習慣

習慣をやめるには何日かかるのか。研究でわかった「待てば消える」の限界

約5分で読めます

草地に残る踏み跡の道
Photo: Ian Calderwood / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

スマホをつい触ってしまう、お菓子に手が伸びてしまう。「もうやめた」と思っていたのに、忙しくて疲れた日や、ふと気が抜けた瞬間に、気づけば同じことをしていた——そんな経験はないでしょうか。「あと何日がんばれば消えるのか」と日数を数えたくなりますが、習慣をやめることを調べた研究をたどると、そもそも「日数で消える」という前提自体を見直す必要があることがわかります。

3行でわかる

  1. 「やめてから何日で習慣が消えるか」を日数で示した研究は見当たらなかった。行動をやめることと、その行動を呼び出す「きっかけ→反応」の結びつきを記憶から消すことは、別の話だとわかってきている。
  2. 自己制御の余力(意志力)が少ない時ほど、やめたはずの習慣が顔を出しやすいことが実験で示された。意志力が低下すると、良い習慣・悪い習慣を問わず「きっかけ」に沿った行動が自動的に出やすくなる。
  3. 強いストレスを受けた直後は、目的を考えて動く仕組みより「きっかけ→反応」の仕組みが優位になることが人を対象にした実験で確認された。日数で区切るより、戻りやすい場面を知っておくほうが現実的。

01 悩みの正体「やめたはず」の習慣が戻るのは、気合いが足りないせいか

気合いの問題ではない。行動をやめることと、その行動を呼び出す「きっかけ→反応」の結びつきを記憶から消すことは別の話で、結びつきは簡単には消えないから。

習慣とは、特定のきっかけ(時間・場所・気分など)と行動が記憶の中で結びつき、考えなくても自動的に出てくるようになった反応のことです。減量後の体重維持を調べたレビューでは、「やめたい行動を控える」「きっかけを避ける」といった対策は行動そのものを止めるには役立つものの、きっかけと行動の結びつき自体を消すとは限らないと指摘されています。結びつきが記憶の中に残っていれば、元のきっかけに戻ったときや、意志力が弱っているときに、また同じ行動が出てきてしまう——これが「やめたはずなのに戻る」の仕組みです。

02 科学的にわかっていること古い習慣はどんな時に顔を出しやすいのか

意志力が少ない時、強いストレスを受けた直後、そして古いきっかけに戻った時。いずれも「きっかけ→反応」の仕組みが優位になりやすい場面として研究で示されている。

Gardner・Richards・Lally・Rebar・Thwaite・Beeken(2021)[1]

減量後の体重維持に関する既存の質的研究をまとめたレビュー。「悪い習慣」を断つための対策は、望ましくない衝動を抑えたり、きっかけを避けたりすることに重点が置かれてきたが、こうした対策は行動を止めても、きっかけと行動を結びつける記憶(習慣連合)そのものは残る可能性があると指摘。放置された結びつきは、意志力が一時的に弱まった時や、きっかけに再び触れる環境に戻った時に、元の行動へ戻る引き金になりうるとされた。

対象: 減量後の体重維持に関する質的研究をまとめたレビュー論文 / 限界: レビューであり、「結びつきが残る」こと自体を新たな実験で直接測定したものではない。

Quinn・Pascoe・Wood・Neal(2010)[2]

日々の行動を記録する日記調査2件と、追加の実験1件からなる研究。悪い習慣の記憶の結びつきは変わりにくいため、効果があったのは「きっかけに気づいたら『やめよう』と頭の中で考え、注意深く見張る」という方法(注意深い監視)だけだった。きっかけそのものを避ける対策は、誘惑への対処では効果的でも、習慣化した行動の抑制には効きにくいと報告された。

対象: 日々の行動を記録する日記調査の参加者2件+追加の実験1件 / 限界: 日記調査は自己報告のデータが中心で、客観的な行動計測ではない。

Neal・Wood・Drolet(2013)[3]

5つの研究(フィールド調査・実験室実験・自己制御の個人差を扱った分析)。自己制御に使える心的資源が少ない(意志力が低下した)状態では、人は考えて行動を選んだり止めたりすることが難しくなり、習慣的な反応を繰り返しやすくなった。この仕組みは「今の目的に合っているか」を考慮しないため、良い習慣・悪い習慣のどちらも同じように出やすくなると報告された。

対象: フィールド調査・実験室実験・個人差分析を含む5つの研究 / 限界: 「意志力が低下した状態」を扱う実験条件であり、日常のあらゆる疲れ・ストレス場面に同じ強さで当てはまるとは限らない。

Schwabe・Wolf(2009)[4]

健康な成人を、強いストレス(低温に手をつけるテスト)を受けるグループと受けないグループに分け、2つの行動と食べ物の報酬を結びつける学習をさせた実験。その後、片方の食べ物を満腹になるまで食べさせて価値を下げたところ、ストレスを受けたグループは報酬の価値が下がったあとも同じ行動を続けてしまい、行動と結果の結びつきについての自覚的な理解も弱まっていた。強いストレスの直後は、目的に応じて考えて動く仕組みより「きっかけ→反応」の仕組みが優位になることが、人を対象にした実験で初めて示された。

対象: 健康な成人を対象にした実験室実験(強いストレスを受けたグループと対照群) / 限界: 実験室で新しく作られた行動を調べたもので、何年も続けてきた現実の習慣にそのまま当てはまるとは限らない。

4つの研究を場面別に整理すると、古い習慣が顔を出しやすいタイミングが見えてきます。

場面何が起きやすいか出典
意志力が少ない(疲れ・我慢の後など)考えて止める力が落ち、習慣的な反応が自動的に出やすい[3]
強いストレスを受けた直後目的に応じた判断より「きっかけ→反応」が優位になる[4]
古いきっかけ・環境に戻った行動を止めていても、結びつき自体は残っていて再始動しうる[1]
きっかけを避けるだけその場では効くが、結びつきを消すわけではない[1][2]

03 今日からできる小さな一歩日数を数える代わりに何をすればいいのか

やめたい行動のきっかけを書き出し、きっかけに気づいた瞬間に「やめよう」と頭の中で言葉にし、意志力が落ちやすい日をあらかじめ想定しておく。

1

きっかけを3つまで書き出す

「何時に」「どこで」「どんな気分の時に」その行動が出やすいかを紙やメモに書き出します。きっかけに気づく準備が、唯一効果が確認された「注意深い監視」の土台になります。

所要 5分

2

きっかけが来た瞬間に「やめよう」と念じる

行動が始まる直前、頭の中で「今、このきっかけが来た」「やめよう」と短く言葉にします。きっかけを避けることよりも、気づいて止める意識のほうが習慣の抑制には効果的だったと報告されています。

所要 数秒

3

意志力が落ちる日を前夜に予想しておく

「明日は締め切り前で疲れそう」など、意志力が落ちそうな日を前夜に1つ予想し、きっかけになる場所やタイミングを避ける簡単な予定を立てておきます。

所要 1分

04 続けるためのコツ戻ってしまった時、どう考えればいいのか

「何日で消える」という目標を立てず、戻ってしまっても「結びつきが残っていた証拠」として捉え、別の行動への置き換えや衝動をやり過ごす技術を組み合わせる。

05よくある質問

習慣をやめるには何日かかりますか?

今回確認した研究の範囲では、「やめてから何日で消える」と日数を示した結果は見つかりませんでした。行動をやめても「きっかけ→行動」の結びつき自体はすぐには消えず、意志力が少ない時や強いストレスを受けた直後に古い習慣が顔を出しやすいことがわかっています。日数で区切るより、戻りやすい状況を知っておくほうが現実的です。

「21日」や「66日」という数字は、やめる時にも当てはまりますか?

それらは新しい習慣が身につくまでの日数を調べた別の研究の数字で、やめる・消すことを測った数字ではありません。やめることについては、今回確認した研究の範囲で明確な日数の答えは出ていません。

出典

  1. Gardner B, Richards R, Lally P, Rebar A, Thwaite T, Beeken RJ (2021). Breaking habits or breaking habitual behaviours? Old habits as a neglected factor in weight loss maintenance. Appetite, 162:105183. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33651994/
  2. Quinn JM, Pascoe A, Wood W, Neal DT (2010). Can't control yourself? Monitor those bad habits. Personality and Social Psychology Bulletin, 36(4):499-511. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20363904/
  3. Neal DT, Wood W, Drolet A (2013). How do people adhere to goals when willpower is low? The profits (and pitfalls) of strong habits. Journal of Personality and Social Psychology, 104(6):959-975. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23730907/
  4. Schwabe L, Wolf OT (2009). Stress prompts habit behavior in humans. The Journal of Neuroscience, 29(22):7191-7198. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19494141/