記憶・学習

覚えたはずの英単語を忘れていたら? 学び直しが速い「節約効果」の研究でわかった立て直し方

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Photo: Till Niermann / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

前に覚えたはずの英単語が、まったく出てこない。あの時間はむだだったのかと、がっかりしますよね。でも研究では、思い出せない単語も記憶から消えたとは限らず、学び直すと最初より短い時間で覚え直せることがわかっています。これを「節約効果」と呼びます。忘れていたと気づいたときの立て直し方を、研究から整理します。

3行でわかる

  1. 思い出せない単語でも、学び直すと最初より短い時間で覚え直せる(節約効果)。忘却曲線の再現実験では、1日後の学び直しにかかる時間は最初の約7割だった。
  2. 学校で習ったスペイン語を733人で調べた研究では、使わなくても多くの知識が50年後まで残っていた。外国語の研究のレビューも、忘れた単語は新しい単語より速く学び直せると整理している。
  3. 立て直しは「1回思い出せたら次へ進み、1週間ほどあけて数回学び直す」。最初に何度も正解するまで粘るより、学び直しの回数を増やす方が研究に沿っている。

01 悩みの正体覚えた単語を忘れたのは、むだだったから?

むだではありません。思い出せないことと、記憶が消えたことは別です。思い出せない単語にも記憶の跡が残っていて、学び直すと最初より速く覚え直せます。

記憶の強さは、「思い出せるか」だけでは測りきれません。19世紀の心理学者エビングハウスは、別の物差しを考えました。一度覚えたリストを、もう一度覚え直すのにかかる時間です。

最初に覚えるのに10分かかったものを、7分で覚え直せたら、3分ぶん得をしたことになります。この「得をした割合」を節約率と呼びます。思い出せない内容でも、節約率がゼロでなければ、記憶はどこかに残っていると考えられます。忘れ方の全体像は忘却曲線の記事でくわしく紹介しています。

外国語の単語を忘れることについて、研究のレビューは「本当に消えたというより、取り出しにくくなった状態」と整理しています。忘れていたと気づいた日は、ゼロからのやり直しではなく、取り出す道を作り直す日だと考えられます。

02 科学的にわかっていること忘れた単語は、本当に速く覚え直せる?

速く覚え直せることが、複数の研究で示されています。さらに、間隔をあけて何回か学び直すと、最初の覚え方の差が小さくなり、長く残りやすくなります。

Murre・Dros(2015)[1]

エビングハウスの実験を、著者の一人が自分で再現した。約70時間かけて意味のない音節のリストを覚え、20分後から31日後までの間隔で覚え直した。1日後の学び直しにかかった時間は平均1,275秒で、最初の1,861秒の約7割だった。忘れ方はエビングハウスの結果とよく似ていた。

対象: 1人の実験 / 限界: 意味のない音節で、単語ではない。31日後の節約はかなり小さくなっており、時間がたつほど得は減る。

Bahrick(1984)[2]

学校でスペイン語を学んだ733人の記憶を、最大50年後まで調べた。覚えていた量は最初の3〜6年で減り、その後は30年ほどほとんど変わらなかった。使ったり復習したりしていなくても、多くの知識が50年たっても残っていた。よく残ったかどうかは、最初にどれだけしっかり学んだかで予測できた。

対象: 733人の調査 / 限界: 同じ人を追いかけた研究ではなく、学んでからの年数が違う人を比べた調査。

Mickanら(2019)[3]

外国語を忘れる現象についての研究を、記憶の研究と結びつけて整理したレビュー。忘れたように見える外国語の単語は、新しい単語を一から覚えるより、ずっと簡単に速く学び直せたという研究を紹介した。忘れることは「消える」より「取り出しにくくなる」ことだと述べている。

対象: 先行研究のレビュー / 限界: 紹介された学び直しの研究は主に外国語の単語についてで、ほかの教科にそのまま当てはまるとは限らない。

Miendlarzewskaら(2018)[4]

19人が物の絵と画面の位置の組み合わせを覚えた。6週間後のテストの正答率は21.2%で、当てずっぽう(16.67%)に近かった。それでも、思い出せなかった組み合わせを1回見直すと、正答率は6割を超えた。最初に覚えるときにお金のごほうびがあった組み合わせは、学び直しがさらに速かった。

対象: 19人の実験 / 限界: 人数が少なく、まったく新しい組み合わせを覚える場合との比較はしていない。

Rawson・Dunlosky(2013)[5]

大学生567人が、用語の定義を正しく言えるまで練習し、そのあと2〜3回の学び直しをした。最初の練習のしかたで生じた差は、学び直しのあとには大きく縮んだ。時間のかかった覚え方の不利も、その後の学び直しが速く済むことで小さくなった。

対象: 大学生567人、3つの実験 / 限界: 用語の定義を覚える課題で、外国語の単語ではない。

Vaughnら(2016)[6]

スワヒリ語と英語の単語の組を、最初の日に1〜7回正解するまで練習した。その後、1週間おきに4〜5回、1回正解するまで学び直した。最初に何回正解したかの差は、学び直しを重ねると残らなかった。著者らは、最初に粘るより、間隔をあけた学び直しに時間を使う方がよいと述べている。

対象: 2つの実験 / 限界: 実験室で単語の組を覚えた結果。テストの直前だけ詰め込む勉強とは条件が違う。

わかったこと研究
1日後の学び直しは最初の約7割の時間Murre・Dros(2015)
使わなくても多くの知識が50年残るBahrick(1984)
忘れた外国語の単語は新しい単語より速く学び直せるMickanら(2019)のレビュー
学び直しを重ねると、最初の覚え方の差は小さくなるRawson・Dunlosky(2013)、Vaughnら(2016)

03 今日からできる小さな一歩忘れていた単語は、どう学び直せばいい?

答えを見る前に一度思い出そうとし、1回正解できたら次に進みます。そのあと1週間ほどあけて、同じ単語を何回か学び直します。

1

忘れていた単語に印をつけ、まず思い出そうとする

答えを見る前に、数秒だけ意味を思い出そうとします。それから答えを確かめます。何も見ずに思い出す練習は、読み返すより記憶に残ることがわかっています(テスト効果の記事)。

所要 1語あたり10秒ほど

2

その日は「1回正解できたら次へ」で区切る

同じ単語で何度も正解するまで粘らなくてかまいません。学び直しを続けるなら、最初の日に何回正解したかの差は残らなかったという実験があります。

所要 10〜15分

3

1週間ほどあけて、印の単語をもう一度

印をつけた単語だけを、1週間おきに数回(実験では4〜5回)、同じやり方で学び直します。回数を重ねるほど、学び直しは短い時間で済むようになります。間隔の決め方は復習のタイミングの記事も参考になります。

所要 1回5〜10分

04 続けるためのコツ忘れるたびに落ち込むのをやめるには?

「忘れた単語の数」より「学び直しにかかった時間」に目を向けると、記憶が残っていることを実感しやすくなります。

05よくある質問

一度忘れた単語は、また覚えても忘れやすいの?

忘れやすいとは限りません。学び直しの研究では、間隔をあけて何回か学び直すと、学び直しにかかる時間が短くなり、長く残りやすくなりました。忘れたことよりも、その後に学び直したかどうかが大切です。

何年も前に習った英語も、学び直せば戻ってくる?

戻りやすいと考えられます。学校でスペイン語を学んだ733人の調査では、使わなくても多くの知識が50年後まで残っていました。外国語の研究のレビューも、忘れたように見える単語は新しい単語より速く学び直せると整理しています。

忘れていた単語は、すぐに何度も繰り返した方がいい?

その日は1回正解できたら次に進み、日をあけて学び直す方が研究に沿っています。最初の日に何回正解したかの差は、1週間おきの学び直しを重ねると残りませんでした。

出典

  1. Murre, J. M. J., & Dros, J. (2015). Replication and analysis of Ebbinghaus' forgetting curve. PLoS ONE, 10(7), e0120644. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0120644
  2. Bahrick, H. P. (1984). Semantic memory content in permastore: Fifty years of memory for Spanish learned in school. Journal of Experimental Psychology: General, 113(1), 1-29. https://doi.org/10.1037/0096-3445.113.1.1
  3. Mickan, A., McQueen, J. M., & Lemhöfer, K. (2019). Bridging the gap between second language acquisition research and memory science: The case of foreign language attrition. Frontiers in Human Neuroscience, 13, 397. https://doi.org/10.3389/fnhum.2019.00397
  4. Miendlarzewska, E. A., Ciucci, S., Cannistraci, C. V., Bavelier, D., & Schwartz, S. (2018). Reward-enhanced encoding improves relearning of forgotten associations. Scientific Reports, 8, 8557. https://doi.org/10.1038/s41598-018-26929-w
  5. Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2013). Relearning attenuates the benefits and costs of spacing. Journal of Experimental Psychology: General, 142(4), 1113-1129. https://doi.org/10.1037/a0030498
  6. Vaughn, K. E., Dunlosky, J., & Rawson, K. A. (2016). Effects of successive relearning on recall: Does relearning override the effects of initial learning criterion? Memory & Cognition, 44(6), 897-909. https://doi.org/10.3758/s13421-016-0606-y