暗記カードはどう使う? 覚えたカードを抜かない・日をあけて3回、研究でわかった使い方

単語カードを何周もめくったのに、テストになると出てこない。そんな経験はありませんか。暗記カードは、使い方しだいで効果が大きく変わる道具です。研究では、裏を見る前に思い出すこと、覚えたカードを早く抜きすぎないこと、日をあけて学び直すことが大切だとわかっています。今日から変えられる使い方を、研究から整理します。
3行でわかる
- 暗記カードの効果は、答えを「思い出す」ことから生まれる。一度正解したあとも思い出す練習を続けた人は、読むだけに切り替えた人より後のテストでよく覚えていた。
- 「もう覚えた」と思ったカードを束から抜くと、学習はわずかだが一貫して悪くなった。思い出せないときは、答えを全部見るより、一部の文字をヒントに思い出す方法でも、ヒントなしと同じくらい覚えられた。
- 533人の研究の結論は、その日のうちに各カードを3回正解するまで練習し、そのあと日を大きくあけて3回学び直すこと。
01 悩みの正体暗記カードを何周しても覚えられないのはなぜ?
答えを思い出す前に裏返していたり、覚えたつもりのカードを早く抜いたりしているからかもしれません。何周したかより、何回思い出したかが記憶に残ります。
暗記カードは、表を見て答えを思い出し、裏で確かめる道具です。この「思い出す」ことが記憶を強くします。読み返すより思い出す方が残ることは、テスト効果の記事で紹介した多くの研究で確かめられています。
ところが、急いでいるとすぐに裏返して答えを読んでしまいがちです。これでは、カードを使っていても中身は読み返しと同じになります。また、1回答えられたカードをすぐに束から抜くと、そのカードを思い出す練習はそこで止まります。
大学生374人の調査(出典6)では、学生は「何回も正解するまで練習するとよい」ことはわかっていました。一方で、「間をあけて練習するとよい」ことは、あまり理解も実行もされていませんでした。
02 科学的にわかっていること暗記カードの効果的な使い方は、研究でわかっている?
わかっています。思い出す練習を続けること、正解したカードを早く抜かないこと、日をあけて学び直すことが、複数の研究で記憶を伸ばしていました。
Karpicke・Roediger(2008)[1]
大学生が外国語の単語を覚えた実験。一度正解した単語について、その後も思い出す練習を続けた場合と、読むだけにした場合を比べた。正解後にくり返し読んでも、後日のテストの成績は変わらなかった。くり返し思い出した場合は、記憶が大きく伸びた。学生自身の「どれだけ覚えているか」の予想は、実際の成績と関係がなかった。
対象: 大学生の実験 / 限界: 単語の組を覚える課題での結果。
Kornell・Bjork(2008)[2]
暗記カードを使う4つの実験で、「覚えたと思ったカードを抜いてよい」場合と、抜かずに続ける場合を比べた。カードを抜けるようにすると、学習は小さいが一貫して悪くなった。著者らは、自分がどれだけ覚えたかの判断が当てにならないことが原因の一つだと述べている。
対象: 4つの実験 / 限界: 差は「小さい」と報告されており、抜くこと自体が大きな失敗というわけではない。
Rawson・Dunlosky(2011)[3]
学生533人が、用語の説明を思い出す練習をした。最初の日に1〜4回正解するまで練習し、その後1〜5回学び直した。1〜4か月後の記憶を調べると、学び直しの効果が大きく、追加の練習量はそれほど増えなかった。著者らの勧めは「最初に3回正解するまで練習し、そのあと日を大きくあけて3回学び直す」こと。
対象: 学生533人、3つの実験 / 限界: 用語の説明を覚える課題で、紙の暗記カードそのものを使った実験ではない。
Huangら(2025)[4]
中国語を母語とする108人が、スワヒリ語と中国語の単語60組をパソコンのカードで覚えた。答えを思い出す練習は、くり返し読む練習より成績が良かった。紙のテストの正答率は、思い出す練習を3周した場合48%、4周で65%。読む練習は3周39%、4周51%で、周回を増やすほど差が広がった。
対象: 108人の実験 / 限界: テストは学習の30分後で、すべて1日のうちに行った。日をあけた学習でも同じかはわからない。
Vaughn・Kornell(2019)[5]
答えが出ないときに、答えの単語の一部の文字(2文字や4文字。例: s____r)をヒントとして見せる方法を調べた。ヒントがあると、参加者は自分から思い出す練習を選びやすくなった。ヒントなし・2文字・4文字で思い出した場合の記憶は同じくらいで、どれも答えを見るだけの場合より良かった。
対象: オンラインで参加した成人、複数の実験 / 限界: ヒントだけで答えを推測できる単語では、効果が少し下がった。
| 使い方 | 研究の結果 |
|---|---|
| 正解後も思い出す練習を続ける / 読むだけにする | 続けた方が後の記憶が大きく伸びた |
| 覚えたカードを抜く / 抜かない | 抜くと学習が小さいが一貫して悪化 |
| 一部の文字のヒント / ヒントなし | 同じくらい覚えられ、答えを見るだけより良い |
| 思い出す練習を3周 / 4周 | 4周の方が正答率が高かった(48%→65%) |
03 今日からできる小さな一歩暗記カードは、何回・どの順番で使えばいい?
答えを口に出してから裏返し、正解したカードも束に戻します。その日に各カード3回正解したら終え、日をあけて3回学び直します。
表を見たら、答えを言ってから裏返す
声に出すか、紙に書いてから裏で確かめます。出てこないときは、すぐ裏返さずに、最初と最後の1文字ずつだけ見てもう一度考えます。裏の端にヒントを小さく書いておくと使いやすくなります。
所要 1枚あたり5〜10秒
正解したカードも、束の後ろに戻す
1回正解しただけで抜かず、その日は各カードが3回正解するまで回します。3回正解したカードだけを、その日の束から外します。
所要 20枚で15分ほど
数日〜1週間あけて、全部の束をもう一度
学び直しの日は、各カード1回正解できれば十分です。これを3回くり返します。忘れていたカードがあっても、学び直すと最初より速く覚え直せます(忘れた単語の学び直しの記事)。
所要 1回10分ほど
04 続けるためのコツ暗記カードを続けるコツは?
「何周したか」ではなく「何回思い出せたか」を記録すると、手ごたえが見えやすくなります。学び直しの日は、最初から予定に入れておきます。
- カードの角に、正解した日付を小さく書く。日付が3つ並んだら、そのカードは一区切り。
- すらすら答えられるカードほど、抜きたくなる。ここで抜かずに残すのが、研究に沿った使い方。
- 学び直しの日をカレンダーに先に書く。間隔の決め方は復習のタイミングの記事が参考になる。
- 覚えにくい単語は、イメージを結びつける方法も試せる(キーワード法の記事)。
05よくある質問
暗記カードは、裏を見てから覚えてもいい?
最初に覚えるときは裏を見てかまいません。2周目からは、表を見て答えを思い出してから裏返すのが大切です。答えを読むだけにすると、カードを使っていても読み返しと変わらなくなります。
覚えたカードは、束から抜いていい?
1回正解しただけで抜くのは早すぎます。覚えたと思ったカードを抜けるようにすると、学習は小さいが一貫して悪くなりました。目安は、その日に3回正解してから外すことです。
アプリの暗記カードと紙のカード、どちらがいい?
研究で大切とされているのは、答えを思い出すこと、早く抜かないこと、日をあけて学び直すことです。紙でもアプリでも、この3つができればかまいません。パソコンのカードを使った実験でも、思い出す練習の効果が確かめられています。
出典
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966-968. https://doi.org/10.1126/science.1152408
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Optimising self-regulated study: The benefits—and costs—of dropping flashcards. Memory, 16(2), 125-136. https://doi.org/10.1080/09658210701763899
- Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2011). Optimizing schedules of retrieval practice for durable and efficient learning: How much is enough? Journal of Experimental Psychology: General, 140(3), 283-302. https://doi.org/10.1037/a0023956
- Huang, S., Cao, H. W., Wang, J., & Liu, S. (2025). The moderating role of learning rounds: Effects on retrieval practice and context dependence in digital flashcard foreign language vocabulary learning. Behavioral Sciences, 15(11), 1540. https://doi.org/10.3390/bs15111540
- Vaughn, K. E., & Kornell, N. (2019). How to activate students' natural desire to test themselves. Cognitive Research: Principles and Implications, 4, 35. https://doi.org/10.1186/s41235-019-0187-y
- Wissman, K. T., Rawson, K. A., & Pyc, M. A. (2012). How and when do students use flashcards? Memory, 20(6), 568-579. https://doi.org/10.1080/09658211.2012.687052


