テストで間違えた後、どう復習すれば覚えられるのか。「間違い」と記憶の研究でわかったこと

問題集やテストで間違えると、「やっぱり覚えられていない」と落ち込みますよね。けれど記憶の研究では、間違えた直後に正しい答えを確かめれば、その問題はむしろ覚え直しやすいことがわかっています。大切なのは間違えないことより、間違えた後の数秒の使い方です。
3行でわかる
- 間違えた直後に正解を見せると、1週間後の記憶が大きく伸びた。正解した問題に答えを見せても、ほとんど差はなかった。
- 「自信満々で間違えた問題」ほど、正解を見た後に直りやすい(ハイパーコレクション効果)。くり返し確かめられている。
- ただし「わざと間違えるほど覚えられる」わけではない。学習時間をそろえると、差が消えた研究もある。
01 悩みの正体間違えた問題は、もう覚えられないのか?
間違えたこと自体は、覚えられない証拠ではない。間違えた直後に正しい答えを確かめれば、その問題は覚え直しやすい。
テストで答えを思い出せなかった時、多くの人は「この知識は頭に入っていない」と受け取ります。そして間違いを見ないようにしたり、最初から教科書を読み直したりします。
ところが研究者の見方は少し違います。思い出そうとして失敗しても、その「思い出そうとした」こと自体が、直後に見る正解を覚えやすくすることがわかってきました[4]。
つまり、つまずきの原因は間違えたことではありません。多くの場合、間違えた後に正解を確かめずに先へ進んでしまうことにあります。
02 科学的にわかっていること間違えた後に正解を見ると、記憶はどう変わる?
間違えた直後に正解を見ると、1週間後の記憶が大きく伸びた。自信があった間違いほど直りやすいが、わざと間違えることに特別な効果があるとは言えない。
Pashlerら(2005)[1]
258人がルガンダ語(アフリカの言語)と英語の単語ペアを覚え、何度かテストを受けた。間違えた後に正しい答えを見せると、1週間後の最終テストの成績が494%伸びた。一方、正解した後に答えを見せても、成績はほとんど変わらなかった。自信があった正解でも、なかった正解でも同じだった。
対象: 258人(答えの見せ方を人ごとに変えて比較) / 限界: 外国語の単語ペアという単純な材料での結果。文章の理解や計算問題にそのまま当てはまるとは限らない。
ButterfieldとMetcalfe(2001)[2] / Eichら(2013)[3]
問題に答えるたびに、答えへの自信の強さも記録した。研究者は「自信のある間違いほど直しにくい」と予想していた。結果は逆で、自信満々だった間違いほど、正解を見た後の再テストで正しく答えられた。この「ハイパーコレクション効果」は、若い大人でも子どもでもくり返し確かめられている。
対象: 問題に答えた成人(Eichら(2013)は一般常識の問題で若い大人と高齢者を比較) / 限界: Eichら(2013)では、高齢の参加者ではこの傾向が弱く、自信の強さと直りやすさの関係ははっきりしなかった。
Kornellら(2009)[4] / HuelserとMetcalfe(2012)[5]
必ず答えられない問題(架空の雑学など)に一度答えようとしてから正解を見ると、最初から問題と答えを読んだ時より記憶に残った。実験3〜6の単語ペアは「クジラ→ほ乳類」のように、意味のつながりがあるものだった。HuelserとMetcalfe(2012)では、間違いが効くのは答えと意味のつながりがある時だけだった。無関係な単語ペアでは効果が出なかった。参加者は、間違えたことが記憶を助けていたと気づいてもいなかった。
対象: 大学生を中心とした実験室の参加者 / 限界: どの研究も、間違えた後に正解をすぐ見せる条件での結果。正解を確かめなければ、この効果は期待できない。
Butowska-Buczyńskaら(2025)[6]
雑学問題で「8秒で答えを推測してから正解を5秒見る」やり方と、問題と答えを読むやり方を比べた。読む時間が5秒だと推測するほうが良かった。しかし読む時間を同じ13秒にそろえると、差はなくなった(40人の実験)。時間をそろえた別の実験(71人)でも差は出なかった。著者らは、推測の効果は「問題について考える時間が増えるから」だと結論している。
対象: オンラインで参加した英語を話す成人(実験ごとに約40〜90人) / 限界: 雑学問題での結果。教室の授業や長期の試験勉強ではまだ確かめられていない。
これまでの研究を、テストの後の状況ごとに整理すると、次のようになります。
| テストの後の状況 | 研究でわかったこと | 出典 |
|---|---|---|
| 間違えて、すぐ正解を見た | 1週間後の記憶が大きく伸びた | [1] |
| 正解して、答えを見た | 成績はほとんど変わらなかった | [1] |
| 自信満々で間違えた | 正解を見た後、むしろ直りやすい | [2][3] |
| 答えと無関係な間違いをした | 間違えた効果は出なかった | [5] |
| 同じ時間だけ答えを読んだ | 推測してから正解を見るのと差がなかった | [6] |
記憶研究のレビュー(Metcalfe, 2017)も、間違いの後に正しい答えを返す「訂正のフィードバック」が欠かせないとまとめています。どこで考えを誤ったかを振り返ることも大切だとしています[7]。
03 今日からできる小さな一歩間違えた問題は、どう復習し直せばいい?
間違えたらその場で正解を確かめ、自信の強さに印をつけ、間違えた問題だけを数日後に解き直す。この3つで十分に始められる。
間違えたら、その場で正解を確かめる
丸つけを後回しにせず、1問ごとに正しい答えを見る。答えを読んだら、なぜ間違えたかを一言だけメモする。
所要 1問30秒
答える前に「自信あり・なし」の印をつける
自信満々の間違いは直りやすいので、必要以上に落ち込まなくていい。自信なしで間違えた問題は直りにくい傾向があるので、解き直しの先頭に回す。
所要 1問2秒
間違えた問題だけを、数日後に解き直す
正解した問題の答え合わせは最小限にして、間違えた問題(とくに自信なしで間違えた問題)を集め、もう一度テストする。
所要 10〜15分
04 続けるためのコツ間違いが続いて心が折れそうな時は?
間違いを「覚え直すチャンス」と言い換え、テストと復習の間隔を空けて回す。間違いの数ではなく、直った数を数えると続けやすい。
- 読み返すより、自分にテストして思い出すほうが記憶に残る。テスト効果の研究と組み合わせると、間違いを見つける回数そのものが増える。
- 解き直すタイミングは、翌日だけでなく数日〜1週間後にも置く。復習の間隔を調べた研究が目安になる。
- 1回の失敗で「全部ダメだ」と投げ出したくなる気持ちには、名前がついている。「どうにでもなれ効果」の研究も参考になる。
- ノートには「間違えた数」ではなく「解き直して正解できた数」を書く。前に進んでいる実感が残る。
05よくある質問
テストで間違えた問題は、もう覚えられないのですか?
そうとは限りません。間違えた直後に正しい答えを確かめると、1週間後の記憶が大きく伸びたという実験があります(258人、ルガンダ語の単語)。間違えたこと自体より、その後に正解を見るかどうかが分かれ目です。
自信があったのに間違えた問題は、覚え直しにくいですか?
研究ではむしろ逆で、自信満々で間違えた問題ほど、正解を見た後の再テストで正しく答えられやすい傾向がくり返し確認されています(ハイパーコレクション効果)。ただし高齢の参加者では、この傾向が弱かったという研究もあります。
わざと間違えながら覚えたほうが効率がいいのですか?
そこまでは言えません。雑学クイズで、答えを推測してから正解を見るやり方と、同じ時間だけ問題と答えを読むやり方を比べた研究では、差が出ませんでした。大事なのは間違えることではなく、間違えた後に正解をしっかり確かめることです。
正解した問題も、答え合わせをしたほうがいいですか?
単語の暗記を調べた実験では、正解した問題に答えを見せても、その後の成績はほとんど変わりませんでした。時間が限られているなら、間違えた問題の確認を優先してよさそうです。
出典
- Pashler H, Cepeda NJ, Wixted JT, Rohrer D (2005). When does feedback facilitate learning of words? Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31, 3-8. https://doi.org/10.1037/0278-7393.31.1.3
- Butterfield B, Metcalfe J (2001). Errors committed with high confidence are hypercorrected. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 27, 1491-1494. https://doi.org/10.1037/0278-7393.27.6.1491
- Eich TS, Stern Y, Metcalfe J (2013). The hypercorrection effect in younger and older adults. Aging, Neuropsychology, and Cognition, 20, 511-521. https://doi.org/10.1080/13825585.2012.754399
- Kornell N, Hays MJ, Bjork RA (2009). Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35, 989-998. https://doi.org/10.1037/a0015729
- Huelser BJ, Metcalfe J (2012). Making related errors facilitates learning, but learners do not know it. Memory & Cognition, 40, 514-527. https://doi.org/10.3758/s13421-011-0167-z
- Butowska-Buczyńska E, Hanczakowski M, Zawadzka K (2025). Errorful learning of trivia questions and answers: The role of study time. Memory & Cognition, 53, 804-819. https://doi.org/10.3758/s13421-024-01608-6
- Metcalfe J (2017). Learning from Errors. Annual Review of Psychology, 68, 465-489. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010416-044022


