読んでいるのに頭に入らない、同じ行を何度も読んでしまうときは? 読書中の「上の空」の研究でわかった立て直し方

ページの最後まで来たのに、何が書いてあったか思い出せない。気づけば同じ行を3回読んでいる。これは、目は文字を追っているのに、心が別のことを考えている「上の空」の状態です。研究では、声に出して読むと上の空が最も少なく、耳で聞くだけのときが最も多くなりました。一方、書体をわざと読みにくくする工夫は、追試で効果が確かめられませんでした。
3行でわかる
- 読書中の上の空が多い人ほど、内容の理解が低い傾向があります。25の研究をまとめたメタ分析で、相関は r = -0.21でした。
- カナダの大学生235人の実験では、声に出して読むと上の空が最も少なく、耳で聞くだけだと最も多くなりました(聞くとき50.6%、黙読35.6%)。
- 書体を読みにくくすると集中できるという説は、151人の追試で支持されませんでした。気づいたら戻る、1段落だけ音読する、メモを取る、が研究に沿った立て直し方です。
01 悩みの正体読んでいるのに頭に入らないのは、なぜ?
目は文字を追っていても、注意が自分の考えごとに移っているからです。この「上の空」は、黙って読んでいるとき、およそ3分の1の時間で起きていたという実験があります。
研究では、作業と関係のないことを考えている状態を「マインドワンダリング」(心がさまようこと)と呼びます。読書中は、目が勝手に次の行へ進むので、心がよそへ行っていても気づきにくいのが特徴です。仕組みは心がさまよう仕組みの研究で詳しく紹介しています。
大事なのは、上の空そのものは誰にでも起きるということです。読む力が足りないからとは限りません。この記事では、起きてしまった後にどう戻るかに絞って、研究を見ていきます。
02 科学的にわかっていること上の空は、読み方で減らせる?
減らせる可能性があります。声に出して読むと上の空は最も少なく、耳で聞くだけだと最も多くなりました。一方、書体を読みにくくする工夫は、追試で効果がありませんでした。
Bonifacciら(2023)[1]
25の研究(73の相関)をまとめたメタ分析です。読んでいる最中の上の空が多いほど、内容の理解は低い傾向がありました(r = -0.21)。読んでいる途中に「今どこに注意がありましたか」とたずねた研究でこの関係が見られ、ふだんの傾向を質問紙で聞いた研究では関係はほぼ消えました。年齢が高いほど、関係は強くなっていました。
対象: 25の研究のメタ分析 / 限界: 相関なので、上の空が理解を下げたのか、わからないから上の空になったのかは区別できません。文章の難しさや興味の有無では、関係の強さに差は見られませんでした。
Varao Sousaら(2013)[2]
大学生が、声に出して読む・黙って読む・人が読むのを聞く、の3通りで文章に触れ、途中で上の空かどうかを答えました。声に出して読むときが最も上の空が少なく、聞くだけのときが最も多くなりました(聞くとき平均50.6%、黙読35.6%)。聞くだけのときは、記憶テストの成績も最も低くなりました。
対象: カナダの大学生235人(2つの学期に分けて集め、同じ結果を確認) / 限界: 実験室で短い文章を読んだ結果です。音読の効果を長い勉強で確かめたものではありません。
Tietzら(2025)[3]
2017年に「読みにくい書体(グレーのComic Sans)で読むと上の空が減った」という報告がありました。そこで、読みやすい・やや読みにくい・とても読みにくい、の3段階の書体で比べ直しました。書体は上の空にも理解にも影響せず、読む意欲だけが下がりました。
対象: ドイツの学生151人(事前に計画を登録した実験) / 限界: 学生を対象にした1回の実験です。著者らも、条件によって結果が変わる可能性は残るとしています。
Spencer-MuellerとFenske(2024)[4]
退屈な講義の録音を45分聞く実験で、メモを取る・図形を塗る落書き・自由な落書き・聞くだけ、を比べました。落書きは退屈も上の空も減らさず、メモを取った組が最も注意を保ち、テストの成績も最も高くなりました。
対象: カナダの大学生、2つの実験で合わせて222人 / 限界: 文章を読む場面ではなく、講義を聞く場面の研究です。
| 読み方・工夫 | 上の空 | 研究 |
|---|---|---|
| 声に出して読む | 最も少ない | Varao Sousaら(2013) |
| 黙って読む | 35.6% | Varao Sousaら(2013) |
| 人が読むのを聞くだけ | 50.6%(最も多い) | Varao Sousaら(2013) |
| 書体を読みにくくする | 変わらない | Tietzら(2025) |
| 聞きながらメモを取る | 落書きや聞くだけより少ない | Spencer-MuellerとFenske(2024) |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。数字は1つの実験の平均で、人や文章によって変わります。共通して見えるのは、声を出す・書くといった「体を使って文章に関わる」読み方ほど、心がよそへ行きにくいということです。
03 今日からできる小さな一歩同じ行を何度も読んでいると気づいたら?
まず、覚えている最後の段落まで戻ります。次の1段落だけ小さな声で読み、読み終えたら1行でメモを書きます。書体や画面の設定を変えるより、読み方を変えるほうが研究に沿っています。
覚えている所まで戻る
「ここまでは内容を言える」という段落に印をつけ、そこから読み直します。先へ進み続けるより、戻る位置をはっきりさせるための、研究の結果から考えた工夫です。
所要 30秒
1段落だけ声に出して読む
小声やささやき声でかまいません。声に出して読むときは、黙読より上の空が少なくなりました[2]。ずっと音読する必要はなく、戻るきっかけとして使います。
所要 1〜2分
段落ごとに1行メモを書く
「この段落は〇〇の話」と短く書きます。講義の研究では、メモを取ると注意が保たれ、成績も高くなりました[4]。
所要 段落ごとに20秒
04 続けるためのコツ何度戻っても頭に入らないときは、どうする?
読む方法ではなく、状態に原因があるかもしれません。眠気や疲れが強いなら、短く休んでから戻ります。耳で聞く教材は上の空が増えやすいので、大事な所は文字で読み直します。
- 聞き流しの勉強は見直す: 人が読むのを聞くだけのとき、上の空は約半分の時間で起き、記憶テストの成績も最も低くなりました[2]。
- 読みにくくする工夫に頼らない: 書体を変えても上の空は減らず、読む意欲が下がっただけでした[3]。
- 休憩をはさむ: 集中が切れたときの休み方は短い瞑想の研究や緑の中を歩く休憩の研究にまとめています。
- 音読は記憶にも役立つ: 声に出すと覚えやすくなる仕組みは音読と記憶の研究にあります。
05よくある質問
本を読んでも頭に入らないのはなぜ?
目は文字を追っていても、注意が自分の考えごとに移っている「上の空」の状態になっているからです。黙って読む実験では、およそ3分の1の時間で上の空が起きていました。25の研究のメタ分析では、上の空が多いほど内容の理解が低い傾向がありました(r = -0.21)。
音読すると集中できる?
上の空を減らす効果は期待できます。カナダの大学生235人の実験では、声に出して読むときが最も上の空が少なく、聞くだけのとき(平均50.6%)が最も多くなりました。ただし短い文章での実験で、長い勉強で確かめたものではありません。
読みにくい書体で読むと集中できるって本当?
追試では支持されませんでした。2017年に読みにくい書体で上の空が減ったという報告がありましたが、2025年に学生151人で確かめ直した実験では、書体は上の空にも理解にも影響せず、読む意欲だけが下がりました。
出典
- Bonifacci, P., Viroli, C., Vassura, C., Colombini, E., & Desideri, L. (2023). The relationship between mind wandering and reading comprehension: A meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 30(1), 40–59. https://doi.org/10.3758/s13423-022-02141-w
- Varao Sousa, T. L., Carriere, J. S. A., & Smilek, D. (2013). The way we encounter reading material influences how frequently we mind wander. Frontiers in Psychology, 4, 892. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2013.00892
- Tietz, S., Müller, M., Rummel, J., & Steindorf, L. (2025). Demotivated, but still attentive: Text disfluency does not affect mind-wandering and reading comprehension, but reduces motivation. Psychonomic Bulletin & Review, 32(6), 3143–3152. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02735-0
- Spencer-Mueller, E. K., & Fenske, M. J. (2024). Note-taking for the win: Doodling does not reduce boredom or mind-wandering, nor enhance attention or retention of lecture material. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 77(8), 1780–1796. https://doi.org/10.1177/17470218231222402


