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1回のミスで「もう全部やめたくなる」のはなぜ?「どうにでもなれ効果」の研究

約5分で読めます 出典照合済み(2026-10-10)

新鮮な野菜や果物を並べて食事を計画している様子
Photo: nenadstojkovicart / CC BY 2.0 / Flickr
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

ダイエット中に1個お菓子を食べてしまった。禁煙中に1本吸ってしまった。その瞬間、「もうダメだ、今日は全部台無し」と感じて、そのあと余計に食べすぎたり吸いすぎたりした経験はないでしょうか。これは意志が弱いからではなく、「どうにでもなれ効果」と呼ばれる、よく起きる心の動きです。

3行でわかる

  1. 食事を制限している人が1回ルールを破ると、かえってそのあと食べすぎてしまう現象は、複数の実験で確認されている。
  2. 「低カロリーだ」と伝えられても安心はできない。同じカロリーの飲み物を「低カロリー」と伝えられても、ダイエット中の人は「高カロリー」と伝えられたときと同じくらい食べすぎた。
  3. 「自分には無理だ」「いつもこうだ」と考えるほど、次の過食が早く訪れる傾向があった。解釈の仕方を見直すことが、立て直しの手がかりになりうる。

01 悩みの正体1回の失敗で、なぜ全部投げ出したくなる?

1回ルールを破ったという「解釈」が「もうダメだ」という思考を呼び、さらなる失敗につながりやすいと考えられているため。研究では、失敗の受け止め方が次の失敗の早さと関連していた。

この現象は心理学で「どうにでもなれ効果」や「禁戒違反効果(アブスティネンス・バイオレーション・エフェクト)」と呼ばれます。もともとは心理学者のアラン・マーラットとジュディス・ゴードンが、禁酒・禁煙など「完全にやめる」ことを目標にした人の再発の仕組みを説明するために提案した考え方です。1回の違反のあと「自分には自制心がない」「どうせ失敗する人間だ」と考えてしまうと、その考え自体が次の失敗を引き起こすというものです。

ポイントは、「食べた量」や「吸った本数」だけでなく、「ルールを破った」という自分への解釈が関わっているとされる点です。次の章で、それを裏づける実験を見ていきます。

02 科学的にわかっていることどうにでもなれ効果は、本当に研究で確認されている?

はい。食事を制限している人は、先にミルクシェイクを飲むと、そのあとかえって多く食べることが複数の実験で確認されている。

Herman & Mack(1975)[1]

普段から食事を制限している人と制限していない人に、ミルクシェイクを0・1・2杯飲んでもらったあと、アイスクリームを好きなだけ食べてもらう実験をした。食事を制限している人は、ミルクシェイクを飲まなかったときより、飲んだあとのほうがアイスクリームを多く食べた。制限していない人は逆に、前の量が多いほどあとで食べる量が減った。

対象: 普通体重の女性 / 限界: 1975年の実験室での実験で、日常の食事行動そのものを観察したものではない。

Mills & Palandra(2008)[2]

実際のカロリーが同じミルクシェイクを、「高カロリー」と伝えるか「低カロリー」と伝えるかだけを変えて飲んでもらった。食事を制限している人は、どちらを飲んだと伝えられても、飲まなかった人より多く食べた。「高カロリー」と「低カロリー」のあいだで、食べる量に統計的な差は出なかった。「高カロリー」と伝えられたほうが不安は強かったが、その不安の強さ自体は食べる量を予測しなかった。

対象: 食事を制限している女性と制限していない女性 / 限界: 実験室での一度のミルクシェイク摂取を使った研究で、日常のダイエット行動そのものを観察したものではない。

Grilo & Shiffman(1994)[3]

過食のある女性50人に、続けて起きた2回の過食について、電話で構造化された聞き取りをした。「自分には全く無理」「いつもこうだ」というように、自分を責めて一般化する解釈をするほど、次の過食が訪れるまでの時間が短くなった。一方、過食後の気分の落ち込み自体は、次の過食までの時間とは関係しなかった。

対象: 過食はあるが嘔吐などの排出行動はない、正常体重の女性50人 / 限界: 電話での自己報告にもとづく調査で、解釈を実験的に操作したものではない。

Curry, Marlatt & Gordon(1987)[4]

「1回ルールを破ったら全部台無し」という解釈のパターン(禁戒違反効果)は、食事や過食だけでなく、禁煙に挑戦している人たちを対象にした研究でも、1つの心理的な傾向(構成概念)として確認された。やめたい対象が食べ物であれ煙草であれ、同じ心の動きが起こりうることを示している。

対象: 禁煙に取り組んでいる人 / 限界: この研究の具体的な数値は確認できなかったため、数字は書いていない。

03 今日からできる小さな一歩破ってしまったとき、何をすればいい?

「もう終わりだ」という解釈を、「今回、1回あっただけ」という解釈に置き換える。自分を責める言葉が出たら、状況の理由を1つ探す。

1

「破った」を「1回あっただけ」に言い換える

ルールを破ったと感じた瞬間、頭の中の言葉を「もう全部台無し」から「今回は1回あっただけ」に変える。実際のカロリーや本数ではなく、この解釈の変化が重要です。

所要 10秒

2

自分を責める言葉に、状況の理由を1つ添える

「いつも自分はこうだ」と思ったら、「今日は寝不足だった」「残業で疲れていた」のように、今回に限った状況の理由を1つ挙げる。自分の性格のせいにしない練習です。

所要 1分

3

次に何を・いつ再開するかを決めてから動く

すぐに我慢を取り戻そうとするのではなく、「次の食事は野菜から食べる」「明日の朝から禁煙を再開する」のように、次の一歩を具体的に決めてから次の行動に移る。

所要 1分

04 続けるためのコツどうにでもなれ効果を繰り返さないには?

1回のミスをどう受け止めるかは、その時々で変わる。自分を責める言葉に気づき、受け止め方を見直すことが手がかりになる。

05よくある質問

どうにでもなれ効果は、ダイエット以外にも起きるの?

研究で確認されているのは主に食事や過食だが、禁煙に挑戦している人でも同じ「一度破ったら台無し」という解釈のパターンが確認されている。守れた・破れたの二択で考える目標であれば、同じ心の動きが起きる可能性がある。

「低カロリー」と伝えられれば安心して食べていいの?

そうとは言えない。研究では、実際のカロリーが同じでも「高カロリー」と伝えても「低カロリー」と伝えても、食事制限をしている人は同じくらい食べすぎた。研究者は、低カロリーでも「禁じられた食べ物」を口にすること自体が食べすぎにつながりうると結論づけている。

1回ミスをしたあと、何を考えればいいの?

「いつも自分はこうだ」というような自分を責めて一般化する言葉が出たら、代わりに「今日は寝不足だった」のような今回限りの状況の理由を1つ探す。研究では、責める解釈が強いほど次の失敗が早く訪れる関連が見られた。

出典

  1. Herman CP, Mack D (1975). Restrained and unrestrained eating. Journal of Personality, 43(4):647-660. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1206453/
  2. Mills JS, Palandra A (2008). Perceived caloric content of a preload and disinhibition among restrained eaters. Appetite, 50(2-3):240-245. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17888542/
  3. Grilo CM, Shiffman S (1994). Longitudinal investigation of the abstinence violation effect in binge eaters. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 62(3):611-619. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8063988/
  4. Curry S, Marlatt GA, Gordon JR (1987). Abstinence violation effect: validation of an attributional construct with smoking cessation. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(2):145-149. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3571666/