休憩したのに集中が戻らないのはなぜ? 休憩中のスマホと回復の研究でわかった立て直し方

集中が切れたので休憩した。なのに、席に戻っても頭が動かない。そんな経験は珍しくありません。研究では、休憩の長さだけでなく「休憩中に何をしたか」で、戻った後のはかどり方が変わっていました。大学生414人の実験では、同じ買い物リストの作業でも、スマホでやった休憩は、紙やパソコンでやった休憩より回復が小さかったのです。
3行でわかる
- 休憩をスマホで過ごした人は、紙やパソコンで同じ休憩をした人より、戻った後に解けた問題が少なかった(10問中 平均6.38問 対 8.13問)。
- 10分以内の短い休憩は、元気さを上げ疲れを減らすが、難しい作業のはかどりを戻す力は小さい(22の研究・2,335人のメタ分析)。
- 集中が戻らないときは、スマホから離れて、歩く・力を抜くなど中身のある休憩を、少し長めにとり直すのが近道。
01 悩みの正体休憩したのに集中が戻らないのはなぜ?
休憩の時間をとっても、その間にスマホで頭を使い続けていると、回復が進みにくいことがわかってきました。休憩が足りないのではなく、休憩の中身が合っていない可能性があります。
休憩は、使った頭の力を取り戻す時間だと考えられています。ところが休憩中にスマホを手に取ると、通知、次の投稿、返信と、頭は小さな判断を続けます。
「休んだ気がするのに戻れない」のは、意志が弱いからではありません。次のような状態が重なっていることが多いのです。
- 休憩中も頭が動いている: スマホで読む・選ぶ・返すを続けている
- 休憩が短すぎる: 難しい作業の疲れは、数分では戻りにくい
- 戻るきっかけがない: 「あと1本だけ」で休憩が延び、作業に戻る区切りがない
02 科学的にわかっていること休憩中のスマホは、集中の回復を妨げる?
実験では、スマホでとった休憩は、紙やパソコンでとった同じ休憩より回復が小さく、かかった時間は休憩なしと差がありませんでした。短い休憩そのものは、元気さを上げる効果が確かめられています。
KangとKurtzberg(2019)[1]
難しい単語パズルを10問解いた後、休憩をはさんで、さらに難しい10問を解いた。休憩は「予算内で買う物を3つ選ぶ」という同じ作業で、スマホ・紙・パソコンのどれかでやった。後半に解けた数は、スマホ休憩で平均6.38問、紙とパソコンでは8.13問、休憩なしは5.32問だった。
対象: 大学生414人、くじ引きで条件を分けた / 限界: 1回の実験室の実験。後半にかかった時間は、スマホ休憩と休憩なしで差がなかった(平均330秒と356秒)。スマホ休憩も、休憩なしよりは解けた数が多かった。
Albulescuら(2022)[2]
10分以内の短い休憩を調べた22の研究(2,335人)をまとめると、休憩は元気さを上げ(効果の大きさ0.36)、疲れを減らした(0.35)。一方、作業のはかどりへの効果は小さく(0.16)、はっきりした差は出なかった。効果があったのは、頭をあまり使わない作業だけだった。
対象: 実験や準実験の研究 / 限界: 休憩が長いほど、はかどりの回復は大きかった。著者らは、頭を強く使う作業の回復には10分より長い休憩が要るかもしれない、と述べている。
Sianojaら(2018)[3]
働く人が、昼休みに15分の公園の散歩か、15分のリラックス練習を、10日続けて行った。散歩をした日は、午後の集中がよく、疲れが少なかった。リラックス練習をした日も、午後の集中がよく、緊張と疲れが少なかった。
対象: 散歩51人、リラックス練習46人、5週間にわたり回答 / 限界: 集中や疲れは本人の回答による。散歩は「楽しめたこと」、リラックス練習は「仕事から頭が離れたこと」を通して効いていた。
Fortesら(2023)[4]
試合形式の練習の直前に、30分スマホでSNSを使ったボクサーは、指導ビデオを見たときより、攻めと守りの判断が悪くなった。ジャンプ力には差がなかった。
対象: アマチュアのボクサー21人、同じ人が3つの条件をすべて行った / 限界: 人数が少なく、スポーツの判断を調べた研究。30分という長めの使用で、数分の使用でも同じかはわからない。
どの研究も人数や条件は限られています。それでも「休憩はとる」「休憩の中身はスマホ以外にする」という方向は、4つの研究でそろっていました。スマホが視界にあるだけで集中が落ちるかは、22件の研究のメタ分析の記事で詳しく調べています。
03 今日からできる小さな一歩休憩後に集中が戻らないとき、どう立て直す?
スマホを置いて、もう一度休憩をとり直します。紙に書く・外を歩く・目を閉じて力を抜くなど、スマホ以外の休憩を5〜15分とり、戻る前に次の1手を決めてから作業に戻ります。
スマホ以外の休憩を、とり直す
外や廊下を歩く、窓の外を見る、目を閉じて肩の力を抜く。実験で回復が大きかったのは、スマホを使わない休憩でした。
所要 5〜10分
難しい作業なら、15分の散歩かリラックスを
頭を強く使う作業の疲れは、数分では戻りにくいことがあります。昼休みなどに15分歩くか、ゆっくり呼吸して力を抜く時間をとります。歩くとアイデアが出やすくなる研究は散歩とひらめきの記事にあります。
所要 15分
04 続けるためのコツ休憩でついスマホを見てしまう日はどうする?
見てしまった日を責める必要はありません。休憩の中身を前もって決めておき、スマホを開く前に別の行動が始まる仕組みをつくるほうが、意志に頼るより続けやすくなります。
| 休憩の過ごし方 | 研究でわかったこと |
|---|---|
| スマホで同じ作業 | 紙・パソコンより回復が小さかった[1] |
| 紙・パソコンで同じ作業 | 休憩なしより、後半に解けた数が多かった[1] |
| 10分以内の短い休憩 | 元気さが上がり、疲れが減った[2] |
| 昼休み15分の散歩・リラックス | 午後の集中がよく、疲れが少なかった[3] |
| 30分のSNS | 直後の判断が悪くなった[4] |
- 休憩の中身を先に決める: 「タイマーが鳴ったら、水をくんで窓の外を見る」と決めておく。休憩の間隔は休憩の取り方の記事が参考になります。
- スマホは休憩の最後にまとめて: どうしても確認したい連絡は、休憩の最後の2分だけと決めます。
- 寝不足の日は休憩だけで戻らない: 眠気が強い日は、寝不足の翌日の立て直し方も合わせて試してください。
05よくある質問
休憩中にスマホを見ると、集中力は回復しないのですか?
回復しないわけではありませんが、小さくなる可能性があります。大学生414人の実験では、スマホで休憩した人が後半に解けたパズルは10問中平均6.38問で、紙やパソコンで同じ休憩をした人(8.13問)より少なく、休憩なし(5.32問)より多い結果でした。
集中を戻すには、休憩は何分とればいいですか?
決まった答えはまだありません。10分以内の短い休憩を調べたメタ分析では、元気さは上がりましたが、難しい作業のはかどりへの効果ははっきりせず、休憩が長いほど回復が大きい傾向がありました。難しい作業なら、15分ほどの散歩やリラックスも選択肢です。
休憩中のSNSが疲れるのはなぜですか?
SNSでは、読む・選ぶ・反応するといった小さな判断が続くためと考えられています。アマチュアのボクサー21人の研究では、試合形式の練習の直前に30分SNSを使うと、指導ビデオを見たときより判断が悪くなりました。ただし人数が少なく、数分の使用でも同じかはわかっていません。
休憩しても集中できない日が何日も続くときは?
睡眠不足や強いストレスが隠れていることがあります。眠れない、何をしても集中できない状態が長く続くときは、休憩の工夫だけで抱え込まず、医師などの専門家に相談してください。
出典
- Kang, S., & Kurtzberg, T. R. (2019). Reach for your cell phone at your own risk: The cognitive costs of media choice for breaks. Journal of Behavioral Addictions, 8(3), 395-403. https://doi.org/10.1556/2006.8.2019.21
- Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). "Give me a break!" A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLoS ONE, 17(8), e0272460. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272460
- Sianoja, M., Syrek, C. J., de Bloom, J., Korpela, K., & Kinnunen, U. (2018). Enhancing daily well-being at work through lunchtime park walks and relaxation exercises: Recovery experiences as mediators. Journal of Occupational Health Psychology, 23(3), 428-442. https://doi.org/10.1037/ocp0000083
- Fortes, L. S., Gantois, P., de Lima-Júnior, D., Barbosa, B. T., Ferreira, M. E. C., Nakamura, F. Y., Albuquerque, M. R., & Fonseca, F. S. (2023). Playing videogames or using social media applications on smartphones causes mental fatigue and impairs decision-making performance in amateur boxers. Applied Neuropsychology: Adult, 30(2), 227-238. https://doi.org/10.1080/23279095.2021.1927036


