勉強は「読む前に問題を解く」と覚えやすい? プレテストの研究でわかった、間違えてもいい予習のやり方

教科書は、まず読んでから問題を解く。多くの人がそう勉強します。でも、まだ習っていない問題を先に解いてから読むと、ほとんど間違えても、読むだけより記憶に残りやすいことが実験で何度も示されています。「プレテスト(事前テスト)効果」と呼ばれる現象です。ただし、教室での再現はまちまちなので、効きやすい使い方と注意点もあわせて紹介します。
3行でわかる
- 読む前に問題を解くと、正解率が3〜5%ほどでも、後のテストでは読むだけより多く思い出せた(5つの実験すべて)。
- 単元の目標を読むだけより、選択式の問題を解いてから読むほうが、後のテストの正答率が高かった(67%対53%)。
- ただし大学の授業での試験では、効果が見られない例もある。予習の問題は、読んだ後の思い出す練習と組み合わせて使う。
01 悩みの正体読んだのに覚えていないのはなぜ?
ただ読むだけだと、どこが大事かがわからないまま目が文字を通り過ぎやすいからです。先に問題を解くと「答えはどこ?」という問いを持って読むため、答えの部分に注意が向きます。
プレテスト効果は、まだ学んでいない内容のテストを先に受け、その後で正しい答えを学ぶと、ただ読むより覚えやすくなる現象です[1]。単語のペア、雑学、文章、動画の講義など、いろいろな教材で調べられてきました[1]。
なぜ効くのかは、まだ研究が進んでいる段階です。考えられている理由は次のとおりです[2][3]。
- 間違えると、正解を知りたい気持ちが強まり、その後の読み方が積極的になる。
- 予想が外れると「えっ」と驚き、正解に注意が向いて記憶に残りやすくなる。
- 何が大事なのか、問題が目印になる。
読んだのに覚えていない仕組みそのものは、「わかったつもり」の研究で詳しく紹介しています。
02 科学的にわかっていること先に問題を解くと、本当に覚えやすくなる?
実験では、先に問題を解いた内容のほうが、ただ読んだ内容より多く思い出せました。一方、大学の授業での研究では効果が見られない例もあり、どんな場面でも効くとまでは言えません。
PanとRivers(2023)[1]
単語のペアを、「そのまま読む」か「片方だけ見て答えを考えてから正解を見る」かで覚えてもらいました。先に考える問題の正解率は3〜5%ほどでしたが、後のテストでは、先に考えたペアのほうが多く思い出せました。この差は5つの実験のすべてで見られました。それでも、最初の実験では6割の人が「読むほうが効く」と答えていました。
対象: オンラインで参加した大人(1実験あたり約50人、最後の実験は320人) / 限界: 覚えたのは単語のペアで、教科書のような長い文章ではありません。
3〜5%
先に解いた問題の正解率。ほとんど間違えても、後のテストでは読むだけより多く思い出せた[1]
Sanaら(2020)[2]
脳科学の5つの文章を読む前に、「この単元の目標」を読む組、選択式の問題を解く組、目標に答えも書いた文を読む組に分けました。後のテストの正答率は、問題を解いた組が67%で、目標を読んだ組の53%、答え入りの文を読んだ組の57%より高い結果でした。問題の正答率は35%でした。別の実験では、問題を解いた直後に正解を見せると、後のテストの成績が下がりました(66%から58%)。
対象: 大学生(1実験あたり約160〜190人) / 限界: 実験室で、読んだ直後の短い間隔で測った結果です。
Gellerら(2017)・Welhafら(2022)[4][5]
うまくいかなかった例もあります。化学工学の授業で、授業の最初に問題を1問解いてもらっても、その内容の成績は上がりませんでした。一方、授業の最後に思い出すテストをした内容は、週末の小テストでよく覚えていました[4]。統計の動画講義を見る前に問題を解いた195人の実験でも、学んだ量にはっきりした差は出ませんでした[5]。
対象: 化学工学の授業の大学生77人、アメリカの大学生195人 / 限界: 授業の進め方や問題の数で、結果が変わる可能性があります。
| 研究 | 場面 | 先に問題を解いた効果 |
|---|---|---|
| PanとRivers[1] | 単語のペア(実験) | 5つの実験すべてで効果あり |
| Sanaら[2] | 脳科学の文章(実験) | 目標を読むより正答率が高い |
| Gellerら[4] | 大学の授業 | 効果なし(授業後の思い出す練習は効果あり) |
| Welhafら[5] | 動画の講義 | 学んだ量に差は見られず |
03 今日からできる小さな一歩「読む前に解く」予習は、どうやる?
読む前に、その章の問題を3〜5問だけ、何も見ずに解きます。答えはすぐに見ず、本文から探しながら読みます。読み終えたら正解を確かめ、最後にもう一度、何も見ずに解き直します。
読む範囲の問題を3〜5問選ぶ
章末の問題、問題集、見出しを問いに変えたもの(「〇〇とは何か?」)を使います。選択式でも記述式でもかまいません。実験では、どちらの形でも後のテストの成績は同じでした[2]。
所要 2分
何も見ずに、予想で答える
わからなくても空欄にせず、思いつく答えを書きます。間違えて当たり前です。正解率3〜5%でも効果がありました[1]。
所要 3分
答えを探しながら本文を読む
解答はすぐに見ず、本文の中から答えを探すつもりで読みます。直後に正解を見せると成績が下がった実験があるためです[2]。読み終えたら、解答で正解を確かめます。
所要 読む時間
最後に、何も見ずにもう一度解く
読んだ後に思い出す練習をすると、記憶に残りやすくなります[4]。プレテストに効果が出なかった授業でも、この練習には効果がありました。
所要 3分
04 続けるためのコツ「読むほうが効く気がする」ときは?
そう感じるのは自然なことです。研究では、多くの人が実際の成績を見るまで、読むほうが効くと思い込んでいました。自分の点数で比べると、納得しやすくなります。
- 1週間だけ試す。半分の章は先に解いてから読み、残り半分は読むだけにして、週末に同じテストで比べる。研究でも、自分の成績を見せると、先に解くほうを選ぶ人が4割から7割台に増えた[1]。
- 間違いは「失敗」ではなく「目印」。先に間違えた問題ほど、読んだときに答えが目に入りやすい[3]。
- 読んだ後の思い出す練習は欠かさない(思い出す練習(テスト効果)の研究)。
- 復習は日にちをあけるとさらに残りやすい(復習の間隔の研究)。
05よくある質問
まだ習っていない問題を解いて、間違えても意味はありますか?
あります。Pan と Rivers(2023)の実験では、先に解いた問題の正解率は3〜5%ほどでしたが、後で正解を学んだあとのテストでは、5つの実験のすべてで、ただ読んだ場合より多く思い出せました。間違えることで、正解を知りたい気持ちが強まり、その後の読み方が変わると考えられています。
予習で解いた問題の答えは、すぐに確認したほうがいいですか?
答えが本文の中にある場合は、すぐに解答を見ずに、本文から探しながら読むほうがよい可能性があります。Sanaら(2020)の実験では、先に解いた問題の正解をすぐに示すと、後のテストの成績がかえって下がりました(66%→58%)。本文を読み終えたら、必ず正解を確かめてください。
プレテストは、読んだ後の復習テストの代わりになりますか?
なりません。大学の授業で調べた研究では、授業前の問題には効果が見られず、授業の後に思い出すテストをした内容のほうが、週末の小テストでよく覚えていました。予習の問題は「読む前の準備」、読んだ後の思い出す練習が「定着」と考えて、両方を組み合わせます。
出典
- Pan, S. C., & Rivers, M. L. (2023). Metacognitive awareness of the pretesting effect improves with self-regulation support. Memory & Cognition, 51(6), 1461-1480. https://doi.org/10.3758/s13421-022-01392-1
- Sana, F., Forrin, N. D., Sharma, M., Dubljevic, T., Ho, P., Jalil, E., & Kim, J. A. (2020). Optimizing the Efficacy of Learning Objectives through Pretests. CBE—Life Sciences Education, 19(3), ar43. https://doi.org/10.1187/cbe.19-11-0257
- Brod, G. (2021). Predicting as a learning strategy. Psychonomic Bulletin & Review, 28(6), 1839-1847. https://doi.org/10.3758/s13423-021-01904-1
- Geller, J., Carpenter, S. K., Lamm, M. H., Rahman, S., Armstrong, P. I., & Coffman, C. R. (2017). Prequestions do not enhance the benefits of retrieval in a STEM classroom. Cognitive Research: Principles and Implications, 2, 42. https://doi.org/10.1186/s41235-017-0078-z
- Welhaf, M. S., Phillips, N. E., Smeekens, B. A., Miyake, A., & Kane, M. J. (2022). Interpolated testing and content pretesting as interventions to reduce task-unrelated thoughts during a video lecture. Cognitive Research: Principles and Implications, 7, 26. https://doi.org/10.1186/s41235-022-00372-y


