誰かと一緒にやれば先延ばしは減る? グループ作業の実験でわかった「自分が欠かせない」の条件

ひとりだと手がつかないのに、誰かと約束すると不思議と動ける。そんな感覚を持つ人は少なくありません。研究で調べると、「一緒にやる」だけで先延ばしが減るわけではありませんでした。効果のきざしが見えたのは、自分の担当が欠けるとチーム全体が困る、という形のときだけです。しかもその効果は小さく、作業前のいやな気持ちは逆に増えていました。
3行でわかる
- 先延ばししがちな学生218人の実験で、「チームの成績はいちばん低い人の出来で決まる」と伝えたグループは、ひとりで作業した人より先延ばしが少なめだった(5段階で平均2.69対3.04)。
- ただし事前に登録した分析では差は有意にならず、著者も「結論は出ていない」としている。「平均で決まる」グループは、ひとりと差がなかった。
- グループ条件では、作業前のいやな気持ちがひとりより強かった。仲間はおしゃべりで先延ばしを招くこともある。組み方しだいの方法と考えるのが研究に沿う。
01 悩みの正体ひとりだと先延ばししやすいのはなぜ?
ひとりの作業は、いつ始めても誰も困らず、やり終えて良いことが起きるのも先だからです。691の相関をまとめた分析では、作業のいやさと、結果が出るまでの遠さが先延ばしと強く結びついていました。
Steel(2007)は、先延ばしの原因を調べた研究をまとめて分析しました[1]。強く一貫して結びついていたのは、次の要因です。
- 作業そのものが、いやだと感じること
- やり終えて良いことが起きるまで、時間がかかること
- 「自分にはできる」という自信の低さ
- 衝動のままに動きやすいこと
ひとりでする課題は、この条件がそろいやすい形です。学生の学習環境を調べたレビューでも、ひとりで作業することは先延ばしの多さと結びつく、とまとめられています[2]。そこで「誰かと一緒なら動けるのでは」という考えが出てきます。気持ちの面から見た先延ばしの仕組みは先延ばしと感情の研究で紹介しています。
02 科学的にわかっていることグループで作業すると、先延ばしは本当に減る?
条件しだいです。自分の担当が欠けると全体が困る形では先延ばしが少なめでしたが、効果は小さく、事前登録した分析では有意ではありませんでした。平均で決まる形では差がありませんでした。
Koppenborg、Hüffmeier、Klingsieck(2026)[3]
先延ばししがちな学生に、10日間で参考文献リスト(10件)を作る課題を出しました。3つの条件にランダムに分けています。ひとりで作業する/「チームの成績はいちばん低い人の出来で決まる」3人組/「チームの成績は3人の平均で決まる」3人組です。終了後に聞いた先延ばしの程度(1〜5)は、ひとり3.04、いちばん低い人で決まる組2.69、平均で決まる組3.00でした。
対象: ドイツの大学生218人(1,535人から先延ばし傾向の強い人を選抜) / 限界: 事前に登録した分析では差は有意にならず、追加の分析でだけ小さな差(d=0.35)が出ました。著者は結果を「決定的ではない」としています。仲間は実在せず、メンバー同士のやりとりもありませんでした。
2.69 対 3.04
先延ばしの程度(1〜5、低いほど少ない)。「いちばん低い人の出来で決まる」3人組と、ひとりで作業した人の平均[3]
同じ実験で、作業の出来(ミスの少なさ)には、どの条件でも差がありませんでした。作業前に感じたいやな気持ちは、2つのグループ条件のほうがひとりより強くなっていました(1〜5で、ひとり1.42、低い人で決まる組1.57、平均で決まる組1.69)[3]。著者は「仲間をがっかりさせたくない」という不安が、先延ばしを減らす効果を一部打ち消した可能性を挙げています。
Svartdalら(2020・レビュー)[2]
学生の学習環境が先延ばしを生む要因を整理したレビューです。グループ作業には「ひとりのときより手を抜く」傾向(社会的手抜き)が起きやすい面があります。一方で、メンバーが互いに頼り合う形のグループ作業は、先延ばしを減らす可能性があるとしています。仲間の影響は両面で、「すぐ始めるのが普通」という雰囲気は先延ばしを減らし、仲間とのおしゃべりは先延ばしの原因にもなります。
種類: 既存研究のまとめ(新しい実験ではない) / 限界: 頼り合うグループ作業の効果は、主にインタビュー調査などにもとづく見立てです。
Kleinら(2020)[4]
4つの研究で、目標を誰に伝えるかを調べました。自分より立場が上だと感じる相手に目標を伝えると、目標へのこだわりと成果が高まりました。「どう評価されるか」を気にする気持ちが働くためです。目標を人に知らせるだけでは足りず、相手が大事だという結果です。
対象: 異なる集団・方法・目標で行った4つの研究 / 限界: 先延ばしそのものを測った研究ではありません。
ここまでを整理すると、次のようになります。
| 「一緒にやる」の形 | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| 自分の担当が欠けると全体が困る | 先延ばしが少なめ(2.69対3.04)。ただし事前登録の分析では有意でない[3] | 小さな効果のきざし |
| 成績を平均でならす(誰かが補える) | ひとりと差がなかった(3.00対3.04)[3] | 効果なし |
| 目標を、上の立場の人に伝える | 目標へのこだわりと成果が上がった[4] | 相手しだいで効く |
| 仲間と集まって雑談しながら | 仲間による気の散りは先延ばしの原因になる[2] | 逆効果のおそれ |
03 今日からできる小さな一歩先延ばしを減らす「一緒にやる」の組み方は?
自分の担当と、渡す日をはっきりさせることです。誰かが代わりに補える形より、自分の分が届かないと相手が次に進めない形のほうが、研究で効果のきざしが出た条件に近くなります。
「自分しかやらない部分」を決める
共同の作業なら、「資料集めは自分」「図は相手」のように担当を分けます。全員で全部を少しずつやる形だと、誰かが補えてしまい、効果が出にくくなります[2][3]。
所要 5分
「いつまでに何を渡すか」を相手に伝える
「水曜の夜までに見出しを送る」のように、渡す物と日を一言で伝えます。ひとりの作業なら、先生や上司など一目置く相手に伝えるほうが、目標へのこだわりが強まります[4]。
所要 2分
集まるなら「話さない時間」を先に決める
友だちと一緒に作業するなら、「最初の30分は話さない」と決めてから始めます。仲間とのおしゃべりは、先延ばしの原因にもなるからです[2]。
所要 1分
04 続けるためのコツ人の目がプレッシャーになるときは?
プレッシャーが重すぎると、いやな気持ちを避けようとして、かえって先延ばしが起きやすくなります。人の力を借りるのは「最初の一歩」と「渡す日」だけにして、責め合わない約束をしておくのが安全です。
- グループ条件では作業前のいやな気持ちが強くなった[3]。「迷惑をかけたら終わり」と思いつめる人は、渡す量を小さくする。
- 最初の一歩そのものを小さくする方法は大きな作業の分け方の研究で紹介しています。
- 目標の伝え方で結果が変わる話は目標を人に話すと叶いやすいのかで詳しく扱っています。
- 約束を守れなかった日は、自分を責めすぎない。責めるより許すほうが次に取りかかりやすいという研究があります(先延ばしの後の立て直し方)。
先延ばしで仕事や生活に大きな支障が続く場合は、ひとりで抱えず、専門家に相談することも選択肢です。
05よくある質問
友だちと一緒に勉強すれば、先延ばしは減りますか?
ただ一緒にいるだけで減るという確かな研究は見つかりませんでした。学習環境のレビューでは、仲間とのおしゃべりが先延ばしの原因になることも指摘されています。一緒にやるなら、話さない時間を決め、それぞれの担当や区切りをはっきりさせるほうが研究の結果に沿います。
グループ作業で先延ばしが減ったという研究は信頼できますか?
2026年の実験は、事前に分析方法を登録した丁寧な研究です。ただ、登録どおりの分析では差は有意にならず、追加の分析でだけ小さな差が出ました。著者自身も結論は出ていないとしており、「効果のきざしがある」程度に受け止めるのが正確です。
人に宣言すると、かえってやらなくなるって本当ですか?
伝える相手によって変わるという研究があります。Kleinら(2020)では、自分より立場が上だと感じる相手に目標を伝えたときに、目標へのこだわりと成果が高まりました。誰にでも話せばよいわけではない点に注意してください。
出典
- Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65-94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
- Svartdal, F., Dahl, T. I., Gamst-Klaussen, T., Koppenborg, M., & Klingsieck, K. B. (2020). How study environments foster academic procrastination: Overview and recommendations. Frontiers in Psychology, 11, 540910. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.540910
- Koppenborg, M., Hüffmeier, J., & Klingsieck, K. B. (2026). Is procrastination among students lower in group work? Evidence from a registered field experiment. British Journal of Educational Psychology, 96(3), 1102-1122. https://doi.org/10.1111/bjep.70069
- Klein, H. J., Lount, R. B., Park, H. M., & Linford, B. J. (2020). When goals are known: The effects of audience relative status on goal commitment and performance. Journal of Applied Psychology, 105(4), 372-389. https://doi.org/10.1037/apl0000441


