復習はいつがベスト?1,350人の実験でわかった、記憶が変わるタイミング
覚えたはずのことが、いざというときに思い出せない。そんな経験は誰にでもあるはずです。実は、同じ時間をかけて復習しても、いつ復習するかによって記憶の残り方は大きく変わることが心理学の実験でわかっています。今日は、なぜタイミングが大事なのか、そしていつ復習すればいいのかを、大規模な実験から見ていきます。
3行でわかる
- 復習のタイミングは早すぎても遅すぎても効果が下がり、「ちょうどよい間隔」があることが1,350人以上を対象にした実験でわかった。
- 最適な間隔は、テストまでの期間が1週間なら期間の20〜40%、1年なら5〜10%というように、長く覚えたい内容ほど間隔を広げるとよいとされる。
- 317件の実験を統合したメタ分析でも、復習までの間隔と「どれくらいの期間覚えていたいか」が影響し合い、覚えていたい期間が長いほど最適な間隔も長くなることが確認されている。
01覚えたことをすぐ忘れるのは、タイミングのせいかもしれない
復習は「まだよく覚えている」うちより、「少し思い出しにくくなった」頃にした方が記憶に残りやすいと考えられている。
何かを覚えた直後にすぐ復習しても、記憶はまだはっきり残っているため、脳にはほとんど負荷がかかりません。一方、少し時間が経って「あれ、なんだったっけ」と思い出すのに苦労するタイミングで復習すると、記憶を引っ張り出す作業(想起)そのものが新たな学習になり、記憶がより強く定着すると考えられています。ニュージーランド・オタゴ大学の研究者らは、間隔をあけた復習の効果は、記憶が一度不安定になってから再び固定される「再固定化」という脳の仕組みで説明できる可能性があると指摘しています。
02科学的にわかっていること
復習のタイミングは早すぎても遅すぎても効果が下がり、テストまでの期間に応じた「最適な間隔」があることが大規模な実験で確認されている。
Cepeda, Vul, Rohrer, Wixted & Pashler(2008)[1]
1,350人以上に事実を学習させたのち、最大3.5か月の間隔をあけて復習させ、さらに最大1年後にテストを行った実験。復習までの間隔を延ばすほど成績は一度上がるが、その後は下がる山型の関係が見られた。最適な間隔は、テストまでの期間が1週間なら期間の20〜40%、1年なら5〜10%と、期間が長いほど間隔自体は長くなる一方、割合としては小さくなった。
対象: 1,350人以上(成人) / 限界: 学習内容は事実の暗記が中心で、複雑な理解や技能の習得にそのまま当てはまるかは分からない。
Cepeda, Pashler, Vul, Wixted & Rohrer(2006)[2]
184本の論文に載っていた317件の実験・839件の評価を対象に、間隔をあけた学習の効果を検証したメタ分析。学習の間隔と、どれだけの期間覚えておきたいか(保持間隔)が最終テストの成績に共同して影響し、もっとも成績が良くなる間隔は、覚えておきたい期間が長いほど長くなることが示された。
対象: 317件の実験・839件の評価(184論文) / 限界: 分析対象の多くは単語や文章の記憶課題で、実際の授業や試験勉強にそのまま当てはめるには注意が必要。
Smith & Scarf(2017)[3]
間隔学習に関する先行研究をまとめたレビュー論文。24時間以上あけて練習した場合、技能の学習でも詰め込み練習より学習と保持の両方が向上すると報告されている。ことばの学習では、大人は習得の段階で間隔をあける利点がはっきり見られない(同等か、むしろ劣ることもある)が保持は良くなり、子どもは習得の段階でも間隔をあける利点が見られるなど、対象によって効果の出方に違いがあることも紹介されている。
対象: 間隔学習に関する複数分野の先行研究のレビュー / 限界: 著者ら独自の新しい実験データではなく、既存研究の整理と解釈が中心。
03今日からできる小さな一歩
テストや締め切りまでの日数を数え、その1〜2割ほど先を最初の復習日にすると、研究でわかった「ちょうどよい間隔」に近づけやすい。
テストまでの日数から最初の復習日を決める
例えば1週間後にテストがあるなら、1〜2日後を最初の復習日の目安にする。カレンダーやリマインダーに先に登録しておくと忘れにくい。
所要 1分
「思い出しにくいな」と感じるまで少し待つ
完全に忘れる前でよいので、覚えた直後よりは間をあける。すぐ思い出せてしまうときは、もう少し復習を先延ばしにしてよい。
所要 数秒の判断
間隔を少しずつ広げながら複数回復習する
1回目は数日後、2回目は1〜2週間後、3回目は1か月後というように、復習のたびに間隔を広げていく。
所要 各回5〜10分
04続けるためのコツ
「完璧に覚えている状態」を保とうとせず、多少忘れかけた状態で思い出す練習自体に意味があると考えると続けやすい。
- 復習のたびに「思い出せた・思い出せなかった」を軽く記録しておくと、次の間隔を調整しやすい。
- 長く覚えておきたい内容ほど、復習の間隔を少しずつ大きく広げていく。
- 前日の一夜漬けを完全にやめる必要はないが、それだけに頼らず、数日〜数週間前から間隔をあけて取り組む方が長期的には効率がよい。
05よくある質問
前日の一夜漬けにはまったく意味がないのでしょうか?
紹介した研究は主に、長期的にどれだけ覚えていられるかを対象にしています。翌日のテストのような短期的な記憶では一夜漬けにも一定の効果がありますが、数週間から数か月後まで覚えておきたい場合は、間隔をあけた復習の方が有利だと考えられています。
どんな科目や内容にも同じ間隔が当てはまりますか?
紹介した研究の多くは、単語や事実の記憶を対象にしたものです。複雑な理解を伴う内容や実技のような学習については、同じ間隔がそのまま当てはまるとは限らないため、目安として捉えるのがよさそうです。
出典
- Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science, 19(11), 1095-1102. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
- Smith, C. D., & Scarf, D. (2017). Spacing repetitions over long timescales: A review and a reconsolidation explanation. Frontiers in Psychology, 8, 962. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00962