新しい習慣は1つずつ始めるべき? いくつも同時に始めた人と、順番に始めた人を比べた研究でわかったこと

運動も、早起きも、食事も変えたい。でも「習慣は1つずつ」とよく聞くので、何から始めるか迷ってしまう。そんな人は多いはずです。同時に始める方法と順番に始める方法を直接比べた試験では、多くの場合で差は小さく、どちらも何もしないより良い結果でした。ただし、禁煙のような難しい行動は分けたほうが良かった試験もあります。数より「組み合わせ」と「支え」が大事そうです。
3行でわかる
- 同時と順番を直接比べた6件の試験をまとめたレビューでは、差が出たのは3件の、1つの行動だけ。著者は「どちらも同じくらい効く」と結論づけた。
- 食事と運動の4つの行動を変える試験(212人)では、同時でも順番でも9か月後まで大きな改善が続き、9か月後の差はなかった。
- 例外もある。禁煙では順番のほうが良かった試験が2件あった。一度にいくつまで変えられるかは、まだわかっていない。
01 悩みの正体「習慣は1つずつ」と言われるのはなぜ?
新しい行動は、慣れるまで毎回の手間と意識が必要です。いくつも同時に始めると負担が重なり、全部つぶれそうに感じるからです。
始めたばかりの習慣は、まだ自動では動きません。毎回「やろう」と思い出し、時間を作る必要があります。その手間が2つ、3つと重なれば、続かなそうに思えるのは自然です。
一方で、行動どうしには「ついでに良くなる」関係もあります。たとえば、夜のテレビを減らした人は、間食も減るかもしれません。だから、まとめて変えたほうが楽になる可能性もあります。どちらが正しいかは、実際に比べてみないとわかりません。三日坊主になる仕組みは新しい習慣が三日坊主で終わるのはなぜ?で紹介しています。
02 科学的にわかっていること習慣を同時に始めると失敗しやすい?
同時に始めても、順番に始めた場合と比べて失敗しやすいとは言えません。比べた試験の多くで差は小さく、どちらも何もしないよりは良い結果でした。
Jamesら(2016)[3]
複数の健康習慣を変える方法で、「同時に始める」と「順番に始める」を直接比べたランダム化比較試験を集めました。当てはまったのは6件で、対象は禁煙・食事・運動・飲酒でした。どちらかに差が出たのは3件で、それぞれ1つの行動だけでした。2件は禁煙で順番のほうが良く、1件は脂肪の摂取で同時のほうが良い結果でした。途中でやめる人の割合には差がありませんでした。
種類: システマティックレビュー(数値は統合せず、文章でまとめた) / 限界: 当てはまる試験が6件と少なく、著者も「どちらが効くかの証拠は限られている」と書いています。
Springら(2018)[1]
野菜と果物が少ない、脂肪が多い、運動が少ない、画面を見る時間が長い。この4つが当てはまる大人を3つの組に分けました。最初から運動も一緒に増やす組、7週目から運動を足す組、ストレスと睡眠の練習をする組です。運動を同時に足す組と順番に足す組は、どちらも9か月後まで大きく改善しました。6か月の時点だけ順番の組が少し上回りましたが、3か月と9か月では差がありませんでした。
対象: アメリカ・シカゴ周辺の18〜65歳の大人212人(平均40.8歳、76.4%が女性) / 限界: 4つのうち3つは自己申告です。アプリでの記録、週1回の電話コーチ、最初の12週は達成で週5ドルの報酬がありました。
1日6.5皿
9か月後に増えた野菜と果物の量(2つの組の平均)。運動は1日24.7分増え、画面を見る余暇の時間は1日170.5分減った[1]
Hymanら(2007)[2]
禁煙・減塩・歩数を増やす、の3つを目指す人を、3つを同時に支える組、6か月ごとに1つずつ足す組、地域の教室を紹介するだけの組に分けました。18か月後に2つ以上を達成した人は、6.5%・5.2%・6.5%と、どの組も少数でした。ただ、1つずつの目標で見ると、同時の組がいつも上回っていました。6か月後に減塩の目標を達成したのは、同時29.6%、順番16.5%、教室13.4%でした。
対象: アメリカの公的な診療所に通う、高血圧があり喫煙している45〜64歳のアフリカ系アメリカ人289人 / 限界: 18か月後に禁煙できていた人の差(20.3%・16.9%・10.1%)は、はっきりした差ではありませんでした。
ただし、Springら(2018)は注意も書いています[1]。ほかの試験では、同時に取り組んだほうが途中でやめる人や逆戻りが多かったこともあるそうです。持っている悪い習慣が多い人ほど、同時だと脱落しやすかった試験もありました。
組み合わせ方による違いも報告されています。Springら(2012)は、204人の大人を4種類の組み合わせに分けて、3週間のコーチをしました[4]。最もよく改善したのは「野菜と果物を増やす」と「画面を見る余暇を減らす」の組み合わせでした。野菜と果物は1日1.2皿から5.5皿に増えました。指示していない脂肪の割合も、12.0%から9.5%に下がりました。反対に、「脂肪を減らす」と「運動を増やす」という昔ながらのダイエットの組み合わせは、ほかの3つより改善が小さい結果でした。
ここまでを判定表にまとめます。
| よく言われること | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| 習慣は1つずつ始めないと失敗する | 直接比べた6件のうち、差が出たのは3件の1つの行動だけ[3] | 当てはまらないことが多い |
| 同時に始めると途中で投げ出しやすい | 直接比べたレビューでは差がなかったが、脱落が多かった試験もある[3][1] | 多くは差がない |
| 禁煙もほかの習慣と一緒に変えられる | 2件の試験で、禁煙は順番のほうが良かった[3] | 分けたほうがよい可能性 |
| 何を組み合わせても同じ | 組み合わせ方で改善の大きさが変わった[4] | 組み合わせしだい |
03 今日からできる小さな一歩習慣をいくつか始めたいときは?
相性の良い2つを組み合わせ、それぞれを小さく始めることです。難しい1つは分けて、記録と見直しの日を最初に決めておきます。
変えたい行動を書き出し、「ついでに良くなる」組を探す
画面を見る時間を減らすと、間食も減るかもしれません。研究でも、野菜と果物を増やし画面を見る時間を減らす組み合わせが最もよく改善しました[4]。同じ時間帯や場所でつながる行動を、1つの組にします。
所要 5分
いちばん難しい1つは、あとに回すか単独で取り組む
禁煙のように強い我慢が必要な行動は、順番のほうが良かった試験がありました[3]。「これは別」と決めておくと、ほかの習慣まで巻き込まれにくくなります。
所要 1分
記録の方法と、見直す日を決める
同時でも改善が続いた試験では、毎日の記録と、最初の12週は週1回の電話コーチがありました[1]。記録の効果は習慣を記録するだけで続けやすくなる研究にまとめています。
所要 3分
04 続けるためのコツ同時に始めて、きつくなってきたら?
全部やめずに、1つだけ量を下げるか、一時的に休ませれば十分です。続けられた1つが、次の習慣を足す土台になります。
- きつい習慣は、やめる前に目標を下げる。その考え方は習慣ができない日が続いたら、目標は下げるべき?で紹介しています。
- それぞれの習慣に「いつ・どこで」を決めておく。if-thenプランの研究が参考になります。
- 同じ場所・同じ時間にまとめると、きっかけを覚えやすい。場所の効果の研究にまとめています。
- 記録は毎日でなくてもよい。同時に改善が続いた試験でも、記録した日の割合は9か月後に54.6%まで下がっていました[1]。
なお、ここで紹介した試験の多くは、コーチや医療者の支えがある条件で行われています。持病があって食事や運動を大きく変えたいときは、主治医に相談しながら進めると安心です。
05よくある質問
習慣は1つずつ始めないと失敗しますか?
そうとは言えません。同時に始める方法と順番に始める方法を直接比べた6件の試験をまとめたレビューでは、差が出たのは3件で、それも1つの行動だけでした。著者は、どちらも同じくらい効くと考えるべきだと結論づけています。
同時と順番で、差が出たのはどんなときですか?
6件の試験のうち2件では、禁煙について順番に取り組むほうが良い結果でした。1件では、脂肪を減らす食事について同時のほうが良い結果でした。禁煙のように、とくに難しい行動は、ほかと切り分けたほうがよい可能性があります。
いくつまでなら同時に始めても大丈夫ですか?
研究ではまだわかっていません。食事と運動の試験では4つの行動が同時に改善しましたが、その試験の著者自身が「一度に変えられる行動の数は不明」と書いています。コーチの電話や記録アプリなどの支えがあった点にも注意が必要です。
出典
- Spring, B., Pellegrini, C., McFadden, H. G., Pfammatter, A. F., Stump, T. K., Siddique, J., King, A. C., & Hedeker, D. (2018). Multicomponent mHealth Intervention for Large, Sustained Change in Multiple Diet and Activity Risk Behaviors: The Make Better Choices 2 Randomized Controlled Trial. Journal of Medical Internet Research, 20(6), e10528. https://doi.org/10.2196/10528
- Hyman, D. J., Pavlik, V. N., Taylor, W. C., Goodrick, G. K., & Moye, L. (2007). Simultaneous vs sequential counseling for multiple behavior change. Archives of Internal Medicine, 167(11), 1152-1158. https://doi.org/10.1001/archinte.167.11.1152
- James, E., Freund, M., Booth, A., Duncan, M. J., Johnson, N., Short, C. E., Wolfenden, L., Stacey, F. G., Kay-Lambkin, F., & Vandelanotte, C. (2016). Comparative efficacy of simultaneous versus sequential multiple health behavior change interventions among adults: A systematic review of randomised trials. Preventive Medicine, 89, 211-223. https://doi.org/10.1016/j.ypmed.2016.06.012
- Spring, B., Schneider, K., McFadden, H. G., Vaughn, J., Kozak, A. T., Smith, M., Moller, A. C., Epstein, L. H., DeMott, A., Hedeker, D., Siddique, J., & Lloyd-Jones, D. M. (2012). Multiple behavior changes in diet and activity: a randomized controlled trial using mobile technology. Archives of Internal Medicine, 172(10), 789-796. https://doi.org/10.1001/archinternmed.2012.1044

