気分・ストレス

イライラや不安に「名前をつける」と落ち着く? 気持ちを言葉にするやり方を研究で調べた

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ノートとペン
Photo: Kristin Hardwick / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

イライラや不安で頭がいっぱいのとき、「落ち着け」と言い聞かせてもなかなか効きません。研究で注目されているのは、もっと地味な方法です。いまの気持ちに「不安」「イライラ」と一言で名前をつけると、嫌な気持ちや体の反応が弱まることが、複数の実験で示されています。ただし、やり方を間違えると逆効果になった研究もあります。

3行でわかる

  1. 嫌な写真を見ながら気持ちに合う言葉を選ぶと、ただ見ているときより苦痛が小さくなった。気持ちを切り替える方法と同じくらいの効果だった。
  2. クモが苦手な人の実験では、クモに近づきながら気持ちを言葉にしたグループが、1週間後の体の恐怖反応がいちばん小さかった。
  3. 一方、2つの実験(計226人)では、気持ちの言葉を打ち込んだだけでは嫌な気分がかえって強まり、その後の気持ちの切り替えも効きにくくなった。名前をつけたら、考え込まずに止めるのがよい。

01 悩みの正体気持ちを言葉にすると、なぜ落ち着くの?

気持ちに名前をつけると、脳の中で強い感情に反応する部分(扁桃体)の働きが弱まることが、脳画像の研究で示されています。言葉を選ぶ作業そのものが、ブレーキの役目をしていると考えられています。

研究者はこの方法を「感情のラベリング(気持ちに名前をつけること)」と呼んでいます。気持ちを分析したり、前向きにとらえ直したりする必要はありません。「いま怒っている」と気づいて言葉にするだけです。

Liebermanら(2007)は、脳の働きを画像で見るfMRIという装置で、嫌な写真を見たときの反応を調べました[1]。写真の感情に合う言葉を選んだときは、ほかの方法で写真を見たときより、扁桃体などの反応が小さくなりました。同時に、右の前頭前野の一部の働きが強まり、その働きが強い人ほど扁桃体の反応が小さいという関係が見られました。

おもしろいのは、多くの人がこの効果に気づいていないことです。次の章の研究では、参加者の多くが「言葉にするとかえってつらくなる」と予想していました[2]。

02 科学的にわかっていること気持ちに名前をつけると、本当につらさは減る?

実験室では、気持ちに合う言葉を選ぶだけで苦痛の自己評価が下がり、クモが怖い人では1週間後の体の恐怖反応も小さくなりました。ただし、言葉を打ち込む形では嫌な気分が強まった研究もあり、結果はやり方で分かれます。

Liebermanら(2011)[2]

4つの実験で、嫌な写真を見ながら、写真の下に出る2つの言葉から気持ちに合うほうを選んでもらいました。ただ見ているときより、苦痛の感じ方が小さくなりました。その効果は、気持ちをとらえ直す方法や、気をそらす方法と同じくらいでした。それでも参加者は、体験した後でさえ「言葉にするとつらくなる」と予想していました。

対象: アメリカの大学生などの実験室実験 / 限界: 2択の言葉を選ぶ課題で、自分で言葉を考えたわけではありません。楽しい写真では、言葉にすると楽しさも小さくなりました。

Kircanski・Lieberman・Craske(2012)[3]

クモが苦手な人が、本物のクモに少しずつ近づく練習をしました。そのとき「気持ちを言葉にする」「とらえ直す」「気をそらす」「何もしない」の4グループに分けました。1週間後、別の場所で別のクモに近づくと、言葉にしたグループは皮膚の汗の反応(体の恐怖反応)が最も小さくなりました。不安や恐怖の言葉を多く使った人ほど、恐怖反応がよく下がりました。

対象: クモが苦手な人 / 限界: 「怖さ」の自己評価は、ほかのグループと差がありませんでした。言葉の量との関係は相関で、因果は確かめていません。

Arielyら(2026)[4]

2つの実験(計226人)で、24枚の嫌な写真を見ながら、気持ちの言葉を打ち込む、とらえ直す、その両方、ただ見る、の4つに分けました。言葉を打ち込んだ後にとらえ直すと、とらえ直しだけのときより効果が弱まりました。言葉を打ち込むだけの条件では、嫌な気分がかえって強まりました。1〜2日後に測り直すと、気分の評価は元の水準に戻っていました。

対象: 実験参加者226人 / 限界: 言葉を声に出さず打ち込む形だったことが結果に影響した可能性を、著者ら自身が挙げています。

3つの研究を並べると、「どんな形で言葉にしたか」で結果が分かれていることがわかります。

研究言葉にした方法結果
Liebermanら(2011)2択から気持ちに合う言葉を選ぶ苦痛が小さくなった
Kircanskiら(2012)怖い相手に近づきながら気持ちを言葉にする1週間後の体の恐怖反応が小さかった(怖さの自己評価は差なし)
Arielyら(2026)気持ちの言葉を打ち込む嫌な気分が強まり、その後のとらえ直しも効きにくかった

03 今日からできる小さな一歩気持ちに名前をつけるには、どうすればいい?

嫌な気持ちに気づいたら、「いま不安」「イライラしている」と短い言葉で名前をつけます。理由を探ったり書き連ねたりせず、一言で止めて、目の前のことに戻るのがポイントです。

1

気づいたら、一言で名前をつける

「不安」「イライラ」「焦り」「悲しい」のように、気持ちを表す言葉を一つ選びます。実験で効果が出たのも、気持ちに合う言葉を選ぶだけの短い作業でした[2]。心の中でつぶやくか、小さく声に出します。

所要 5秒

2

「怖い」「不安」など、気持ちそのものの言葉を使う

「あの人がひどい」ではなく、「自分は腹が立っている」と、自分の気持ちを主語にします。クモの実験では、不安や恐怖の言葉を多く使った人ほど、体の恐怖反応がよく下がりました[3]。

所要 5秒

3

苦手な場面から逃げずに、その場で言う

発表の前や、苦手な相手と話す前など、避けたくなる場面で使います。クモの実験では、気をそらしたグループより、向き合いながら言葉にしたグループのほうが、1週間後の恐怖反応が小さくなりました[3]。

所要 その場で数秒

4

名前をつけたら、そこで止める

言葉を打ち込んで眺める形では、嫌な気分がかえって強まった実験があります[4]。「なぜこう感じるのか」と考え続けると、反芻(同じことを考え続けること)にもつながります。名前をつけたら、目の前の作業や体を動かすことに戻ります。

所要 0秒(止めるだけ)

04 続けるためのコツ名前をつけても、気持ちが楽にならないときは?

効果は「楽になった」と感じにくいのが特徴です。実験でも、気持ちが落ち着いた人が、言葉にすると逆につらくなると予想していました。しばらく続け、合わなければ別の方法に切り替えます。

05よくある質問

気持ちを言葉にすると、なぜ落ち着くのですか?

気持ちに合う言葉を選ぶと、脳の中で強い感情に反応する扁桃体の働きが弱まり、前頭前野の一部の働きが強まることが、脳画像の研究で示されています。嫌な写真を使った実験では、言葉を選ぶだけで苦痛の感じ方が小さくなりました。

気持ちをノートに長く書き出すのと、どちらがいいですか?

一言で名前をつける方法と、つらい出来事をじっくり書く方法は、別のものとして研究されています。気持ちの言葉を打ち込んで眺める実験では、嫌な気分がかえって強まりました。その場で落ち着きたいときは、一言で名前をつけて止めるのが無難です。

名前をつけても楽になった気がしません。意味はありますか?

この方法は、効いた実感が得にくいことがわかっています。実験の参加者は、苦痛が減った後でさえ、言葉にするとつらくなると予想していました。クモが苦手な人の実験でも、怖さの自己評価は変わらないのに、体の恐怖反応は小さくなっていました。

出典

  1. Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421-428. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x
  2. Lieberman, M. D., Inagaki, T. K., Tabibnia, G., & Crockett, M. J. (2011). Subjective responses to emotional stimuli during labeling, reappraisal, and distraction. Emotion, 11(3), 468-480. https://doi.org/10.1037/a0023503
  3. Kircanski, K., Lieberman, M. D., & Craske, M. G. (2012). Feelings into words: Contributions of language to exposure therapy. Psychological Science, 23(10), 1086-1091. https://doi.org/10.1177/0956797612443830
  4. Ariely, Y., Mokady, A., Reggev, N., & Anholt, G. E. (2026). Affect labeling and reappraisal as an emotion regulation strategy. Affective Science, 7(2), 282-292. https://doi.org/10.1007/s42761-026-00362-z