集中が切れてしまったら、どこで休む? 緑の中を歩く休憩と注意力の回復を研究で調べた

長く作業して集中が切れたとき、休憩の場所選びで戻り方が変わる可能性があります。木や芝生のある場所を歩いた後は、街中を歩いた後より、注意力のテストの点が上がりやすいことが複数の実験で示されています。ただし差は小さく、同じ散歩でも差が出なかった実験もあります。期待しすぎずに試せる、休憩の取り方を紹介します。
3行でわかる
- 12の実験・528人をまとめた分析で、自然の中で過ごした後は、注意力のテストの点が街中より多く上がった。
- 効果は、緑の多い場所を長めに歩いたときに大きく、写真や短い散歩では小さかった。
- 研究をまとめた2つのレビューでは、効果が見られた測り方と、見られなかった測り方があった。
01 悩みの正体休んだのに集中が戻らないのはなぜ?
休憩中も、注意を向け続ける力を使っているからかもしれません。人や車、看板の多い場所では、よけたり無視したりするために注意を使い続けます。自然の中では、その負担が軽くなると考えられています。
この考え方は「注意回復理論」と呼ばれます[1]。仕事や勉強で使う「意識して注意を向ける力」は、使い続けると疲れる、という前提です。
- 街中: 車をよける、人の流れを読むなど、意識して注意を向ける場面が多い[1]。
- 自然の中: 穏やかに目を引くものが多く、意識して注意を向ける力を休ませやすい[1]。
休憩中のスマホで集中が戻らない話は、休憩中のスマホと回復の研究で紹介しています。この記事では、休憩の「場所」に注目します。
02 科学的にわかっていること自然の中で休むと、本当に注意力は戻る?
12の実験・528人をまとめた分析では、自然の中で過ごした後のほうが、街中より注意力のテストの点が上がりました。ただし差は1点に満たず、効果が見られない研究もあります。
Bermanら(2008)[1]
大学生が、植物園を歩く日と、街の中心部を歩く日の両方を体験しました。歩いた時間は50〜55分です。植物園を歩いた後は、数字を聞いて逆の順番で言うテスト(注意力のテスト)の成績が上がりました。自然の写真を10分見る実験でも、成績が上がりました。
対象: アメリカの大学生(散歩の実験は37人、写真の実験は12人) / 限界: 人数が少なく、1つの大学で行われた実験です。
Stenforsら(2019)[2]
同じ研究グループが行った、発表済みと未発表の実験をすべてまとめて分析しました。自然の中で過ごした後は、注意力のテストの点が平均0.75点上がり、街中の0.29点より上がり幅が大きくなりました。気分がよくなったことでは、この差はほとんど説明できませんでした。
対象: 12の実験の参加者528人(多くは大学生) / 限界: テストに慣れて点が上がる影響が大きく、それを除いて比べる必要がありました。
0.75点 対 0.29点
自然の中と街中で過ごした後の、注意力のテストの平均の上がり幅(12の実験・528人)[2]
| 休憩のしかた | 結果 |
|---|---|
| 植物園を50〜55分歩く | 街中を歩くより成績が上がった[1] |
| 大学構内の緑を15〜20分歩く | 効果は小さめだった[2] |
| 自然の写真やVRを見る | 実際に歩くより効果は小さめだった[2] |
| 同じ植物園の散歩(別の健康な参加者) | 街中の散歩と差が出なかった[2] |
Ohlyら(2016)・Stevensonら(2018)[3][4]
31件の研究をまとめたレビューでは、自然の効果がはっきり出たのは、数字を覚えるテストなど3つの測り方だけでした。残りの10の分析では、目立った効果は見られませんでした[3]。その後の42件の論文をまとめたレビューでは、覚えながら考える力と、考えを切り替える力に、小さい〜中くらいの効果が見られました[4]。
対象: 自然と、自然でない場所を比べた実験 / 限界: 1つ1つの研究は人数が少なく、測り方もばらばらです。
03 今日からできる小さな一歩集中が切れたら、どう休めばいい?
集中が切れたと気づいたら、作業をいったん止め、木や芝生のある場所をできれば15分以上歩きます。外に出られない日は、窓の外の緑や自然の映像を10分見ます。
「切れた」サインで、作業を止める
同じ行を何度も読む、ミスが増える、といったときが目安です。無理に続けるより、休憩を先に取ります。
所要 1分
緑の多い道を選んで歩く
公園、川沿い、木の多い道を選びます。研究では、自然と街の違いがはっきりした場所を長く歩いたときに、効果が大きくなりました[2]。
所要 15〜50分
外に出られない日は、自然の景色を見る
窓の外の木や、自然の写真・映像を10分ほど見ます。効果は歩くより小さめですが、写真を見る実験でも成績が上がった例があります[1][2]。
所要 10分
戻ったら、効いたかどうかを確かめる
効果は人によって違い、差が出なかった実験もあります[2]。何回か試して、作業の進み方が変わるかを自分で比べます。
所要 1分
04 続けるためのコツ自然の中を歩いても戻らないときは?
効果は小さく、誰にでも同じように出るわけではありません。歩く休憩で戻らない日は、ほかの理由(寝不足、作業の切り替え)がないかも確かめます。
- 人や車の多い道は避ける。街中を歩いた後は、注意力のテストの点が下がる場面もあった[2]。
- 短い休憩をこまめに入れる方法は、休憩の取り方の研究で紹介しています。
- 寝不足の日は、寝不足の翌日の立て直し方も役立ちます。
- 部屋に植物を置く効果は、観葉植物と集中力の研究で研究が割れています。
05よくある質問
集中が切れたとき、散歩すると集中力は戻りますか?
緑の多い場所を歩くと、戻りやすくなる可能性があります。Stenforsら(2019)が12の実験・528人をまとめた分析では、自然の中で過ごした後の注意力のテストの点は平均0.75点上がり、街中の0.29点より上がり幅が大きくなりました。ただし差は小さく、同じ散歩でも差が出なかった実験があります。
自然の写真や動画を見るだけでも効果はありますか?
効果が見られた実験はありますが、実際に歩くより小さめです。Bermanら(2008)の実験では、自然の写真を10分見た後に注意力のテストの成績が上がりました。一方、Stenforsら(2019)の分析では、写真やVRの効果は、実際の散歩より小さい傾向でした。
どれくらいの時間、自然の中にいればいいですか?
決まった時間はわかっていません。Bermanら(2008)の散歩は50〜55分でした。Stenforsら(2019)では、15〜20分の短い散歩は効果が小さめでした。Stevensonら(2018)のレビューも、実際の自然の効果が大きく見えるのは、過ごす時間が長いせいかもしれないと述べています。
出典
- Berman, M. G., Jonides, J., & Kaplan, S. (2008). The cognitive benefits of interacting with nature. Psychological Science, 19(12), 1207-1212. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02225.x
- Stenfors, C. U. D., Van Hedger, S. C., Schertz, K. E., Meyer, F. A. C., Smith, K. E. L., Norman, G. J., Bourrier, S. C., Enns, J. T., Kardan, O., Jonides, J., & Berman, M. G. (2019). Positive effects of nature on cognitive performance across multiple experiments: Test order but not affect modulates the cognitive effects. Frontiers in Psychology, 10, 1413. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.01413
- Ohly, H., White, M. P., Wheeler, B. W., Bethel, A., Ukoumunne, O. C., Nikolaou, V., & Garside, R. (2016). Attention Restoration Theory: A systematic review of the attention restoration potential of exposure to natural environments. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B, 19(7), 305-343. https://doi.org/10.1080/10937404.2016.1196155
- Stevenson, M. P., Schilhab, T., & Bentsen, P. (2018). Attention Restoration Theory II: A systematic review to clarify attention processes affected by exposure to natural environments. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B, 21(4), 227-268. https://doi.org/10.1080/10937404.2018.1505571


