先延ばしで失敗した後、どう振り返れば次は動ける?「もし〜していたら」の研究でわかった振り返り方

先延ばしして締め切りに間に合わなかった後、「まあ、もっとひどいことにもなり得た」と自分をなだめていませんか。気分は少し楽になりますが、研究では、次に動けるようになりやすいのは別の振り返り方でした。自分で変えられる具体的な一手を「もし〜していたら」の形で1つ書き、それを同じ言葉で「次は〜する」に言い換える方法です。
3行でわかる
- 先延ばししやすい人ほど、失敗の後に「もっと悪くなったかも」と考えて気分を守り、「こうすればよかった」を避ける傾向がありました(80人の実験)。
- 「こうすればよかった」と考えた直後は、同じ行動についての「次は〜する」という判断が速くなりました(726ミリ秒対1122ミリ秒)。振り返りが次の計画の準備になるということです。
- ただし、自分を責める・ぼんやりした「もっとちゃんとしていれば」は、やる気につながりにくいこともわかっています。変えられる一手に絞り、まず自分を許してから書くのが現実的です。
01 悩みの正体先延ばしの失敗を「まあいいか」で流してしまうのはなぜ?
失敗を思い返すのがつらいので、気分を守る考え方を選びやすいからです。先延ばししやすい人ほど「もっと悪くなったかも」と考え、「こうすればよかった」を避ける傾向が研究で見られました。
人は失敗の後、「もし〜だったら」と別の結果を思い浮かべます。心理学ではこれを反実仮想と呼びます。事実とは違う「もしも」を考えること、という意味です。
反実仮想には向きが2つあります。もっと良くなった場合を考える「上向き」と、もっと悪くなった場合を考える「下向き」です。
| 向き | 例 | 気分 | 次への役割 |
|---|---|---|---|
| 上向き | 前の晩に資料を開いていたら、間に合った | その場では悔しい | 次にやることの手がかりになる |
| 下向き | 出さないよりはまし、もっと悪くなり得た | ほっとする | 次にやることは見えにくい |
どちらが良い悪いではありません。下向きは落ち込みを和らげる応急手当です。ただ、それだけで終わると、次に何を変えればいいかが残りません。
先延ばしは、嫌な気分から逃げるための行動だと考えられています(先延ばしと感情の研究)。振り返りでも同じように、嫌な気分を避ける方を選びやすいのかもしれません。
02 科学的にわかっていること「こうすればよかった」と考えるのは、次に役立つ?
具体的で自分で変えられる「こうすればよかった」は、次の行動の計画を立てやすくすることが実験で示されています。一方、自分を責めるだけの振り返りは、やる気につながらない場合があります。
Sirois(2004)[1]
先延ばし傾向が強い人ほど、不安になる場面を想像したときに「もっと悪くなり得た」という下向きの考えが多く、「もっと良くできた」という上向きの考えが相対的に少なくなりました。この傾向は、先延ばしに関係する場面でより強く出ました。
対象: 80人。不安を感じる2つの場面(先延ばしに関係する場面と一般的な場面)を想像してもらい、浮かんだ「もしも」を書いてもらった / 限界: 想像した場面での実験で、実際の締め切りを落とした後の行動は測っていない。著者は、気分を立て直したい気持ちが働いていると解釈している。
Smallman・Roese(2009)[3]
「〜すべきだった」と判断した直後は、同じ行動についての「次は〜する」という判断が速くなりました。実験1では平均726ミリ秒で、何も考えずに判断した場合の1122ミリ秒より速く出ました。速くなったのは、振り返りと同じ行動について判断したときだけでした(実験2)。
対象: 大学生30人・46人・50人の3つの実験 / 限界: 測ったのは判断の速さで、実際に行動が変わったかは調べていない。実験3では、意図の判断に限った効果かどうかを確かめる統計の差は出なかった。
Epstude・Roese(2008)[2]
反実仮想の研究をまとめたレビューです。上向きの「もしも」は、次にどう行動するかの手がかりになりやすいと整理しています。例として、文字並べ替えパズルで上向きに振り返った人は、次の回の成績が上がった実験が挙げられています。
対象: 多数の実験を整理したレビュー / 限界: 「もしも」を繰り返し考え続ける反すうは、抑うつ症状の強いリスク要因になるとも指摘している。自分でどうにもできない出来事で自分を責めても、行動の改善にはつながらないとしている。
Sirois・Monforton・Simpson(2010)[4]
「失敗は許されない」と自分を追い込むタイプの完璧主義の人は、上向きの「もしも」を多く考えていました。ただ、その中身はぼんやりしたものが多く、「もしも」を考えてもやる気は上がりませんでした。高い目標を前向きに持つタイプの人では、「もしも」を考えるとやる気が上がりました。
対象: 2つの研究 / 限界: 完璧主義の性格との関係を見た研究で、先延ばしそのものを測ったものではない。
まとめると、上向きの振り返りなら何でもよいわけではありません。自分で変えられる、具体的な一手に絞った「もしも」が、次の計画につながりやすいと考えられます。
03 今日からできる小さな一歩先延ばしの後、振り返りは何をどう書けばいい?
まず自分を許す一言を書き、次に変えられる一手を「もし〜していたら」で1つ書き、最後にそれを同じ言葉で「次は〜する」に言い換えます。全部で5分ほどです。
先に、自分を許す一言を書く
「間に合わなかった。誰にでもあることだ」のように1行だけ書きます。責める気持ちが強いままだと、振り返りが反省会ではなく自分を責める時間になりやすいからです(自分を許すと次の先延ばしが減った研究)。
所要 30秒
「もし〜していたら」を1つだけ書く
条件は2つです。自分で変えられる行動であること、いつ・何をしたかが具体的なことです。「もっとちゃんとしていれば」ではなく、「もし前日の夜に資料を開いて1行書いていたら」のように書きます。
所要 2分
同じ言葉で「次は〜する」に言い換える
2で書いた行動をそのまま使い、「次は締め切りの3日前の夜9時に、資料を開いて1行書く」のように、時刻ときっかけを入れます。実験では、振り返りと同じ行動のときだけ判断が速くなりました。
所要 1分
つらすぎる日は、下向きで休んでよい
気持ちが限界の日は「もっと悪くなり得た」で気分を落ち着かせてかまいません。翌日、少し落ち着いてから2と3だけやります。
所要 0分(翌日に回す)
04 続けるためのコツ振り返りがぐるぐる止まらないときはどうする?
振り返りに時間の区切りをつけ、「次は〜する」の1文が書けたら終えます。同じ失敗を何度も考え続けるのは反すうで、行動の改善より落ち込みにつながりやすいとされています。
- 5分で切り上げる: タイマーをかけ、1文書けたら閉じます。
- 「なぜ自分は」を「何を」に変える: 性格ではなく、行動を1つ書きます。
- 変えられないことは書かない: 急な仕事が入った、などは「もしも」の対象から外します。
- 計画は1つだけ: 書いた「次は〜する」を、きっかけと一緒に決めておくと実行しやすくなります(「〜したら〜する」の研究)。
- 完璧を目指さない: 「失敗は許されない」と感じやすい人は、完璧主義と先延ばしの研究も参考になります。
05よくある質問
「もっと悪くなっていたかも」と考えるのはダメなこと?
ダメではありません。気分を落ち着かせる効果があり、つらいときの応急手当になります。ただ、それだけでは次に何を変えるかが見えにくいので、落ち着いた後に「もし〜していたら」を1つ書き足すのがおすすめです。
振り返ると落ち込んで、かえって動けなくなります。
振り返りが「なぜ自分はいつも」と自分を責める方向になっているのかもしれません。研究でも、ぼんやりした自分責めの「もしも」は、やる気につながりませんでした。行動を1つに絞り、先に自分を許す一言を書いてみてください。落ち込みが2週間以上続くときは、専門家に相談することも考えてください。
「もし〜していたら」はいくつ書けばいい?
研究で最適な数は決まっていません。数を増やすと反省が長引きやすいので、この記事では、いちばん効きそうな1つに絞ることをすすめています。
出典
- Sirois, F. M. (2004). Procrastination and counterfactual thinking: Avoiding what might have been. British Journal of Social Psychology, 43(2), 269-286. https://doi.org/10.1348/0144666041501660
- Epstude, K., & Roese, N. J. (2008). The functional theory of counterfactual thinking. Personality and Social Psychology Review, 12(2), 168-192. https://doi.org/10.1177/1088868308316091
- Smallman, R., & Roese, N. J. (2009). Counterfactual thinking facilitates behavioral intentions. Journal of Experimental Social Psychology, 45(4), 845-852. https://doi.org/10.1016/j.jesp.2009.03.002
- Sirois, F. M., Monforton, J., & Simpson, M. (2010). "If only I had done better": Perfectionism and the functionality of counterfactual thinking. Personality and Social Psychology Bulletin, 36(12), 1675-1692. https://doi.org/10.1177/0146167210387614


