年をとると朝早く目が覚めてしまうのはなぜ? 体内時計と眠りの変化を研究で調べた

まだ外が暗い4時や5時に目が覚めて、そのまま眠れない。若いころは昼まで眠れたのに、と感じる人は多いはずです。研究を見ると、年をとって朝早く目が覚めるのは、気のせいでも気持ちの問題でもありませんでした。体内時計が前にずれ、明け方に眠りを支える力と深い眠りが弱まるという、体の変化が重なって起きています。
3行でわかる
- 年をとると、眠る時刻と体内時計(眠りを促すホルモンのメラトニンや体温のリズム)がそろって早い時刻にずれます。高齢者は、体内時計の上ではまだメラトニンが多い時間帯に目覚めていました。
- 体内時計と眠りを切り離して調べた実験では、高齢者は眠りから目覚める回数が若い人の約2.7倍でした。一方、目覚めた後に眠りに戻る速さは同じでした。
- 早朝に目が覚めて困っている24人を比べた研究では、夕方に明るい光を2晩浴びた人たちの体内時計が約2時間後ろにずれ、夜中に起きている時間が減りました。
01 悩みの正体年をとると朝早く目が覚めるのはなぜ?
年をとると朝早く目が覚めるのは、体内時計が早い時刻にずれるうえに、明け方に眠りを支える体内時計の力と、深い眠りが弱まるからです。いくつかの変化が重なって、明け方の眠りが途切れやすくなります。
眠りは、2つの仕組みで支えられています。1つは、起きている時間が長いほどたまる「眠気」です。もう1つは、夜になると眠りを促す「体内時計」です。
明け方は、たまった眠気がもうかなり減っている時間です。この時間に眠りを続けさせているのは、主に体内時計の働きです。年をとると、この明け方の支えが弱くなることが研究でわかってきました。
| 年齢とともに起きる変化 | 朝への影響 | 根拠 |
|---|---|---|
| 体内時計が早い時刻にずれる | 眠くなる時刻も目覚める時刻も早くなる | 健康な若者と高齢者の比較 [1][5] |
| 明け方に眠りを支える力が弱まる | 明け方に目覚めやすくなる | 体内時計と眠りを切り離した実験 [2][5] |
| 深い眠りが減り、浅い眠りが増える | 物音などで目覚めやすくなる | 65件の研究のまとめ [3][4] |
| 目のレンズが黄色くなる | 体内時計に強く働く青っぽい光が届きにくくなる | 年齢と体内時計のレビュー [5] |
02 科学的にわかっていること加齢で眠りと体内時計はどう変わる?
高齢者は眠る時刻も体内時計も早くずれ、さらに体内時計の上では早い段階で目覚めていました。目覚める回数は若い人の約2.7倍でしたが、寝直す速さは変わりませんでした。
Duffyら(2002)[1]
眠りに悩みのない健康な若者と高齢者で、眠る時刻と、血液中のメラトニンのリズムを比べました。高齢者は、眠る時刻もメラトニンのリズムも早い時刻にずれていました。さらに高齢者は、メラトニンのリズムに対して、より早い段階で眠り、目覚めていました。若者は目覚めるころにはメラトニンが下がっていたのに、高齢者はまだ比較的高いうちに目覚めていたのです。
対象: 眠りに悩みのない健康な若者と高齢者 / 限界: 健康な人の比較で、著者らは、このずれが眠りの乱れの原因だとは言えない可能性も述べている。
Klermanら(2004)[2]
健康な高齢者13人と若者11人の脳波の記録を、もう一度分析した研究です。1日を28時間(起きている18.7時間と床につく9.3時間)にして、体内時計のさまざまな時刻に眠ってもらう特別な実験の記録です。高齢者が眠りから目覚める割合は若者の約2.7倍でした。一方、目覚めた後にまた眠りに戻る割合は、若者と同じでした。この差は体内時計のほとんどの時刻で見られました。
対象: 健康な高齢者13人と若者11人 / 限界: 人数が少なく、実験室の特別な条件での記録。ふだんの生活の眠りとは条件が違う。
Ohayonら(2004)[3]
5歳から102歳までの健康な3577人、65件の研究をまとめたメタ分析です。大人では、年齢が上がるほど、深い眠りの割合が減り、浅い眠りの割合と、眠った後に起きている時間が増えていました。ただし、60歳を過ぎてからもはっきり悪くなり続けたのは、床にいる時間のうち眠れている割合(睡眠効率)だけでした。
対象: 65件の研究・3577人 / 限界: 参加者の病気や薬、お酒の確認が厳しいほど、年齢による差は小さくなった。年齢そのものの影響は思われているより小さい可能性がある。
Manderら(2017)[4]
年齢と眠りの研究をまとめたレビューです。年をとると、寝る時刻と起きる時刻が早まり、眠りが途切れやすく、深い眠りが減ることが整理されています。2500人以上を調べた研究では、70歳を超える男性の深い眠りは、55歳未満の男性より50%少なくなっていました。著者らは、高齢者は眠りが必要なくなったのではなく、必要な眠りを作り出す力が弱まっていると考えるのが最も筋が通る、とまとめています。
対象: 人を中心とした研究のレビュー / 限界: 「必要な眠りは減らない」は著者らの解釈で、決着した結論ではない。
Duffyら(2015)[5]
年齢と体内時計の研究をまとめたレビューです。高齢者の眠りは、体内時計とずれた時刻に眠ると、若者よりずっと乱れやすいことが示されていました。著者らは、明け方に眠りを促す体内時計の力が年齢とともに弱まると考えています。また、年をとった目のレンズは黄色くなり、体内時計に強く働く青っぽい光(短い波長の光)を通しにくくなります。一方、体内時計の1日の長さが短くなることは、早寝早起きになる原因ではないと整理されています。
対象: 体内時計と年齢の研究のレビュー / 限界: 光への反応の年齢差は、健康な高齢者では大きくないとも書かれている。
03 今日からできる小さな一歩朝早く目が覚めるのを減らすには?
夕方から夜にかけて明るい場所で過ごし、前にずれた体内時計を少し後ろへ戻すのが、研究で試された方法です。目が覚めても時計を見ず、焦らないことも助けになります。
夕方は明るい場所で過ごす
早朝に目が覚めて困っていた人が、夕方に2500ルクスの明るい光を2晩浴びると、体内時計が約2時間後ろにずれました [6]。ふつうの部屋の明かりは研究の光より暗いので、夕方に屋外を歩くなど、明るさを足す工夫から試せます。
所要 夕方の外出1回
眠くなる前に床に入らない
体内時計が早まると、寝る時刻も早くなりがちです。早く床に入るほど、朝も早く目覚めます。眠くなる前の時間帯に床に入るとかえって眠れない理由は早く寝ようとしても眠れない理由で書いています。
所要 就寝前に1分
04 続けるためのコツ早起きと上手につきあうには?
早く目が覚めるのを「眠りが壊れた」と考えず、体内時計の変化として受け止めることが出発点です。光の工夫は数日〜数週間続けて様子を見ます。
- 光の工夫は続けて試す: 高齢者16人の研究では、決まった時間に明るい光を12日間浴びると、夜中に起きている時間が1時間減りました [7]。
- 眠った時間より昼間の調子で判断する: 昼間に元気に過ごせていれば、早起きそのものは大きな問題でないことも多いです。
- 昼寝は短く: 長い昼寝は夜の眠気を減らします。長さの目安は昼寝は何分がいいかの研究を参考にしてください。
05よくある質問
年をとったら、睡眠時間は短くていいの?
そうとは限りません。年齢と眠りの研究をまとめたレビューの著者らは、高齢者は眠りが必要なくなったのではなく、必要な眠りを作り出す力が弱まっていると考えています。ただし、これはまだ研究者の解釈で、決着した結論ではありません。
朝4時や5時に目が覚めるのは病気?
多くは、年齢とともに体内時計が早い時刻にずれる自然な変化です。健康な高齢者でも、眠る時刻とメラトニンのリズムは若者より早くずれていました。ただし、昼間の眠気や気分の落ち込みが続くときは、医師に相談してください。
夕方に光を浴びると、本当に朝まで眠れるようになる?
早朝に目が覚めて困っていた24人を比べた研究では、夕方に明るい光を2晩浴びた人は、体内時計が約2時間後ろにずれ、夜中に起きている時間が減りました。ただし、人数の少ない研究で、誰にでも同じ効果があるとは言えません。
出典
- Duffy, J. F., Zeitzer, J. M., Rimmer, D. W., Klerman, E. B., Dijk, D. J., & Czeisler, C. A. (2002). Peak of circadian melatonin rhythm occurs later within the sleep of older subjects. American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism, 282(2), E297-E303. https://doi.org/10.1152/ajpendo.00268.2001
- Klerman, E. B., Davis, J. B., Duffy, J. F., Dijk, D. J., & Kronauer, R. E. (2004). Older people awaken more frequently but fall back asleep at the same rate as younger people. Sleep, 27(4), 793-798. https://doi.org/10.1093/sleep/27.4.793
- Ohayon, M. M., Carskadon, M. A., Guilleminault, C., & Vitiello, M. V. (2004). Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals. Sleep, 27(7), 1255-1273. https://doi.org/10.1093/sleep/27.7.1255
- Mander, B. A., Winer, J. R., & Walker, M. P. (2017). Sleep and human aging. Neuron, 94(1), 19-36. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2017.02.004
- Duffy, J. F., Zitting, K. M., & Chinoy, E. D. (2015). Aging and circadian rhythms. Sleep Medicine Clinics, 10(4), 423-434. https://doi.org/10.1016/j.jsmc.2015.08.002
- Lack, L., Wright, H., Kemp, K., & Gibbon, S. (2005). The treatment of early-morning awakening insomnia with 2 evenings of bright light. Sleep, 28(5), 616-623. https://doi.org/10.1093/sleep/28.5.616
- Campbell, S. S., Dawson, D., & Anderson, M. W. (1993). Alleviation of sleep maintenance insomnia with timed exposure to bright light. Journal of the American Geriatrics Society, 41(8), 829-836. https://doi.org/10.1111/j.1532-5415.1993.tb06179.x


