寝る前の入浴は寝つきを良くするのか。研究でわかった効果的なタイミング

布団に入ってもなかなか寝つけない夜がある。「お風呂に入ると眠くなる」とよく言われるが、本当にそうなのか、気になったことはないだろうか。体温の変化に注目した研究から、入浴が眠りに与える影響と、効果が出やすいタイミングがわかってきている。
3行でわかる
- 入浴で体温を一度上げてから下げる動きをつくることが、寝つきを早めるきっかけになると考えられている。
- 就寝の1〜2時間前に10分以上湯船に浸かると、入眠までの時間が20〜30%ほど短くなったとする研究が複数ある。
- ただし高齢者の足浴実験では、一晩を通した睡眠全体の変化までは確認されなかった。
01なぜ「お風呂で眠くなる」と言われるのか
体の内部の温度(深部体温)が下がり始めるタイミングで眠気が強まるため、入浴で体温を一度上げてから下げる動きをつくることが、入眠を後押しすると考えられている。
私たちの体は、夜になると体の内部の温度(深部体温)が少しずつ下がり、その下がる動きに合わせて眠気が強まるようにできています。入浴で一時的に体温を上げると、お風呂から出た後の体温の下がり幅が大きくなり、この「下がる動き」が寝つきを後押しすると考えられています。手や足の血管が広がって熱を逃がすことも、この体温低下を助けていると説明されています。
02科学的にわかっていること
就寝の1〜2時間前に10分以上湯船に浸かると、入眠までの時間が20〜30%ほど短くなったとする研究が複数報告されている。
Maedaら(2023)[1]
健康な成人23人を対象に、シャワーのみ・短い入浴(約5分)・長い入浴(約16分、湯温約40℃)を就寝の1.5〜2時間前に行って比較した実験では、長い入浴をした夜は入眠までの時間が平均12.3分と、シャワーのみの夜(平均20.3分)より短かった。入浴後は深部体温に近い舌下の温度が一時的に0.9℃ほど上がり、その後大きく下がっていた。
対象: 健康な成人23人(平均39歳)の自宅での実験 / 限界: 参加者数が少なく、若い世代や持病がある人への当てはまりは今後の検証が必要。
Taiら(2021)[2]
高齢者1094人、のべ2139夜分のデータを分析した研究では、入浴しなかった夜と比べて、就寝61〜120分前に入浴した夜は入眠までの時間(活動量計による推定)が平均20.6%短く、121〜180分前だと27.4%短くなっていた。
対象: 地域在住の高齢者1094人(平均72歳)の自宅での長期観察 / 限界: 観察研究のため、体調の良い日に入浴する人が多かった可能性は否定できない。
Hardingら(2020)[3]
就寝前の温浴に関する13件の臨床試験をまとめたレビューでは、就寝の1〜2時間前に10分程度の温浴を行うと、入眠までの時間が平均で約36%短くなったとする結果が紹介されている。手足を温めて血管を広げることで、体の中心部との温度差が縮まり、眠りに入りやすくなる仕組みが説明されている。
対象: 水を使った温浴に関する複数の臨床試験をまとめたレビュー論文 / 限界: 元になった試験ごとに対象者や条件が異なり、効果の大きさには幅がある。
Liaoら(2008)[4]
不眠を訴える高齢者15人を対象に、就寝の1時間前に41℃の足浴を40分間行う実験をしたところ、足の皮膚温度は上がったものの、一晩を通した入眠までの時間や総睡眠時間には統計的な差が見られなかった。入浴後の時間帯の目覚めがやや減る程度の変化にとどまった。
対象: 不眠を訴える高齢者15人、睡眠ラボでの3泊の観察 / 限界: 足浴だけでは全身浴ほどの体温変化が得られず、不眠がある人への効果は限定的な可能性がある。
ここまでの研究を、入浴から就寝までの間隔で整理すると次のようになる。研究ごとに対象や入浴方法が異なるため、数値はあくまで目安として見てほしい。
| 研究 | 対象 | 入浴〜就寝の間隔 | 入眠への効果 |
|---|---|---|---|
| Maeda(2023) | 成人23人 | 1.5〜2時間前・16分入浴 | 入眠潜時12.3分(シャワーのみ20.3分) |
| Tai(2021) | 高齢者1094人 | 61〜120分前 | 入眠までの時間 約20.6%短縮 |
| Tai(2021) | 高齢者1094人 | 121〜180分前 | 入眠までの時間 約27.4%短縮 |
| Harding(2020、13試験のレビュー) | 複数試験の総合 | 1〜2時間前・10分以上 | 入眠までの時間 平均約36%短縮 |
| Liao(2008) | 不眠高齢者15人 | 就寝1時間前・足浴40分 | 一晩全体では有意差なし |
03今日からできる小さな一歩
就寝の1〜2時間前に、40℃前後の湯船に10分以上浸かる習慣をつくることが、今日から試せる一歩になる。
就寝の1〜2時間前に入浴する
寝る直前ではなく、少し時間を空けて入浴の時間を確保する。
所要 10分〜
湯温40℃前後で10分以上浸かる
シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる時間を意識してつくる。
所要 10〜16分
入浴後は手足を覆いすぎない
厚手の靴下や寝具で手足を覆いすぎると、熱が逃げにくくなり体温が下がりにくくなる。
所要 なし
04続けるためのコツ
毎日湯船に浸かるのが難しい日は、シャワーを長めにするなど「できる範囲」に切り替えてよいと考える。
- 毎日湯船に浸かるのが難しい日は、シャワーを少し長めにするなど無理のない範囲に切り替える。
- 入浴時間を歯磨きや着替えなど既存の習慣とセットにして、考えなくても体が動くようにする。
- 入浴後にスマホの強い光を浴びすぎないようにすると、体温が下がる動きを妨げにくい。
「毎日お風呂に入るのは面倒」と感じる人は少なくありません。無理に毎日続けようとせず、できる日から試すだけでも十分です。
05よくある質問
お風呂は寝る何分前に入ればいいの?
研究では、就寝の1〜2時間前に入浴すると入眠までの時間が短くなる傾向が見られました。寝る直前ではなく、少し時間を空けて入るのがポイントです。
シャワーだけでも効果はあるの?
ある実験では、シャワーだけの夜よりも、湯船に10分以上浸かった夜の方が入眠までの時間が短くなりました。体温を大きく上げてから下げる動きをつくるには、湯船の方が効果を得やすいと考えられています。
不眠がある人でも効果はあるの?
高齢者を対象にした足浴の実験では、入浴直後に目覚めがやや減る程度の変化にとどまり、一晩を通した睡眠時間の改善までは確認されませんでした。不眠の程度によって効果の出方は変わる可能性があります。
出典
- Maeda, T., Koga, H., Nonaka, T., & Higuchi, S. (2023). Effects of bathing-induced changes in body temperature on sleep. Journal of Physiological Anthropology, 42, 20. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10486043/
- Tai, Y., Obayashi, K., Yamagami, Y., Yoshimoto, K., Kurumatani, N., Nishio, K., & Saeki, K. (2021). Hot-water bathing before bedtime and shorter sleep onset latency are accompanied by a higher distal-proximal skin temperature gradient in older adults. Journal of Clinical Sleep Medicine, 17(6), 1257-1266. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8314650/
- Harding, E. C., Franks, N. P., & Wisden, W. (2020). Sleep and thermoregulation. Current Opinion in Physiology, 15, 7-13. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7323637/
- Liao, W. C., Chiu, M. J., & Landis, C. A. (2008). A warm footbath before bedtime and sleep in older Taiwanese with sleep disturbance. Research in Nursing & Health, 31(5), 514-528. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2574895/


