家族や友だちの習慣がうつるのはなぜ? 食べ方や運動が人から人へ広がる仕組みを研究で調べた

家族と暮らし始めたら夜食が増えた。走る友だちができたら、自分も走るようになった。習慣は自分ひとりで決めているつもりでも、周りの人に引っぱられています。研究では、人は他人の行動を気づかないうちにまね、周りを見て「ふつうはこのくらい」という目安を作るため、習慣が人から人へ広がると考えられています。ただし「うつる」の強さには、まだ議論もあります。
3行でわかる
- 食事の69の実験のうち64で、一緒に食べる人の量につられて、食べる量や選ぶものが変わっていました。
- 約110万人のランナーの分析では、友だちが1km多く走ると、本人も同じ日に平均0.3km多く走っていました。
- 一方、「肥満が友だちからうつる」という有名な研究には、同じ方法だと身長まで「うつる」ように見えるという反論があります。
01 悩みの正体周りの人の習慣は、なぜ自分にもうつるの?
人は、周りの人の行動を気づかないうちにまね、「ふつうはこのくらい」を周りから学びます。さらに、親しくなりたい相手や、自分と似ている相手ほど、その行動に合わせやすくなります。
- 気づかないまね: 一緒に食べる人がひと口食べると、自分も同じころにひと口食べる。こうした無意識のまねが、食べる量が似てくる理由の一部だとされています[1]。
- 「ふつう」の目安を借りる: どのくらいが適量か迷うとき、人は周りの人を目安にします。「ほかの人はこのくらい食べた」と知らされるだけでも、食べる量が変わりました[2]。
- 仲良くなりたい気持ち: 相手と親しくなりたいときや、自分と似ていると感じるときに、まねが強くなっていました[1]。
習慣は「同じ場面で、同じ行動をくり返す」ことで自動になっていきます。仕組みは習慣が自動で動く仕組みの研究にまとめています。いつも一緒にいる人は、その「同じ場面」の一部です。だから、相手の行動が自分の習慣に入りこみやすいと考えられます。
02 科学的にわかっていること人の習慣は、どのくらい周りに広がるの?
食べ方は、実験でくり返し周りに引っぱられることが確かめられています。運動も、友だちの影響を取り出した大規模な分析で広がりが見られました。体重のような長い目で見た変化が「うつる」かは、まだ議論があります。
Cruwysら(2015)[1]
1974〜2014年の69の実験(5800人以上)をまとめたレビューです。実験の協力者がわざと多く、または少なく食べると、参加者の食べる量や選ぶものが変わりました。69のうち64の実験で、この「つられる」効果が統計的にはっきり見られました。空腹かどうか、年齢、体重では、効果はあまり変わりませんでした。
ほとんどが実験室での1回の食事の研究です。何年も続く食習慣にどこまで当てはまるかは、まだわかっていません。
Robinsonら(2014)[2]
「ほかの人はこのくらい食べた」「ほかの人はこれを選んだ」という情報を見せる15の実験をまとめたメタ分析です。多く食べたと知らされると食べる量が増え(効果量 0.41)、少なく食べたと知らされると減りました(効果量 -0.35)。どちらも中くらいの影響とされています。
目の前に人がいなくても、情報だけで効果がありました。ただし実験の数は15と多くありません。
AralとNicolaides(2017)[3]
約110万人のランナーが5年間に走った記録(合計3億5000万km以上)と、友だちのつながりを分析しました。友だちの住む地域だけ天気が良かった日を使って、友だちの影響だけを取り出しています。友だちが1km多く走ると、本人も同じ日に平均0.3km多く走り、友だちが10分長く走ると本人は3分長く走っていました。
記録アプリの利用者だけの分析です。あまり走らない人がよく走る人を引っぱる向きは見られましたが、その逆は見られませんでした。食事や睡眠など、ほかの習慣に当てはまるかはわかりません。
ChristakisとFowler(2007)[4]
アメリカのフラミンガム心臓研究の1万2067人を、1971〜2003年の32年間追いました。友だちが肥満になると、本人が肥満になる確率は57%高くなっていました。きょうだいでは40%、夫婦では37%でした。近所に住むだけの人どうしでは、この関係は見られませんでした。
観察研究で、似た人どうしが友だちになることや、同じ環境で暮らすことの影響を完全には取り除けません。この点については、次の反論があります。
Cohen-ColeとFletcher(2008)[5]
アメリカの10代4300〜5400人のデータで、同じよくある分析方法を使うと、うつるはずのないニキビ、頭痛、身長まで、友だちから「うつる」ように見えました。住んでいる環境などの影響を取りのぞくと、どの結果も小さくなり、はっきりしなくなりました。
「習慣は周りに影響されない」という意味ではありません。友だちどうしが似ているだけでは、うつった証拠にならない、という注意です。
| 習慣 | 周りに広がるという証拠 |
|---|---|
| その場の食べる量・選ぶもの | 強い(実験でくり返し確認) |
| 運動(走る距離・時間) | 中くらい(大規模な分析で確認、ほかの集団は未確認) |
| 体重・肥満 | はっきりしない(観察研究で、反論あり) |
03 今日からできる小さな一歩周りの人に引っぱられる習慣と、どう付き合う?
まず「誰と一緒のときに、何が増えるか」に気づくことから始めます。そのうえで、良い習慣の人と過ごす場面を増やし、つられやすい場面では先に自分の量を決めておくのが、研究に合った工夫です。
「この人といると増える習慣」を1つ書き出す
夜食、飲み会の杯数、夜ふかし、スマホを見る時間など。気づかないまねは、気づくことで選び直せるようになります。
所要 3分
つられやすい場面では、先に量を決める
「お菓子は小皿に1杯だけ」のように、始める前に決めて取り分けます。相手のペースを目安にしないための工夫です。
所要 1分
身につけたい習慣を、もうやっている人と時間を合わせる
運動の研究では、友だちが走った日に本人もよく走っていました。一緒にやる、記録を見せ合うなど、相手の行動が目に入る形にします。
所要 連絡1回 2分
04 続けるためのコツ周りに流されるのは、意志が弱いから?
意志の弱さではありません。周りに合わせる働きは、空腹か、何歳かにかかわらず広く見られる、ふつうの心の動きです。責めるより、環境を整えるほうが効果的です。
- 人ではなく「場面」を変える: 相手との関係を変える必要はありません。会う場所や時間、テーブルに出すものを変えるだけでも、つられ方は変わります。場所と習慣の関係は場所の研究や、決まった時間に間食が欲しくなる仕組みも参考になります。
- 引っぱる側にもなれる: 運動の研究では、あまり走らない人がよく走る人に影響していました。自分が先に始めることで、家族の習慣が変わる可能性もあります。
- 「友だちのせい」と決めつけない: 似ているのは、同じ環境で暮らしているからかもしれません。習慣が途切れたときの立て直し方は運動の中断と再開の研究にまとめています。
05よくある質問
一緒にいる人につられて食べすぎるのはなぜ?
人は、周りの人が食べる量を「このくらいがふつう」という目安にするためと考えられています。69の実験のうち64で、一緒に食べる人の量につられて食べる量や選ぶものが変わっていました。本人が気づかないまね(無意識の模倣)も関わっています。
運動する友だちがいると、自分も運動するようになる?
その傾向はあります。約110万人のランナーの記録を分析した研究では、友だちがいつもより1km多く走ると、本人も同じ日に平均0.3km多く走っていました。天気の違いを使って、友だちの影響だけを取り出す工夫をしています。
太るのは友だちからうつるって本当?
はっきりしていません。約1万2000人を32年追った研究では、友だちが肥満になると本人もなりやすいという結果でした。しかし同じ方法を使うと、うつるはずのないニキビや身長まで「うつる」ように見えてしまうという反論があります。似た人どうしが友だちになることや、同じ環境の影響を取り除くのは難しいとされています。
出典
- Cruwys, T., Bevelander, K. E., & Hermans, R. C. J. (2015). Social modeling of eating: A review of when and why social influence affects food intake and choice. Appetite, 86, 3-18. https://doi.org/10.1016/j.appet.2014.08.035
- Robinson, E., Thomas, J., Aveyard, P., & Higgs, S. (2014). What everyone else is eating: A systematic review and meta-analysis of the effect of informational eating norms on eating behavior. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 114(3), 414-429. https://doi.org/10.1016/j.jand.2013.11.009
- Aral, S., & Nicolaides, C. (2017). Exercise contagion in a global social network. Nature Communications, 8, 14753. https://doi.org/10.1038/ncomms14753
- Christakis, N. A., & Fowler, J. H. (2007). The spread of obesity in a large social network over 32 years. New England Journal of Medicine, 357(4), 370-379. https://doi.org/10.1056/NEJMsa066082
- Cohen-Cole, E., & Fletcher, J. M. (2008). Detecting implausible social network effects in acne, height, and headaches: Longitudinal analysis. BMJ, 337, a2533. https://doi.org/10.1136/bmj.a2533


