記憶・学習

好きなことはすぐ覚えられるのに、勉強は覚えられないのはなぜ? 好奇心と記憶の研究で調べた

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本と虫めがね
Photo: Auckland Museum Collections from Auckland, Aotearoa New Zealand / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

好きなアニメのキャラクターや、推しの話なら一度で覚えられる。なのに、テスト範囲の用語は何度読んでも頭に入らない。これは記憶力が足りないからではありません。研究では、「知りたい」と感じている状態(好奇心)のとき、脳のごほうびの仕組みと記憶の中枢が一緒に働き、覚えやすくなることがわかってきました。ただし、好奇心の効き方には意外な限界もあります。

3行でわかる

  1. 知りたいと強く感じた問いの答えは、そうでない答えより覚えやすいことが、47件の研究をまとめたメタ分析で示されています(効果は中くらい)。
  2. 脳画像の実験では、好奇心が高いとき、ごほうびに反応する脳の部分(中脳など)と、記憶の中枢の海馬の働きが高まっていました。
  3. ただし、好奇心の「ついで」に見た別の勉強の内容は、かえって覚えにくくなった実験もあります。覚えたい内容そのものに「知りたい」を向けるのが近道です。

01 悩みの正体興味のあることだけ覚えやすいのはなぜ?

興味のあることを覚えやすいのは、「知りたい」と感じた状態の脳が、ごほうびを待つときと似た仕組みで働き、記憶の中枢である海馬を後押しするからだと考えられています。意志や才能の差ではありません。

好奇心は、「答えを知りたい」という気持ちのことです。研究者は、自分の知っていることと知りたいことの間に「すき間」ができたときに生まれると考えています。

脳にとって、そのすき間を埋める答えはごほうびに近いものです。ごほうびを待つときに働く脳の仕組みは、ドーパミンという物質を通じて、記憶をつくる海馬の働きも高めます。

好きな話題では、このすき間が次々に生まれます。一方、興味のない用語は、知りたい気持ちがないまま目に入るだけです。同じ時間を使っても、残り方に差が出るのはこのためです。

好奇心が高いとき好奇心が低いとき
知りたかった答え覚えやすい残りにくい
脳の働きごほうびの仕組みと海馬が一緒に働く目立った高まりがない
時間がたった後翌日〜数週間後のテストでも差が出た研究がある忘れやすい

02 科学的にわかっていること好奇心は記憶をどれくらい良くする?

知りたいと思った答えを覚える効果は、47件の研究をまとめると中くらい(g=0.44)でした。その場の「ついで」に見たものへの効果は小さく(g=0.13)、条件によってはかえって覚えにくくなります。

47件の研究

好奇心と記憶を調べた47件の独立した研究のメタ分析で、知りたかった答えの思い出しには中くらいの効果(g=0.44)が見られました。[3]

Kangら(2009)[1]

クイズの問題を読んでいるときの脳を調べると、知りたい気持ちが強い問題ほど、ごほうびを予想するときに働く脳の部分(尾状核)の活動が高くなりました。別の実験では、知りたい問題ほど、限られた持ち点や待ち時間を使ってでも答えを見ようとしました。さらに、最初に知りたいと強く感じた問題ほど、意外な答えを1〜2週間後によく思い出せました。

対象: クイズ問題を使った脳画像の実験と行動の実験 / 限界: 1〜2週間後の記憶は、好奇心との相関として示されたもの。

Gruberら(2014)[2]

クイズの答えを待つ間の脳を調べた実験です。直後のテストでも1日後のテストでも、知りたいと感じた問題の答えはよく覚えられていました。答えを待つ間に見た、関係のない顔写真も、知りたい問題のときのほうがよく覚えられていました。好奇心が高いときは中脳と側坐核(ごほうびに反応する部分)の活動が高まり、待っている間の中脳と海馬の活動やつながりが強い人ほど、ついでに見た写真の記憶の上乗せが大きくなっていました。

対象: 脳画像(fMRI)を撮りながらクイズに答えた成人 / 限界: 実験室のクイズ問題で、教科の勉強そのものを調べたものではない。

RadhakrishnaとPadakannaya(2026)[3]

好奇心と記憶を調べた47件の独立した研究をまとめたメタ分析です。好奇心が高いと、知りたかった答えの思い出しには中くらいの効果(g=0.44)、その場で目に入ったほかの情報には小さな効果(g=0.13)がありました。効果の大きさは、テストまでの時間や年齢層などで変わりませんでした。

対象: 47件の研究 / 限界: 多くはクイズ形式の実験で、学校の成績への効果を直接まとめたものではない。

Murphyら(2021)[4]

クイズの答えを待つ間に、関係のない顔写真を見せる実験です。問題を見てすぐ(2秒後)に出た顔は、知りたい問題のときに39.58%、そうでない問題のときに23.70%覚えられていました。ところが、答えが出る直前の顔では、ほとんど差がありませんでした。効果があるのは「知りたい」と感じた直後に限られるようです。

対象: 2つの実験の参加者61人と32人 / 限界: 顔写真の見覚えを調べたもので、文章の内容の記憶ではない。

Kellerら(2024)[5]

好奇心の「ついで」に、勉強の内容(理科や歴史の事実)も覚えられるかを試しました。結果は逆でした。知りたい気持ちの強いクイズの近くに出された事実ほど、抜き打ちテストの成績が下がりました。3通りのやり方で試しても、同じ結果でした。著者らは、クイズの答えが気になって、事実を覚える余裕がなくなったと考えています。

対象: 米国のオンライン参加者239人(18〜50歳) / 限界: コロナ禍にオンラインで行われ、事実をもともと知っていたかは確かめていない。

好奇心と記憶の研究をまとめた総説では、好奇心による記憶の上乗せは、直後のテストだけでなく1日後〜数週間後のテストでも見られ、もともとの知識の量や気持ちの高ぶりでは説明できないとする研究があると整理されています [6]。12時間後でも効果が残り、その間に眠ったかどうかでは変わらなかった実験もあります [7]。一方で、ごほうびを足すと、好奇心とその記憶への効果がかえって弱まった研究も紹介されています [6]。

03 今日からできる小さな一歩興味のない勉強に好奇心を使うには?

覚えたい内容そのものに「なぜ?」を向けるのが近道です。読む前に問いを立て、答えを予想してから読むと、知りたい気持ちのすき間を自分で作れます。

1

読む前に「なぜ?」を1つ書く

教科書の見出しを見て、「なぜこうなる?」という問いをノートの端に1つ書きます。自分の知らないことに気づくと、知りたい気持ちのすき間が生まれます。

所要 1分

2

答えを予想してから読む

はずれてもかまわないので、先に答えを予想します。Kangらの実験では、知りたい気持ちが強かった問題ほど、予想と違う意外な答えを後でよく思い出せました。学ぶ前に解いてみる効果は先にテストを解く勉強法の研究でも紹介しています。

所要 2分

3

気になる話と覚えたい内容を混ぜない

関係のない面白い話で興味を引いてから暗記する方法は、Kellerらの実験ではかえって逆効果でした。気になる話は勉強の後にとっておき、勉強中は覚えたい内容の「なぜ」に集中します。

所要 0分

04 続けるためのコツ好奇心が湧かない日はどうすればいい?

好奇心が湧かない日は、無理に興味を持とうとせず、思い出す練習に切り替えます。好奇心は記憶を助ける道具の1つで、それがなくても覚える方法はあります。

05よくある質問

興味がない科目でも、好奇心を使って覚えられる?

研究の多くはクイズの問題を使ったもので、興味のない科目でどこまで効くかはまだ調べられている途中です。ただ、好奇心は「知っていることと知りたいことのすき間」から生まれると考えられています。読む前に問いを立て、答えを予想してから読むと、自分でそのすき間を作ることができます。

好奇心が強い人ほど、記憶力がいいの?

ここで紹介した研究の多くは、同じ人の中で「知りたい問題」と「そうでない問題」を比べたものです。性格としての好奇心が強い人ほど記憶力がいい、ということを示したものではありません。誰でも、知りたいと感じたときに覚えやすくなる、という結果です。

好奇心で覚えたことは、時間がたっても残る?

総説では、好奇心による記憶の上乗せは1日後〜数週間後のテストでも見られたとまとめられています。Kangらの実験では1〜2週間後、Gruberらの実験では1日後に差がありました。47件のメタ分析でも、テストまでの時間で効果の大きさは変わりませんでした。

出典

  1. Kang, M. J., Hsu, M., Krajbich, I. M., Loewenstein, G., McClure, S. M., Wang, J. T., & Camerer, C. F. (2009). The wick in the candle of learning: Epistemic curiosity activates reward circuitry and enhances memory. Psychological Science, 20(8), 963-973. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02402.x
  2. Gruber, M. J., Gelman, B. D., & Ranganath, C. (2014). States of curiosity modulate hippocampus-dependent learning via the dopaminergic circuit. Neuron, 84(2), 486-496. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2014.08.060
  3. Radhakrishna, P., & Padakannaya, P. (2026). Mnemonic benefits of state curiosity: A meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 33(3), 97. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02800-8
  4. Murphy, C., Dehmelt, V., Yonelinas, A. P., Ranganath, C., & Gruber, M. J. (2021). Temporal proximity to the elicitation of curiosity is key for enhancing memory for incidental information. Learning & Memory, 28(2), 34-39. https://doi.org/10.1101/lm.052241.120
  5. Keller, N. E., Salvi, C., Leiker, E. K., Gruber, M. J., & Dunsmoor, J. E. (2024). States of epistemic curiosity interfere with memory for incidental scholastic facts. npj Science of Learning, 9, 22. https://doi.org/10.1038/s41539-024-00234-w
  6. Gruber, M. J., & Ranganath, C. (2019). How curiosity enhances hippocampus-dependent memory: The prediction, appraisal, curiosity, and exploration (PACE) framework. Trends in Cognitive Sciences, 23(12), 1014-1025. https://doi.org/10.1016/j.tics.2019.10.003
  7. Stare, C. J., Gruber, M. J., Nadel, L., Ranganath, C., & Gómez, R. L. (2018). Curiosity-driven memory enhancement persists over time but does not benefit from post-learning sleep. Cognitive Neuroscience, 9(3-4), 100-115. https://doi.org/10.1080/17588928.2018.1513399