習慣

小さなご褒美で習慣は続きやすくなる?「すぐ楽しい」の研究でわかった効き方と限界

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ジムに積まれたカラフルなダンベル
Photo: Ser Amantio di Nicolao / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「運動を続けたら自分にご褒美」と決めても、気づけばやめている。そんな経験は珍しくありません。研究で調べると、習慣が続くかを強く予測したのは、終わった後のご褒美より「やっている最中の楽しさ」でした。ご褒美は期間中は行動を増やしますが、効果は弱まりやすく、休みをはさむと消えることもあります。

3行でわかる

  1. 5つの研究で、目標を続けられるかを予測したのは、先の結果(健康など)ではなく、その場の楽しさだった。
  2. 「ジムでだけ好きな小説を聴ける」実験ではジム通いが51%増えたが、休みの後は差が消えた。6万人の実験でも、終わった後に効果が残ったのは8%のプログラムだけだった。
  3. もともと好きなことに物のご褒美を約束すると、自分からやる気持ちが下がることがある。ほめ言葉や、つまらない作業へのご褒美では、その悪影響は見られなかった。

01 悩みの正体体にいい習慣ほど続かないのはなぜ?

運動や勉強の良い結果は、何週間も先にしか来ないからです。研究では、続くかどうかを左右していたのは先の結果より「やっている最中の楽しさ」のほうでした。

WoolleyとFishbach(2017)は5つの研究で、目標を続けられるかを調べました[1]。人は運動や勉強を「健康のため」「将来のため」と、先の結果のために始めます。ところが、実際に続いていたかを予測したのは、その場の楽しさ(すぐ手に入るご褒美)でした。先の結果の大きさは、続くかどうかとは結びついていませんでした。

新年の目標でも、1回の運動や勉強でも、1週間と3か月のどちらの期間でも、同じ傾向が見られました[1]。習慣が「自動」で動く仕組みそのものは習慣が自動で動く仕組みの研究で紹介しています。

02 科学的にわかっていることご褒美を用意すると、習慣は続く?

ご褒美がある間は、行動は増えます。ただ効果は時間とともに弱まり、休みをはさむと消えやすいことが、複数の実験でわかっています。ご褒美をやめた後も続くかは、研究によって結果が分かれます。

Milkman、Minson、Volpp(2014)[2]

続きが気になる小説の朗読(オーディオブック)を「ジムでしか聴けない」ようにする実験です。好きなことと、やるべきことをセットにする方法で「誘惑の抱き合わせ」と呼ばれます。始めた直後は、ジムに通う回数が何もしない組より51%多くなりました。ところが効果は週ごとに弱まり、感謝祭の休みのあとは差がなくなりました。

対象: アメリカの大学の学生・教職員226人を3組にランダムに分けた / 限界: 1つの大学の小さな研究で、健康の数値には差が出ませんでした。それでも実験後、61%の人がこの仕組みにお金を払ってでも使いたいと答えました。

51% → 差なし

「ジムでだけ小説を聴ける」組のジム通い。始めた直後は51%増えたが、休みをはさむと差が消えた[2]

Milkmanら(2021・メガスタディ)[3]

スポーツジム会員61,293人を対象に、54種類の4週間プログラムを同時に比べました。45%のプログラムがジム通いを9〜27%増やしました。最も効いたのは、運動を休んだ後にジムへ戻ると、ごく小さなポイントがもらえる方法でした。一方で、4週間が終わった後も効果が測れたのは、全体の8%だけでした。

対象: アメリカのジムチェーンの会員61,293人 / 限界: 4週間のプログラムで、成果はジムに行った回数だけを測っています。

Mitchellら(2020・メタ分析)[4]

お金のご褒美で運動を促すランダム化比較試験23件(6,074人)をまとめました。22件中20件で、ご褒美の期間中に効果がありました。1日の歩数は平均で約607歩増えました。ご褒美をやめた後に効果が残ったのは18件中4件だけでしたが、数値をまとめると約514歩の増加が残っていました。

対象: 大人(平均41歳、64%が女性) / 限界: 著者自身が、「数えた結果」と「まとめた数値」が一致しないと書いています。

ここまでを判定表にすると、次のようになります。

ご褒美のタイプ研究でわかったこと判定
やっている最中の楽しさ先の結果より、続くかどうかを強く予測した[1][5]効く
好きなこととのセット始めは51%増。ただし時間とともに弱まった[2]効くが弱まる
お金やポイント期間中は増える。やめた後は結果が分かれる[3][4]期間中は効く
もともと好きなことへの物のご褒美自分からやる気持ちを下げることがある[6][7]逆効果のおそれ

02 科学的にわかっていることご褒美でやる気がなくなるって本当?

条件しだいです。もともと楽しんでいることに、前もって約束した物のご褒美をつけると、自分からやる気持ちが下がるという結果があります。ほめ言葉や、つまらない作業へのご褒美では、そうした悪影響は見られませんでした。

Deci、Koestner、Ryan(1999・メタ分析)[6]

128件の実験をまとめました。「やったら」「やり終えたら」もらえる物のご褒美は、ご褒美がなくなった後に自分から取り組む行動を減らしていました(効果の大きさd=−0.40、−0.36)。反対に、前向きなほめ言葉は、取り組む行動も興味も高めていました(d=0.33、0.31)。

対象: 128件の実験(子どもと大学生が中心) / 限界: パズルのような、もともと面白い課題での実験が多くを占めます。

Cameron、Banko、Pierce(2001・メタ分析)[7]

同じ分野を別の方法でまとめ直し、「ご褒美は一般にやる気を損なわない」と結論しました。つまらない課題へのご褒美は、むしろ自分から取り組む行動を増やしました。悪影響が出たのは、面白い課題に、前もって約束した物のご褒美を、出来と関係なく渡したときでした。

種類: 既存研究のまとめ直し / 限界: Deciらとの間で、まとめ方をめぐる論争が続いています。

03 今日からできる小さな一歩習慣が続くご褒美の付け方は?

「終わった後のご褒美」より「やっている最中の楽しさ」を足すことです。好きなことを習慣の時間だけに限定し、休んだ日の「戻ってきた」ことにも小さなご褒美をつけます。

1

「この時間だけの楽しみ」を1つ決める

好きなポッドキャストは歩くときだけ、好きな飲み物は勉強中だけ、のように決めます。最中の楽しさが続く力になるからです[1][2]。

所要 3分

2

休んだ後の「再開」にご褒美をつける

毎日やったことより、休んだ後に戻ったことを祝います。6万人の実験で最も効いたのは、この形でした[3]。再開のしかたは運動の習慣が途切れたときの研究も参考になります。

所要 1分

3

物のご褒美は「つまらない作業」にだけ使う

楽しんでいることに物のご褒美を約束すると、自分からやる気持ちが下がることがあります[6]。好きなことには、自分へのひと言(「よくやった」)で十分です。

所要 0分

04 続けるためのコツご褒美の効果が薄れてきたら?

効果が弱まるのは、研究でもよく起きることです。楽しみを入れ替えたり、記録やきっかけと組み合わせたりして、ご褒美だけに頼らない形にしていくのが研究に沿います。

05よくある質問

自分へのご褒美は、毎回あげたほうがいいですか?

研究からは「毎回」より「やっている最中の楽しさ」を足すほうが続きやすいと考えられます。終わった後の大きなご褒美は、ご褒美が目的になりやすく、やめたときに行動も止まりやすい点に注意してください。

ご褒美をやめたら、習慣も元に戻りますか?

戻ることが多いですが、残ることもあります。お金のご褒美の研究23件をまとめた分析では、やめた後も効果が残ったのは18件中4件でした。一方で、数値をまとめると1日約514歩の増加が残っていました。ご褒美がある間に、場所や時間を固定しておくと残りやすいと考えられています。

ご褒美にお菓子を食べるのはよくないですか?

研究で直接比べたものは見つかりませんでした。ただ、運動のご褒美に食べ物を選ぶと、目標とぶつかることがあります。音楽や朗読など、その時間だけ楽しめるものを選ぶ方法は、実験で効果が確かめられています。

出典

  1. Woolley, K., & Fishbach, A. (2017). Immediate rewards predict adherence to long-term goals. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(2), 151–162. https://doi.org/10.1177/0146167216676480
  2. Milkman, K. L., Minson, J. A., & Volpp, K. G. M. (2014). Holding the Hunger Games hostage at the gym: An evaluation of temptation bundling. Management Science, 60(2), 283–299. https://doi.org/10.1287/mnsc.2013.1784
  3. Milkman, K. L., Gromet, D., Ho, H., et al. (2021). Megastudies improve the impact of applied behavioural science. Nature, 600(7889), 478–483. https://doi.org/10.1038/s41586-021-04128-4
  4. Mitchell, M. S., Orstad, S. L., Biswas, A., et al. (2020). Financial incentives for physical activity in adults: Systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine, 54(21), 1259–1268. https://doi.org/10.1136/bjsports-2019-100633
  5. Woolley, K., Giurge, L. M., & Fishbach, A. (2025). Adherence to personal resolutions across time, culture, and goal domains. Psychological Science, 36(8), 607–621. https://doi.org/10.1177/09567976251350960
  6. Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627–668. https://doi.org/10.1037/0033-2909.125.6.627
  7. Cameron, J., Banko, K. M., & Pierce, W. D. (2001). Pervasive negative effects of rewards on intrinsic motivation: The myth continues. The Behavior Analyst, 24(1), 1–44. https://doi.org/10.1007/BF03392017