つまらない作業に集中できないのはなぜ?「退屈」が注意をはがす仕組みを研究で調べた

データの入力、書類の確認、同じ問題のくり返し。つまらない作業になると、数分で手が止まり、気づけば別のことを考えている。それは、あなたの集中力が特別に弱いからではありません。研究では、退屈は「注意をうまく向けられない」状態と「やる意味を感じられない」状態から生まれ、それ自体が集中をはがす合図になると考えられています。
3行でわかる
- 退屈は「やりたいのに、何にも気持ちを向けられない」不快な状態と定義されています(Eastwoodら, 2012)。
- 退屈の原因は2つあると考えられています。作業が簡単すぎる・難しすぎるなどで注意がかみ合わないことと、作業に意味を感じられないことです(Westgate・Wilson, 2018)。
- 402人の実験では、意味の通る動画を見た人のほうが集中の度合いが高く、退屈も少なくなりました(Tamら, 2025)。ただし、退屈が先か集中の失敗が先かは決着していません。
01 悩みの正体つまらない作業だと集中できないのは、意志が弱いから?
意志の弱さだけでは説明できません。退屈は、注意を作業に向けたくても向けられないときに生まれる不快な状態で、多くの人に起きることだと考えられています。
心理学では、退屈を「満足できる活動に取り組みたいのに、取り組めない」いやな状態と考えます。カナダの研究者Eastwoodらは、これを注意の問題として定義し直しました[1]。
その定義では、退屈には3つの要素があります。1つめは、目の前の作業にも、自分の考えにも、うまく注意を向けられないこと。2つめは、「向けられていない」こと自体に気づいていること。3つめは、その原因を「この作業がつまらないせいだ」と周りのせいだと感じることです。
つまり、退屈なときの頭の中では「集中したい」と「集中できない」が同時に起きています。考えごとがよそへ流れていく仕組みは心がさまよう仕組みの研究に、長く作業すると集中が切れる仕組みは集中力が切れる理由の研究にまとめています。
02 科学的にわかっていること退屈すると、頭の中で何が起きている?
退屈は、注意と作業のかみ合わなさ、そして意味のなさから生まれると考えられています。脳の画像の研究や、意味を変えた実験がこの考え方を支えていますが、因果の向きはまだはっきりしていません。
Westgate・Wilson(2018)[2]
退屈の「MACモデル」を示した論文です。退屈には2つの原因があるとしました。1つは注意のずれで、作業が求める頭の使い方と、自分の手持ちの余力が合わないことです。作業が簡単すぎても(刺激が足りない)、難しすぎても(刺激が多すぎる)退屈は起きます。もう1つは意味のずれで、作業が自分の大事な目標とつながっていないことです。著者らは、注意と意味のどちらが欠けても、それぞれ別に退屈が生まれることを複数の研究で確かめたと報告しています。
対象: 理論と複数の研究(論文の要旨で確認) / 限界: 意味や注意を実験で操作した研究は、まだ多くない。
Danckert・Merrifield(2018)[3]
健康な参加者にfMRI(脳の活動を画像で見る装置)に入ってもらい、何もしない状態、集中を保つ課題、退屈な映像、興味をひく映像の4つで脳の働きを比べました。退屈な映像と集中の課題では、ぼんやり考えるときに働く脳のネットワークが動くと、注意の切り替えに関わる「島皮質」という部分の働きが逆に下がっていました。興味をひく映像では、こうした逆の動きは見られませんでした。著者らは、退屈を「ある程度の集中が要るのに、単調すぎて集中の仕組みをうまく動かせない状態」と解釈しています。
対象: 健康な参加者(人数は要旨に記載なし) / 限界: 脳の活動の相関を見たもので、退屈が集中を下げたと証明したものではない。
Hunter・Eastwood(2018)[4]
ふだんから退屈しやすい人ほど、集中を保つ課題の成績が低いことを確かめました。この関係は、気分の落ち込みや、本人が感じる注意の問題を考えに入れても残りました。一方で、追加の分析では「集中できないことが退屈を生む」向きの結果も出ており、集中を保つ課題そのものが退屈だという面も見えてきました。
対象: 実験室の参加者 / 限界: 原因と結果の向きは、著者ら自身が「探索的」としている。
Tamら(2025)[8]
アメリカの大人402人を2つに分け、片方には筋の通った動画を、もう片方には同じ映像と音声を切り貼りして意味が通らなくした動画を見せました。意味の通る動画を見た人は、集中の度合いを平均4.72と答え、意味のない動画の人(3.95)より高くなりました(効果量d=0.48)。退屈やいやな気分、がんばっている感じも少なくなりました。ただし、注意のほうを操作した別の実験では、退屈は変わりませんでした。
対象: オンラインで集めた19〜74歳の402人 / 限界: 短い動画を見る課題。仕事や勉強で同じことが起きるかは、まだ確かめられていない。
退屈になると、人は何かで気をまぎらわそうとします。Wilsonら(2014)の実験では、6〜15分ひとりで考えごとをするだけの時間に、57.5%の人が「集中しにくかった」を9段階の真ん中以上と答えました[5]。15分の待ち時間に、男性の67%(18人中12人)、女性の25%(24人中6人)が、事前に「お金を払ってでも避けたい」と答えた電気ショックを、自分に1回以上与えていました。
ただし、この結果には反論もあります。同じデータを見直した研究者は、考えごとの楽しさの平均は9段階の真ん中あたりで、「いやで仕方ない」とまでは言えないと指摘しました[6]。11か国2,557人で確かめた追試では、どの国でも「考えるだけ」より「何かをする」ほうが楽しいという結果はくり返されました[7]。ただし、この追試は電気ショックの部分は調べていません。
| 退屈の種類 | 起きていること | 例 |
|---|---|---|
| 簡単すぎる | 頭の余力が余っていて、注意が作業にとどまらない | 同じ入力のくり返し |
| 難しすぎる | 余力が足りず、注意が作業に追いつかない | 手順がわからない書類 |
| 意味がない | 作業が自分の目標とつながらない | なぜやるかわからない作業 |
この表は、Westgate・WilsonのMACモデル[2]をもとに、このサイトで日常の例を当てはめて整理したものです。
03 今日からできる小さな一歩つまらない作業に集中するには、どうすればいい?
まず、今の退屈が「簡単すぎ」「難しすぎ」「意味がない」のどれかを見分けます。原因によって、手当ての方向が逆になるからです。
退屈の種類を1つ選ぶ
上の表を見て、今の作業が「簡単すぎ」「難しすぎ」「意味がない」のどれに近いかを決めます。MACモデルでは、原因によって退屈の感じ方も違うとされています。
所要 30秒
簡単すぎるなら、小さな目標を足す
「10分で20件」のように数と時間を決めて、作業に少しだけ手ごたえを足します。刺激が足りないことが原因の退屈には、頭の使い方を少し増やす方向が合うと考えられます。
所要 1分
意味がないなら、「誰の役に立つか」を1行書く
Tamらの実験では、意味が通ると集中の度合いが上がりました[8]。作業が誰の助けになるかを1行書いてから始めます。やり方は退屈な作業に意味づけをする研究にまとめています。
所要 1分
04 続けるためのコツ退屈な作業を毎日こなすコツは?
退屈を「集中力がない証拠」と受け取らず、作業の設計を見直す合図として扱うのが現実的です。短い区切りと、終わりの見える形にしておくと続けやすくなります。
- 退屈は自分を責める材料にしない: 単調な作業で集中が続かないのは、多くの人に起きることです。
- スマホで退屈をまぎらわさない場所を作る: 退屈になると、人は手軽な刺激に手を伸ばしがちです。作業中はスマホを手の届かない所に置きます。
- 短く区切って休む: 25分作業して5分休むなど、終わりを先に決めておきます。区切り方は短い休憩の研究にまとめています。
- 退屈な作業どうしを並べない: 同じ種類の単調な作業が続く日は、間に頭を使う作業を1つはさみます。
- 何をしても退屈な日が続くなら相談を: 好きだったことまで楽しめない状態が2週間ほど続くときは、医療機関に相談するのも一つの方法です。
05よくある質問
つまらない作業だと集中できないのは、私だけ?
多くの人に起きることです。Wilsonら(2014)の実験では、6〜15分ひとりで考えごとをするだけの課題で、57.5%の人が「集中しにくかった」を、89.0%が「心がさまよった」を、9段階の真ん中以上と答えていました。
退屈すると、どうして集中が切れるの?
退屈は、注意をうまく作業に向けられないときに生まれる不快な状態だと考えられています。fMRIの研究では、退屈な映像を見ているとき、集中をつかさどる脳の働きがうまく作業に向かっていない様子が見られました。ただし、退屈が先か、集中の失敗が先かは、まだはっきりしていません。
作業に意味を感じると、集中しやすくなる?
Tamら(2025)の実験では、話の筋が通った動画を見た人は、同じ映像を切り貼りして意味をなくした動画を見た人より、集中の度合いを高く答え、退屈も少なく感じていました。ただし、オンラインで動画を見る短い実験です。
出典
- Eastwood, J. D., Frischen, A., Fenske, M. J., & Smilek, D. (2012). The unengaged mind: Defining boredom in terms of attention. Perspectives on Psychological Science, 7(5), 482-495. https://doi.org/10.1177/1745691612456044
- Westgate, E. C., & Wilson, T. D. (2018). Boring thoughts and bored minds: The MAC model of boredom and cognitive engagement. Psychological Review, 125(5), 689-713. https://doi.org/10.1037/rev0000097
- Danckert, J., & Merrifield, C. (2018). Boredom, sustained attention and the default mode network. Experimental Brain Research, 236(9), 2507-2518. https://doi.org/10.1007/s00221-016-4617-5
- Hunter, A., & Eastwood, J. D. (2018). Does state boredom cause failures of attention? Examining the relations between trait boredom, state boredom, and sustained attention. Experimental Brain Research, 236(9), 2483-2492. https://doi.org/10.1007/s00221-016-4749-7
- Wilson, T. D., Reinhard, D. A., Westgate, E. C., Gilbert, D. T., Ellerbeck, N., Hahn, C., Brown, C. L., & Shaked, A. (2014). Just think: The challenges of the disengaged mind. Science, 345(6192), 75-77. https://doi.org/10.1126/science.1250830
- Fox, K. C. R., Thompson, E., Andrews-Hanna, J. R., & Christoff, K. (2014). Is thinking really aversive? A commentary on Wilson et al.'s "Just think: the challenges of the disengaged mind". Frontiers in Psychology, 5, 1427. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2014.01427
- Buttrick, N., Choi, H., Wilson, T. D., Oishi, S., Boker, S. M., Gilbert, D. T., et al. (2019). Cross-cultural consistency and relativity in the enjoyment of thinking versus doing. Journal of Personality and Social Psychology, 117(5), e71-e83. https://doi.org/10.1037/pspp0000198
- Tam, K. Y. Y., van Tilburg, W. A. P., Chan, C. S., & Inzlicht, M. (2025). Meaning and attention intertwined: Experimental and experience-sampling findings. Personality and Social Psychology Bulletin. https://doi.org/10.1177/01461672251383966


