「歯みがきの後に」など今ある習慣にくっつけると、新しい習慣は身につく? ハビットスタッキングを研究で調べた

「歯みがきの後にストレッチ」「コーヒーをいれたら日記を1行」。新しい習慣を、毎日すでにやっている行動にくっつける方法は「ハビットスタッキング」とも呼ばれます。研究で見ると、今ある習慣にくっつける方法は、習慣づくりに効く方法の1つです。ただし「時刻で決める」より特別に強いという結果は、今のところ出ていません。192人の試験では、どちらでも同じくらい習慣が身につきました。決め手は、決めたきっかけで毎回くり返すことでした。
3行でわかる
- 食習慣を「朝ごはんの後」など今ある行動にくっつけた人と、「朝9時」など時刻で決めた人を比べた192人の試験では、どちらも習慣が強まり、差はなかった。
- フロスを歯みがきの「後」にした人は習慣が強まりやすかった、という50人の小さな研究がある。ただし118人の次の研究では、前か後かで差は出なかった。
- 習慣が身についた人でも、最も強くなるまで中央値59日かかった。くっつける先は、毎日ほぼ同じ場面で起きる行動を選ぶ。
01 悩みの正体新しい習慣は、なぜ「くっつける」と良いと言われる?
習慣は、決まったきっかけと行動が結びついて、考えなくても体が動く状態のことです。毎日必ず起きる行動はきっかけとして見つけやすく、ぶれにくいので、くっつける先として勧められてきました。
GardnerとLally、Wardle(2012)は、医師が患者に習慣づくりを助言するための論文で、習慣を「よく出会う場面に、自動で反応して起きる行動」と説明しています[5]。
そのうえで、きっかけは「職場に着いたら」のような出来事でも「朝ごはんの後」のような時間帯でもよいと書いています。中でも「昼休みに入ったら」のように、今ある毎日の流れの中のきっかけは、始めやすく安定した出発点になるとしています[5]。ただしこれは助言で、くっつける方法そのものを他の方法と比べた結果ではありません。実際に比べた研究を次に見ます。
「もし〇〇したら△△する」と決める方法の効果はif-thenプランの研究で、同じ場所で行う効果は場所と習慣の研究で紹介しています。
02 科学的にわかっていること今ある習慣にくっつけると、本当に身につきやすい?
今ある習慣にくっつけても、時刻で決めても、同じくらい習慣は強まりました。歯みがきの前か後かでも、大きな研究では差が出ていません。どちらの研究でも、決めたきっかけで毎回くり返した人ほど習慣が強まりました。
Kellerら(2021)[1]
18〜77歳の大人192人を2つに分けました。参加者は、毎日続けたい食習慣を自分で1つ選びました。片方のグループは、それを毎日の決まった行動にくっつけました(たとえば「朝ごはんの後に水を1杯」)。もう片方は時刻にくっつけました(たとえば「朝9時に水を1杯」)。84日間、毎日記録したところ、どちらのグループも行動の自動さが高まり、グループの間に差はありませんでした。
対象: 大人192人、84日間 / 限界: 自動さは本人の自己評価です。研究をまとめたレビューでは、決めた基準まで習慣が身についた人は23%だったと紹介されています[6]。
59日
192人の試験で、習慣が身についた人が「自動さ」のピークに達するまでの日数の中央値。人によって4〜335日と大きくばらつきました[1][6]
Judah、Gardner、Aunger(2013)[2]
50人がデンタルフロスの習慣づくりに取り組みました。半分は歯みがきの「前」、半分は「後」にフロスをするよう指示されました。後にした人のほうが習慣が強まる傾向があり、8か月後の追跡でも、習慣が強く、フロスをする回数も多くなっていました。
対象: 50人 / 限界: 著者ら自身が「探索的な研究」としており、より厳密な方法での研究が必要だと述べています。
Judahら(2018)[3]
次の研究では、ロンドンの大人118人がフロスの習慣づくりに取り組み、4週ごとに16週目まで記録しました。この研究でも、歯みがきの前と後のどちらでフロスをするかを、くじで割り振りました。しかし、行動の回数にも習慣の強さにも、前と後で差は出ませんでした。
対象: ロンドンの大人118人(平均35.7歳) / 限界: 前か後かの比較は主な目的ではなく、結果は脚注で短く報告されています。
KilbとLabudek(2022)[4]
199人(平均37.1歳)が「夕食で皿の半分を野菜にする」習慣づくりに取り組み、最長56日間、毎日記録しました。夕食の時間・場所・前後にすることがいつも通りだった人ほど、習慣が強い傾向がありました。行動をよくくり返した人ほど、習慣が強まる速さも大きくなりました。
対象: 199人(分析は189人、86.93%が女性) / 限界: 「いつも通りの日」の翌日に習慣が強まる、という日ごとの関係は確かめられませんでした。
| 研究 | 比べたこと | 結果 |
|---|---|---|
| 大人192人[1] | 今ある行動にくっつける vs 時刻で決める | どちらも習慣が強まり、差なし |
| 50人[2] | フロスを歯みがきの前 vs 後 | 後のほうが習慣が強まる傾向 |
| 大人118人[3] | フロスを歯みがきの前 vs 後 | 回数も習慣の強さも差なし |
| 199人[4] | 夕食の場面がいつも通りか | いつも通りの人ほど習慣が強い |
Singhら(2024)は、20件・2601人の習慣づくりの研究を調べました。そのうち12件をまとめたメタ分析(複数の研究を統合する分析)では、取り組みの前後で習慣の強さが中くらい以上に高まりました(標準化平均差0.69)[6]。ただし20件のうち11件は、偏りのリスクが高いと評価されています[6]。
03 今日からできる小さな一歩今ある習慣に、どうくっつければいい?
毎日ほぼ同じ場面で必ず起きる行動を1つ選び、その直後にやる小さな行動を決めます。決めたきっかけのたびに、同じ行動をくり返します。時刻で決めるほうが合う人は、時刻でもかまいません。
「毎日必ず起きる行動」を書き出す
歯みがき、朝のコーヒー、帰宅して靴を脱ぐ、など。平日も休日もほぼ同じ場面で起きるものを選びます。きっかけは毎日出会う、目立つものがよいとされています[5]。
所要 3分
「〇〇したら、△△する」を1文で書く
例: 「朝コーヒーをいれたら、日記を1行書く」。Gardnerらの論文にある例も「家で昼ごはんを食べたら、果物を1つ食べる」という形でした[5]。新しい行動は小さく、1つだけにします。
所要 2分
きっかけのたびに、同じことをくり返す
192人の試験では、くっつけ方より、決めたきっかけで実際にくり返したかどうかが、習慣の強さを予測しました[1]。カレンダーに印をつけるなど、できた日を記録すると続きを確かめやすくなります。
所要 毎日数秒
04 続けるためのコツくっつけたのに続かないときは、どうする?
くっつける先の行動そのものが日によってぶれていないかを見直します。また、身につくまでには2か月前後かかる人が多く、数週間でうまくいかなくても失敗とは言えません。
- くっつける先が「たまに抜ける行動」なら、もっと確実に毎日起きる行動に替える。夕食の場面がいつも通りの人ほど習慣が強い傾向でした[4]。
- 前か後か、どの行動にくっつけるかに迷いすぎない。大きな研究では、くっつけ方による差ははっきりしませんでした[1][3]。
- 1日抜けても、次のきっかけから再開する。習慣が身につく日数の目安は習慣化の日数の研究、うっかり忘れる日が続くときはきっかけとリマインダーの研究で紹介しています。
05よくある質問
ハビットスタッキング(今ある習慣にくっつける方法)は効果がありますか?
習慣づくりの方法として効果はありますが、時刻で決める方法より優れているとは言えません。Kellerら(2021)の192人の試験では、食習慣を毎日の行動にくっつけた人も、時刻で決めた人も、同じくらい習慣が強まりました。どちらの場合も、決めたきっかけで毎回くり返した人ほど習慣が強まりました。
新しい習慣は、今ある習慣の「前」と「後」のどちらにくっつけるのがいいですか?
はっきりした答えは出ていません。50人の研究では、フロスを歯みがきの後にした人のほうが習慣が強まる傾向がありました。しかし118人の研究では、前と後で回数にも習慣の強さにも差はありませんでした。続けやすいほうを選んでかまいません。
くっつけた習慣は、何日くらいで身につきますか?
人によって大きく違います。192人の試験では、習慣が身についた人がピークに達するまでの中央値は59日で、4日から335日まで幅がありました。20件の研究を調べたレビューでも、日数を報告した研究の中央値は59〜66日でした。2か月前後を一つの目安にすると、焦りにくくなります。
出典
- Keller, J., Kwasnicka, D., Klaiber, P., Sichert, L., Lally, P., & Fleig, L. (2021). Habit formation following routine-based versus time-based cue planning: A randomized controlled trial. British Journal of Health Psychology, 26(3), 807-824. https://doi.org/10.1111/bjhp.12504
- Judah, G., Gardner, B., & Aunger, R. (2013). Forming a flossing habit: An exploratory study of the psychological determinants of habit formation. British Journal of Health Psychology, 18(2), 338-353. https://doi.org/10.1111/j.2044-8287.2012.02086.x
- Judah, G., Gardner, B., Kenward, M. G., DeStavola, B., & Aunger, R. (2018). Exploratory study of the impact of perceived reward on habit formation. BMC Psychology, 6, 62. https://doi.org/10.1186/s40359-018-0270-z
- Kilb, M., & Labudek, S. (2022). Effects of behavioral performance, intrinsic reward value, and context stability on the formation of a higher-order nutrition habit: An intensive longitudinal diary study. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 19, 105. https://doi.org/10.1186/s12966-022-01343-8
- Gardner, B., Lally, P., & Wardle, J. (2012). Making health habitual: The psychology of 'habit-formation' and general practice. British Journal of General Practice, 62(605), 664-666. https://doi.org/10.3399/bjgp12X659466
- Singh, B., Murphy, A., Maher, C., & Smith, A. E. (2024). Time to form a habit: A systematic review and meta-analysis of health behaviour habit formation and its determinants. Healthcare, 12(23), 2488. https://doi.org/10.3390/healthcare12232488


