の系統的レビューです。調べた結果のうち59%が良い効果、41%がまちまちか効果なしでした。悪い効果だけの結果はありませんでした。効果がはっきりしていたのは、運動など行動の結果でした。
対象: 19本の論文 / 限界: 研究の質は中程度以下が多い。長期の効果を調べた研究がとても少なく、目新しさで効いているだけの可能性も残るとしています。
| 研究 | ゲーム中 | 終わった後 |
|---|---|---|
| Mazeasら(2022)16試験 | 運動量が増えた(g = 0.42) | 弱まる。はっきりしない〜小さい |
| STEP UP(2019)602人 | 3つの形すべてで増加。競争が最大 | 差が残ったのは競争だけ |
| BE FIT(2017)200人 | 目標達成日 53%対32% | 44%対33%で差が残った |
| Johnsonら(2016)レビュー | 結果の59%が良い効果 | 長期の研究がほぼ無い |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。どの研究でも、ゲームが終わった後は行動が下がっています。ゲーム化は「始める・増やす」には役立つ一方、それだけで習慣が残るとは言えない、というのが現時点での読み方です。
03 今日からできる小さな一歩ゲーム化を習慣づくりに生かすには?
人とのつながりを組み込み、ゲームが終わる前に「いつ・どこで」のきっかけを決めておくのが、研究から考えた使い方です。ポイントだけに頼らないことがポイントです。
誰かと一緒のゲームにする
家族や友人と歩数を見せ合う、チームで目標を足し合うなど、人を巻き込みます。研究で効果が出た設計の多くは、応援・協力・競争のどれかを含んでいました。
所要 5分(設定)
目標は「いまより少し上」にする
STEP UPやBE FITでは、まず自分のふだんの歩数を測り、そこから増やす目標を自分で選びました。いきなり高い目標にしないのがコツです。
所要 1週間(ふだんの量を測る)
ゲームの終わりに備えて、きっかけを決める
「昼食のあとに10分歩く」のように、行動を毎日の場面と結びつけておきます。ゲームが終わっても行動が残るように、という研究から考えた工夫です。詳しくはif-thenプランの研究にまとめています。
所要 3分
04 続けるためのコツゲームに飽きたら、習慣も終わり?
行動が少し下がるのは、研究ではふつうに起きることです。下がっても、ゲームを始める前よりは多い状態が残った研究もあります。飽きたら形を変えて続けるのが現実的です。
- 飽きは失敗ではない: ゲーム終了後に下がるのは、どの研究でも見られました。下がった自分を責める必要はありません。
- しかけを入れ替える: 一人のポイント集めに飽きたら、誰かとの勝負や協力に切り替えてみます(研究の結果から考えた工夫です)。
- 途切れたときの立て直し: 連続記録が切れて気持ちが折れたときは、記録が途切れた後の研究が参考になります。
05よくある質問
習慣化アプリのポイントやバッジは効果がある?
運動については、効果を示す研究が多くあります。16の実験(2,407人)をまとめたメタ分析では、ゲーム化した取り組みで体を動かす量が増え、効果の大きさは小〜中程度(g = 0.42)でした。ただし、ゲームが終わった後は効果が弱まりました。
ゲームが終わったら、元に戻ってしまう?
弱まる研究が多いです。メタ分析では、終了から平均14週後の効果は、主な分析では統計的にはっきりせず(g = 0.09)、一部の研究を除いた分析で小さな効果(g = 0.15)が残る程度でした。602人の試験では、終了後も差が残ったのは競争の形だけでした。
一人でもゲーム化の効果はある?
研究で効果が確かめられたものの多くは、家族や仲間との協力・応援・競争を組み込んでいます。ポイントだけの一人用アプリが同じだけ効くかは、はっきりしていません。
出典
- Mazeas, A., Duclos, M., Pereira, B., & Chalabaev, A. (2022). Evaluating the effectiveness of gamification on physical activity: Systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Journal of Medical Internet Research, 24(1), e26779. https://doi.org/10.2196/26779
- Patel, M. S., Small, D. S., Harrison, J. D., et al. (2019). Effectiveness of behaviorally designed gamification interventions with social incentives for increasing physical activity among overweight and obese adults across the United States: The STEP UP randomized clinical trial. JAMA Internal Medicine, 179(12), 1624-1632. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2019.3505
- Patel, M. S., Benjamin, E. J., Volpp, K. G., et al. (2017). Effect of a game-based intervention designed to enhance social incentives to increase physical activity among families: The BE FIT randomized clinical trial. JAMA Internal Medicine, 177(11), 1586-1593. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2017.3458
- Johnson, D., Deterding, S., Kuhn, K.-A., Staneva, A., Stoyanov, S., & Hides, L. (2016). Gamification for health and wellbeing: A systematic review of the literature. Internet Interventions, 6, 89-106. https://doi.org/10.1016/j.invent.2016.10.002

