運動の習慣が途切れてしまったら、どう再開する? 中断と再開の研究でわかったこと

せっかく続けていた運動が、忙しさや体調不良で途切れてしまった。何日も空くと、また始めるのがおっくうになります。研究では、中断は多くの人に起きることで、1回休んだだけでは習慣づくりは大きく崩れないと報告されています。「また戻れる」と思える準備と、再開の日時を具体的に決めることが、立て直しのかぎです。
3行でわかる
- 運動を始めた176人の追跡では、1か月で18%、4か月で34%の人に中断が起きた。途切れるのは珍しいことではない。
- 習慣づくりの研究では、ときどき1回抜かしても習慣が育つ流れは大きく崩れず、すぐにまた積み上がった。
- 続けられるかを左右したのは、環境より「自分はできる」という自信と、いつ・どこで・何をするかの計画だった。
01 悩みの正体運動の習慣は、なぜ途切れやすい?
始めることと続けることは、別の力で支えられているからです。100の行動理論をまとめたレビューは、続けるには動機に加えて、自己管理、使える時間や体力、習慣、周りの環境の5つが関わると整理しています。
運動を始めるときは「やせたい」「健康になりたい」という気持ちが背中を押します。でも続ける段階では、その気持ちだけでは足りなくなります。
Kwasnickaら(2016)は、行動を続けることについて仮説を立てている100の理論を、システマティックレビューでまとめました[1]。続けることを説明するテーマは、次の5つに整理されました。
- 動機(なぜ続けたいか)
- 自己管理(計画や振り返り)
- 資源(時間・体力・気力の余裕)
- 習慣(考えなくても体が動くこと)
- 環境と人間関係
繁忙期や体調不良で時間や体力の余裕がなくなると、このどれかが崩れます。途切れるのは意志が弱いからではなく、続ける条件が変わったサインです。
02 科学的にわかっていること1回休むと、習慣はゼロに戻る?
戻りません。ときどき1回抜かしても、習慣が育つ流れは大きく崩れなかったと報告されています。中断は多くの人に起きるもので、そこから戻れるかには「立て直せる」という自信や計画が関わります。
Gardner・Lally・Wardle(2012)[2]
毎日の行動が「考えなくてもできる」状態になるまでを追った研究をもとにしたレビューです。自動的にできる度合いは、平均すると最初の実行から約66日で頭打ちになりました(人や行動によって大きなばらつきがありました)。ときどき行動を抜かしても習慣が育つ流れは大きく損なわれず、1回抜かした後もすぐに自動化が進み始めました。
対象: Lallyらの追跡研究などをまとめた解説 / 限界: 何日も続けて休んだ場合については、この研究からはわかりません。
Mendoza-Vasconezら(2021)[3]
運動プログラムに参加した176人を追跡すると、運動を始めて1か月後に中断が起きている確率は18%、4か月後には34%に上がりました。中断が早く起きるかどうかは、自信(自己効力感)などの心理的な要素と関係があり、測った環境の要素はどれも関係していませんでした。6か月の時点で行動面の工夫をよく使っていた人は、中断から戻りやすい傾向がありました。
対象: 米国のラテン系女性176人(2つの運動プログラムのデータ) / 限界: 著者らは、中断からの回復についての結果は「はっきりしない部分がある」としています。
Schwarzerら(2008)[4]
心臓や整形外科のリハビリに通う人を対象にした3つの追跡研究で、「運動しよう」という意図だけでは、続けられるかはうまく予測できませんでした。よく予測したのは、「いつ・どこで・どう運動するか」の計画と、「休んでしまっても、また立て直せる」という自信でした(3つの研究で同じモデルが当てはまりました)。
対象: リハビリ中の353人、114人、368人。4〜12か月の追跡 / 限界: 病気の回復期の人が対象で、健康な人にそのまま当てはまるとは限りません。
Roordinkら(2023)、Zhangら(2019)[5][6]
運動と食事の中断・逆戻りを調べた37本の研究のシステマティックレビューでは、自己効力感(自分はできるという感覚)だけが、運動の中断と逆戻りの両方を一貫して予測していました。一方、95件の研究を統合したメタ分析では、「立て直せる」という自信が行動に与える効果は、ほかの自信や計画と比べると小さめでした。
対象: 成人を追跡した研究のまとめ / 限界: レビューの著者らは、多くの要因は調べた研究が少なく、結論を出すにはまだ足りないとしています。
03 今日からできる小さな一歩途切れた運動を再開するには?
休んだことを失敗と数えず、再開の日時と場所、最初の1回の中身を具体的に決めます。あわせて、次にまた休んだときの戻り方も先に決めておくと、途切れても戻りやすくなります。
「何日休んだか」を数え直さない
1回抜かしても習慣が育つ流れは大きく崩れませんでした[2]。連続記録が切れたことより、次の1回に目を向けます。1回の失敗で全部やめたくなる心の動きについては、「どうにでもなれ効果」の研究も参考になります。
所要 0分(考え方)
再開の日時・場所・中身を1行で書く
「水曜の朝7時、家の前から15分歩く」のように決めます。リハビリ中の人の研究では、こうした具体的な計画が運動を続けられるかを予測しました[4]。最初の1回は、以前の半分くらいの軽さで十分です。
所要 2分
「また休んだら」の戻り方を決めておく
「雨で休んだら、翌日に家でストレッチを5分」のように、休んだときの次の一手を先に決めます。「休んでも戻れる」という自信は、運動を続けられるかと関係していました[4]。決め方はif-thenプランの研究が参考になります。
所要 3分
04 続けるためのコツ再開しても、また途切れそうなときは?
途切れること自体を前提にして、戻るハードルを下げておくのが現実的です。小さく再開して「できた」を積み重ねることが、続けられるかを左右する自信につながります。
- 自分はできるという自信は、運動の中断と逆戻りを一貫して予測した唯一の要因でした[5]。2分でできるほど小さく始めると、「できた」の回数を増やせます(2分ルールの研究)。
- 中断が起きやすい時期を知っておきます。追跡研究では、始めて4か月までに3人に1人ほどが一度は中断していました[3]。
- 月初めや週の初めなど、区切りの日を再開のきっかけにする方法もあります(フレッシュスタート効果の研究)。
- 休んだ自分を責めすぎないことも大切です。先延ばしの研究では、自分を許した人のほうが次に取り組みやすくなりました(自分を許す研究)。
- 痛みやけが、持病がある場合は、再開の前に医師に相談してください。
05よくある質問
運動を1週間休んだら、習慣はリセットされますか?
研究では、ときどき1回抜かしても習慣が育つ流れは大きく崩れず、すぐにまた自動化が進んだと報告されています。1週間続けて休んだ場合を直接調べた研究は限られますが、ゼロに戻ると考える必要はありません。再開の日時を決めて、軽めの内容から戻るのがおすすめです。
運動が続かないのは、意志が弱いからですか?
運動を始めた176人の追跡では、4か月後までに34%の人に中断が起きていました。中断はよくあることです。続けることには、動機だけでなく、時間や体力の余裕、習慣、周りの環境など、いくつもの条件が関わると整理されています。
再開するとき、前と同じメニューに戻すべきですか?
いきなり元の量に戻す必要はありません。続けられるかを左右した要因として、自分はできるという自信がくり返し報告されています。以前の半分くらいの軽さで再開し、できた回数を積み重ねるほうが、自信を取り戻しやすくなります。
出典
- Kwasnicka, D., Dombrowski, S. U., White, M., & Sniehotta, F. (2016). Theoretical explanations for maintenance of behaviour change: A systematic review of behaviour theories. Health Psychology Review, 10(3), 277-296. https://doi.org/10.1080/17437199.2016.1151372
- Gardner, B., Lally, P., & Wardle, J. (2012). Making health habitual: The psychology of 'habit-formation' and general practice. British Journal of General Practice, 62(605), 664-666. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3505409/
- Mendoza-Vasconez, A. S., Arredondo, E. M., Larsen, B., Crespo, N., Hurst, S., & Marcus, B. H. (2021). Lapse, relapse, and recovery in physical activity interventions for Latinas: A survival analysis. International Journal of Behavioral Medicine, 28(5), 540-551. https://doi.org/10.1007/s12529-020-09943-z
- Schwarzer, R., Luszczynska, A., Ziegelmann, J. P., Scholz, U., & Lippke, S. (2008). Social-cognitive predictors of physical exercise adherence: Three longitudinal studies in rehabilitation. Health Psychology, 27(1S), S54-S63. https://doi.org/10.1037/0278-6133.27.1(suppl.).s54
- Roordink, E. M., Steenhuis, I. H. M., Kroeze, W., Schoonmade, L. J., Sniehotta, F. F., & van Stralen, M. M. (2023). Predictors of lapse and relapse in physical activity and dietary behaviour: A systematic search and review on prospective studies. Psychology & Health, 38(5), 623-646. https://doi.org/10.1080/08870446.2021.1981900
- Zhang, C.-Q., Zhang, R., Schwarzer, R., & Hagger, M. S. (2019). A meta-analysis of the health action process approach. Health Psychology, 38(7), 623-637. https://doi.org/10.1037/hea0000728


