気分・ストレス

人の機嫌がうつってしまうのはなぜ? 表情・声・ストレスが伝わる「感情の伝染」を研究で調べた

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カフェの店内のテーブル
Photo: Andy Li / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

不機嫌な人のそばにいると、自分までイライラしてくる。家族が落ち込んでいると、こちらも沈んでくる。気にしすぎだと自分を責める人もいますが、それだけではありません。人は相手の表情や声を、気づかないうちに少しまねています。ストレスは体の反応ごと伝わることもあります。研究でわかっている仕組みと、まだ揺れている部分を整理しました。

3行でわかる

  1. 怒った顔や笑った顔を30ミリ秒(1秒の約30分の1)見せるだけで、本人が気づかないまま、見た人の顔の筋肉が同じ向きに動いた。
  2. 人がストレスを受ける様子を見ていただけの211人のうち、26%でストレスホルモンがはっきり上がった。相手がパートナーだと40%、知らない人だと10%だった。
  3. ただし「表情をまねると気分も変わる」という効果は小さく、有名なペンをくわえる実験は17の研究室で再現されなかった。SNSでの伝染も、ごく小さな変化だった。

01 悩みの正体人の機嫌がうつるのはなぜ?

人の機嫌がうつるのは、相手の表情や声の調子を、意識しないうちにまねてしまうからだと考えられています。心理学では、これを「感情の伝染」と呼びます。

感情の伝染は、相手と同じ気持ちに近づいていく現象です。相手の気持ちを頭で考えて共感するのとは、少し違います。

研究者は、次のような流れを考えています。

このうち「まねる」と「体が反応する」は、実験ではっきり確かめられています。一方で、まねた表情がどこまで気分を変えるのかは、まだ議論が続いています。

02 科学的にわかっていること機嫌がうつる仕組みは、研究で確かめられている?

顔の筋肉が相手の表情に合わせて動くこと、声の調子で気分が変わること、人のストレスを見て自分のストレスホルモンが上がることは、実験で確かめられています。ただし、表情から気分が変わる効果は小さいことがわかっています。

Dimbergら(2000)[1]

笑った顔・怒った顔・無表情の顔を30ミリ秒だけ見せ、すぐに無表情の顔で隠しました。参加者は何を見たのか意識できませんでした。それでも、笑顔を見たときは笑うときに使う頬の筋肉が、怒った顔を見たときは眉をひそめる筋肉が動いていました。

対象: 実験室の参加者。顔の筋肉の電気信号を測った / 限界: 筋肉の小さな動きを測った研究で、気分まで変わったかは調べていない。

NeumannとStrack(2000)[2]

参加者は、文章の理解力テストだと思って、感情とは関係のない哲学の文章の朗読を聞きました。朗読の声が少し楽しげだと、聞いた人の気分も明るくなりました。少し悲しげな声だと、気分は沈みました。文章を声に出してくり返した人は、話し手の声の感情を自然にまねていました。

対象: 実験室の参加者。複数の実験 / 限界: 実験室で短い朗読を聞いた直後の気分で、ふだんの会話で同じことが起きるかは別に確かめる必要がある。

Engertら(2014)[3]

1人が面接と暗算という、ストレスのかかる課題を受けます。もう1人は、それをマジックミラー越しか、ライブ映像で見ているだけです。見ていた人の26%で、ストレスホルモン(コルチゾール)がはっきり上がりました。相手がパートナーだと40%、知らない人だと10%でした。

対象: ドイツの2つの研究機関の共同実験。課題を受けた人151人、見ていた人211人 / 限界: 唾液のホルモンを測った実験で、見ていた人の気分の変化までは同じように測れていない。

Kramerら(2014)[4]

Facebookの利用者68万9,003人を対象に、1週間、ニュースフィードの前向きな投稿か後ろ向きな投稿を減らしました。前向きな投稿を減らされた人は、自分の投稿で前向きな言葉が0.1%減りました。逆向きの変化も起きましたが、効果の大きさ(d)は0.001〜0.02と、著者自身が「小さい」と書く値でした。

対象: 英語でFacebookを使う人。2012年1月11〜18日 / 限界: 測ったのは投稿の言葉で、気分そのものではない。本人の同意を得ずに行われ、掲載誌は後に「懸念の表明」を出した。

Colesら(2019)/ 17の研究室による追試(2016)[5][6]

表情を作ると気分が変わるかを調べた138の研究(286の結果)をまとめると、効果はあるものの小さく、条件によってばらつきました。有名な「ペンを歯でくわえて笑顔の形を作ると、漫画がおもしろく感じる」実験は、17の研究室で同じ手順で試しても再現されませんでした。

対象: 表情と気分の研究の総まとめと、事前に手順を登録した追試 / 限界: 追試はペンをくわえる方法を確かめたもので、表情と気分の関係すべてを否定したわけではない。

26%

人がストレスを受ける様子を見ていただけで、ストレスホルモンがはっきり上がった人の割合(211人中)[3]

ストレスのうつりやすさは、相手との関係や見え方で変わりました[3]。

見ていた条件ストレスホルモンが上がった人
全体26%
相手がパートナー40%
相手が知らない人10%
マジックミラー越しに直接見た30%
ライブ映像で見た24%

近しい人のストレスほど、うつりやすい傾向がありました。画面越しでも、4人に1人ほどで反応が出ていました。

03 今日からできる小さな一歩人の不機嫌に引きずられないためには?

まず「この気分は、さっき話した相手から来たのかもしれない」と気づくことです。機嫌がうつる反応は自動で起きるので、止めるより、気づいて区別するほうが現実的です。

1

気分が変わったら、直前に誰といたかを思い出す

急にイライラしたり沈んだりしたら、直前の会話や相手の表情を振り返ります。原因が自分の中にないとわかるだけで、自分を責めずにすみます。

所要 30秒

2

家族やパートナーがつらいときは、自分の疲れにも気を配る

実験では、パートナーのストレスを見た人の40%で、自分のストレスホルモンが上がりました[3]。支える側も休む時間をとります。

所要 10分

3

うつってきたイライラは、少し距離を置いて眺める

自分を外から見るように考えると、怒りが落ち着きやすいことがわかっています。やり方は怒りを自分から離して眺める研究の記事にまとめています。

所要 1〜2分

04 続けるためのコツ機嫌がうつりやすい自分は、おかしい?

おかしくありません。相手の表情や声に合わせて体が反応するのは、多くの人に起きる自然な反応です。ただし、うつりやすさには人による違いがあります。

身近な人の不調に長く付き添っていて、自分の気分の落ち込みや眠れない日が続くときは、医師やカウンセラーに相談してください。

05よくある質問

人の機嫌がうつりやすいのは、性格のせいですか?

性格だけのせいではありません。相手の表情や声を無意識にまねる反応は、多くの人に起きます。ただ、人のストレスを見てホルモンが上がるかどうかには個人差があり、共感しやすさの違いも関わっていました。

知らない人の不機嫌もうつりますか?

うつることはありますが、身近な人より起きにくい傾向があります。ストレスを受ける人を見ていた実験では、相手がパートナーだと40%、知らない人だと10%の人でストレスホルモンがはっきり上がりました。

SNSで暗い投稿を見ると、気分もうつりますか?

Facebookの68万人あまりを対象にした実験では、見る投稿の傾向を変えると、本人の投稿の言葉も同じ向きに変わりました。ただし変化はごく小さく、測ったのは投稿の言葉で、気分そのものではありません。

笑顔を作れば、気分は明るくなりますか?

効果はあっても小さいと考えられています。138の研究をまとめた分析では、表情を作ることの効果は小さく、条件によってばらつきました。ペンをくわえて笑顔の形を作る有名な実験は、17の研究室の追試で再現されませんでした。

出典

  1. Dimberg, U., Thunberg, M., & Elmehed, K. (2000). Unconscious facial reactions to emotional facial expressions. Psychological Science, 11(1), 86-89. https://doi.org/10.1111/1467-9280.00221
  2. Neumann, R., & Strack, F. (2000). "Mood contagion": The automatic transfer of mood between persons. Journal of Personality and Social Psychology, 79(2), 211-223. https://doi.org/10.1037/0022-3514.79.2.211
  3. Engert, V., Plessow, F., Miller, R., Kirschbaum, C., & Singer, T. (2014). Cortisol increase in empathic stress is modulated by emotional closeness and observation modality. Psychoneuroendocrinology, 45, 192-201. https://doi.org/10.1016/j.psyneuen.2014.04.005
  4. Kramer, A. D. I., Guillory, J. E., & Hancock, J. T. (2014). Experimental evidence of massive-scale emotional contagion through social networks. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(24), 8788-8790. https://doi.org/10.1073/pnas.1320040111
  5. Coles, N. A., Larsen, J. T., & Lench, H. C. (2019). A meta-analysis of the facial feedback literature: Effects of facial feedback on emotional experience are small and variable. Psychological Bulletin, 145(6), 610-651. https://doi.org/10.1037/bul0000194
  6. Wagenmakers, E.-J., Beek, T., Dijkhoff, L., Gronau, Q. F., et al. (2016). Registered Replication Report: Strack, Martin, & Stepper (1988). Perspectives on Psychological Science, 11(6), 917-928. https://doi.org/10.1177/1745691616674458